MORITARIN 16
...
エティがアイデアを出す。
「パイお姉ちゃんを使おう!」
驚くパイ。「私を使うの?」
するとレオがすぐ理解し、パイに植物との会話を試してみろと勧め始めた。
レオ: パイ! 植物にちょっと頼んでくれ〜
パイ: うーん…なんて言えばいい?
レオ: 通れるように道を開けてって?
ダビ: それでいけるね〜
パイ: できるかな?
ロギが迷うパイの背中を、冗談みたいに押した。
仕方なく森へ近づいたパイが植物に囁くと、友だちは後ろで息をのむ。
パイがみんなに「こっち」と手招きした。
友だちは嬉しくなってパイへ駆け寄る。
それと同時に森の植物たちは、子どもたちが通りやすいように道を作ってくれた。
ほどなく子どもたちは、分からない目的地へ向かってゆっくり歩き出した。
新しくできた森の道には、その光景を不思議がる小さな獣たちが遠くからついてきて、
小鳥たちは飛んできて軽やかにさえずった。
森の音と香りに酔い、子どもたちは楽しく道を歩く。
ダビは腹もいっぱいで気分も上がり、群れを追い越して森を満喫していた。
その時、後ろで友だちに追いつこうとしていたヨナが、足を滑らせて転んでしまった。
エティとロギが驚いてヨナを呼び、駆け寄って起こす。
「ごめん。踏み外して転んじゃった。へへ…」ヨナは申し訳なかった。
ヨナが転んだと聞いて、慌てて振り返ったダビが叫ぶ。
「ヨナ、大丈夫?」
その時、森の茂みをかき分けて何かが慌てて走ってきて、ダビを強く突き飛ばした。
そして素早く子どもたちの群れへ走り込んだ。
それは正体の分からない、誰も見たことのない形の生き物だった。
子どもたちは驚いて悲鳴を上げるが、レオが仲間を守るために立ちはだかり、
突進してくるそれを簡単に制圧した。
ところがそれを見ていたダビに向かって、レオが驚いて叫ぶ。
「ダビ、危ない!」
「何が?」
ダビが言い終える前に、その背後から巨大な獣が現れた。
獣はそのままダビに突進し、ダビごと一瞬で森の奥へ消えた。
「ダメ!! ダビ!!」
子どもたちは恐怖で叫び、驚いたイトが必死にダビへ駆け出した。
だがダビをさらった巨大な獣が再び姿を現し、今度は残された子どもたちへ
恐ろしい勢いで突進し始めた。
イトは何とか止めようと獣に体当たりしたが、まるで効果がなかった。
あっさり弾き飛ばされたイトを置き去りにし、獣はレオと正面から向き合った。
レオは避けられなかった。背後で友だちが怯えてうずくまっていたからだ。
「きゃああ!!」
エティが悲鳴のように叫んだ。
その瞬間、レオは突っ込んでくる獣に対して低く構え、
ためらいなく獣の巨大な鼻へ拳を突き出した。
凄まじい衝突音とともに、あたり一面に大量の砂埃が舞い上がった。
同時に巨大な獣は、イトの頭上を横切って吹き飛び、
大木に激突してそのまま気絶してしまった。
レオはすぐにダビを探しに走り出そうとしたが、
突然、茂みの中からダビが「じゃーん」と現れた。
ダビはきょとんとした顔で友だちに叫ぶ。
「みんな、これ何が起きたの?」
心配していた友だちが一斉にダビへ駆け寄った。
「ダビ、大丈夫?」
ロギが焦って聞き、パイとエリがダビの体をあちこち確認した。
だがダビは服に少し土埃がついただけで、傷ひとつない。
「俺、全然平気!」
ダビはむしろクスクス笑って見せた。
「じゃあ怪物はどこ行った?」エティが巨大な獣を指さした。
するとダビは驚いて言った。
「それ何だよ?」
それにエティが答える。
「怪物だよ〜 レオお兄ちゃんがやっつけた〜」
ダビはまた聞いた。
「レオ、すごいな〜 でもそれじゃなくて、俺を突き飛ばした怪物は?」
ダビは自分を押して走り込んできた何かの行方を尋ねた。
「そうだ、ちょっと待て!」
レオの言葉と同時に、子どもたちは最初に慌てて走ってきた
正体不明の生き物を探して周囲を見回す。だがどこへ隠れたのか見つからない。
「隠れずに出てこい!」イトが厳かな声で言った。
するとパイがイトを見て尋ねる。「誰?」
その時だった。茂みの中から、黄色く輝く肌に紫の目をした、
頭にはイカの帽子を押しかぶったみたいな不思議な生き物が、
震えながら恐る恐る姿を現した。
「お前は誰だ? そしてなぜ俺たちを攻撃した?」イトが聞いた。
するとその生き物が答えた。
「どうかお助けください……。」
その時パイが叫んだ。
「ヨナ、何を追加したの!?」
ヨナは慌てて手を振った。
「違う! 何もしてない……! 私……本当に知らないの!」
すると突然、ダビが真面目な顔と口調で割り込んだ。
「イカの宇宙人だ! それに俺たちはイカ魔王を倒さなきゃいけない!」
それに不思議な生き物は悔しそうに反論した。
「違います。私は……魔王だなんて……」
だがダビはそれを無視してヨナに近づき、肩に手を置いた。
「さあ、今だ! 魔王を倒す装備はどこにある?」
ヨナがあまりに慌てて、悔しさを訴えようとしたその時、レオが口を開いた。
レオ: こんな臨場感ある冒険、初めてだ! しかも魔王だって!?
ロギ: ほんと! 展開が違うね〜 さすがヨナだ〜!
エティ: ふん…私もちょっと〜 面白くなってきた!
エリ: ひゃ〜 ここからが始まりってやつか!
パイは急に盛り上がったみんなの反応に、すごく驚いた顔をしている。
そして何かをじっと考える。
ヨナは悔しくて、みんなに急いで言いたいことがあった。
だがパイがヨナに近づき、言う機会を与えない。
「ヨナ〜!」
驚いたヨナが答えた。「う、うん?」
パイにはヨナに言いたいことがある。
「ヨナ、私…すごく意地張ってた。ごめん。」
「え? 何が?」ヨナはパイの予想外の行動に戸惑う。
また怒鳴られるんじゃないかと怖くて、杖を握る手に力が入った。
「私、私だけのための物語を作ろうとしてたのかも〜」
うつむいていたパイが、ゆっくり顔を上げる。
「みんなが楽しくて、一緒にいられる話でなきゃいけなかったよね…申し訳ない」
その後もパイの褒め言葉と謝罪は続き、
それを見ていたヨナは、この全部に疲れ切ってしまった。
……もう、諦めることにした。
「なるようになれ。私ももう知らない。」
-4 D END
Episode -5 A
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
いつの間にかイトは、気絶している巨大な獣のところへ近づき、あれこれと調べている。
そして、イカの宇宙人かもしれない生命体のもとへ近づいた。
「ここはどこだ? それと、お前は誰だ?」
「ぼ…ぼくは…」
イカの宇宙人とイトがしばらく会話している間、浮かれている子どもたちは、それぞれの願いがこもったあれこれの会話を続けている。
子どもたちが楽しくしゃべっている最中も、イトは彼にあれこれ尋ねる。
「そうか? じゃあ『ネブ』、お前が道案内しろ。」イトがネブに道案内を指示する。
気の利くエティが駆け寄ってきた。
「なに、なに! ネブってなに?」
イトはネブを見ながら、エティの質問に答えてやった。
「こいつの名前が『ネブ』なんだとさ。自分が住んでる村へ案内してくれるって〜」
エティ: じゃあ魔王城に案内してくれるの?
イト: いや、ネブが住んでる村に案内するって言ってた。
ネブ: はい! ついて来てくだされば誤解が解けますよ。
それを聞いてエティは急いで子どもたちの群れの中へ走り、さっきの状況を伝えた。
するとダビは深く悩み込んだ。
ダビ: 何の装備もなしで魔王軍の基地に行くのはちょっと…
ロギ: 村なのか魔王なのかは、まだ分からないよね?
レオ: 罠だったらどうする?
エティ: 私たちにはレオお兄ちゃんがいる!
レオ: えっ?
子どもたちは他に方法がないと思い、みんなネブについて行くことに決めた。
出発しようとした時、突然エリが悲鳴を上げた。
「ぎゃっ、レオ!」
レオが驚いて振り返ると、さっき気絶していた巨大な獣が、ゆっくり近づいてきていた。
子どもたちも驚いて悲鳴を上げるが、巨大な獣はレオのそばまで来て鼻を「くんくん」させると、頭を下げた。
そして大人しく立っている。
異変を感じたレオは、握りしめた拳をおろし、手のひらを獣の鼻先へ持っていった。
するとその獣は、レオにもっと近づいてきた。
レオは獣の顔も触ってみたり、体もなでなでしてみたりする。
それでも獣は大人しい。
それを見ていたロギが聞いた。
「レオ、危なくない?」
レオが答えた。「ううん、すごく大人しいよ?」
レオの言葉に、エティはさっき食べきれずに持ってきていた果物をいくつか取り出し、獣の鼻先へ置いた。
すると獣は匂いを確かめて、果物を食べ始めた。
それで顔色が明るくなったエティも、すぐに獣をなでなでしてやった。
子どもたちは怖がりながらも少しずつ近づいて獣に触れてみて、みんな「どうして荒々しかった獣が大人しくなったのか」気になった。
それを見ていたイトが言った。
「レオを隊長だと思ってるんだろうな?」
するとレオは「でもこの子、ブタかな、カバかな?」と悩む。
「名前をつけてやろうかな。うーん…」と、レオはしばらく考えている。
「ポピーがいい!」
レオの決定に、子どもたちは口元に笑みを浮かべ、我先にとポピーを呼び始めた。
だが、なぜかパイだけは怖がって、簡単には近づけずにいた。
いつの間にかネブも不思議そうに巨大な獣へ近づき、恐る恐る触っている。
そうしていたネブが、突然振り返って尋ねた。
「どうやってなさったんですか? そんな…。あれほど凶暴だった獣が…」
驚愕を隠せないネブを、不思議そうに見つめる子どもたち。
イト: ネブ、お前はこの獣に追われてたんだろ?
ネブ: はい。この獣たちのせいで、僕たちクラクが大きな被害を受けているんです。
パイ: クラク?
ネブ: はい、僕たちの部族がクラクです。
そのあと、子どもたちはネブの案内で歩き出している。
ネブが先頭に立ち、子どもたちの後ろにはポピーも大人しくついて来ていた。
鬱蒼とした茂みが自ら道を形作る様子に感嘆するネブが尋ねた。
「皆さんはどなたなんですか? 本当に〜 ものすごい力をお持ちですね!」
それにダビが、あまりに真剣な表情で言った。
ダビ: 俺たちは宇宙勇者だ!
ネブ: おお〜 宇宙勇者様方だったんですね!
パイ: ダビ! あんた死にたいの!? なんで宇宙勇者なの!
パイ: …これは私の物語なのに!
ロギ: ダビ、ずっとそうしてると、これから宇宙勇者の物語のたびに魔法を使うことになるかも…
ダビ: ひぃっ〜 [ダビは両手で口を押さえる]
しばらく行くと、足の不自由なヨナが群れからだんだん遅れ始めた。
いつの間にかヨナはポピーよりも後ろを歩き始め、足に負担が来ているのか、とても疲れて見える。
たまたまポピーが後ろを振り返り、そんなヨナと目が合う。
そしてしばらくして〜
パイ: ネブ、あとどれくらい?
ネブ: もう半分くらい来ました。
エティ: ぎゃぁ…
レオ: うーん、ちょっと遠いな…
ロギ: ネブ〜 お腹すいたりしてない?
ネブ: 僕は大丈夫です! 心配してくれてありがとうございます。
イト: 道が整ってないから疲労度が上がるな。
イトの「疲労」という言葉に、ロギははっとした顔で叫んだ。
「そうだ、ヨナ! 大丈夫?」
ロギはきょろきょろするが、ヨナが見つからない。
「ヨナがいない!」
ロギが叫ぶと、
「ここにいるよ〜」
ヨナの声が聞こえた。
ロギは声のする方向へ顔を上げた。
そこにはポピーの背に乗ったヨナがいた。
ロギ: ヨナ、どうやってそこに乗ったの!?
ヨナ: うん〜 ポピーが背中のほうで私をくわえて投げてくれたんだよ〜
エティ: わぁ! 私も、私も!
エティがポピーの前へ走って懇願する表情をすると、
ポピーはエティの首元の服をくわえ、自分の背へ正確に投げ上げるように乗せた。
背には獣のたてがみが豊かで、つかみやすく滑りもしない。
本当に驚くほど快適な乗り心地をもたらす。
だがロギは自分で歩きたくて断り、パイは獣が怖くて断った。
この時、ためらうイトを見たレオが、イトを持ち上げてポピーの背へ軽く投げてやった。
イト: うわっ〜 レオ!
イト: ありがとう…
レオ: うん〜
しばらくすると、遠くに森の中の道が見え始めた。
するとネブが言った。
「皆さん、もう村へ行く道が見えました。まもなく目的地です。」
嬉しくなったネブは、村へ向かって弾むように走る。
村にいたクラクたちは、遠くから走って来るネブを見つけ、それぞれしていたことを止める。
そしてネブを迎えるため、村の門の入口へ一人二人と集まり始めた。
しかし…ネブの後ろに見える巨大なポピーを見つけると、仰天して悲鳴を上げ、逃げて隠れるのに必死だ。
「皆さん、違います、違います! 心配しないでください〜 安全です」
ネブがどれだけ叫んでも、クラクたちは隠れられる場所に皆隠れてしまい、全然出てこない。
ポピーと子どもたちが村の中へ入ってからようやく、ポピーが大人しいのを見て、隠れていたクラクたちが一人また一人と姿を現した。
怖がるクラクの中には、驚くことに好奇心でその恐怖を押し切り、ポピーに近づいて手を伸ばすクラクもいた。
大人しいポピーだなんて…クラクたちは驚いた。
どうしてあれほど恐ろしかった存在が、こんなに大人しくなったのだろう?
ざわめくクラクたちを見つめるパイの目には、負傷者ばかりが映る。
「どうして怪我人がこんなに多いの!」
足に包帯を巻いた人、腕に包帯を巻いた人、頭に、腰に、患者だらけだ。
「この獣たちにやられたんです!」
村のクラクたちが叫んだ。
彼らは憎しみに満ちた目で獣を見た。
同時に獣の背に乗ったヨナとエティ、イトがクラクたちに手を振った。
「なんてことだ!」
クラクたちの目には、子どもたちがあまりにも偉大に見える。
村で最も年長の方が進み出て、子どもたちに尋ねた。
「だ…あなた方はいったいどなたなのですか?」
するとネブは
「長老様! この方々は…宇宙勇者様方です!」
と、誇らしげにその名を叫んだ。
ネブの悲壮な目は希望で満ちていた。
ネブのこの叫びは、絶望の中にいた村のクラクたちを感激させ、歓声を上げさせた。
宇宙勇者ダビはパイに襟首を掴まれ、悲鳴を上げていた。
-5 A END
本作『MORITARIN』は現在、漫画版の制作も進行しております。
小説とはまた違った形で物語の世界を描いておりますので、
ご興味がありましたらぜひご覧ください。
▼漫画版はこちら
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今後とも『MORITARIN』をよろしくお願いいたします。




