72話目 お陰さまで?
ミーシャを連れてダンジョン街に移動。流石のミーシャもド肝抜かれてたね。
「なっ…!」とか言って地下通路とダンジョンを交互に見たり、通路とダンジョンの境を這いつくばって観察したりしてたよ。
ここに居ても仕方ないので、まずは城の書庫に案内する。道中もあちこちを興味深そうにキョロキョロしていた。
確かこの辺の本に魔導具なんかが書かれていた筈だ。本棚を前にブルブルと震えるミーシャを置いて城を出る。今のうちに住む家の相談をウィルにしておこう。
「西側が職人街になっております。水車を動力に使う事も出来ますし、広さも有りますのでこの辺りに住んで頂いてはいかがでしょうか?」
「そうだね。何が必要か解らないから、この辺から好きな家を選んで貰おう。」
「この辺りにはまだ誰も住んで居ませんのでそれで大丈夫かと思います。」
じゃぁ後でミーシャにてきとーに選んでもらおう。
ウィルと共に書庫に戻るとミーシャは何冊もの本を広げながら、「んん~?」とか「あ〜!」とか言いながら目を輝かせ、百面相していた。
魔導具についての理解が深まっている様で何よりだ。
「順調のようだね。早速作って貰いたい物が有るんだけどいいかな?」
「ああ、どんなのが欲しいんだ!ここの本が有れば何でも作れそうな気分になるぜ!あ〜っ、だが素材はあるのか?」
「まずは飲み物や食材を冷やす魔導具が欲しいな。キンキンに冷えたエールが飲みたい。必要な素材があればこのウィルに相談してくれ。ここで手に入らないなら、外のダンジョンに潜っても良いしな。」
冷蔵庫やビールサーバーの仕組みを教える。冷やす機構が作れれば何とかなるし、技術的に出来ない所は道具生成を使えば何とかなる筈。
「冷えたエールか…良いな!最初の作品に相応しい。確かこっちの本に…」
必要な本を探しに、ミーシャが書庫の奥に行ってしまったので、次に作って貰う魔導具を選ぶ為に俺も本を広げる。
ん~何か良いのないかなぁ…
トランシーバーみたいのあるじゃん!長距離で使えるならこれは是非作って欲しいな。魚群探知機みたいのがあると嬉しいけど…流石にないか。
後は…え?マジックバック作れるじゃん!いや、コレを量産するのはマズイだろ…
作って欲しい物をミーシャに伝えた所、強い酒の作り方を問い詰められた。
ポットスチルの仕組みも教えて城を後にした。
城壁の外、麦畑が広がる場所で子供達に遊んでもらっているハヤテを発見。ナギはおねむの様で、近くのお陰でお昼寝タイムだ。
はしゃぎ回るハヤテだが、空中で不自然な動きをする。
あれ?2段ジャンプしてない?
凄えな、流石は魔獣だ。
俺に気付いたハヤテが猛スピードで近づいてくる。速すぎてちょっと腰が引けていると、そのまま飛び付かれて後ろに押し倒された。
サイズの割に衝撃が凄いな。島の果物は慎重に考えて与える様にしよう。
そんな様を欠伸をしながら木陰から見ているナギ。
同じゲイルサーバルでも性格がかなり違うんだなぁと思う。
性格に合わせて躾をして行かないとだな。とは言え2頭は犬なんかよりよっぽど賢く、何なら言葉を理解してるのでは?と思わせる事もたびたびあるので心配は要らないだろう。
子供達に「遊ぼう」と言われれば嬉々として付いていくし、婦人達に「ご飯よ」と言われればすぐに駆けつける。
日が暮れるまで遊んでから、特に2頭を可愛がってくれているご婦人に躾を頼んだ。
既にトイレの使い方をマスターしているとか…マジかよ!水洗だぞ?
翌日からはクラウンを連れて王都へ。
城の門番にブレナンさんへのアポをお願いしに行くと、ナルミさんが居た。
「ナルミさん、お久しぶりです。」
「リョータさん!お久しぶりです!前に一緒に食べたプリン!凄い評判になってて、商業ギルドで抽選に当たらないと食べれないって大騒ぎですよ!彼女に食べた事あるって言ったら、「ズルい!誰と食べたの!」って色々問い詰められました。」
ナルミさんとはオークションの時に送り迎えをして貰らった仲なのだが、お互い畏まった付き合いが得意でない為、かなり馴染めている。
「そーなんだってね。ナファソ領でも噂になってたよ。よかったらプリンいる?2人分ならすぐに出せるよ。」
「良いんですか?絶対喜びます!あ〜でも兵舎の食堂に置いてたら誰かに食われちゃうな。リョータさんは今回もへステア館にお泊りで?仕事が終わってから受け取りに行っても良いですか?」
「じゃぁヘルムートさんに預けておくよ。別口で用事もあったし。
で、ブレナンさんにアポイントを取りに来たんだけど、都合のいい日をヘルムートさんに伝えて貰うことは出来ます?」
「わかりました。ただ、ブレナン様は今、王都を離れてます。予定通りですと8日後の帰還になりますので、返事はそれ以降になってしまいますが?」
「急ぎでは無いので大丈夫だよ。じゃあ10日後にまた顔出すようにするから。彼女さんによろしく。」
王城を後にしてへステア館へ。
へステア館は衛兵さんかな?揃いの制服に革鎧を身に着け、短槍を持った兵士さんに守られていた。
宿の入り口に2人。この分だと裏口にも人は配置されているだろう。
「すいません!ヘルムートさんの知り合いなんですが、何かあったんですか?」
「その髪、君がサワダ殿かな?」
「はい、リョータ サワダですが、何かありました?」
「いや、商業ギルドから護衛を頼まれただけだ。何もないよ。しかし、君のおかげでいい仕事にありつけたよ。ありがとう。」
「え?俺のおかげ?」
「そうともさ!君の伝えたプリンが凄い人気でね。護衛に来てみたら、宿屋で泊まり込みの仕事さ。で、ここの飯は信じられないくらい美味いし、費用は商業ギルド持ちと来たもんだ。もう最高だよ!」
「はぁ…そうですか。で、ヘルムートさんはいらっしゃいます?」
「ああ、今の時間ならたぶん厨房じゃないかな?あんなに美味いのに、更に美味しくなるように研究するんだから、凄い人だよなぁ。何でも王城の料理人がお忍びで勉強に来てるって噂だぞ?」
「あの…入りますね?」
すっごいお喋りな護衛だったな。隣の人はこっちをチラッと見ただけで無反応だったし、対照的な2人だったな。
いや、相方があんな感じだから話し相手が来て嬉しかったのかもしれん。
「ヘルムートさん、こんにちは。サワダで〜す!」
「あぁ、サワダ様。すいません、宿はいっぱいでして。」
「いえいえ、今日はちょっとお願いがあって伺いました。」
ナルミさん用のプリンを預けて、マーカスさんが来たら良くしてあげてね。とお願いをし、プリンアラモードのレシピを共有。
牛乳を革袋に入れ振り回して分離させ、乳脂肪分を調整して生クリームを作るのにちょっと手間取ったが何とか完成。後はヘルムートさんが完成度を高めてくれる筈だ。
「サワダ様は素晴らしい知識をお持ちですね。私は配分を変えてより良いものを、と考えていましたが…どうも一長一短といった感じでした。新しい物を足す事で味わいも満足感も増やし、更に見た目にも美しくなるとは。」
止めて
そんなキラキラした目で見ないで
それは俺の知識じゃないの
罪悪感がヤバい!




