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三国凌華伝 ーあなたがくれた、もうひとつの時ー  作者: 隆月 アン
番外編 それでも続いていく
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番外編 凌華、ちいさくなりました⑤


【いつもの凌華】


誘拐の騒ぎから、数日が経った。


凌華の身体は、相変わらず小さいままだった。


ただ、あの日を境に、周囲の扱いは少しだけ変わった。


陸議は以前と変わらず危ない時だけ抱き上げるし、孫尚香は相変わらず「かわいい」と言っては凌華に怒られている。


周瑜も呂蒙も、必要以上に特別扱いすることはなかった。


鈴だけは以前より少し慎重になった気がするが、それでも凌華が嫌がることを無理にするようなことはなかった。


そして凌華自身も、あの日のことをずっと引きずっているわけではなかった。


怖かった。


それは本当だ。


けれど怖かったからといって、もう外へ出ないとは思わない。


知らない人が怖くなったわけでもない。


まして、阿春たちと遊んだことまで嫌な記憶にしたくはなかった。


だから。


「呼ぼうよ」


昼下がり。


孫尚香の部屋で、凌華は当然のように言った。


「誰を?」


尚香が首を傾げる。


「阿春たち」


「この前の子たち?」


「うん」


凌華は膝の上へ顎を乗せた。


「また遊ぶって言ったし」


鈴が少し考えるように手を止める。


「市場へ行かれるのですか?」


「違うよ。こっちに来てもらうの」


鈴の表情が少し和らいだ。


「それでしたら、私も安心です」


「でしょ?」


「庭でしたら目も届きますし」


「鈴、絶対見張る気じゃん」


「もちろんでございます」


「やっぱり!」


尚香が横から楽しそうに笑う。


「私も混ざる!」


「尚香、絶対本気出さないでよ」


「子ども相手に本気出さないよ!」


「弓とか持ってこないでよ」


「持ってこないって!」


「本当に?」


「凌華にだけは疑われたくない!」


数日後。


阿春たち数人が、孫家の屋敷へ招かれた。


最初こそ、門の大きさと行き交う兵の多さに、子どもたちは揃って緊張していた。


けれど庭へ案内されると、そこにいたのは以前と変わらない小さな凌華だった。


「阿春!」


凌華が手を振る。


阿春の顔がぱっと明るくなった。


「凌華!」


後ろにいた子どもたちも、一斉に駆け寄る。


「ほんとにいた!」


「何で嘘つくの!」


「だって、ここすごい家じゃん」


一人の子が周囲を見回す。


広い庭。


整えられた植木。


奥にはいくつもの建物が続き、時折兵たちが行き来している。


阿春も改めて凌華を見る。


市場で会った時から、普通の家の子ではないと思っていた。


でも。


「……お前、本当にいいところのお嬢様だったんだな」


「だから、たぶんって言ったじゃん」


「何でまだ『たぶん』なんだよ」


「自分で言うの変な感じするんだもん」


「変な奴」


「阿春に言われたくない」


いつもの言い合いが始まり。


子どもたちの緊張もすぐに消えた。


少し離れた場所では鈴が見守っている。


そして。


「私も入れて!」


孫尚香までやって来た。


阿春たちが一斉に振り返る。


「誰?」


「尚香」


凌華が答える。


「強いよ」


「何その紹介!」


「間違ってないじゃん」


尚香は笑いながら子どもたちの輪へ入った。


それからしばらく。


庭には賑やかな声が響き続けた。


◇


遊び疲れた頃。


木陰に座って休んでいた子どもの一人が、ふと凌華へ尋ねた。


「なあ、凌華って普段何してんの?」


「普段?」


「うん。毎日」


凌華は少し考える。


「訓練したり」


「訓練?」


阿春が食いつく。


「何の?」


「剣とか」


「お前が?」


「何その反応」


「だって今ちっちゃいじゃん」


「今だけだって言ってるでしょ!」


「ほんとかよ」


「ほんと!」


隣で尚香が笑う。


「本当だよ。凌華、普段は普通に戦うから」


子どもたちの顔が一斉に凌華へ向いた。


「戦うの!?」


「うん」


「誰と?」


「呂蒙さんとか」


「呂蒙様!?」


屋敷の兵たちを見かけたことがある子もいたのか、何人かが驚く。


「勝てんの?」


「勝ったり負けたり」


「えー!」


「何その『えー』!」


阿春は明らかに信じていない顔をしている。


凌華は頬を膨らませた。


「身体戻ったら見せてあげる」


「ほんと?」


「ほんと」


別の子が聞く。


「他は?」


「周瑜先生に礼儀作法とか教えてもらったり」


「礼儀作法?」


「そう」


尚香が横から小さく笑う。


「凌華、すぐ姿勢崩すけどね」


「尚香!」


「本当じゃん」


「それは今関係ない!」


また笑い声が広がる。


すると阿春が言った。


「じゃあ、あの兄ちゃんのとこも行く?」


凌華が瞬きをする。


「あの兄ちゃん?」


「陸議って人」


「ああ」


答えがあまりにも自然だった。


「行くよ」


「何しに?」


「え?」


そこで凌華が止まった。


「文字分かんない時とか」


「うん」


「知らないことある時とか」


「うん」


「道分かんなくなった時とか」


「また迷うの?」


「たまに!」


「たまに?」


「……まあまあ」


阿春が笑う。


「それ以外は?」


凌華は少し考えた。


「暇な時」


「暇な時も行くの?」


「うん」


「何すんの?」


「別に何もしない」


子どもたちが揃って不思議そうな顔をした。


「何もしないのに行くの?」


「うん」


「何で?」


凌華は答えようとして。


少しだけ黙った。


何でだろう。


文字を教えてもらうためでもない。


道を聞くためでもない。


何か困っているわけでもない。


それでも。


気づけば陸議の部屋へ行く。


仕事をしている隣で座っている。


喋る時もある。


何も喋らない時もある。


それでも別に気まずくない。


凌華は自分でも理由を探すように、視線を庭の先へ向けた。


「……落ち着くからかな」


自分で言って。


ほんの少しだけ首を傾げた。


「たぶん」


「また『たぶん』」


「だって、今初めて考えたんだもん」


阿春は何となく納得していない顔をした。


けれど、それ以上は聞かなかった。


ただ。


子どもたちの背後。


開けた廊下の向こうにある部屋で。


一人だけ、完全に手を止めている人物がいた。


陸議だった。


机に向かい、書簡を読んでいたはずの筆が。


紙の上で止まっている。


庭から聞こえてくる声は、想像以上によく届いた。


『お』


壁際の長剣から、孫策の楽しそうな声がする。


『聞いたか?』


当然、陸議には聞こえない。


けれど、返事がないことなど孫策には関係なかった。


『落ち着くんだとよ』


陸議は暫く動かなかった。


庭からは、また別の話題へ移った子どもたちの声が聞こえてくる。


「……そうですか」


誰に向けたわけでもなく。


陸議は小さく呟いた。


それから再び筆を動かしたものの。


先ほどまでとまったく同じ集中が戻るまでには、少し時間がかかった。


◇


その日の夕方。


阿春たちが帰ったあとも、凌華の身体に変化はなかった。


「今日も戻らないかあ」


寝台の上で両手を見ながら、凌華が呟く。


鈴が髪飾りを外していた。


「そのうちお戻りになりますよ」


「そのうちって、いつだろ」


『俺に聞くなよ』


「孫策に聞いてない」


『顔がこっち向いてただろ』


「たまたま」


凌華は枕へ倒れ込む。


「明日も小さかったら、また陸議さんに抱っこされる……」


『楽でいいじゃねえか』


「中身大人なのに恥ずかしいの」


『もうみんな見慣れてるだろ』


「それがもっと嫌!」


鈴がくすりと笑った。


「ですが凌華様。最近は随分、今のお身体にも慣れましたね」


「まあね」


凌華は片腕を上げる。


「もう寝台から落ちないし」


『基準低くねえか?』


「うるさい」


「では、明日もお気をつけください」


「はーい」


その夜。


いつもと同じように眠った。


特別な予兆など、何もなかった。


◇


翌朝。


「…………重い」


最初に感じたのは、それだった。


掛け布が。


ではない。


身体そのものが、妙に重い。


凌華は目を開けた。


天井を見る。


「…………」


何かが違う。


というより。


見覚えがある。


視線の高さ。


寝台の広さ。


自分の身体が占めている範囲。


凌華は勢いよく身体を起こした。


手を見る。


「…………」


大きい。


足を見る。


「…………!」


布団を跳ね除け、勢いよく寝台から降りる。


足が簡単に床へついた。


「戻った!」


声が部屋中に響く。


『お』


壁際の長剣から孫策の声がする。


『戻ったな』


「戻ったー!」


凌華は嬉しさのあまり、その場で一度跳ねた。


長剣へ走る。


柄を掴む。


持ち上げる。


軽い。


いつもの重さだ。


「持てる!」


『そりゃ戻ったんだからな』


「孫策!」


『何だ』


「持てる!」


『分かったって!』


そこへ戸が勢いよく開いた。


「凌華様!?」


鈴が入ってくる。


寝衣のまま長剣を持って喜んでいる凌華を見て。


一瞬、目を見開いた。


「戻った!」


「まあ……!」


鈴の顔にもすぐ笑みが広がった。


「本当にお戻りになられたのですね」


「うん!」


そこへ騒ぎを聞きつけた孫尚香まで現れた。


「何!? どうしたの――」


戸口で止まる。


そして。


「……戻ってる!」


「戻った!」


「凌華!」


尚香が勢いよく抱きついた。


「わっ!」


「よかった!」


「苦しい苦しい!」


「だってずっと小さかったんだもん!」


「数日だけだよ!」


「長かった!」


二人が騒ぐ横で、鈴はほっと息を吐く。


そして。


ふと凌華の寝衣を見る。


「凌華様」


「何?」


「そのままでは皆様の前へ出られません」


「え?」


「お着替えを」


「あ」


小さい身体用に仕立て直した衣は、もう着られない。


久しぶりにいつもの衣を出し。


鈴が髪を整える。


長く戻った黒髪を丁寧に梳き、後ろでまとめる。


鏡の前に立つ。


そこにいるのは。


ここ数日見慣れていた小さな少女ではない。


いつもの凌華だった。


「……戻ったんだなあ」


鏡へ向かって呟く。


尚香が横から覗き込む。


「やっぱり凌華かわいい」


「尚香、本当に目悪いと思う」


「戻って早々それ!?」


「だって」


「鈴もそう思うよね?」


「ええ。凌華様はお綺麗ですよ」


「鈴まで!」


『お前、いい加減諦めろ』


「孫策もうるさい!」


いつもの声。


いつもの姿。


いつものやり取り。


ようやく。


本当に元へ戻った。


◇


阿春たちが次に屋敷へ遊びに来たのは、それから数日後だった。


凌華が元の姿へ戻ったことは、まだ伝えていない。


庭へ案内された子どもたちは、前と同じように小さな凌華が待っていると思っていた。


けれど。


「阿春!」


声がした。


阿春が振り返る。


庭の向こう。


一人の女性がこちらへ歩いてくる。


長い黒髪。


孫家の衣。


すらりとした身体。


初めて見る顔ではない。


どこか見覚えがある。


けれど。


知っている凌華とは、あまりにも大きさが違った。


阿春の足が止まる。


周りの子どもたちも黙った。


凌華はそんな反応など気にもせず、笑顔のまま近づいてくる。


「来たんだ!」


阿春が目を見開く。


「…………誰?」


凌華が止まる。


「は?」


「誰?」


「私!」


「…………」


「凌華!」


沈黙。


子どもたちの目が一斉に見開かれた。


「ええええ!?」


「ほんとに!?」


「だから言ったじゃん!」


阿春は凌華を上から下まで見る。


そして。


思わず叫んだ。


「でかっ!」


凌華の眉が跳ねる。


「その言い方!」


「だって!」


「戻っただけ!」


「ほんとに大人だった!」


「ずっとそう言ってたでしょ!」


「信じてなかった!」


「ひどい!」


後ろで鈴が小さく笑っている。


孫尚香も腕を組みながら満足そうに頷いた。


「どう? 凌華かわいいでしょ」


凌華が即座に振り返る。


「尚香!」


「何よ、本当じゃん」


子どもたちは、改めて凌華を見る。


小さかった時と、顔立ちは確かに同じだ。


目元も。


笑い方も。


声も。


けれど。


静かにしていれば。


阿春が以前想像していた「いいところのお嬢様」という言葉が、そのまま似合うように見えた。


少し近寄りがたいくらいだった。


その印象は。


十秒も持たなかった。


「阿春!」


凌華が一気に距離を詰める。


「この前の続きやろ!」


「いや近い!」


「何が!」


「急にでかくなったから!」


「元に戻っただけだって!」


「あ、やっぱ凌華だ」


「何それ!」


一瞬で。


小さい時と何も変わらないと分かった。


◇


「そうだ!」


凌華が突然思い出した。


「見せるって言ってたじゃん」


阿春が首を傾げる。


「何を?」


「訓練」


「あ」


他の子どもたちも思い出した。


「剣!」


「ほんとにやるの?」


「やる!」


凌華はすぐ訓練場へ向かった。


阿春たちも後を追う。


鈴と尚香も一緒だ。


ちょうど訓練場には呂蒙がいた。


「呂蒙さん!」


「ん?」


振り返り、後ろに連なる子どもたちを見る。


「何だ、その一団は」


「この前の子たち」


「ああ」


呂蒙も事情は聞いていた。


凌華は訓練用の木剣を手に取る。


「ちょっと相手して」


「お前、戻ったばっかりだろ」


「もう普通だよ」


「本当に?」


「陸議さんみたいなこと言わないで!」


「そりゃ心配するだろ」


「大丈夫!」


呂蒙は少し考えたあと、木剣を取った。


「軽くだぞ」


「分かってる」


二人が向かい合う。


先ほどまで騒がしかった子どもたちが、一斉に静かになった。


凌華の表情が変わる。


さっきまで笑っていた目が鋭くなる。


木剣を構える。


風が訓練場を抜け、長い髪を揺らした。


次の瞬間。


地面を蹴る。


「……!」


阿春の目が大きくなる。


速い。


小さい時には数歩走っただけで陸議に捕まっていた凌華が。


今はまったく違う。


呂蒙の木剣を受け。


流す。


身体を捻って避け。


そのまま踏み込む。


乾いた音が連続して響く。


呂蒙も笑った。


「お、動けるな!」


「だから大丈夫って言った!」


「喋ってる暇あんのか!」


「ある!」


次の一撃を受け、凌華が後ろへ下がる。


すぐに体勢を立て直す。


子どもたちは息をするのも忘れたように見ていた。


特に男の子たちは、完全に目を輝かせている。


「すげえ……」


誰かが呟いた。


阿春も何も言わない。


ただ、目を離せなかった。


小さい凌華しか知らなければ。


危なっかしくて。


すぐ抱き上げられて。


陸議に額を押さえられて。


それでも何度も突っ込んでいく、変な女の子だった。


でも。


今、目の前にいる凌華は。


強かった。


「凌華!」


一人の少年が思わず声を上げる。


「かっこいい!」


凌華が一瞬そちらを見る。


その隙に呂蒙の木剣が迫る。


「うわ!」


慌てて受ける。


呂蒙が笑う。


「余所見すんな!」


「だって今!」


「戦ってんだろ!」


「はい!」


子どもたちから笑い声が上がる。


その中で。


誰も。


この日の光景を忘れなかった。


◇


訓練を終えた凌華は、汗を拭きながら戻ってきた。


「どうだった?」


阿春が即答する。


「すげえ」


「でしょ?」


得意そうに胸を張る。


「最初から信じてよ」


「小さい時じゃ全然分かんねえよ!」


「中身同じだったじゃん!」


「身体違いすぎ!」


「だから言ってた!」


そんな二人のところへ。


「凌華」


声がした。


振り返る。


訓練場の入口に陸議が立っていた。


書簡を持っている。


何か用事の途中だったらしい。


凌華の顔が明るくなる。


「陸議さん!」


いつものように。


迷いなくそちらへ向かう。


小さい時とは違う。


誰にも抱き上げられない。


自分の足で。


まっすぐ。


陸議の前まで行く。


そして。


隣へ並んだ。


凌華が嬉しそうに言う。


「ほら!」


「何がです?」


「もう対等!」


陸議が意味を測りかねるように凌華を見る。


凌華は自分の足元を指した。


「抱っこされない!」


「元に戻っただけでしょう」


「それが大事なの!」


「そうですか」


「あと、ちゃんと歩ける!」


「以前から歩けていました」


「転ばない!」


「以前も転んでいました」


「それはたまに!」


「迷子にもなりますね」


「それは関係ない!」


「十分関係があります」


凌華がむっとする。


「せっかく戻ったのに!」


「戻ったことは喜ばしいと思っています」


「じゃあもう少し嬉しそうにして」


陸議の目が僅かに柔らかくなる。


「……安心しましたよ」


凌華の勢いが少し止まった。


「…………そう?」


「はい」


それだけで。


凌華も少しだけ笑った。


「そっか」


少し離れた場所で。


阿春は二人を見ていた。


小さい凌華を抱いていた時とは違う。


今の陸議は、凌華を守るために腕の中へ囲ってはいない。


凌華も、自分の足でその隣に立っている。


なのに。


不思議だった。


市場で見た時より、今の方がずっと自然に見える。


凌華は陸議を見つけた瞬間、迷いなくそちらへ向かった。


陸議の方も、周りの誰かを見る時より、凌華を見る目だけが少し柔らかい。


阿春には、それが何なのか上手く説明できなかった。


でも。


何となく分かった。


市場で聞いた時。


陸議は「保護者のようなもの」と言った。


その時は、そういうものなのだと思った。


けれど今見る二人は。


何だか、それだけじゃない。


阿春はしばらく黙って二人を見たあと。


ぽつりと呟いた。


「……なんだ。保護者じゃねえじゃん」


隣にいた子が振り返る。


「何が?」


「何でもねえ」


阿春は少しだけ笑った。


向こうでは凌華が、陸議に何か言っている。


すぐに言い返されて。


またむっとして。


それでも、離れない。


「阿春ー!」


凌華がこちらを振り返った。


「帰る前にもう一回やろ!」


「何を?」


「この前のやつ!」


「また負けるぞ!」


「今日は大人だから勝てる!」


「身体関係ねえだろ!」


「やってみないと分かんない!」


凌華が笑う。


阿春も笑った。


庭へ戻っていく凌華は、もう誰かに抱かれる必要はない。


自分の足で走り。


好きなところへ行き。


そして当たり前のように、陸議の隣へ戻っていく。


数日前。


「陸議さんは陸議さん」


そう言っていた凌華の言葉が。


阿春には少しだけ分かったような気がした。


身体が元へ戻っても。


結局。


凌華は、凌華のままだった。


――凌華、ちいさくなりました 了

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