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【完結】害獣認定  作者: みっど
第9章 弱肉強食
24/52

9-3 掌握

「あ、あっぶねぇ……」

「先に『波』を地面に打って、地形を調べておいて正解だったな」


 北上さん凄い、『ヒトナミ』を使って、船で使う『ソーナー』みたいなこともできるんだ……

(※海上自衛隊では『ソナー』のことを『ソーナー』と呼ぶ)



「ぶ、ぶぶぶ、が、ばばば……」

 私が振り返ると、後ろで大門さんが『ヒトカゲ』を使って、サラダの口を無理やりふさいでいる!

「……このまま重力をかけ続ければ、お前の『ヒトクチ』は効果を発揮できない。

 あとは北上くんとハヤトくんが、Gを倒して合流すれば、僕たちの勝ちだ」


「ぶ、ぶばばばば、ばああああ!」

 サラダは重力に抗うため、必死に立ち上がろうとしてる。


「くっ……はあああぁぁ!」

 バキ、バキバキバキ、バキンッ!

「へぶしんっ!」


 大門さんはさらに『ヒトカゲ』の出力を上げ、サラダを押しつぶした!

 サラダの周りは、直径三メートルほどが押しつぶされ、床がへこみ、ひびが入る。サラダはまったく身動きが取れていない。


「どうだ、絶対にお前たちに連携なんてさせないぞ!」



 私がタブレットを戻すと、北上さんたちがまだGを追いかけていた。

 Gが、飛びながら食堂のあちこちにあるゴミ袋を食べている……?

 ガサガサ、バクンッ、バクンッ


「あいつなにしてんだ? ゴミ袋なんて食べて……」

「多分あれがアイツの能力なんだろう、注意しろ」

「了解」

 ハヤトさんと北上さんが警戒しながらも、攻撃に転じる。

 ハヤトさんはイオノクラフトで空中から、北上さんが地面からGを挟み撃ちに!


 その時、Gがクルリと振り向き、口を開ける。

「人身掌握術、ヒトゴミ!」

 バアアアァァァーーーーッ!


 北上さんに向かって放たれた『ヒトゴミ』を、間一髪、ロールして避けた。

「大丈夫か、北上!」

「ああ、大丈夫だ……この匂い、『ダイオキシン』か……?」


 Gが、自慢げに話す。

「ギャーハハ、そうだよ、お前たち旧人類が作った、最凶最悪の毒、『ダイオキシン』だ」

「だいおきしん……?」

「……『ダイオキシン』とは、塩素を含んだプラスチックや紙くずが、不完全燃焼したときに発生する猛毒だ。その威力は青酸カリの千倍以上と言われている」

「青酸カリの、千倍!?」

 さすがの北上さんの知識、でもこれって大ピンチでは?


「人間が便利さを求めて捨てたゴミが、不適切な処理によって『最悪の毒』に変わる……それを害虫の代表のようなゴキブリのお前が使うとは、皮肉が効きすぎだ」

「ひゃはは、オレ様はお前たちのゴミを体内で低温燃焼させて、ダイオキシンを精製することができる。自分たちが作った『最悪の毒』で、死んじまいなーーっ!」


 北上さんはその場で立ち、目を閉じる……

「おい、北上……」

「北上さん……」


「人身掌握術、ヒトゴミーーーーッ!」

 バアアアァァァーーーーッ!

「北上ーーーーっ!」


 北上さんは右手を開き、『ヒトゴミ』の前に突き出した。

 手の平にはヒューマンスレイヤーの紋章が光ってる……

 Gの『ヒトゴミ』が当たる直前、北上さんの目が開く!


「掌握!」


 そう言って右手を握る。


 パアアァァァ……

 ザザザァァァ……


「はあああぁぁ!? な、なんだ今のは!?」

 Gが驚いている……


「何? 今何があったの? 説明してミサオ!」

 律子先輩からの通信……

「Gの驚きはもっともです……凶悪な『ヒトゴミ』が一瞬で消え、辺りは白い結晶と、霧状になった水、そしてなぜか清々しい空気が充満しています」


 ハヤトさんが、肩についた白い結晶を舐める。

「しょっぱ! これは……塩?」


 北上さんの説明が入る。

「ダイオキシンは『炭素・水素・酸素・塩素』が複雑に結びついた物質だ。

 俺はダイオキシンの分子結合が持つ固有の『振動波(波)』を解析し、

 逆位相の波動をぶつけて結合をバラバラに粉砕した」


「な、な、なん……」

 Gが、動揺して、ワナワナ震えているのがわかる……


「バラバラになった『炭素(C)』『水素(H)』『酸素(O)」を、

 その場で安定した『水(H2O)』『二酸化炭素(CO2)』『酸素(O2)』そして『塩(CI)』へと、波動で強引に組み替えた。お前の『ヒトゴミ』は、もう俺には通用しないぞ」


 さすがのハヤトさんも呆れ顔。

「おいおい……北上、もう人間超えちゃってんじゃん……?」


 このアルファチームの強さなら、ひょっとして……そう思わずにはいられません。

 でも私たちは、想像すらしていませんでした……これから先に起こる『惨劇』を、『後悔』を、そして『絶望』を……



「大丈夫か、北上……! そんな、心臓が、止まってる――!?」

「えっ」


「残念だがもうお前たちは、その『メビウスの輪』から抜け出すことはできない、永遠にな」


 さすがの北上さんの顔にも、焦りの表情が……

「このままでは全滅だ、どうする……?」


「命があれば、何とかなりますっ!」


「お前の波動は純粋すぎる……不気味なほどにな」



「スパイは、アナタだったのね……」



 ◆場面は変わり、テレビ局会長室。

 テーブルの上でチェスをするレセプター。

 後ろには、渋谷の大型ビジョンに映っていた、チャイナドレスの女と、スキンヘッドの大男の姿も……


 レセプターは、チェスの駒を進める。

「チェスは、達人になれば、最初の『十手』で、勝敗の『九十パーセント』が決まると言われている」

 二人は沈黙……


「今回も、勝敗は見えたようだな……」

 レセプターは、クイーンの駒を、相手側のキングの前に置く。


「チェック・メイト」


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