↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/37

正しく愛してくれる人①(Side.クレイグ)

読んでいただきありがとうございます。

※今話はクレイグ視点です。


よろしくお願いいたします。

(ここは……)


目覚めると、草と土の匂いが鼻を掠める。

そして、ここが学園の裏庭で、自分が地べたに寝そべっているのだと気がついた。


(どうして俺はこんな場所(ところ)で……?)


混乱しながらも身体を起こすと、次第に頭の中がクリアになっていく。


(たしか、リザと話をして……そうだ! ルシアン!)


しかし、周囲を見渡すも誰の姿も見当たらない。

どうやら何らかの方法で俺は眠らされ、その隙にリザとルシアンは裏庭から立ち去ったということ。


「くそっ!」


どうしてこんなことになってしまったのだろう。

リザは俺の婚約者で、卒業と同時に彼女と婚姻を結ぶはずだったのに……。





俺とリザの婚約が結ばれたのは約四年前で、それには俺の三歳上の兄ジェフリーが関わっていた。


ジェフリーは生まれつき病弱で、高熱を出して生死の境を彷徨(さまよ)ったこともあったという。

対する俺は健康そのもので、そのせいか父も母も事あるごとに兄ばかりを優先し、兄ばかりを(あわ)れんだ。


例えば、俺が剣術の教師に褒められたことを両親に話しても、病弱なせいでまともに剣も握れないジェフリーが可哀想だという話にすり替わってしまう。

買ったばかりの馬を見に来ないかと友人に誘われた時だって、両親はジェフリーに友人がいないことを嘆いていた。


いつもいつもジェフリーの不憫(ふびん)な境遇と比べられ、そのたびに俺は咎められているような心地になる。


だからだろうか。

俺にとって兄とは両親に特別大切にされている存在で、幼心ながらに愛情の差を感じていた。

それでも『ジェフリーは病気なのだから』と両親から言い聞かされていたこともあり、仕方がないと不満を飲み込むしかなかった。


そんな兄も成長するにつれて熱を出す回数は減っていき、十二歳になる頃には医師からも病はほぼ完治したと告げられる。


両親はとても喜んだ。

これからは健康な伯爵令息として皆と同じ道を歩んでいけるのだと信じていたし、俺も安心したことを覚えている。


そして、十三歳になった兄は王立ザーライド学園の中等部へ通うことになったのだ。


しかし、兄が中等部に通い出すと、熱は出さないものの体調不良を訴えることが増えていく。

頭が痛い。体が重い。吐き気がする。

医師に診てもらうも原因となる病は見つからず、数日の安静という名の様子見を指示されるだけ。


問題なのは、それが決まって兄の苦手な科目の実技演習だったり試験の日だったりすること。


自分に都合の悪い時だけ体調を崩すなんて、さすがに仮病なのだろうと察しがつく。

まあ、それだけならば、成績に響くのも周囲から(あなど)られるのも兄自身が招いた兄自身の問題でしかなかったのだが……。

タチの悪いことに、ジェフリーは俺にとって大切な日を狙って体調を崩すようになったのだ。


両親は相変わらず兄の言葉を鵜呑みにし、ジェフリーの体調の変化に一喜一憂している。


そんな両親の目を覚まさせようと、泣いて訴えたこともあった。

だけど、俺の涙も言葉も、ジェフリーの(せき)一つにすら敵わない。


結局、俺の誕生日パーティーは兄の体調不良で取りやめになるのが恒例となった。

俺が出場する剣術大会の決勝戦の日も、両親は頭痛を訴える兄の側に居ることを選び、両親が座るはずだった応援席を俺は虚しい気持ちで見つめる。


両親には兄しか見えていないのだと、俺よりも兄が大切なのだと思い知らされる日々。


だが、仮病を繰り返す兄に大きな問題が立ちはだかる。

それは、年頃となったジェフリーに婚約者が見つからないことだった。


(まあ、そうなるだろうな)


社交界でも病弱な息子(ジェフリー)を支える両親の話は有名で、兄自身も都合の悪いものは体調不良を理由に逃げていた。

そんなことを続けていれば、兄はいまだに健康に問題を抱えているのだと第三者の目に映るだろう。


簡単に言うと、ジェフリーは子を成すことが出来るのかと疑われていたのだ。


現在、長男のジェフリーがサーヴィス伯爵家の後継者である。

しかし、子を成せずに病弱な兄が早世してしまえば、サーヴィス伯爵家の後継者は俺になり、ジェフリーの伴侶となった令嬢はサーヴィス伯爵家での立場を失ってしまう。

そもそも、ジェフリーに後継が務まるのかという声もある。


その結果、兄と年齢も家格も見合う令嬢との婚約が整わないという事態になってしまった。


両親は下位貴族への婚約の打診をジェフリーに提案したようだが、それはプライドが許さないのか、兄は首を縦に振らなかったという。


そのまま数年が経ち、王立ザーライド学園の中等部へ進学した俺にいくつもの縁談話が持ち上がる。

俺が先に婚約することをジェフリーは嫌がったようだが、さすがの両親も俺までもが婚約できないという状況は避けるべきだと判断した。


──そして、俺の婚約者として選ばれたのがリザだった。


俺の婚約者が我が家と同格だとジェフリーの機嫌を損ねることになる。

さらに言えば、今後ジェフリーの婚約を整える際、相手がたとえ男爵令嬢であっても庶子のリザよりは上だとジェフリーを説得することができるし、周囲には爵位よりも全属性の魔力持ちを選んだと説明することができる。


つまり、リザは俺の婚約者としてちょうどよかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。