MORITARIN 17
...
Episode -5 B
突然、村のいくつかの掘っ立て小屋のうち一つから、幼そうなクラクが慌てて走り出て叫んだ。
「長老様! お母さんが… お母さんが!〜」
夢中で駆けてくる幼いクラクの両目には、悲しみと絶望の気配が漂っている。
長老と複数のクラクが急いでその小屋へ駆け込み、その中に横たわる一人のクラクの女性の様子を見始めた。
呼吸がとても荒い。しかも意識を少しずつ失っていく。だんだん彼女の命の火が消えていくように見える。
幼いクラクが切実に言う。
「お願い…お願い、うちのお母さんを助けてください。」
言うと同時に泣き出す幼いクラクを、周りの隣人たちが抱きしめて一緒に悲しむ。
長老は首を横に振って言った「もうこれ以上、手の施しようがないようじゃ……。」
しばらくして小屋に着いたパイは、その絶望する群れの中でロギを見つけた。
そしてロギに静かに近づくパイ。
ロギは危ういクラクの女性の手を握り、ひどく苦しんでいる。
ロギの事情をよく知っているパイは、ロギが、病床に伏していらっしゃる母親を思い出して悲しんでいるのだと分かった。
ところがロギの様子がおかしい。
悲しんでいるというより、恐れているように見える。歯が互いにぶつかって音が出るほど震えていた。
パイ: ロギ…大丈夫?
ロギ: …..パイ….
パイは黙ってロギを抱きしめた。パイの胸に抱かれたロギが言った。「私、すごく悲しくなる…. すごく痛くなる….」
ロギの言葉に、パイは温かい眼差しで口を開いた。
「違うよ、痛くも悲しくもならないよ…. 私たちは祈るの….」
パイが目を閉じて手を組み、祈り始めた。
その姿を見てロギも、慌てて姿勢を正し両手を組んで一緒に祈り始める。
数人のクラクは、二人の少女の行動に少し不思議で、戸惑っていた。
そして、すべてのクラクが驚くことが起こる。
小屋の下から木の根のようなものが伸び出し、パイとロギを抱きしめるように周囲を包んでいる。
クラクの中の何人かが驚いて逃げ、音を立ててしまったせいでロギが目を開けた。驚いたロギはパイを呼んだ。
「パイ!」それでパイも目を開ける。
正体不明の植物が自分の周りを包んでいることに、少し驚く。
すぐに落ち着いたパイは、誰にも聞こえない植物との会話を始める。
「助けて。お願い….」パイの言葉に、クラクたちは互いを見て、誰に向かって話しているのか気になった。
パイと植物の会話が終わると、植物が再び動く。
二つの根のようなものが、両手を組むような形を見せる。まるで真似してみろと言うみたいだった。
パイは「こう?」と言いながら、すぐに自分の両手を組み、手のひらで何かを受け取りやすい形を作ってみた。
すると一本の根の先から芽が出て花を咲かせ、すぐ葉が落ちてその場所に小さな実がなった..
小さな実は素早く成長した。
いつの間にかブドウ粒の形に大きくなり、緑色の光でたゆたう液体を含んだ三つの巨大な実が姿を現した。
そしてその実は根から自ら落ち、パイの両手の上に収まった。
その実は弱いが、自ら光を放っている。
「巨大なブドウじゃん!」
いつの間にかそばへ来ていたエティが、実を一つパイの手から取り上げてあちこち眺める。
そしてすぐにヘタを取ると、あふれ出る液体を口へ持っていった。
味見するのかと思ったら、すぐにごくごく飲み込んでしまった。
驚いたパイは「エティ、そんなふうに何でもかんでも勝手に食べちゃダメ!」と叱った。だがエティは叫ぶ
エティ: 「うわ、めっちゃ美味しい! 冷たくて!」
パイ: 「エティ、大丈夫?」
エティ: 「うん、めっちゃ美味しいけど?」
エティ: 「…あ!? 」 [エティが何か驚いた表情をする]
ロギ: 「エティ、どうしたの?」
エティが突然叫びながら小屋の外へ飛び出す。驚いたロギは慌てて小屋を出てエティを追いかける。
エティは夢中で走り始め、ポピーを見つけるとポピーの背に這い上がり、さらに大きく咆哮する。
「ぐああっ!!〜」
ロギ: エティ、どうしたの? 痛いの? 食べたのが変だった? 何でもかんでも勝手に食べたらダメだって〜
エティ: 全身に…全身の隅々に…力がどんどん湧いてくる気がする!
レオ: どういうことだ?
「ぐああ!」
エティはもう一度叫ぶとポピーの背から飛び降り、また村をひたすら走り始めた。
「力が湧くって?」ロギは驚きつつ小屋へ駆け戻った。
パイの手にある実を手に取りヘタを取って、病床に横たわる女性の口へその果汁を少しずつ流し込み、飲み込みやすいよう手助けした。クラクの長老がロギに近づいて尋ねた。「勇者様、それはいったい何なのですか?」
驚いたロギは長老を見て「え? 勇者? 誰が?」後ろでパイがため息をつく。
その瞬間、驚くことに気を失っていたクラクの女性が目を開ける。そして彼女は静かに誰かを探す。
「モリング…モリング…」母の声を聞いたモリングは母のそばへ走ってきた。「お母さん、お母さん〜」と言いながら
モリングが抱きつくと、母は震える手でモリングを抱きしめる。だがまだ呼吸は良くなく、気力が衰えている。
それでロギは急いで残りの実のヘタを取ってモリングの母へ近づき、もう一度摂取できるよう手助けした。
しばらくしてモリングの母は健康が大きく回復し、自分で壁にもたれて座る。
「皆さん、ありがとうございます。もう痛くありません。」 「おかげで助かりました」
それでモリングは感謝の気持ちでロギに走り寄り、胸に飛び込む。ロギもモリングと一緒に喜び、涙を流す。
パイも本当に嬉しい。だから助けてくれた植物に感謝を伝えようとするが、おかしい。植物がどうしても何も答えない。
慌てて小屋を出たパイは、力なくしなだれた根をたどって彼を探し、歩みを進める。
その根は村の後ろ、森が鬱蒼とした場所にある最も巨大な木へ続いていると分かった。
パイはその木へ近づき、何度も彼を呼んでみるが、何の返事もない。
不思議なことが起きた。巨大な木は少しずつ枯れていき、バキッという音とともに上から下へ垂直に裂けた。
その姿を見ていたパイは、自分たちを助けてくれた木がゆっくり死んでいくのが分かった。
いつの間にかパイのそばへ友だちが近づき、尋ねた。「どうしたの、パイ?」パイは静かに答える。
「この木が私たちに、自分の命をくれたみたい…。」
子どもたちは、ありがたさと申し訳なさが入り混じった気持ちでささやいた。
「ありがとう…」
パイは木に近づき、手を伸ばして撫でながら感謝の挨拶を伝えた。
その瞬間、木に小さな花のつぼみができ、ひとつふたつと弾けて花が咲いた。
鮮やかな花びらと葉は自ら落ち、子どもたちの頭の上へひらひら降りてくる。
そして木は静かに眠った。
パイは流れる涙を両手で隠しながら、そのそばに立っていた。
子どもたちも木に手を置き、感謝の気持ちを伝える。
そして、名残を残しつつその場を離れようとするが、木の周りにたくさんの芽が出る。
驚いたパイが叫んだ「みんな、動かないで! 踏んじゃダメ!」
しばらくしてその芽は子どもたちの膝の高さまで伸びた。
そして太くなった茎には小さな実がなった。
この実は、さっきモリングの母を治した実と同じ形だが、大きさはまたずっと小さい。
突然パイが驚いて叫んだ。
「ほんと!?」
パイの行動に驚いた友だちが、どうしたのかと尋ねた。
パイ: ここにいるって…。
エリ: 何が?
パイ: 私、ここにいるって…
ロギ: え? 何て?
その時、気の利くエティが状況をまとめる。
「木が喋ってるんだね! 生きてるんだ!」
嬉しくなったエティは小さな実を取って口に入れてみた。
「ぐああああ〜」エティが咆哮する。
「なに!? どうしたの?」驚いたヨナが叫んだ。
またエティは夢中で叫びながら村を走り始めた。
ヨナ: なに、怖い!
イト: 放っとけ…. 疲れる….
その後、子どもたちは小さな実を取って怪我をしたクラクたちに渡し、
その実を食べたクラクたちは速い速度で回復していった。
子どもたちはこの実を「回復の実」と名付けてやった。
クラクたちは子どもたちに近づき、それぞれ笑顔で、涙で感謝の気持ちを伝える。
皆が喜ぶ中、モリングが近づいて言った。
「どうか勇者様、私たちを守ってください…。いつまたあの獣たちに襲われるか分からないじゃないですか。」
ダビと友だちは心配そうな表情で互いを見つめ合う。
それでレオが答える
「そうだ。僕たちが去ったら、いつでも危険にさらされる。」
その時、遠くから息を切らしながらエティが走って来て言った。
エティ: 問題を…. 解決…. してから行けばいい…. はぁはぁ〜
ヨナ: どうやって?
エティ: 方法を探さなきゃ。
ダビ: そうだ、いい考えだ。
ヨナ: どこがいい考えなの? 何の意見もないのに。
エリ: こういう時はイトに聞こう。
ダビ: そうだ、いい考えだ。
子どもたちはきょろきょろしながらイトを探し始めた。
すると遠くで一人、小さな実をじっと観察しているイトを見つけた。
「イト、そこで何してるの?」
イトは小さな実を目の前に持ってきてあれこれ見たあと、いきなり口の中へ放り込んだ。
しかしすぐにがっかりしたように眉間を寄せてぼやいた。
「ちぇっ、なんで俺には何の効果もないんだ?」
その様子を見ていたヨナが慎重に口を開いた。
「イト、私たちがここをそのまま去ってしまったら、残されたクラクたちはずっと苦しむことになるよ。私たちが助けなきゃ!」
「うーん……助ける方法があるかな?」ヨナが言い終えてイトを見る。
それに、取っておいた小さな実をもう一つ口へ放り込みながら、イトは言った。
イト: 方法は結果で、原因から探さないとな?
ヨナ: そうだ、原因を探さなきゃ!
ダビ: 原因はポピーたちじゃないの?
エリ: 違うよ、まずクラクたちに事の始まりを聞くのが先だ!
子どもたちはクラクの長老を探し、村に降りかかった試練がいつから始まったのか、
そしてその原因が何なのか、あれこれ問い詰め始めた。
クラクの長老はしばらく考えを整理してから答えた。
「ある日、空から星が降り注ぎ始めました。
その日以降、[ポピーを指さしながら]ああいう巨大な怪獣が現れ、あれらの暴れが始まったのです。」
「星が落ちたの?」子どもたちは驚いて互いを見る。
ヨナ: 星が落ちた場所で何が起きましたか?
長老: 私たちもそこで何があったのか調べようと、たくさん努力しました。
長老: しかし、時間が経つほど負傷者が増えるばかりでした。
長老: 詳しい位置も分かりません。近づく方法がなかったのです。
イト: ならば、特定の地域であの巨大獣たちの出没頻度が高まったりしましたか?
長老: はい、よく見つかる地域があります。
長老: そこでは獣たちはさらに凶暴で…どうしても手に負えませんでした。
パイ: その地域が獣たちの生息地なんだ!
レオ: ふむ….. 星が落ちた場所に獣の生息地とは変だね。
ヨナ: そう、変だ。星が降り注いだなら…生息していた獣でも皆逃げていなくなるのが普通なのに…
エティ: 私たちが行くべき場所は決まったみたいだね…
長老: それなら…ネブに、勇者様方へ大体の位置を案内するよう言っておきましょう。
ロギ: いいえ。私たちはポピーに乗ってすぐ行ってきます。ネブまで連れて行けません。
レオ: うーん…僕たち全員がポピーの背に乗るのも難しい。
ヨナ: 最大四人は乗れるよ。
ロギ: どうしよう…
パイ: なんで?
ロギ: 歩いて行きたくないんだけど…
パイ: う…すごく嫌…足が痛い
みんな悩み込んだ。移動手段がなかった。ここには小さな荷車すら見当たらない。
みんな深く悩む中、エティが言った。
「方法がある。ちょっと待ってて。」
エティは回復の実を一粒口へ放り込み、村のあちこちを見回して袋を一つ見つけると、しばらく姿を消した。
そしてエティは袋にその実をいっぱい詰め、素早く戻ってきた。
エティ: ポピーに乗って行く人は乗って行くので、残った人たちはこの実を食べながら走ればいい。
ロギ: え?…….
レオ: そうだ! ロギとパイ、イト、それからヨナはポピーに乗って移動しよう。残りは実を食べながら行ってみよう〜
パイ: え?…….
-5 B END
本作『MORITARIN』は現在、漫画版の制作も進行しております。
小説とはまた違った形で物語の世界を描いておりますので、
ご興味がありましたらぜひご覧ください。
▼漫画版はこちら
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今後とも『MORITARIN』をよろしくお願いいたします。




