8-1 強欲
○北上・大門side
ウイイィィン……
「エレベーターが動き出した、ハヤトたちがやってくれたようだな」
「うん」
俺たちはまたエレベーターに戻り、扉が開くのを待つ。
チーン!
着いたのは三階。
「ここは……?」
「どうやらここは『番組備品倉庫』……バンビって呼ばれているところらしいな」
そこかしこに、いろんな番組で使ったであろう『備品』が、並んでいる。
キグルミはもちろん、大型扇風機や年代物のテレビ、ちゃぶ台まである。
「こういうものを使って、コントやバラエティ番組とかを制作していたのだろうな」
俺たちは『番組備品倉庫』を進み、その先にある合流地点へ向かう。
「あの先に、ミサオが言っていた合流地点があるはずだ」
番組備品倉庫の奥にあるドアを指差し、向かう、その時――
「へへへ……」
俺たちは左側に気配を感じ、振り向く。
そこにいたのは、リーゼントをバッチリ決めた、ヤンキー風の男……
舌にヒューマンスレイヤーの紋章が光る。
「さあ、オレ様と勝負する度胸のあるやつはどいつだぁ?」
「こいつ……ヒューマンスレイヤーか」
俺たちは戦闘態勢をとる。
「君は……!」
大門がビックリしている。
「おっや~? どっかで見たことある顔だと思ったら、ひょっとしてお前『ダイベンくん』かぁ~?」
「大門、あのヤンキー風の男、知り合いか?」
「……昔、僕をいじめていたやつなんだ」
「はぁ~?
心外だなぁ、『いじめていた』んじゃなくて、『いじってやってた』んだろうが、独りぼっちだったお前をよ~、感謝してほしいくらいだぜ」
「……」
大門の手が、震えながらも力が入っているのがわかる。
「『オレ様と勝負する度胸あるやつはどいつだぁ?』と言っていたな、バトルが好きな、『戦闘狂』か?」
「ああ、そう思ってくれて構わねぇぜ」
そのヤンキー風の男は、座ってた椅子を降り、指を鳴らしながら近づいてくる。
ボキボキ、ボキボキ……
俺は大門に話しかける。
「大門、相手が戦闘狂なら話は簡単だ、力でねじ伏せればいいだけだ」
「う、うん……」
俺が、ヤンキー風の男の前に立つ。
「大門、お前には荷が重い、ここは俺に任せて、お前はそこにいろ」
「……」
「お前の相手は、俺だ」
俺は戦闘準備を整え、ヤンキー風の男の前に立つ。
「へっ、そうかい、じゃあこっちに来な」
俺はヤンキー風の男に言われるがまま、そのままついていく……
その時――
ズドンッ!
「なにっ!?」
「北上くん!」
バラエティ番組などでよく使われる、大砲のような小道具から、カラフルな網が発射され、俺を拘束した!
「あーひゃひゃ、それはテレビのドッキリ企画なんかで使われる『ネットバズーカ』。
ナイロン製だが、『ヒトククリ』の糸も使って補強してある、絡みついたら簡単には取れないぜぇ」
ヤンキー風の男は、腹を抱えて大笑い。
「くっ、お前、勝負するのが好きなんじゃなかったのか?」
「オレ様はよぉ~、勝負することが好きなんじゃねぇ、『勝負に勝つこと』が好きなんだよ、あーひゃひゃひゃ」
「と、取れない……」
俺は網を剥がそうとするが、複雑に絡みついていてとれない、これでは『ヒトナミ』も使えない。
「へっへっへー、行くぜぇ、『人身掌握術、ヒトットビ』!」
パパパパパパーーーーッ!
「なっ!?」
ヤンキー風の男は、目にも止まらない、とてつもない速さで部屋を飛び回りだした!
ガガガガガガガーーーーッ!
「うわぁっ!」
「くっ!」
あまりの速さで、俺も大門も身を固めて防戦一方。
「なんて技だ、動体視力が上がっている今の俺たちでも捉えられない速度とは……」
「オラオラ、まずは海自のイケメン、お前を壊してからゆっくりダイベン君を駆除してやるかなぁ!」
ガガガガガガッ!
「ぐっ……」
「北上くん!」
大門が、俺を助けようと手を伸ばす。
「ゴラァ、ダイベン! テメーはいいから、そこでおとなしくしてろやー!」
「ひっ……」
大門は、ビビりながら防御を固め、動けない。
俺は、ヤンキー風の男の攻撃を受けながら、大門に話しかける。
「大門、お前から負の感情の波動を感じる……やっぱりあいつにいじめられていたんだな」
大門も防御しながら、それに答える。
「あいつは、いつも一人で影ふみしていた僕を仲間に入れてくれたんだ……でも、あいつはいつも僕の大切にしていたものを奪っては壊した」
大門から、『怒り』と『悲しみ』のような波動を感じる……
「大切にしていたフィギュアも、漫画の本も、そして母さんがくれた僕のお小遣いまで……」
ザザァーー……
一瞬、攻撃を止めたヤンキー風の男が、大門を睨む。
「ああ~? それはオレ様が世間のために有効活用してやったんだろうが!
何度も言わせんな、いじめてたんじゃなくて、いじってやってただけだ!」
「まさに『強欲のヤンキー』といったところか……
……加害者側の意見や言い訳なんてどうでもいい、被害者側が認識した時点で、それはもう『いじめ』だ!」
『強欲のヤンキー』は、眉間にしわを寄せ、威嚇する。
「へっ、だからどうだっていうんだよ、B級ドラマのセリフじゃあるまいし、いい加減、早く堕ちちまいなぁ!」
ガガガガガガッ!
「き、北上くん!」
「大門、今のお前は独りぼっちじゃない、俺たちがついている。
恐怖に打ち勝つのは勇気だ! 勇気をもって一歩踏み出せ!」
大門の目に、光が宿る……
「これ以上、僕の大切なものを、お前に壊されてたまるかーー!」
大門は、腕で防御しながらも、左足を一歩前に踏み出す!
ヒイィィン……
大門の左足のつま先に、紋章が光る
「人身掌握術、ヒトカゲ!」
ズドンッ!




