MORITARIN 19
...
Episode -5 D
さっきよりは気持ちが少し落ち着いたのか、ロギは友だちの意見に同意して乗り出す。
ロギ: うん…急ごう。
ヨナ: ……ダメ。
ダビ: どうした、ヨナ。
ロギ: なんでダメなの![声を荒げる]
しばらく黙って考え込んでいたヨナが穴を見つめ、また言葉を続ける。
ヨナ: 私たちが子どもたちに少しでも近づいたら、私たちを取り囲んでるこの獣たちが私たちを殺そうとして襲いかかってくる。それに!
ヨナ: レオ一人じゃ、とてもじゃないけど捌ききれない数だよ。
エリ: そうだね。それに子どものそばの母親は、ますます凶暴になるはず。
パイ: 私たちは…善意で近づくつもりでも、むしろ逆効果になるだけなんだね…
ダビ: そういえば遠いからそう見えるだけかもしれないけど、子どもたちって俺らよりずっと大きい気がする…
レオ: ほんとだ、めちゃくちゃでかいな…
エティが黙って目を閉じ、考えに沈んでいる。
しばらくして目を開くと〜近くの岩に右足を乗せ、腕を組んだまま意見を言う。
「さあ、とりあえず!私たちは…穴に近づけない.. それで獣たちは穴の外に出てこなきゃいけない。」
「階段を作る?いや!土がすぐ崩れるのを見た..」
「穴を掘る?道具がないね?」
「方法は一つ..」
聞き入っていたダビが尋ねた。「方法!方法って何だよ?」
エティは自信満々に言う。
「方法は川の水だよ。水の流れをこっちに引いて穴に水を満たすの!そしたら出られる!」
エティの意見を聞いたエリが言う。「いや…道具がないって…川の流れを手で掘るの?」
それにエティが何も言えずにいると、エティの代わりにヨナが口を開いた。
「岩を探そう!レオが川の流れを塞いで水路を変えればできる。」
(イトは今の状況を面白がっているように見守っている。)
何気なく聞いていたレオが驚いて尋ねた。
レオ: …俺が?
ヨナ: うん。それにあの獣たちが泳ぎが得意か気にならない?
レオ: …..俺が?
ヨナ: うん。
しばらくして子どもたちとポピーは、穴に一番近い川の流れの前に集まっている。(心配でいっぱいのレオの表情..)
レオ: じゃあ始めてみるか…
ヨナ: 始めよう。
レオは大きく一度息を吐くと、大きな岩のそばにいたポピーを持ち上げて川に投げ込んだ。
子どもたちはぎょっとした。イトも表に出さないが、内心かなり驚いている。
ヨナ: レオ!何してるの…[動揺したヨナが震える声で]
レオ: え?泳げるか見ようと思って〜
ヨナ: 何?
レオの思いがけない行動に動揺したヨナは言葉を失うが、パイが叫ぶ。
パイ: レオ!
エティ: いいぞ!泳ぎめっちゃうまい。
パイ: え?ほんと?
ポピーは水の中で陸よりも自由に動き、かなり水が好きそうだ。
レオ: うーん…これなら子どもポピーたちも泳ぎが得意って見ていいのかな?
エリ: 必ずそうとは言えないでしょ…
ヨナ: 違う!!最初から一気に水を満たすんじゃなくて適度に満たしてから…水への反応を見ればいいじゃん!
ダビ: お!それいい考えだ。
ヨナはレオの突発的な行動に少し怒っているが、内に収めているようだ。
いつの間にか遠くからダビが叫ぶ。「ここ、使えそうな岩が多い!」
それでレオは岩のある場所へ走って行った。
子どもたちはそれぞれ岩を持ち上げようと試すが、少しも動かない。
程よい岩を探していたレオが気に入った岩を見つけ、川のすぐ近くへ投げ入れた。
気に入らない岩もあちこち投げ捨てるレオ。それを見ている子どもたちは感嘆してやまないが..
エリ: レオ、ほんとすごい。
ヨナ: レオ!まず穴のほうへ水路を作ってから、その後で川を塞がなきゃ〜
レオ: え?なんで??
ヨナ: 川がどこへ流れるかわからないのに、もし森へ流れちゃったら小さい動物たちが危険になる〜
ダビ: 岩で穴まで水路を作るなら一日中かかりそうだな。
ヨナ: ううん。最初の水路だけしっかり作れば、川は勝手に道を作るよ。
パイ: 流れが強すぎて、道が私たちの思う通りにならなかったらどうする?
ヨナ: ゆっくり少しずつ流して、私たちが少しずつ補強すればいい。
水路を穴の方向へ取っておいて、レオが岩で程よく川を塞ぐと新しい水の流れができた。
ヨナの望む通りに岩で川を塞ぎ続けると、水の流れが少しずつ強くなる。
「巨大な川から小さな流れを切り出して穴のほうへ流す」は順調に進行中だ。
ヨナは松葉杖を使って小さな水の流れを少しずつ補強し、流れ道を確実にしていく。
残りの子どもたちも岩の隙間を塞ぐため小石や土をかぶせ、この作業に力を貸す。
時間が経つほど水路がはっきりしていく。ヨナが手信号を送れば、レオは少しずつさらに川を塞いだ。
エティがヨナのところへ走って来て話しかける。「ヨナお兄ちゃん、めっちゃ賢い〜」
ヨナはにこっと笑って「エティ、この計画は全部君のアイデアだよ!君は本当にすごい。」と逆にエティを褒める。
エティはヨナの褒め言葉で気分が良くなった。
ヨナにはエティに頼みがある。「エティ、レオのところへ行って川をもう少しだけ塞いでって伝えて〜 それと全部塞いじゃダメって言って〜」
エティはわかったと言ってレオのところへ走り、ヨナの言葉を伝えた。
時間が経つと穴に水がたまり始める。
子どもたちは遠くから子どもポピーたちを見つめ、水にどんな反応を示すか心配だ。
エティ: 水、だいぶたまった!
ダビ: 頼む頼む泳ぎうまくあってくれ〜
ロギ: うん、お願い、泳ぎうまくあって。
いつの間にか子どもたちは叫びながら応援し始める。「お願いお願い泳ぎうまくあってくれ!」
最初は流れ込む川の水を飲むので精一杯だったポピーたちが、いつの間にか子どもも母親も関係なく水がたまり始めると
簡単に水面に浮かび、あちこち自由に動き始めた。
それを見たダビが叫んだ。「レオ!川を全部塞いで水を早く満たしてくれ!」
それでエティが眉をひそめてダビに近づき、なぜ川を全部塞いではいけないのか説明してやる。
状況を見守っていたヨナが言う。「水が十分たまるまで待ってみよう。」
いつの間にか水がたまらないと思っていた乾いた穴に、かなりの量の川の水がたまった。
すると子どもポピーたちは水の外に出て穴の外へ出たり、また水の中へ入って泳いだりして、
今になってようやく本当の平穏を取り戻したように見える。
しばらくして驚くべきことが起きた。見守っていた父ポピーたちが「ドン」という音とともに次々倒れ始めたのだ。
驚いたロギが走ってポピーたちを見た。そしてすぐ安心のため息をついた。
「眠ってる。すごく疲れてたんだ…本当に立派なお父さんたち…」ロギの目にうっすら涙が浮かんだ。
気分の良いパイがポピーたちのそばへ近づく。
エリ: 危ないよ、パイ!母ポピーたちが荒いはず!
パイ: 心配しないで、私を信じて〜
パイが近づくと母ポピーたちが警戒態勢を取る。パイを怖い目でにらむ。
遠くで見守る友だちは、パイがポピーたちとどんな会話をするのかすごく気になっている。
しばらくして森の中からツタがパイのそばへ伸び、ツタにツタが重なってたくさんの実がぶら下がって出て来る。
パイは子どもポピーと母ポピーの長い飢えをどうにか解決してあげたかった。
彼のそばに森の実が山のように積まれ始めると、子どもポピーたちが様子をうかがいながら少しずつ近づき始めた。
まだ怖さが先に立つが、やはり切実な空腹には勝てなかったようだ。
続いて差し出される実と、心配しないで食べていいというパイの優しい一言は、たくさんの子どもポピーたちの警戒を解き
その温かな手のそばへこぢんまりと集まらせた。
夢中で実を食べる子どもポピーたち。
母ポピーたちもそろそろとパイに近づくが、パイとの会話が続くほど素早く警戒を解き始めた。
いつの間にか母ポピーたちもパイのそばで実を一生懸命拾って食べている。
見守っていた子どもたちは、遠くからパイが手招きすると嬉しくなって走って来る。
ポピーたちに囲まれながら子どもポピーを抱っこしてみたり、一緒に遊んで休む時間を過ごす。
どれだけ小さな子どもでも大きさは子牛ほどなので、子どもたちにはかなり巨大だ。
時間が経つと、穴は水でいっぱいになり、やがてあふれ始める。
そして乾いた地面の上へ川の水があちこち流れ出し始めた。
それに気づいたエティが驚いて叫ぶ。「水があふれる!…..あちこちに散ってるんだけど?」
それにイトが言う。「よかったな。その水の流れでまた別の森が生まれるよ〜」
目を丸くしたエティ、「森が生まれる?うわ〜!」
ヨナ: 時間はたくさん必要だけど、この水の流れで森ができればポピーたちが住みやすい生息地が整うはず..
エティ: じゃあ!じゃあ!クラクは安全になるね!?
レオ: 本当?よかった。安心して戻れる〜
エリ: でも想像以上に時間がかかるはずだけど…うーん。
子どもたちの会話を静かに聞いていたパイが考え込んだ。
それから勢いよく立ち上がったパイは、新しくできた水の流れへととことこ歩いて行った。
流れる水の真ん中に立つと、冷たい水が足の指の間をくすぐりながら通り過ぎる。
本当に気持ちいい冷たさだ。
そよそよ風も吹いてきて甘い花の香りまで鼻先をかすめると、
まるで自然と一つになったように明るく微笑んだ。
続いてパイが両手を合わせ目を閉じて小声でつぶやく。
パイが何を言っているのか気になったロギがパイのそばへ行こうとするが、イトがロギの手をつかむ。
イト: ロギ、少しだけパイを一人にしておこう。
ロギ: え?どうして?
イト: 驚くべきことが起きそうだ。
ロギ: うん?そうかな..
パイは願うことをこしょこしょささやいたあと、最後の言葉で締めくくった。「王の名のもとに。」
そしてパイは目を開ける。
するとパイの足元から小さな芽が、芽に草が、茎が、そして枝が四方へ芽吹き
速く成長する。
乾いた土地がいつの間にか草原になり、まだ「大きな木」はないが、ある程度茂みの形が整っている。
やがてイトがロギに手招きし、ロギは嬉しい気持ちでパイのそばへ走って行く。
ロギに続いて子どもたち全員がその新しい草原の上へ集まり、そして急速に成長した植物に驚き観察している。
パイのそばへ子どもポピーが一匹近づく。あちこちきょろきょろして鼻でくんくんすると、やがて草原に寝転ぶ。
腹が満ちて眠気が来たようだ。子どもポピーはすぐすやすや眠りにつく。
そして一匹、二匹に続いてたくさんのポピーたちがふかふかの草原の上へ上がって寝転び、すうっと目を閉じる。
だがどうしても疲れずに水で遊ぶ子どもポピーたちも見える。なぜだろう?
パイ: これでここがポピーたちの新しい住みかだよ。
エティ: 本当によかった。すごくいいね。
パイ: じゃあ私たちは〜子どもポピーたちを起こさないように静かに出よう。
ダビ: 家へ?
パイ: ううん、クラクの村へ。
ヨナ: うん、嬉しい知らせを伝えないとね〜
エティ: ん?あれ何?
ヨナ: え?
エティが見ている穴の中には、満ちた水面の上へ巨大な岩が浮かび上がっている。
エティ: どうして岩が水に浮くの?
ダビ: まさか水に浮く岩だなんて
ロギ: 岩?あれが?
その巨大な物体は水の流れによって新しく生まれた水路のほうへ流れて行き、そこで止まっている。
ダビが走って行きその物体を触ってみたり目でも確かめるが、どう見ても形は岩みたいなのに岩じゃない。
その物体を叩いてみると中が空洞みたいな感じをほんの少し感じられた。
近づいて来たイトにダビが言う「これ岩じゃないんだけど中が空っぽみたいだ〜」
「中が空洞?」イトは急いで近づきその物体を見て、ぎょっとするが、イトはこれを知っている。
驚くイトにダビが近づいて尋ねる「これ何?」
「これは…. バラクの殻だ …」
ダビ: 「殻?バラク?」
イト: 「うん〜 でもどうしてこんな形なのか、それに、なぜここにあるのかはさっぱりわからないね」
ダビ: 「バラクって何?」
イト: 「あ いるよ.. バラクって宇宙虫だ〜」
ダビ: 「うえっ虫〜 今度は巨大虫だ!」
イト: 「今は俺も詳しくはわからないな、後で説明するよ〜」
ダビ: 「うん〜」
ダビとイトは岩を調べて戻って来る。友だちがあれは何だと岩について尋ねると、ダビは答える。
「知らない、大したことないと思う。それより早くクラクの村へ戻ろう」
大したことないというダビの言葉に子どもたちはすぐ好奇心が消えた。そうして村へ戻ろうとするが、遠くから
エティが驚いて走って来る。
「大変だ!」
パイ: 「え?何が大変なの?」
エティ: 「私の袋に入ってたあのたくさんの実!!…」
エティ: 「ちょっと床に置いたら.. 子どもポピーたちが全部食べちゃったんだよ!」
レオ: 「ぎゃっ〜!… どうする?
レオ: 「村まで距離が普通に遠い距離じゃないのに〜」
パイ: 「私にはちょうど三粒残ってる」
エリ: 「三粒じゃ無理…足りなさすぎる」
子どもたちが戻る方法を見つけられず深刻に悩んでいる中、最初に会ったポピーが子どもたちのそばへ近づいて来た。
だが今度は一匹だけじゃなく、もう一匹加えて二匹がレオのところへ近づいた。
その新しいポピーはこの穴に最初に到着して、レオによって一度空を飛んで気絶してしまったあの巨大なポピーだった。
今回もレオは名前を付けてやった。
「プップだ」 プップはポピーよりさらに巨大だ。
しばらくしてレオはパイを通してポピーとプップにクラクの村までの移動を頼む。
ポピーとプップは快く承諾し、子どもたちは一人二人とポピーとプップの背に乗った。
プップがより巨大なので、ポピーに三人、プップに五人が乗って移動することに決めた。
出発する前レオがパイに実を一粒くれと頼む。するとパイが尋ねた。
「どうして?あなたは走って来ようって? 」
「それじゃなくて一粒だけちょうだい、お願い」それでパイは実を一粒レオに渡した。
レオはパイに感謝を伝え、その実を大事にしてプップへ走って行く。そしてプップの口に一粒入れてやる。
レオは実の力で自分でも知らないうちに、プップをあまりにも強く殴ってしまったことがすごく申し訳なかった。
実を受け取って食べるプップをレオは撫でながら言う。
「本当にごめん、そしてお願い」
実を飲み込んだプップは突然全身に力が満ちる。
「クオ〜」
プップが咆哮する。プップはレオの襟をくわえて自分の背に一気に乗せてやった。
そしていよいよ出発する。残った実は二粒!
子どもたちはクラクの村までの3分の2くらいの距離でポピーとプップがとても疲れた時、
この二粒の実を使って目的地まで問題なく到着する計画だ。そしてそうなることを切に願う。
「出発〜!」
-5 D END
本作『MORITARIN』は現在、漫画版の制作も進行しております。
小説とはまた違った形で物語の世界を描いておりますので、
ご興味がありましたらぜひご覧ください。
▼漫画版はこちら
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今後とも『MORITARIN』をよろしくお願いいたします。




