10-4 疑念
少し高いところにあるゴンドラに乗っていた『魔術師』が、スタジオを俯瞰し、指示を与えている。
「キグルミ、お前は少し下がれ、
ニューハーフよ、そこにある『大砲』のセットを本物にしろ」
「『人身掌握術、ヒトリゴト』……セットよ、本物になって!」
ガシャガシャンッ!
海賊がモチーフになっている『お昼のギルド』には、大砲やサーベルなどのセットがたくさん配置してあります。
大砲のセットを本物にして、弾を込めてる、これって……
「撃てーー!」
ドォンッドォンッ!
「マジか!?」
ハヤトさんがビックリしてます、そりゃそうです、ただの『ハリボテ』だった大砲が……
ドガァンッ! スガァンッ!
「うわぁっ!」
「キャーー!」
「次だ、キグルミよ、『ヒトフデガキ』で『ナイフ』と『サーベル』を書け」
キュッキュッ、カキカキカキ……
ズラァァ……
キグルミが、『一筆書き』で描いた『ナイフ』や『サーベル』が、本物になって空中に浮かんでいる!
「『翁』よ、『ヒトサシユビ』で操れ」
『翁』と呼ばれた老人が、『人身掌握術』を発動!
「ヒトサシユビ!」
ビュンッビュンッ!
ドドドドドドッ!
「危ねぇっ!」
大量の『ナイフ』や『サーベル』が、翁のヒトサシユビで操作され、三人に襲い掛かる!
「くっ、この連携、戦い慣れしている……」
「こんなのいつまでも避けきれないよ!」
「くそっ、相手に近づくことすらできない……」
北上さんも、大門さんも、ハヤトさんも、圧倒されている。
もう、撤退とかも考えた方が……
「どうした、そんなものか? まだ『九手』だぞ……あの『ブラボーチーム』と『チャーリーチーム』でさえ、二十二手もったのだ、頑張れ、フフフ」
魔術師が、三人を煽ってきます。
「うわぁっ!」
ズテーンッ
大門さんが転んだ!
「危ねぇっ!」
ハヤトさんが助けに入る。
カカカカッ!
ハヤトさんが、セットの『盾』を持って、大門さんをかばう。
「うおぉー、こえー、大門、お前今本当に転んだんだろうな?」
「えっ、それどういうこと?」
「敵にやられるフリをして、オレっちをやろうとしたんじゃないだろうな?」
「そんなことしないよ!」
ハヤトさんが『疑心暗鬼』になっている……
そうか、三人ともこのチームの中に『スパイ』がいるって知っているんだった。
「ハヤトよせ、俺たちを分断するための罠だ。
今のはニューハーフの『ヒトリゴト』で転ばされたんだ」
こんな状況で、しかも『スパイ』の疑いまであるんじゃ、とてもじゃないけど戦いに集中なんてできない……ひょっとして、これも魔術師の『計算』……?
ゴンドラに乗った魔術師が、ニヤリと口を歪ませる。
「私の人身掌握術は『ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ』。 この世のすべてを『計算』することができる能力だ……
お前たちの動き、考えていること、全て手に取るようにわかるぞ、フハハハ」
「この世のすべてを『計算』することができる能力……?」
そんな能力……私たちで太刀打ちできるの……?
「確か、お前たちがここに突入するときの作戦成功率は『72パーセント』だったな……
だがそれは、全三チームが稼働し、私たちに情報が漏れていないこと、
さらに私たち『ヒューマンスレイヤーアドバンスド・シックス』の存在も計算には入っていない」
確かにあの時点で、自衛隊のすべての『AI 』に、ここまでのピンチは想定させていない……
「私の『再計算』によれば、お前たちの今の作戦成功率は……『三パーセント』だ」
「さ、三パーセント……?」
「さあ、まだ『十二手』だ、もっと私たちを楽しませてくれ!」
「人身掌握術、ヒトサシユビ!」
ヒュンッヒュンッ!
ドガアァァンッ!
「うわぁっ!」
「今度は大砲の『爆弾』を、直接操ってきた!」
「他にも槍や、斧なんかも飛んでくる!」
「くっ、さすがにこれは……強い」
思わず私が叫ぶ!
「みなさん、撤退しましょう、急いで!」
「よっしゃー」
私は三人を、もと来た入口に誘導!
「こっちです!」
その時、また『魔術師』の口元がニヤリと歪んだ……
「言ったはずだ、私はこの世の全てを『計算』できると……」
ガコンッ!
魔術師が、何かのスイッチを押した……?
ゴゴゴゴゴゴ……
「な、なんだ?」
「床が、動いてる……?」
私たちがいた場所の床が回りだす……?
まるで、中華レストランのターンテーブルのように、
まるで、電車の格納庫の前の、方向転換機のように……
魔術師が、私たちを見おろしながら、説明する
「ここは『お昼のギルド』のスタジオのセットだ……
番組場面転換のための『回転ステージ』ぐらい、あってもおかしくはないだろう?」
「しまった」
ガコンッ!
私たちのいた場所は、もとの入口はネズミのリンダが、
エレベーターのある出口は、環境活動家の『終末のアリス』が立つ。
左右のドアはなくなっている。
「そ、そんな……」
「左右のドアは、元々『ヒトリゴト』で作っておいた『まやかし』だ。
これで完全に逃げ道もなくなった……さあ、どうするアルファチーム、フフハハハ」
退路を断たれ、スタジオはまさに『絶望の檻』という名の空間に。
私は、膝から床に落ちて、絶望する。
さすがの北上さんの顔にも、焦りの表情が……
「このままでは全滅だ、どうする……?」




