8-2 勇気
大門の目に、光が宿る……
「これ以上、僕の大切なものを、お前に壊されてたまるかーー!」
大門は、腕で防御しながらも、左足を一歩前に踏み出す!
ヒイィィン……
大門の左足のつま先に、紋章が光る
「人身掌握術、ヒトカゲ!」
ズドンッ!
「がっ!?」
速くてまったく視認できなかった強欲のヤンキーが、突然目の前に現れ、地面にひれ伏している。
「な、なんだこりゃぁ? う、動け、ない……?」
強欲のヤンキーは、まるでなん十トンもある、透明で巨大な獣に踏みつけられているかのように動けず、もがいている。
「僕のこの『人身掌握術・ヒトカゲ』は、影を踏んだものに重力をかけることができる技だ」
「なんだと!?」
「これでもう、素早く動くことはできないぞ」
「テメー、ダイベン、この野郎……」
強欲のヤンキーは、重力に逆らおうと、必死にもがく。
「はあああーーーーっ!」
大門は重力の威力を上げていく。
「くっ、だいもん、おまっ……」
「これからは、もう、お前に『奪われない』、『壊されない』……
『大事なもの』を守るため、ボクは戦う!」
強欲のヤンキーは、大門に手を伸ばし、訴える。
「ま、まてダイベ……いや、大門、お前から『奪ったもの』は全部返す……だから……」
「いらないよ! ボクはもう一番大事なものを手に入れたから……
それは『仲間』、この宝物だけは、絶対にお前に『壊させない』!」
大門は、重力の威力を上げていく!
「ハアァァーーーーッ!」
バキバキバキバキバキーーッ!
「よせ大門、もう気絶している」
気絶している強欲のヤンキーの周りは、重力でヒビが入り、ベッコリへこんでいる。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
力を使い果たした大門は、その場に跪く。
そのまま二人で、俺の拘束を解く。
「やったな、大門」
「北上くん……」
俺は片手を上げる。
パンッ!
二人でハイタッチ!
「い、痛いよ北上くん、力が強すぎる」
俺たちは二人で、笑いあう。
*****
それから俺たちは『番組備品庫』の奥のドアを開け、ミサオの指定した合流地点へ。
「よっ、ひさしぶり~」
ハヤトが満面の笑みで、手を上げて俺たちを迎える。
「二人とも大丈夫だった? ケガとかはない?」
大門が心配してる。
「ミサオ、ハヤトに何かされなかったか? 正直に言っていいんだぞ」
「それ、どういう意味?」
ミサオが笑顔で、
「大丈夫です、ハヤトさん、以外に紳士だったみたいです」
「ホントそれ、どういう意味!?」
その時――
○ミサオside
「アルファチーム、応答して」
インカムから律子先輩の声……
「はい、こちらアルファチーム、19:08(ヒトキュウマルハチ)ただいま合流しました」
「最悪の情報が入ったわ、レセプター側からの動画よ」
「レセプター側からの動画……?」
「そっちのタブレットに送るから、覚悟してみて頂戴」
私の持っていたタブレットに『ダウンロード』の文字が。
インストールして、そのまま再生……
ザザザァ……
そこに映っていたのは、何か鎖のようなもので拘束された『ブラボーチーム』と『チャーリーチーム』の面々……
暗闇から、初めて聞く、恐ろしく冷たい男の人の声が響く。
「『10万桁』だ、それを言えたら解放してやるぞ」
「そ、そんなの、無理に決まってる!」
そう言ったのは、ブラボーチームの曳地三等海尉だ。
恐ろしく冷たい声をした男の人が、続けて話す。
「貴様たちの連携、案外大したことなかったな……
『ヒトアタリ』は、当たる対象を変えればいいだけだし、『ヒトギキ』も大音量の音を流せば封殺できる」
ブラボーチームも、チャーリーチームも、全員ガタガタ震えながら、男の話を聞いている。
「『ヒトダマ』も『ヒトシズク』も、威力がイマイチだし、『ヒトミゴクウ』に限っては数の制限があるとは、やれやれだ」
暗闇の男は、両手の平を上にして、肩をすぼめてあきれた態度を表す。
その時、チャーリーチームの祥子先輩が、すがるようにその男に話す。
「お願い、何でもするから、私だけは見逃して……命だけは……」
そう言いつつ、股を開く。
「フッ……」
暗闇の男は、少しだけ微笑む。
祥子先輩は、ほんの少しだけ、安堵の表情を見せる。
でも、すぐに絶望に落とされた。
「貴様は……、
お前たち人間が『害獣』を駆除するとき、ゴキブリやカラスが股を開いたら、欲情するのか?」
祥子先輩の顔が、絶望に染まっていく……
ドシュッ!
ブシューーーーッ!
喉を掻き切られ、絶命する祥子先輩。
「ひっ……!」
思わず私は、小さな悲鳴を上げてしまった。
「た、頼む、私を見逃してくれ! 見逃してくれたら、人類側の秘密情報をアンタ達に流す、な、だから……」
「残念だったな、間に合っているよ」
「そ、そんな……」
ドボォッ!
「ごほっ、あ、ああああああ……」
暗闇の男の手刀が、曳地の腹部に突き刺さる……
その後、見るに堪えない惨殺シーンが続いた。
泣き叫び、逃げ惑い、命乞いをするチームのみんな……
そのすべてを終えた後、暗闇の男が、画面に向かって静かに話し出す。
「アルファチームの諸君、貴様らが、この動画を見てもなお、私たちに挑んでくることを心から願っている。さあ、一緒に楽しもうじゃないか、フフフ、ハハハーー」
プツンッ――




