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MORITARIN 24

...

Episode -6 C

♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎


フェルトラインの復元力が作用すると、イトに見えていたイナの空間が粉々に砕け散っていく。


その砕ける空間の隙間から、ゆっくりとフェルトラインの姿が露わになる。


不安定な信号のせいで互いの声は次第に聞こえなくなり、すべてがぼやけていった。


慌てたイトは声を張り上げてイナを呼んでみるが、その声はイナには届かないようだ。


その瞬間、イトの頭の中に、まだイナに伝えられていない最も大事な言葉が浮かんだ。


焦ったイトは叫ぶ。


「MB 空間接続! イナと空間接続! お、お願い、お願い繋いでくれ!」 だが何の反応もない。


それでも切実さを込めて最後の力を振り絞って叫んでみる。


「鱗... 鱗を探すな。何もするな! 鱗を探すな!!」


その瞬間、空間接続は輝く粉のように完全に消えてしまった。


イトは号泣しながらイナの名を呼んだ。


再びフェルトの中へ吸い込まれていくイト。


光より速い速度でビドと共に去っていく。


「ニア... イ ナ〜ア!」


♦︎ ♦︎ ♢ ♦︎ ♦︎


イナはMBに空間接続を繰り返し要求してみる。だがどうしても信号が掴めない。


MBは最後に接続が完全に切れたことを知らせるのだが… ごく短い間、何かの雑音がかすかに


イナに聞こえてくる。


しかしあまりにもかすかだ。確かに何かが聞こえるが、イナの耳で聞き取るのは不可能だった。


イナはどさりと座り込んだ。まるで目の前でイトが自分のそばを永遠に去ってしまったようだった。


彼の不幸を目の当たりにした。彼が永遠に一人になる絶望的な未来を知ってしまった。


だがイナは、彼のためにしてやれることが本当に、何もない。


全身がぶるぶる震えるイナは虚空を見つめながら


悲鳴を上げるように赤い鶏の名を叫ぶ。


"


地面から少し浮いたまま素早く動く移動手段、ポート!


今この機体にはエノイが乗り込み運転中だ。彼の後部座席には大きな買い物かごが積まれており、その中には


数分前に買った食品がいっぱい詰め込まれている。


エノイはかなり焦った表情だ。だからか速度を少し出し過ぎているようだ。


彼が家に到着してドアの前にポートを停めていると、偶然空から素早く降りてくるイトと目が合う。


なぜか彼も切迫して焦っているように見える。


家の前で出くわしたエノイとイトは、一瞬互いにひどく動揺する。


先にイトが驚いて叫んだ。


「エノイ! 何だよ、なんで今頃来るんだ? とっくに出発してなかったのか?」


だがエノイも悔しそうな表情だ。彼も暗い顔で答える。


「イト… ポートの鍵、お前が持ってた…」


動揺したイトは嘆くように呟いた。


「あ… そうだった…」


この日イトはエノイに、自分でポートを運転してみたいと言って、市場に着いた後もポートの


鍵をエノイに返すのを忘れていたのだ。


エノイとイトは時間が遅くなり過ぎたせいで焦りながらも不安になり、門を開けて家の中へ入ろうとするが…


ニアの悲鳴が聞こえてくる。 「イト… イ…ト う…!」 びくりとしたイトが叫んで答える。


「お、俺… 来た。来たよ」 怯えた表情で足踏みしながら、エノイを見る。


しばらくして2階にあるイナの部屋の扉が開く。イナが駆け出しながらイトを呼ぶ…


「イト… イト…」 絶叫なのか怒鳴り声なのか判別できない。あまりにも怖い。


イトとエノイは慌てて2階へ上がる。そしてイナが買って来いと頼んだイチゴコチップを取り出して見せながら言う。


「買ってきた… あ… ごめん、すごく遅くなったよな それが…」 向かい合ったイナは突然、頭を伏せたままイトをぎゅっと抱きしめる。


イナの体がぶるぶる震えている、動揺するイトとエノイ…


この時エノイは状況をひっくり返そうとして… 口を開いた。


「お… お兄ちゃんがさ〜 うちのイナが好きなもの、いっぱい買ってきたぞ… な?…」 無理やり笑いながらイトを見る。


なぜだろう? その瞬間イナが号泣しながら泣き始めるが…


「うああああん〜…」 エノイとイトは互いを見る。


エノイがイトを睨みながら囁く


「お前のせいだ、イト…」 イトは驚いて答える。「え〜 違うだろ〜 そ… それは違うと思うけど?…」


二人はしばらくの間イナをなだめようとしたが、イナはなかなか落ち着かず、ただ涙を流し続ける。


そうして時間がまた過ぎていった。


イナがイトをぎゅっと抱きしめて離さないので、イトは少し悩んだ末に通信機を探す。


動きは少し不便だったが、イナを刺激したくなくて、ゆっくり腕を抜き出すことに成功する。


彼の腕に装着された通信手段を使い、どこかへ連絡を取ろうという考えだ。


エノイ: どこに連絡するんだ?


イト : その… 皇帝…に。


エノイ: 誰? [驚いた表情]


信号が鳴る。相手側の声が聞こえる。


親衛隊: 通信保安! 皇帝陛下をお守りする親衛隊です… どちら様ですか?


イト : あ… その皇帝とちょっと話したいんだけど?


親衛隊: 誰… まず身分からおっしゃってください…? [イトの連絡だと確認してかなり不愉快な口調だ]


イト : 分かってて何を聞くんだ? 早くロランと話させろ。


親衛隊: 無礼者め! 陛下の御名を軽々しく! [厳かな口調だ]


イト : …この野郎?


遠くから聞こえる声 「もういい… こっちへ…」 ロランが通信機をよこせと手招きする。


[イトが滞在する惑星セラノアの周辺には、完全に区別された文明があり、五つの惑星があり


それを統合してゴルディクと称する。だが惑星ごとに皇帝がそれぞれ存在し、一定期間だけ


ゴルディク統合『最高皇帝』を持ち回りで務める構造だ。現在は『ロラン』がその最高皇帝の座にいる。]


イト: …


皇帝: これは誰だ〜 赤い鶏がどうして私に?


[ゴルディクとイトが滞在する惑星セラノアは互いに結ばれていない独立した文明だ。]


イト: ロラン皇帝〜 その親衛隊誰だよ? 生意気だな〜 この野郎だってさ!


皇帝: ハハハ〜 まあ… 私事にそんなに目くじら立てないでくれ〜 で… 用件は何だ?


[皇帝役の中でも最高皇帝の役は全ての注目が集まる座である。


多くの主要行事や社交の集まりに頻繁に出席することになり、それは特性上、表向きは忙しいが格好良い、


誰もが羨むほど華やかなスケジュールをこなす人生に見える。


しかし実際は個人的な余裕が皆無で、品位維持のため私生活が徹底的に統制されるだけだ。


その生活は非常に退屈でまたうんざりするもので、そのせいで内面には少なからぬ精神的疲労が蓄積される。


そのような状況の中で訪れた『赤い鶏』の突拍子もない連絡は、日頃不満だらけだったロランの好奇心を強く刺激するに十分だった。]


イトは唐突に、イナが泣く理由がゴルディクと関係があるのかを、最高皇帝ロランに詰問した。


それに皇帝は呆れて、結局声が荒くなるに至るのにそれほど時間はかからなかった。


皇帝: 赤い鶏〜 いい加減にしろ〜! イナだか何だかが泣くのを、なんで私に聞くんだ!?


イト: いや〜 ゴルディクとも仕事で会うことが多いし、研究分野でも特にゴルディクと協業が多いから聞いてるんだよ!


皇帝: だからそれをなぜ私に…?


皇帝: そなたは皇帝が暇に見えるのか!!? [急に厳かになった]


イト: いや〜 最高皇帝の座だから何でも知ってると思ってさ〜


皇帝: …何だと?…


イト: …知らないなら知らないって言えよ! 何怒ってんだ! もし俺を騙してたなら黙ってないぞ! 元気でな〜


イトはすぐに通信を切った。


「おい…? 守護者? 守護者! よくも通信を勝手に切ったな!」 [通信機を投げ捨てるロラン]


席から勢いよく立ち上がって叫ぶ


「ごろつきがよくも… この… 鶏頭が!!!」


しばし静寂が流れ、おとなしく席に座るロラン… ロランは顔をしかめながら額をかく。


気分は悪いが、別に〜 こんな些細なことを大事にして問題にしたくはなかった。何というか〜


イトの強さは、ゴルディクの全軍兵力を総動員しても対抗する手立てがないのもあるし、


その後に起こるあらゆる責任を一人で負うのも面倒だからだ。


彼は素早く背を向けて大声で叫んだ。


「えい〜 もう知らん。」 [苛立っている]


イトを見守るエノイは、イトの馬鹿みたいな行動が情けないと思いつつ、また一方では


イトだからこういうことが可能なんだろうとも思った。


それでただ菓子でも食べながらイトの行動を観察していたし、この間もイナはずっと泣いている。


そうだ、ここは今、大混乱のパーティーが開かれたのだ。


その後またイトはバラクの三女王のうちセラノアに駐屯している『女王蜂セイジ』にも連絡して喧嘩を売り始めた。


[バラクは昔、最高統治者『ルビー』女王が崩御した後、王位継承者不在により混乱に陥る。


そこへ女王を補佐していた次席権力者『蜂の三姉妹』が混乱に乗じてバラクを素早く掌握し、分割統治を開始した。


三姉妹は現在イトが守護するセラノアに長女『セイジ』、本国であるバカル惑星には末妹『アスター』、


そして複数の惑星を移動しながらバラクを指揮統率する次女『ヒソップ』で構成される。


彼女らは実質的に王権を強奪した後、自分たちが『女王の統治』を正統に継承したと偽って宣言する。


その後、正統性確保の名分のためにバラク本来の故郷である『惑星セラノア』に言及し、


再び自分たちの所有として取り戻すという抱負を掲げる。


そのためにあらゆる手段を総動員してセラノアを侵攻したが、『赤い鶏 イト』の強力な守護行為という壁の前に膝をつくことになる。


それから今に至るまで長い時間が過ぎたが、彼女らは何の進展も出せずにおり、


そのため現在セラノアのセイジは、ただ無為と無力の中でむなしく歳月を送り、時間だけを浪費する立場に置かれていた。]


セイジ: イト? …どうしましたか?


イト : …どうした? 分からないで聞いてるのか?


セイジ: え! 分かりません?。


イト : 分かってるだろ?


セイジ: は… もう… [かなり苛立ちながら] …喧嘩を売りに連絡してきたの?


イト : 喧嘩って、喧嘩を売りにじゃなくて〜


セイジ: おい!! ティトルアーマー返せ この… [語尾が濁る]


イト : それじゃなくて〜


セイジ: それじゃなきゃ何なんだ?


イトは唐突に、イナが泣く理由をセイジに尋ねる。それを横で見ていたエノイは食べていた菓子を吹き出す。


目を丸くしたエノイは、呆れたようにイトを見つめるが、そのせいで泣いていたイナが泣きながら… いや、泣き笑いを始めた。


「クスクス クスクス〜」 イトはイナが泣き止んで笑みを見せると、安堵して大きく喜ぶ。


イナは泣き止み、黙ってイトをさらに強く抱きしめた。


するとイトが口を開く。「いやあ うちの姫君〜 もう機嫌が直ったみたいだな!」


隣にいたエノイが再び菓子を口に入れながら言う。


「イトって本当にバカみたい…」


それにイトが拗ねてエノイを睨むと、エノイを睨むイトのバカみたいな姿にイナは腹を抱えて大笑いし始めた。


イナの笑いにエノイもケラケラと笑い始め、イトにもその笑いが伝わって皆で声を上げて笑い始める。


それを遠くで聞いていたセイジが何かイトに罵声を浴びせているようだが、すでにイトの耳には遠く


よく聞こえもしないので、イトは静かに通信終了ボタンを押してしまう。


怒ったセイジが叫ぶ〜 「このチンピラめ!!!!!!」 [巣の壁面を破壊するセイジ]


「くそっ 私のティトルアーマー!!!」


[バラクの巣が揺れ、破壊される音が響き渡る。]


その日、バラクの巣ではセイジの怒りで大騒動が起きた。


だがやはりイトには、その後何の連絡もわずかな被害もなかった。


その時ちょうど、イナが住む地域の市長「アサヘル」からイトへ連絡が来て、二人の会話が始まった。


「イト様、ありがとうございます。本日虫ども[バラク]から私どもをお守りくださった件でこうしてご連絡いたしました。」


イトはこの通話内容が『イナの使いで遅くなった過ち』に対する免罪符になり得ると思った。


それでスピーカーを入れ、通信は続いた。イトはこの通信をよく聞けと言わんばかりにイナへ目配せしている。


通話内容はこうだった。


この日バラクの侵攻からアンクを守ってくれたイトの守護行為への感謝と、またバラクがイトを相手にすると言って


持ってきたティトルニウムアーマーの一部を事故現場へ訪れた市長アサヘルに『都市の再建』のために使えと


分け与えたことへの感謝を伝えるための連絡だった。


[ティトルニウムは言い値が通るほど希少な宇宙鉱物である。


バラクたちは長い時間、いくつもの惑星でティトルニウムを収集し、それをすべて合わせてティトルニウムアーマーを完成させる。


バラクたちはこの日! イトを相手にティトルニウムアーマーの性能をテストするため、


バラク戦闘兵の中でも最も成績の良い精鋭兵にティトルニウムアーマーを装着させた後、ほんの単なる性能テスト目的で


市の外れで騒動を起こしただけだった。


しかしその大切なティトルニウムアーマーを宇宙のごろつき〜 イトが丸ごと奪っていくという状況を計算に入れず


手ぶらで撤退する羽目になった。]


市長アサヘルはイトに感謝の印として、イナ個人の研究にさらに強力な協力と支援を約束してくれた。


それにイトは気分が良くなり、アサヘルにティトルニウムをもっと分けてやると応じる。


通話が長引くこの瞬間、微笑んでいたイナの表情が固まっていく。


イナは再びイトをぎゅっと抱きしめる。


そしてしばらく目を閉じていたイナは悲しい眼差しで心に誓うのだが…


「イト… あなたを絶対に一人にはしない… 絶対に…」


♢ ♢ ♢ ♢ ♢


ロギはイトのそばで彼の過去の話を聞いている。


イトは小枝で地面に絵を描きながら一生懸命説明した。


ロギはイトの痛ましい過去の話に胸が痛む。


平然と話す彼の姿は、かえってロギにより大きな悲しみとして迫ってきた。


話の途中、遠くからエティが走ってきた。


「パン焼けたよ! 早く早く〜」


エティはイトとロギの歩みを急がせた。


埃を払って立ち上がったイトがロギに軽く言った。


「次の話はまた今度してやる〜」


「じゃあどれ、パンの味でも見てみるか〜」


森の中の大きな木の隙間から、涼しくて香りの良い風が幼いロギの髪を乱した。


舞い散る髪の間から、よたよた歩いていくイトの後ろ姿が物悲しく見える。


ロギも急いでその後を追って歩いた。


少しずつ、よく焼けたパンの香りが広がり始めた。


「うん、香りすごくいいな〜」


ロギは急に焦る気持ちになった。香りが空腹を呼び起こしたせいだろうか。

...

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