82話目 辺境伯からの手紙
実演販売の翌日、朝の早い時間にリールと竿を納品。
予約は前金制にしたらしく、納品時にお金も受け取れた。
2日で1億を超える収入だ。
トーアさんはこの後、この街の職人にルアーの製作を依頼しに行くとのコトなのでご一緒させて貰った。
スプーンは簡単に出来るが、スピナーは素人の自作は難しいだろう。
他にもバイブレーションに鉄板バイブ、ミノーにクランク、ホッパー、メタルジグ。重さは販売した竿に合わせて作って貰う。
ワームもスライム皮膜を使えば何とかなりそうだと言うので、ジグヘッドも追加で頼んだ。
水の中でどの様に動くか分からないと言われたので、大きめの水槽も作ってあげたよ。
試作品が出来たら冒険者ギルドに持ってきてくれるって。
「タツミさぁ〜ん。2、3日中に職人さんから俺宛に荷物が届くから預かって貰っていい?」
冒険者ギルドに着くと、カウンターで暇そうにしているタツミさんに声をかける。
「ああ、それくらい構わんよ。それより辺境伯から手紙が届いたぞ。」
「おお、思ったより早かったな。リックの所は辺境伯から相談は受けたって?」
「いや、何も言って来ないって事は受けて無いんだろうな。」
「そっか、トーアさんも受けた様子は無かったし、マーラ武具商会かな?まぁ読んでみれば分かるかな?」
「ねぇタツミさん、これ何が言いたいのかわかる?」
辺境伯からの手紙は比喩や飾り言葉が多くて何が言いたいのか、本質が全く伝わって来なかった。
「どれ……う〜ん。これは…恐らくだが、『失礼があったみたいだが、そこまで怒るような事では無いだろう。何が目的かは知らんが話しは聞いてやるから1回来い』みたいな事か?だが、あの日の事を考えると違うかも知れん。分からんな。」
「そっか…リックはこーゆーの詳しいかな?」
「まぁオレよりは詳しいだろうな。聞いてみると良い。」
「そっか、じゃあ行ってみるよ。」
リックの店はいつ来ても女性で溢れてるな。ちょっと、そんな目で見ないで。怪しい者ではないですから。特級職人証見ます?
「あ〜リョータ、いらっしゃい!ちょうど良かったよ。デザイン出来たから呼びに行くトコだったんだ。お茶入れるから上で待っててよ。」
「ちょっとリックに聞きたい事があってな。じゃあお邪魔します。」
「お待たせぇ。はい、お茶、んでコレがガラス瓶のデザインね。」
渡されたデザインはハート型や、翼、羽根、ダイヤモンド。これはなんて言ったけ?何とかブリリアントカット?なんかダイヤモンドのカットの仕方で代表的なヤツだよね。
「やっぱり難しい?調子に乗って書いたんだけど、あんまり細かいのは無理だよねぇ?」
「いや、俺はスキルで加工するから形は問題無いな。ポンプ式にした方が良いよな?ちょっと作ってみるか。」
ガラスの素材は…あるな。
「色はどうする?クリアでいいか?」
「色も付けられるの?じゃあハートはピンクで!ダイヤはハートよりも淡いピンクにして、他はクリアでいいかな?」
よし、あっ羽根はオパールグラスみたいにしてみるか。
道具生成っと!
机の上に置かれた素材達が光に包まれ、それが収まるとそれぞれの形になったガラス容器が現れる。
「こんな感じでどうだ?重さとかも見てくれよ。」
「凄い凄い!イメージ通りだよ。あれ羽根のやつはちょっと色付けた?」
「ああ、オパールグラスをイメージしてみたんだが、ダメだったか?」
「ん〜ん!こっちのが素敵だよ。重さも大丈夫。あれ?これどーやって香水入れるのさぁ?」
「ふふふ、俺には転移魔法が有るからな。」
「そっか!そんな風にも使えるんだねぇ。じゃあ中に入れる香水を持ってくるから、その間にいっぱい作って置いてね。」
え?いっぱいって言った?そんなに素材無いよ?って行っちゃったか…まぁ作れるだけ作っておくか。
戻って来たリックに言われるまま、容器の中に香水を詰めていく。
全部で18セット72本の香水が出来上がり。その内の3セットを貰った。何かに使えるだろう。
「中身が無くなる前に、私も転移魔法覚えなきゃだね。流石に補充の為だけに来てもらうのは悪いし。」
「移動も転移で来られるから手間は掛からないけど、まぁ自分で出来た方が楽だよな。」
「うん。そーだ、リョータも私に用事があったんだよね?」
「そうそう、辺境伯から手紙が届いたんだけどな、貴族の手紙は意味がわからなくてな。リックに読めればと思ってな。」
「それなら任っせてよ。メリッサ夫人に教わったんだよね。」
リックに手紙を渡すと見る見る表情が険しくなる。
「あー…リョータを出迎えたのって執事長って言ってたっけ?アイツ辺境伯にちゃんと報告してないんじゃないのかな?」
「やっぱりそんな内容なんだ。」
「そーだねぇ。『小さいことをうるさく言うな!器が知れるぞ。寛大な私がもう一度チャンスをやるから顔を出せ!』ってかんじかな?」
「そうか…じゃぁ辺境伯には寛大で器が大きい所を見せて貰おうじゃないか!」
「うわぁ…リョータ、わっるい顔してるよぉ…」
「リックは何時メリッサ夫人に会うんだ?」
「そーだなぁ、なるべく早く見せたいから、早ければ明日かな?これから夫人に先触れを出すよ。」
「そっか。夫人にはそれとなく、ホントに怒っているのは獣人のあつかいだって事を伝えておいてくれ。リックが夫人に会った次の日に辺境伯に会いに行くからさ。」
「良いけど、夫人を怖がらせちゃダメだよ。約束!」
「もちろん夫人に危害は加えないさ。辺境伯家が無くなったとしてもちゃんと面倒みるよ。約束する。」
「ちょっと何するつもりよ!夫人が困っちゃうでしょ?」
「辺境伯家が無くるとしたら、王命を軽視した事を罪に問われる時だよ。俺が潰す訳じゃ無いからね?」
翌日、リックから連絡が入った。
メリッサ夫人は香水を大層気に入り、俺にもお礼を伝えてくれと言っていたと。
そして…
もしもの時はよろしくお願いしますとも。




