書籍化御礼且記念番外編 そのうちにね、
※拙作「ふきげんなご主人様」を書籍化して頂きましたので、そのお礼と記念に。
(ムーンライトノベルズ様で連載した18禁ですので本編及び書籍閲覧の際にはご注意ください)
本編完結後/子供視点(子供的雰囲気でひらがな多めです)+夫婦のおまけと安定のオチ
じいちゃんから終わりの合図がされると、みんなでいっしょに大きく息を吐く。
じいちゃんはじいちゃんの父さんなのにまだまだ元気だ、いつまで生きるのと聞いたら思い切りゲンコツをもらったこともある。
父さんはあれはバケモノだから多分300年くらい生きるって言ってた。
それをどこからか聞いたじいちゃんに父さんもなぐられてた、あれはいたそうだった。
友だちもみんなかえって行って家の方に行くと母さんが出てきて着がえとタオルと水をくれる。
着がえを持って水をのみながらおフロに行って、シャワーをあびてから着がえた。
戻ってリビングに行くと母さんがおやつを用意して待っていてくれる。
友だちがみんないいなあって言うくらい、母さんはごはんを作るのが上手い。
でも量が多い。
父さんはみんな食べちゃうから、すごいんだよ。
「髪ちゃんと拭かないと駄目だよ?風邪菌が髪の毛穴から一つずつ入って脳細胞を破壊するよ?」
そしてときどきわけのわからないことを言う、おまけになんかコワイ。
でもやっぱり友だちみんながいいなあって言うくらい、「若くて」「きれい」らしいから、まあいいと思う。
「今日はねえ、天地祖父ちゃんも笹原家の皆も来るからね。風邪引いてる暇なんかないんだから」
「うん、天地じいちゃんからきのうデンワきたよ」
「そう。プレゼント何ねだったの?」
「んー、ほしいのはもう父さんにたのんじゃったんだ」
今日のおれのたん生日には前からほしかったやつを父さんにたのんで、父さんが買ってくれるって約束してくれた。
だから天地じいちゃんにはなんでもいいよって言ったんだ。
って母さんに言ったらものすごいかおをした。
「あんたそれ、おフランス土産で凱旋門饅頭フラグ!」
母さんはやっぱりときどき言ってることがわからない。
「天地祖父ちゃんなんて言った?」
「『そおかー、でもじーじはお前のハッピーバースデーにはテレポーテーションで行っちゃうからプレゼントはお・た・の・し・み・に!あ、べつにおたのしみって言ってもそっちの意味じゃないからそこんとこかんちがいしないでよね!じーじは』――」
「わかったもういいバルサマ買っとく。あと不気味なモノマネは止めなさい何かが伝染るから」
バルサマはゴキブリをやっつけるんじゃなかったっけ?
でも天地じいちゃんがくるときは、母さんはいっつもファブってやっつけてるから、いいのかもしれない。
天地じいちゃんもなみだ目でときどきかおがミドリ色になるけどうれしそうだし、多分。
父さんが言うには、あれは「ぎしき」らしい。
今見てるアニメもあたらしいひっさつわざを出すときは「ぎしき」をするから、なんかちょっとカッコイイ。
でもよい子はマネしちゃいけませんて母さんは言うんだよ、そういうのって「りふじん」て言うんだって、父さんの弟のけんや兄ちゃんが言ってた。
「しかし欲のない子だねえ、もっとこう何かないの、お菓子で出来た城が欲しいとか世界を征服する帝王になりたいからその足がかりが欲しいとか」
世界をせいふくするテーオーは夜にやってるアニメのわるいやつなんだけど。
「隣のクラスのミサちゃんと仲良くなりたいとか、なんかあんでしょ」
「え!え!え!?」
「母さんに隠し事を出来ると思ったら富士屋のケーキより甘いわよ」
うぐぐ……母さんは実は「たんてい」なんじゃないかと思ってる。
だって学校のこともみんな知ってるんだ、この前なんか出す前に「78点のテストを見せなさいさあ見せなさいやれ見せなさい」って言われた。
先生がおしえちゃうんだと思ったけど、友だちのお母さんはみんな知らないんだって、どういうことだろう。
でも母さんはおれのことだけじゃなくて、父さんのこともみんな知ってる。
父さんはこの間何かを「ごまかした」みたいで、すぐバレてた。
「母さんは天地じいちゃんより強いから下手にさからわない方がいい」って言ってたよ。
天地じいちゃんはものすごく強いのに、それより強いんだって……ちょっと見てみたいけどおれも母さんをおこらせるのはよくないと思う。
だって母さんをおこらせると「レンジャー」のフィギュアに女の子のふくをきせたりされるんだ。
そんなのちっともカッコよくないし、母さんじゃないと外せないからヒドイんだよね。
ところでなんでミサちゃんのことまで知ってるんだろ!
「あんたホラ、父さんに中身は似てるから。ていうかなんか趣味一緒だから。わかりやすいっちゃわかりやすいわ」
そうなんだ、父さんとおれは好きな食べものもいっしょだし、いっしょにアクビとかクシャミとかするし、よくにてるってみんなに言われる。
でもそんなのはこまる、だってミサちゃんを父さんまですきになったらどうしたらいいんだろう。
ミサちゃんはおれとだけなかよくしてほしいのに。
それに父さんは母さんがすきなんだから、どっちもはダメなんだよ。
おれも母さんはすきだけど、母さんとの「すき」はミサちゃんとはちがうんだ。
父さんもそうだといいんだけど。
「わあ、考えてる事だだ漏れの顔。そういうとこはある意味似てないんだけどねえ。まあネタバレするとミサちゃんのパパさんに聞いたんだよ」
「ミサちゃんのお父さん?会ったことないよ?」
「ちょ、どんだけミサちゃんしか目に入ってないのか」
そうは言うけど、母さんはミサちゃんのかわいさをぜんぜんわかってないんだ。
ミサちゃんは人気ものだから、友だちがいっぱいいて、となりのクラスのおれはぜんぜんはなしができない。
前にうちでかってる犬の「コロすけ」をこうえんにサンポしに行ったときにやっとはなしができたんだ。
「この間スーパーでミサちゃんのパパさんに会ってね、あんたコロすけダシにしてミサちゃんと遊んだんだってね。ミサちゃんバッチリ好印象だったってよ!やったね息子!」
あいかわらずよくわかんないけど、ミサちゃんがよろこんでたみたいだ!やった!
「しかしまあ、あんたが惚れるのも無理ないわ、ミサちゃん可愛いもんねえ。パパさんもまたなんかえらい爽やかで格好よかったし」
「それで?」
「うん、途中まで荷物持ってくれて優しかったしさあ」
「他には?」
「奥さん早くに亡くしたらしいけど、あれはもうミサちゃんのママっつーかパパの嫁の座を狙う女達の骨肉の争いがあると見たね。あんなイケメン放って置かれる方がどうかし――あらアナタ!おっかりなさーい!んもう待ちくたびれて心臓止まるかと思ったんだからイヤンアカンバカン!」
いつのまにか父さんが母さんのうしろにいた。
前にも同じことがあって母さんに「うしろ!うしろー!」って言ったけど、母さんはぜんぜん気づかなかったんだ。
父さんは「おやくそく」って言ってた、ときどき父さんもわけがわかんないこと言うよ。
それから、父さんがいつもはちっともしないのにこうしてすごくにこにこしているときは、おれはすぐ自分のへやにもどるんだ。
そうでないと父さんにおっかないかおで上に行ってろってにらまれちゃうから、やんなっちゃうよ。
だから父さんがにこにこしてるときはちょっとこわいんだ、いつものこわいかおの方がぜんぜん「マシ」なくらいに。
母さんのギャーとかいう声が聞こえるけど、ここでオトコはふりかえっちゃいけないんだ。
父さんが母さんをいじめてるわけじゃないし、それどころかすごくなかがいいんだよ……これでも。
母さんはいつも「ラブラブ」なんだって言うくらい父さんのことが大すきだ。
父さんが早くかえってくるとセミみたいにくっついてる。
父さんも母さんが大すきなんだ、だって父さんがわかるくらいにこにこしたりするのは母さんだけだから。
多分ね。
ああでも今日はおれのたん生日なのに、いつもみたいに母さんがねむっちゃっておきられないとこまる。
じいちゃんたちもばあちゃんもこうだいおじちゃんもそのオクサンもけんや兄ちゃんも、みんなくるからごちそうをいっぱい作ってもらわないといけないのになあ。
下の方でドタドタっていう音を聞きながら、ベッドにころがってたらいつのまにかおれはねむくなってねちゃってた。
父さんにおこされて下に行ったらもうみんなきてて、それにテーブルにはごちそうがいっぱいあってほっとした。
母さんはねむってなかったけどソファにねてぐったりしてたよ。
きっといっぱい作ったからつかれたんだと思う。
父さんはもうにこにこしていなくてなんかちょっとこまったかおで、母さんの下にクッションを入れたりジュースをもって行ったりしていそがしそうにしてる。
さっきおこったみたいだったの、「はんせい」したのかもしれない。
でも父さんが母さんにおこるときはよくわかんないんだ、母さんはしってるのかな。
「誕生日おめでとー!」
おれがイスにすわるとみんながそう言ってくれてうれしかった。
でもおれの前のサラにだけピンク色のごはんがある……なにこれ。
「ちょ、悠さん、これ出す子供の性別間違ってね?」
「オイオイ、野暮な事聞くなよ剣矢君。息子の誕生日と共に春の風が吹いて来た事も祝ってちょうだいな」
「なああああああああにいいいいいいいいいいいい!?おまっ、オイ、俺でさえまだカノジョいないのに!?」
母さんがまたわけのわかんないこと言ったら、けんや兄ちゃんはおれをじろじろと見てから泣いた。
「アンタはいつまでもチャラチャラしてるからダメなのよ。流石勝利の子ねえ、無駄に手が早いわあ」
ばあちゃんもへんなこと言ってる。
まあでも「オトナ」はときどきわけのわかんないことを言うから、しょうがないんだけどさ。
だからオトナはちょっとほっといて、おれはいそいでごはんを食べてから、みんなからもらったプレゼントをあけることにした。
あ、天地じいちゃんのプレゼントは母さんの言ったまんじゅうじゃなくてクッキーだったよ。
カタカナで「ロンドン」って書いてあった。
おいしかったんだけど、天地じいちゃんは母さんに「0点」て言われて泣いてたよ、「ワンパターン」なんだってさ。
みんながかえってからぐうぐうねちゃった母さんのかわりに父さんと二人でテーブルをかたづけた。
「いっぱいごちそう作ったからつかれたんだね」って言ったら、父さんがかたっぽのマユを上げて「そうだな」って言う。
でもそれは父さんが「ビミョーなウソ」をつくときにするんだって母さんが言ってた。
本当に母さんは父さんのこともなんでも知ってる。
オトコどうしでおフロに入ってからきがえをしてリビングにもどったら、先に上がってた父さんがねている母さんのカミをなでてからチューしてた。
だからおれは父さんに言わないでこっそり自分のへやにもどってベッドに入った。
「ラブラブ」なときにはジャマしちゃいけないんだよ。
だっておれもミサちゃんといつか「ラブラブ」してるときにジャマされたくないもんね!
抱き上げていた体をベッドに下ろすと、悠がうっすらと目を開ける。
覚醒して状況を確認するより早く両頬を掴まれ口付けられた、覗き込めば未だ夢現といった表情に苦笑してしまう。
息子がまた一つ年を取ったってのに、こいつはいつまでも俺を甘やかしたまんまだ。
俺は俺でそれが嬉しくて、体の奥が切りもなく疼く。
子供の成長が早いのか俺達の進歩がないのか……考えるのは止めておこう。
「まだするつもりか?」
「この前さあ、ほら、あの子新しい本に夢中になってたじゃない?」
言われて確かにあいつが珍しく夕飯も惜しんで本を読み耽っていた姿を思い出した。
あの年頃の子供が読むにはまだ早そうな、確か結構厚みのある本だった記憶がある。
図鑑ならむしろもっと分厚いはずだし、「読んで」がなかったからイラスト集の類かとも思っていた。
俺がそう言うと悠は違うんだよと首を振る。
「絵本の類にしては結構長めの話でさ、流行ってるとこでは流行ってるらしいんだわ」
「ああ、なんかそういうのあるよな」
そうそうと頷いた悠は自分はあんまり本に興味はなかったと笑った。
聞くに、その絵本は教科書より易しいが量を多く読ませる事を目的として作られていて、特徴的な絵だけでなく続きが気になる仕組みが随所に見られるそうだ。
俺も昔は本に興味がある訳じゃなかったが、弟が特別気に入っていた本が仕掛け絵本と言うやつで見て感心した覚えがある。
内容は少年と少女の冒険の話で、どちらの性別の子供にも楽しめるらしい。
そういえばあいつが生まれてから絵本なんてものを自分で初めて買ったが、多少記憶にある昔の絵柄とはまた様変わりしてて驚いたな。
「あいつそういうの好きそうだからな」
「そうそう、評判を聞いて絶対うちも気に入るだろうと思って買ったの」
で、まんまとハマったと。
なんだかこいつに全てを把握されている俺自身を垣間見た気がした……多少複雑だ、全く嫌に思わない自分についてだが。
「それが何か問題だったのか?」
記憶を探ってみたが、別にその本に夢中になっているからといって夕飯を食べようとしなかった訳じゃなし、むしろ悠も読書に勤しんでいる息子を温かく見守っていたはずだ。
こうして自分が親となってみると、どっちに似ているだとかその時々によって意見が変わる事もある。
そうして息子との繋がりを感じる一方で、俺にも悠にも似ていない息子自身の行動や言葉にはっとさせられる事も多くなってきた。
独立していく子供を見送る親が誇らしげに、そして時折寂しげにする理由が段々と俺もわかり始めている。
今回の事も息子が一人で立ち、歩いて行く為の一歩に過ぎないんだろうな。
そう考えていた俺に対し、悠が言った言葉は少々予想外だった。
「それが少し問題だったのよ」
「本嫌いになるよりはいいんじゃないのか?」
よく知らないが、多分。
俺達は逆に特に興味がなかったからかもしれない、教科書という本に対しても苦手意識を持った事はない。
のめり込むのは何でも考えものだろうが、本というものは今後も少なからず接していくものだからな。
もう少し成長していくとアニメだゲームだと言い出すようになるだろう。
「あ、何かやりたいと言われたのか」
そういえば定期でフットサルに通わせてはいても、そこは単に子供の運動を目的としている教室だから習い事というのとは違うか。
しかし悠はそれにも首を振った。
「どっちか言うと逆」
「やりたくないって?」
「違う違う、逆逆」
やりたいの逆……と暫し考え込んでいた俺は、覗き込んでくる丸い目がいたずらげに揺れるのを見た途端閃く。
思わず、ああ、と声を上げてしまった。
「その本に出てくるのってお兄ちゃんと妹なの。元気はいいし行動力はあるけど自分より力の弱い妹をお兄ちゃんは助けたり協力して進むのね、妹の方はそんな自分に気付いて協調性とかを覚えてくって感じ」
「ああ……」
なるほどなと妙に感心しながらも微妙に気恥ずかしくなる。
子供にとって親の恋愛話を聞くのがどこか落ち着かなくなるようなもんだろうか。
あー、しかし本当に自分がこういう立場に立たされると、勝手な話だが親の方が居心地が悪い。
「あいつもそういう事を言うようになったのか」
変な話で、回り回ってあいつがそんな事を言うほど成長しているのだという事実に感心する。
年を取る毎あっという間に月日が過ぎるように感じるなんて言うのも尤もだ、現に子供の成長も実にあっという間なんだろう。
「ん?」
隣に寝転んだ俺の頬を突いてくる指を捕まえた。
「いや、いつか……お前と高校で再会した事も、昨日の事みたいに思い出すのかなって」
「また思考飛んだねえ。ま、そんな事になる日まで、のんびりよろしくしましょうや」
つんつんと今度は胸が突かれる。
「大丈夫なのか?」
主に腰が。
「何故更にベストを求めようとしないのか!だが明日の朝食はまかせた!」
「まあいいけどな」
果たして息子の願いが正確に叶うかはわからない。
ただあいつがその内、「お兄ちゃん」になるのは確実だろう。