7-2 脆弱
「いったい何なの、こいつら……?」
『ブラボーチーム』、『チャーリーチーム』たちの顔にも、焦りの色が浮かぶ
「さあどうした『ブラボーチーム』、『チャーリーチーム』の諸君。
こちらはまだ三名しか動いていない、そしてまだ始まってから13手しか経っていないぞ……もっと私たちを楽しませてくれ」
学者風の男は、余裕の構え
「おい! 情報官の二人、お前たちも何とかしろ! 情報収集とサポートが任務だろ!」
「そんなこと言われても……」
「このままじゃ私たちも……なにか打開策を……」
ノッポのリーダーの命令に、ブラボーチームの情報官は戸惑いを見せ、祥子情報官はタブレットで打開策を探す
「ここはボクたちに任せてもらおうか、行くぞ、雫!」
「了解、お兄ちゃん!」
雫と珠央、双子の兄妹コンビが、学者風の男に向かって走り出す
「『人身掌握術、ヒトダマ』!」
ボウッ!
「『人身掌握術、ヒトシズク』!」
キュウゥゥン、バシューーン!
摩擦熱で作った炎の玉と、水で作ったレーザービームで攻撃!
その時、学者風の男の前に、女装した男が立つ
「ウフフ……『床よ、壁になれ!』」
ザザザザァ……
男の人の足元の床がはがれ、周りを壁のように包んだ!
バシュバシュゥゥ……
「なっ?」
「そんな、雫たちの術が……」
「フム……初見ならまだしも、その程度の威力ではな」
学者風の男が、自分の顎を触りながら分析する
「なんだと!?」
ジャララララーーーーッ
学者風の男から、『数字でできた鎖』のようなものが伸びて、珠央と雫の二人を縛り付けた
「うわぁ!?」
「なに、これ? とれない!?」
「フッ、これは私の能力『数式の鎖』……お前たち程度では到底外すことはできない、少しおとなしくしていてもらおう」
「く、くそう!」
学者風の男は振り向き、残りのメンバーを見据える
「これで22手……フハハ、そろそろ終わりかな? そうら!」
ジャララララーーーーッ
学者風の男から、何本も『数字の鎖』が伸びて、残った全員を縛り上げた
「しまった!」
「キャーーーーッ!」
全員『数式の鎖』で縛られ、並べられる……
「た、助けて、死にたくない……」
「やれるもんならやってみなさいよ! お前みたいなオタクに殺されるぐらいなら、自決してやるわ!」
珠央はビビッて泣き出すが、雫は学者風の男を睨みつける
「ほう、勇ましいな、勇猛なのはいいことだ」
学者風の男は、珠央と雫を見おろす。
「そうだ、お前の望みを一つだけ叶えてやろう。
この二人のうち、どちらかの命だけは助けてやる」
学者風の男は、珠央と、ブラボーチームの情報官の二人を、雫の前に差し出す
「さあ、どちらにする?」
珠央は、雫に嘆願する
「雫、ボクを助けてくれるだろ? ……ボクたちは双子の兄妹だ、ずっと一緒に育ってきたじゃないか」
情報官は黙ったまま……
雫はゆっくりと、二人の方に指をさす
差したのは……ブラボーチームの情報官だった
「し、雫……!?」
学者風の男は、情報官の鎖をほどく
雫と情報官は互いに駆け寄り、抱き合う
「お前たち、デキていたのか……?」
愕然とする珠央
「よかった『章吾』、アナタが助かって」
「ありがとう雫、信じていたよ」
キスをする二人、それを見ていた珠央の顔は、まさに鬼のような形相に……
「お前のことを一番に考え、ずっと一緒に生きてきたこの兄を、裏切るのか、雫!?」
涙を流しながら、二人を睨みつける珠央
ドシュッ!
「が、がはぁっ!?」
学者風の男の手刀が、背中に突き刺さる、その相手は、なんとブラボーチームの情報官、『章吾』だった!
ドサァ
「そんな、『章吾』? いやぁーー、『章吾』ぉーー!」
夥しい血が流れ、『章吾』は雫の胸の中で息絶える
パキィン、パアァァ……
その時、珠央の『数式の鎖』が霧散して消えた
自由になった珠央は、雫の元へ
「お兄、ちゃん……?」
「雫お前、今日までともに育ち、一緒に過ごしてきたこの兄を、裏切ったな……信じていたのに!」
「ま、まってお兄ちゃん、これは誤解よ……」
珠央は懐から拳銃を取り出し、雫に向ける
「地獄へ落ちろ」
「まって、おにい……」
ダンッ!
バタッ……
珠央に撃たれ、その場で息絶える雫。
「はっ……
ボ、ボクは……いったい何を……?」
我に返る珠央
「雫を……ボクが? 世界に一人しかいない妹を、ボクが、この手で……? そんな……」
泣きながら珠央は、拳銃を自分の頭に向ける
「ゴメン、雫……今ボクも、お前のそばに……」
「よせっ」
ダンッ!
バタッ……
珠央もその場で自害……
それを見ていた学者風の男が、満面の笑みで叫ぶ
「フハハハ……
弱い、弱すぎる。 そして脆い、まさに『脆弱』……
だがそれこそが『旧人類』、それでこそ『狩り』がいがあるというもの」
学者風の男は、残ったメンバーを、見定めるようにして見まわす……
「さあ、次は誰が楽しませてくれるのかな」




