オマケ
とりあえず、白銀続けることにしました。
感想くださった方、ありがとうございます。
感謝のしるしとして、最後にこの話を書きたいです。
闇に包まれた深い森の中で、少女は戦っていた。視線の先にいるのは、彼女の何十倍もの大きさをした魔物。長い激戦によって、少女も魔物も激しく消耗していた。
魔物が尾を振り回し少女を狙う。少女がそれを受け止めた隙に、閃光が放たれる。少女はひらりとその攻撃をかわし、そのまま少魔物の懐に飛び込み剣を突き立てた。すると、剣の先から炎が上がり魔物を包む。
しかし、攻撃は心臓に届かず少女は地面にに叩き落される。
「くっっっ」
少女は起き上がり、魔物に向き直った。
あと、一撃…
先程刺した傷跡をねらい跳躍する。腹部に鋭い痛みが走ったが、気にしない。至近距離から、持てる最大の魔力を注ぎ込んで魔法を放った。魔法は傷口から魔物の体を貫き、魔物は叫び声をあげながら消滅した。
「やっと、終わった…」
少女はそのまま草の上に寝転んだ。空は、少女の瞳と同じ色をしていた。
「ただいま帰りました」
戦闘を終え、戻ってきたユティシアは身体を清めようと、洗面所を目指す。
「おう、お帰りー」
洗面所に向かう途中にあるリビングで、師匠に迎えられた。
アストゥールは、ソファに座っていた―――両脇に女を抱えて。
彼の素行はかなり悪いと言えると思う。“剣聖”と呼ばれる彼の私生活の実態を知るものは自分だけだろう。毎晩女を連れ込み、しかも気がついたら別の女にかわっている。もちろん家だけでなく、外でもこのダメ人間状態で、さらには借金を作って来るのだから始末に終えない。莫大な騎士団の収入はどこに消えているのやら。
アストゥールと出会ったのは、ティシャールの戦が終わった後だった。身寄りのないユティシアを拾ってくれた。それからユティシアはアストゥールに剣を学ぶようになった。
ユティシアが実力をつけてくると、アストゥールは積極的に魔物との戦いの中へユティシアを放り込んだ。何度も生きるか死ぬか、という厳しい環境をくぐりぬけたユティシアはめきめきと腕を上げた。
今、一人前になり自立しているユティシアが、師匠と生活を共にすることは少ない。ユティシアは常に仕事に出ていて、不在の時が多いし、師匠はいつもどこをふらふらしているのか分からない。師匠は騎士団では最強ランクの魔物が出たとき以外は仕事を請負わない。…といっても、それも最近はほとんどユティシアに任せっきりであるが。
「久しぶりに、手合わせするか?」
「…今、仕事から帰ってきたばかりなのですが?」
ユティシアは不服そうに言う。
「だから?」
…この人は自分がやると言ったらやる人だ。人の迷惑も考えずに。
「はあ…」
ユティシアはしぶしぶ立ち上がる。
いつまでこの人に振り回されるのだろうか、自分は。自分の将来が目に見えているようで、悲しくなってきた。
このときのユティシアは自分の運命が大きく変化することをまだ知るよしもない。
自分が、大陸中で畏怖される存在から、愛される存在へ変わっていくなどとは…
ユティシアさん、よくこの師匠の下で性格ねじれませんでしたね。
本当に感心します。
今まで読んでくださり、ありがとうございました。
続きは新しい作品として書きたいと思います。
タイトル「闇に咲く白銀の華」です。