魔法
(……使えるのか?)
視界に浮かぶ“生成AI質問”。
心臓がうるさいほど鳴っている。
異世界。魔法。ステータス。
理解が追いつかない。
でも――
(今、一番必要なのは)
生き残ることだ。
ゆっくりと息を吸う。
焦るな。
曖昧に聞くな。
何を知りたい?
この世界で、どうすれば生きていけるか。
それだけだ。
意識を集中させる。
そして、はっきりと“問い”を投げた。
「この世界で俺が生き延びるために、最初に取るべき最適な行動は?」
一瞬。
視界が、暗転する。
マリーが何か言っている気がするが、聞こえない。
意識が、そちらに引き込まれる。
数秒の沈黙。
やがて、ウィンドウに文字が浮かび上がる。
【回答】
・現在地の安全性を確認せよ
・保護者(この場合、マリーおよびガルド)との信頼関係を構築せよ
・食料・住居など最低限の生活基盤を確保せよ
・魔法および戦闘手段の基礎知識を収集せよ
・能力(生成AI質問)の存在は秘匿せよ
簡潔で、無駄がない。
だが――
「……現実的すぎるだろ」
思わず呟く。
もっとこう、“魔王を倒せ”とか、派手なものを想像していた。
だが返ってきたのは、地に足のついた行動指針。
まるで、サバイバルマニュアルだ。
(でも……)
一つ一つが、確かに必要なことだと分かる。
「ねえ、大丈夫?」
マリーの声で、意識が戻る。
気づけば、彼女がすぐ目の前にいた。
「さっきから黙り込んで……具合、悪い?」
少し心配そうな顔。
(……保護者との信頼関係を構築せよ)
さっきの回答が、頭に浮かぶ。
(この人は、味方にするべきだ)
ゆっくりと首を振る。
「……大丈夫です。ちょっと、考え事を」
「そう……ならいいけど」
マリーは少しだけ安心したように息を吐く。
その仕草を見て、確信する。
(敵じゃない)
少なくとも、今は。
「……あの」
声をかける。
マリーがこちらを見る。
「助けてくれて、ありがとうございます」
はっきりと、言葉にする。
マリーは一瞬きょとんとしてから、少しだけ微笑んだ。
「別に、大したことじゃないわ。放っておけなかっただけ」
その表情に、わずかな温かさを感じる。
(……いける)
小さく、心の中で頷く。
視界の端に浮かぶ、回答。
・信頼関係を構築せよ
一歩目は、間違っていない。
「……あの、もう一つ聞いてもいいですか」
今度は、マリー本人に向けて。
“現実のAI”じゃなく、“この世界の人間”に。
マリーは軽く頷く。
「ええ、いいわよ」
その返事を聞きながら、思う。
(聞く相手は、一つじゃない)
AIにも、人にも。
両方に聞いて、組み合わせる。
それが――
(俺のやり方だ)
「……魔法って、どうやったら使えるんですか?」




