9-1 棄却
「アルファチームの諸君、貴様らが、この動画を見てもなお、私たちに挑んでくることを心から願っている。さあ、一緒に楽しもうじゃないか、フフフ、ハハハ――」
「これは……」
「完全に罠……俺たちの情報が、全てやつらに流れていると思っていいだろう」
「そんな……」
今理解しました……首相官邸で、北上さんがハヤトさんを制止した理由が。
あの時に、こちらの戦力を分析されていたのだと。
相手は、『新人類側』は、大胆にして恐ろしく狡猾……このまま進めば、私たちも彼らの『餌食』になるのは火を見るより明らか。
シーーーーン……
しばしの沈黙。
それは当然、この状態で発言できる人なんて……
「作戦は続行だ、そのまま潜入を続けてくれ」
「この声は……三本木内閣情報官!?」
「このあと『特別拘束部隊』の潜入も予定している、このまま何もせず放置すれば、彼らにも危険が及ぶ」
「三本木内閣情報官、私たちも捕まったら、命の危険が……」
私は、必死に三本木内閣情報官を説得……でも、
「大丈夫だ、君たちの情報は敵側には極力流れてはいない、やつらの虚をつくのは今しかない」
「しかし……」
「しかも、レセプターが屋上のヘリポートにヘリコプターを呼び寄せた。
おそらく他の地域に移動し、さらなる『ヒューマンスレイヤー』を覚醒させるつもりだろう」
「他の地域に……?」
「もう時間的猶予もない、一刻も早くレセプターを制圧し、これ以上の被害を抑えなくてはならない」
三人とも悩んでる……それはそうだ、自分たちと仲間の命がかかってる。
「これは『命令』だ、世界の命運は、君たちの双肩にかかっている」
三本木内閣情報官は、おそらく私たちの中にいるであろう『スパイ』の殲滅も計算している……私が何とかしなくちゃ!
「わかりました、作戦を続行します」
「北上さん!?」
「このまま戻れば、待ち伏せされている可能性がある。
俺たちが進めば、この局内にいる人たちに及ぶ脅威も減らすことができる」
「で、でも、でも……」
「大丈夫だミサオ、お前も見ただろう、俺たちの強さを。
俺たちはそう簡単にやられたりはしない」
「……」
北上さん、私に余計な心配とプレッシャーを与えないように……
「了解した、ではこのまま作戦は続行、少しでも戦闘を避けるため、
そのまま三階の食堂の社員通路を抜け、西側の階段から四階のスタジオのエレベーターまで移動してくれ」
「わかりました」
*****
私たちは、三階の食堂へ。
ウイィィン……
従業員約二千人を抱える大企業の食堂。
いつもなら、何百人という人たちが食事したり、談笑したりする、憩いの場……
でも今は、破壊され、人っ子一人いない、ただの広い空間。
二、三日放置されているからだろうか、いろんな匂いが混ざった不快な臭いが鼻をつく。
「社員通用口は、厨房の奥からだ、行くぞ」
ガチャッ
カサカサカサ、ブ~ン……
食堂の厨房の扉を開けると、そこには、空中を飛んでいる小さな黒い虫と、フレンチブルドックのワンちゃんが、私たちを待っていた……
「よう、やっと来たな、待ってたぜ。
オレ様の名前は『G』、こっちは犬の『サラダ』だ、よろしくな、ギャーハハ」
「ワンワンワン……腹減ったぜ、早く食わせろ!」
「マジか、ヒューマンスレイヤーって、人間だけじゃないんだ……」




