11-2 謳歌
「なんだ、やつらの動きが急に変わった……?
やつらにこんな動きは考えつかないはずだが……計算が合わない」
あの『魔術師』って人の声が聞こえてきます、「ざまぁみろ」です
「消火器の煙は晴れたようじゃのぉ……ニューハーフは破れたか、所詮は融通の利かん若人か」
『翁』って呼ばれていた人がハヤトさんに近づいてきます……
「次はアンタの番だぜ、『昭和生まれの頑固じじい』」
「『昭和生まれの頑固じじい』じゃと、一緒にするでない!」
「だったらアンタも、『最近の若いもん』とかいうんじゃねぇよ。そんな言葉で簡単にオレっち達をまとめんじゃねぇ」
「ハヤトくん、まだ無事?」
「りっちゃん先輩? まだピンピンっすよ!」
「じゃあ、あの『翁』ってやつに、あと二・三回吹っ飛ばされなさい」
「え~~?」
「まったく嘆かわしい、最近の若いもんは口ばかり達者になりおって……」
翁の後ろから、大門さんがそっと近づき、翁の影を踏む
「とった!人身掌握術……」
「ヒトサシユビ!」
グインッ!
翁の影が曲がり、大門さんの足から外れてしまう
「ええっ!?」
「ワシの『ヒトサシユビ』は、この世のすべてのモノのベクトルを操る。モチロン、自分の影でもな」
「くっ、この……」
ハヤトさんが翁に飛び掛かる
「人身掌握術、ヒトサシユビ!」
「うわぁーー!」
ハヤトさんは翁の指が差した方に吹き飛ぶ
ドガァッ!
バゴォッ!
「ぐふっ……」
「まったく……今のこの若もん共を見たら、ご先祖たちはさぞ悲しむであろうな。
第二次世界大戦中、若者たちは、上官の命令通り『神風特攻隊』として、ゼロ戦で敵艦隊へ突っ込んで殉死した。
この潔さ、勇猛さ、爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいじゃ」
ハヤトさんが、ゆっくりと立ち上がる
「だから、だよ」
「なに?」
「きっと、その戦時中の若者たちだって、もっといろんなことをしたかったはずだ。もっと遊んだり、青春したり、恋愛したり……
だから、その子孫であるオレっち達が、ご先祖たちができなかったことを謳歌するんだ! それがオレっち達のご先祖たちへの最高の供養だ!」
「そんなものはただ自分が楽をしたいだけの世迷言だ」
「どう思おうと勝手にどうぞ。
でもな、勝手にアンタの価値観を押し付けられるのも、こっちはゴメンだぜ!」
「何度も言わせるな……
お前たちはワシの言うことを聞き、この地球のために駆除されればいいのだ!」
「へ、へへ……」
パアアァァ……
ハヤトさんの体が光っている
「何じゃ?」
「オレっちはどうやら、『電気』を蓄電したり、誘電することができるみたいだ……」
「? ……だから、なんだというのじゃ?」
「アンタが今までオレっちをぶん投げてくれたおかげで、そこら中の『電気』を蓄電することができた。つまり、今よりもっと光ることができるってこと」
パアアァァーーーッ!
「光ったからなんだというのだ……?」
「決まってんだろ、アンタの影を伸ばすためだよ!」
「!」
翁が振り向くと、翁の影の真ん中に大門さんが立っている
「遅いよ、人身掌握術・ヒトカゲ!」
バキバキバキーーーー!
「うおおぉぉーー!?」
翁がいた床は、ヒトカゲの重力によりひびが入り、崩れた
ガラガラガラ……
翁とハヤトさんは下の階に落ちた……下の階は土煙が充満している
「こ、ここは……前にいた食堂か?」
奥で、ハヤトさんが立ち上がる
「アンタにブン投げられていた時に、床に設置されていた配線をシュートさせて、脆くしておいたんだ。ヒトカゲを発動したら、床が崩れる位にな」
「なんのために……?」
「モチロン、食堂に落として、小麦粉とかをぶちまけるためにさ」
周りは、小麦粉の粉が舞い上がっている
「アンタさ、漫画とかアニメとか、あんま見たことないだろ?」
「はぁ? 漫画にアニメ? そんなものワシが見るわけなかろう、あんなものは頭を悪くするだけの害悪でしかない、今の若者がだらしないのは、すべてあの漫画やアニメのせいじゃ」
「やっぱりな、そうだと思った」
「?」
「漫画やアニメを見たことがある人はさ、普通こういう状況になったら慌てるんだよね、早く逃げようとするとか、身を隠すとか」
「なんじゃと……?」
「『粉塵爆発』って、知ってる?」
「?」
「わりぃなじいさん、オレっちの勝ちだ」
ハヤトさんは自分の両手を合わせる
ヒイイィィン……
「人身掌握術・ヒトスジ!」
バチィッ
ハヤトさんの手から、ヒトスジの火花が
カァッ……
ズッドオォォーーーーン!
ガラガラガラガラ……
テレビ局の三階の窓が吹き飛び、辺りは爆風で粉々に……
翁は、その場で真っ黒になって倒れている
奥の流し台の影から、ハヤトさんが出てくる
「残念だったな、オレっちは、大事なことはすべて漫画とアニメから教わったんだ。日本の漫画とアニメ、舐めんなよ!」




