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MORITARIN 13

...

Episode -4 B

♢ ♢ ♢ ♢ ♢


互いを抱きしめたダビとヨナは、イトを見つめながら恐怖で震えていた。


しかしイトは子どもたちを交互に見やったあと、用意していた通り落ち着いて言葉を切り出した。


イト:「宇宙の勇者たちよ! まもなく魔王軍が押し寄せてくる。


お前たちが奴らを食い止めねばならないのではないか?」


ダビ:「助けてください……。」


ヨナ:「ごめんなさい……。」


イト:(声を荒げた)「助けてだと、誰に! それにお前は何を悪かったっていうんだ!」


ヨナ&ダビ:「きゃあああ〜〜!@」


思わず声を荒げてしまったイト! その瞬間、ポルーンの助言がよぎる。


(『子どもたちには優しく〜 いいか? まだ小さい子なんだから、とにかく親切で優しく〜 うん? 頼むよ〜』)


イト:「こほん、すまないな。つい声が大きくなってしまった。


だが魔王軍と戦うには訓練が必要だ。立ちなさい!」


だがダビとヨナは恐怖に囚われ、イトの言葉などまったく耳に入らなかった。


もちろん、あれこれ言って子どもたちを落ち着かせようとするイトの努力も何の役にも立たなかった。


時間が経つほど思い通りになることが一つもなく、イトはひどく慌て、


子どもを相手にしたことのない彼はしばし悩んだ末、ついに口を開いた。


イト:「あ、えっと……勇者たちよ! ちょっと後ろを振り返ってみようか?


―戦争で使うすごい武器を用意してあるんだ!」


ダビ:「助けて……。」


ヨナ:「私も……。」


イト:「はあ……お願いだから、後ろを一回だけ見てくれ。ね?」


イトが懇願すると、ようやくダビがゆっくり後ろを振り返った。


そこにはロランドゴリラほどもあるスーツ型ロボットが、威風堂々と立ち並んでいた。


ダビとヨナは口を開けたまま、ロボットの圧倒的な姿に震えずにはいられなかった。


ダビ:「こ……こ……うわ!」


ヨナ:「わあ、本物のロボットだ!」


イトはこの機会を逃せなかった。


子どもたちが気を取られているうちに、魂を抜くほど惹きつけなければならない。


イト:「勇者たちよ! さあ、乗ってみるか? 自分で操縦してみるんだ!」


ダビ:「うわっ!」


ヨナ:「はい! やってみたいです!」


いつの間にか恐怖は消え、残ったのは好奇心だけだった。


夢の中で夢だと気づいても、結局その夢に溺れて抜け出せないように、


子どもたちは喜び、興奮していった。


顔いっぱいに笑みを浮かべ、嬉しくてどうしていいか分からない。


ダビ:「博士! 乗せてください!」


ヨナ:「私も!」


イト:「よし! 勇者たちよ、ロボットの前に立ち、自分の名前を叫んでみよう!」


ダビとヨナは気に入ったロボットの前に立った。興奮しきったヨナが


ダビを見てうなずくと、期待に浸っていたダビも


親指を立てて応えた。


ダビ:(にやっと笑って)「どうする?」


ヨナ:「やってみよう!」


ダビとヨナが互いの名前を叫んだ。


すると巨大ロボットが二人を慎重に持ち上げ、胸の内側の操縦席へと導いた。


しばらくして搭乗が完了すると扉が閉まり、一瞬暗くなる。


やがて内部照明が明るく光ると、子どもたちは次々に歓声を上げた。


ダビ:「やばい! 本当にロボットだ! うわ、これ全部なに!?」


ヨナ:「ダビ、ほんとやばい! 匂いもすっごくいい!」


イトは訓練を急ぐため、説明書を見ながら子どもたちに叫んだ。


イト:「勇者たちよ、最初の訓練だ! コントローラーを握って足場に足を


―固定したら、さあまず歩いてみよう。その次は……。」


だが興奮した子どもたちには、イトの言葉は届かなかった。


かっとなりかけたイトは、再びポルーンの頼みを思い出し、どうにか怒りを抑えた。


紆余曲折の末、子どもたちをなだめ、基礎操作を教えることに成功した。


イト:「さあ、今度は自分で練習してみなさい。」(疲れた様子だ)


ヨナ:「はい! 博士!」


ダビ:「うーん……。」(思うようにできず悔しそう)


ヨナは不器用ながらもロボットを動かし始めたが、ダビはさっぱり


進展がなかった。その背中を見ながらイトは心の中で思った。


『あの子が、私にとって最大の試練になるのだろうか?』


♢ ♢ ♢ ♢ ♢


ヨナは遅いながらもロボット操縦に少しずつ進歩を見せた。


幸いヨナの助言のおかげで、ダビの腕も目に見えて上達した。


続く手順として、イトは武器の使い方を丁寧に説明し始めた。


ヨナは指示通りロボットの太もものハッチを開け、短剣の柄を握った。


そして慌てふためくダビのところへ行き、落ち着いて武器の取り出し方を教えた。


ダビもヨナにならい、慎重に武器を取り出そうとしていた。


そのとき、イトはまたポルーンの助言を思い出した。


(『イト、子どもは褒めれば褒めるほど上手くなるし、もっと上手くなるんだ。分かったな? たくさん褒めてあげて。』)


イトはうなずいた。そして子どもたちへの称賛を惜しまなかった。


イト:「よし、勇者たちよ! さすが宇宙の勇者だな。さあ、では……。」


褒めていたまさにその瞬間、ダビのロボットの短剣がヨナの正面へ、恐ろしい速度で飛んできた。


ヨナはぎょっとしたが、驚くべき機転で飛来する剣を避けた。


しかし短剣は止まらず、後方の博士専用室へ向かった。


鋼の刃は、イトが立っていた前面ガラスを半分ほど貫いてようやく止まった。


ダビ:「あっ、博士! すみません! 間違えました!」


イト:「……。」


イトは目の前まで押し寄せた巨大な刃を、指先でつんと押してみた。


ひりつくほど鋭い感触に怒りがこみ上げたが、その瞬間、愛する


イナの顔がよぎった。イトはどうにか怒りを抑え、つぶやいた。


「イナ、私はうまくやれるだろうか? 巨大な試練がまた始まった。」


イトは決断しなければならなかった。


このまま練習だけに固執すれば、何日も時間を無駄にするか分からなかった。


特別に急いでいるわけではないが、だからといってのんびりしてもいられない。


彼は子どもたちを、いきなり実戦に投入することを決めた。


イト:「さあ、勇者たちよ! 練習は十分だ。宇宙魔王の手下どもが


ほぼ到着した。直ちに出撃の準備をせよ!」


ヨナ:「もうですか? 今はちょっと難しくないですか、博士?」


ダビ:「ええっ、このまま出てもいいの?」


ヨナ:「あんたは絶対ダメでしょ〜」


ダビ:「そうだよ…… えっ!」


ダビ:(叫ぶ)「なんだって!?」


ダビがむっとして言い返そうとした刹那、イトが射出ボタンを押してしまった。


慌てて叫んだダビの一言は、静かに黙殺された。


ダビ:「待って!」


その叫びを背に、ロボットは即座に出撃形態へ変形し、基地の外へ鋭く飛び立った。


基地の外は驚くべきことに広大な宇宙空間だった。数多の魔王軍が二人へ押し寄せていた。


ダビとヨナは恐怖で震えたが、ヨナはゆっくりロボットの背から巨大な銃を取り出した。


そして宇宙怪物に向け、恐る恐る引き金を引いた。


偶然放った最初の一発が、怪物の翼を正確に貫いた。


ヨナが怪物を一体倒すと、ダビの目にはヨナの姿がこれ以上ないほど誇らしく映った。


ダビ:「ヨナ、すごい! いったいどうやったの?」


ヨナ:「うわっ!」


ヨナ:「うわあああ〜っ!」(突然叫び始める)


ダビ:「え? どうしたのヨナ〜」


初戦の幕開けを飾ったヨナは、パニックに陥った。


恐怖と混乱の中でもがくヨナを、ダビが長いことなだめ、ようやく落ち着かせることができた。


しかし、次第に近づいてくる宇宙怪物の巨大さと恐ろしい外見に圧倒されてしまい…


ついに二人は悲鳴を上げ、あっちこっちへ向けて引き金をめちゃくちゃに引いた。


しばらくして、宇宙勇者の初出撃はそうして終わった。


ヨナは50点、ダビは7点を獲得した。最高点は1000点満点だ。


「任務失敗」。二人は最初の失敗を抱えて戻ってきた。


イトはヨナとダビに「この程度でも実力はかなりある」と励まし、褒めることを惜しまなかった。


子どもたちは、よくやったという言葉にしょんぼりしていたが、また元気を取り戻す。沈んだ顔に笑みが戻った。


しかしイトの表情はあまりにも暗い。彼に残された希望は褒め言葉だけだ… 褒めるのをやめられない


「明日から少しずつ訓練を積めば、短期間でとんでもない実力向上が期待できる、宇宙勇者! よくやった。」


ダビとヨナは、続くイトの応援と励ましのおかげで大きな力を得た。


その後も続く訓練によって、子どもたちはそれなりに熟練した操縦技術を身につけた。


だが毎回、訓練を締めくくれるほどの点数を獲得できたわけではなかった。


イトは毎日マニュアルを噛みちぎった。方法を見つけねばならない。深い悩みの沼に落ちた。


ヨナの点数は450点台、ダビの点数は300点台で、ずっと停滞していた。


イトは褒める効果以外の方法を見つけられず、今日もまた褒めて締めようとしたその時、


悩んでいたヨナが意見を出した。


ヨナ:「エリ!…そう、エリだ!」


ダビ:「エリがどうして?」


イト:「エリとは何だ?」


ヨナ:「エリは物じゃなくて、私たちの友だちです、博士!」


ダビ:「そうだ、エリは機械を扱うのが上手い!」


ヨナ:「それにエリはゲームがものすごく上手い。」


ダビ:「そうだそうだ!」


イト:「………………ゲーム?」


翌日になり、ダビとヨナはエリを連れて現れた。


そして宇宙勇者は再び始まる。


エリは感嘆を抑えきれず、何度も歓声を上げた。


「うわーーーー ロボット〜!」


浮かれたエリは友だちと一緒に、初ロボット試乗を待つ。


しばらくしてエリは自分の名前を大声で叫び、ロボットに乗り込んだ。


エリ:「うわ〜! いい匂いがするね〜」


ヨナ:「でしょ! 匂いがいい〜」


エリは何度か操作してみると、短時間で驚くべき操縦の腕を見せた。


まるでバランス感覚が身体に染みついているかのように、ロボットを完璧に扱った。


指先に小さな物を乗せても落とさなかったし、


自分の腕や脚を動かすように自然にロボットを操った。


その天賦の才を見たダビとヨナは、密かに羨ましがりながらエリを見つめる。


やがてダビとヨナ、エリは互いに似たレベルの操縦技術を身につけ、皆で出撃を待った。


ダビとヨナは、エリがそばにいるというだけで力が湧き、ずっと心強くなった。


エリ:「あ、めっちゃ震える! これ全部なに、みんな! 私すごく緊張する!」


ダビ:「心配するな! 俺が助ける!」


ヨナ:「私だけ信じて。私が全部片づける!」


イトの出撃命令が下った。宇宙空間へ移動中のエリは感激する。


『私が…私が! 宇宙空間にいるなんて!』エリは全身に震えが走るようだった。


操縦桿を握る手に、ぐっと力が入る。


ほどなくして目の前に、無数の魔王軍が押し寄せ始めた。


想像していたより巨大な宇宙怪物を見たエリは、少し怖くなってきた。


「うわ〜 本物の怪物だね? なんであんなにデカいの〜」


その時、ダビが先に敵陣へ突っ込んだ。


続いてヨナもダビを追い、速度を上げて怪物を処理し始めた。


友だちの活躍に勇気を得たエリは、両手を組んで顎の下に寄せ、目を閉じてしばし祈る時間を持つ。


目を開けるエリ…


緊張を解くため大きく深呼吸し、ゆっくり操縦桿を握る。


そしてエリもダビとヨナへ向かってゆっくり移動し、魔王軍の処理を始めた。


順調に進んでいた戦況の中で、エリが突然速度を引き上げる。


使用していた遠距離武器をしまい、両手に剣を持ったエリが敵陣へ突っ込んだ。


押し寄せる魔王軍を容赦なく倒していくのを、ヨナとダビが呆然と見ている。


それを見ていたイトは、食べていたアイスクリームを投げ捨て、緊張した目つきでその姿を見つめた。


エリがさらに速度を上げると、見ているだけで止まっていたダビとヨナもつられて速度を上げ始めた。


イトはその状況を真剣に観察し、エリの成長を学習する二人を見つめながら〜


ついに何か答えを見つけたように微笑んだ。


時間が経ち、任務を完了した子どもたちが大はしゃぎで戻ってくる。


皆、顔が赤く、思い切り運動してきた子どもたちの様子だった。


ヨナ:「うわ、汗かいた!」


ダビ:「ほんと、エリについて行ったら汗かくな」


エリ:「めっちゃ楽しい〜 もう一回やれば慣れそう!」


「うわ!」


自信満々なエリの反応に、ダビとヨナはエリと一緒に来てよかったと思った。


にこにこ笑う子どもたちのもとへ、イトが驚いて駆け寄ってきた。


子どもたちの向上した結果をすぐ伝えたかった。それが新たな動機になると信じていた。


「ヨナ610点、ダビ500点、エリ830点!」


驚くほど伸びたヨナとダビの成績に、イトは興奮して子どもたちを見つめた。


だがエリはもっと上がれるという悔しさを見せる一方で、ヨナとダビは何だか笑みを失いかけていた。


イトはもう少し大きな声で喜びながら言った。


「宇宙勇者たちよ、どうした? 喜ばなきゃ! すごい進歩だ!」


この時イトは、子どもたちの表情から達成の喜びではなく、妙な虚しさを感じ取った。


当時のイトは、その理由が分からなかった。


意味のない点数競争が子どもたちに喜びを与えないという事実を、イトは後になって気づいた。


その後、両手に斧を持って点数算定機を壊そうとするイト。


それを偶然目撃した子どもたちがイトを止め、ようやくコードを抜くだけで収めることができた。


その日以降〜 エリが高い実力を見せるほど、ダビとヨナもつられてエリを学習し、向上した実力を見せた。


もう個人を点数で分けることはない。ただ任務完了を一緒に喜び、互いを思うだけだ。


無骨な訓練ではなく、子どもたちの心を見つめて抱きしめ、一人一人が幸せな記憶を抱えて帰れるよう


真心を込めなければならないことを、少しずつ悟っていった。


---


子どもたちの行動を点数で表示する機械を持ち込んだのは、黄金のフクロウ、ポルーンだった。


これは王の命令に含まれていない。


子どもたちと関わったことのないポルーンが、ただより良い結果だけのために、きわめて個人的判断で導入したのだ。


そのせいで訓練過程の報告を受けていた王は激怒し、ポルーンを別途呼び出した。


厳しく叱責した。


その日、叱られたポルーンはその場で涙をぽろぽろ流し、やがて桶で汲まねばならないほど泣き崩れた。


「うええ〜 うええええ〜」


-4 B END

本作『MORITARIN』は現在、漫画版の制作も進行しております。


小説とはまた違った形で物語の世界を描いておりますので、

ご興味がありましたらぜひご覧ください。


▼漫画版はこちら

https://www.amazon.co.jp/dp/B0G6MJ6RT9

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