71話目 違う 違く無い
新たに獣人達を引き連れ島に戻ると、浜辺は既にパーティー会場になっていた。
ブラッディホーンブルにワイバーンを使ったバーベキューは、新メンバーだけでなく、既にパーティーピーポーになりつつある、ダンジョン街の住人にも好評だった。
流石に侯爵邸で酒は出して無かったので、1部の飲兵衛は大はしゃぎだ。
そしてここでやっとワイバーンの赤ちゃんがお披露目。
小さな手で、ハルにしがみついてキューキュー鳴く様は愛らしかった。ディニクで言われた事を伝え、なるべく人里には近付けない様に注意する事も忘れない。
そして何と、このパーティー中にダンジョン街の住人の結婚式が執り行われた。しかも同時に21組。
初期メンバーである白狼族から4組、ガルの所から8組、マルシアの所から6組。その勢いで新メンバーの中から3組が飛び入りで参加。
早速新居の割振りが始まっている。
この分なら打ち解けるのも早そうだ。
しかし、早速お酒が底を突いたな。ミーシャがどうなったか聞きに行くついでに、また仕入れて来ないと。
「リョータさん、おかげで結婚出来たッス!オレここに来れて良かったッス!」
そう、今回の新婚カップルにはネロも含まれていた。
「おめでとう、やったな!今回結婚した人達は1週間仕事休みな。引っ越しとか色々やる事があるだろう?」
「良いんですか?助かるッス。」
「それから、男衆連れて鉱山に行ってこい。それで指輪を作ってやるからな。まとめ役は頼んだぞ!」
「指輪ッスか?別に要らないっすよ?」
「俺の故郷じゃ夫婦でお揃いの指輪をする風習があるんだよ。左手の薬指に指輪をしている人は既婚者だから、他の男からちょっかい掛けられなくなる。」
「おお、それは良いっすね!オレ、ミスリル探して来るッス!」
「デザインは…俺が考えるか?嫁さんの希望が有ればそれでもいいぞ。」
「聞いてみるッス!皆にも伝えて来るッス!」
ミスリルか…良いかもな。この街では結婚指輪はミスリル製で統一するか。
今回の追加で住民は1500名程になる。
犬、猫、狼、羊、兎、狐に狸、それ以外にも様々な種族が集まってきている。子供は60人程と少ないが、それもこれからはどんどん増えていく事だろう。
これからはちゃんとした行政機関が必要になるかも知れないな。
戸籍を作って、暮らしている家の住所も決めて行こう。
子供達には教育も必要だし、学校が出来れば給食の形で、島の食べ物を管理しながら与える事も出来る。
ウィル、ネロ、ジャックの3人を呼び出し相談する事にした。
「リョータさん、この3名が呼ばれたという事は、島の秘密に関わる事でしょうか?」
ウィルは察しが良くて助かるね。
3人に俺が考えている事を話す。
「戸籍に学校ですか…確かに人数も増えてきて、どの家に住んでいるかが解らない者も増えてきました。しかし、必要でしょうか?」
「そうだな、今は必要無いかも知れないが、今後必ず必要になってくると思うぞ?誰が何処に住んでいるのか、空き家はどれだけあるのか、街がいっぱいになった時に誰に移住して貰うのか。戸籍が有れば直ぐに動けるし、万が一犯罪が行われた時にも対応出来る。」
「犯罪など!我等が許しません!」
「まぁ、犯罪は無かったとしてもだ。これだけ多くの種族が集まって暮らして行くんだ、風習や価値観の違いはあるだろう?そういうのをわかり易く分けるのに便利だし、仕事の割振りにも使えるだろう?不要な争いを避けるためにもあった方が良いと思うんだ。」
「なるほど、確かに種族によって得意な仕事も違いますし、有れば便利そうですね。」
「暫く新しい住人は増えないと思うから、ゆっくりやって行こう。まずは地図を作る所からかな?あっ!1人ドワーフが増えるかも知れないんだった!」
「ドワーフですか…1人なら問題無いでしょう。では、測量の出来る者を募って地図作りから初めていきます。」
「よろしく。後は学校か…因みにこの中で読み書き計算が出来る人は?」
…わかりやすく目を逸らすね君たち。
「じゃぁそれも出来る人を探しておいてくれ。」
「「わかりました!」」
「わかったっす!」
よし、じゃぁ解散!
翌日、ミーシャの件がどうなったかなぁと思いアルベール領へとお出掛け。女神の歌声亭は残念ながらいっぱいだった。
屋上バーベキューは人気らしく、昼間だというのに騒がしい。まぁ転移で帰れるし、山の温泉に泊まる事も出来る。
まずはお酒を仕入れる事にした。
酒屋に行くと何やら人だかりが出来ていた。
「だからぁ〜もっと強いお酒を造ってって!最低でも今の倍、出来れば3倍くらいの強っよいヤツ!なんか方法があるらしいのよ!」
「だから無理だと言っておる!今飲んだ物が限界まで強く造ったもんだ!そんなもんが造れるならとっくに造っておるわい!」
ミーシャ!あっ!そう言えば強い酒が造れる事を少し話してしまった。これは不味い場面に出くわしてしまったな。よし、撤退だ。
そう思って人だかりを抜け出せそうとして失敗した。
「リョータ!見つけたぞ!ちょっ、おい!逃げるな!」
小さい体をフル活用して、人混みをスルリと抜けると俺の太ももにタックル!両足をガッチリ掴まれ、バランスを崩してその場に転がされた。
「何故逃げる!アタシは辺境伯の許可を貰ったぞ!さぁ、連れて行け!」
「待て待て!ここには酒を仕入れに来たんだ。強い酒はすぐに造れるもんじゃない。それまで飲む酒が無いけど良いのか?」
「むぅ、それは困る。よし、アタシも買い貯めしておこう。グラム、暫くはさっきの酒で我慢しよう。これで買えるだけ用意してくれ。」
ミーシャは懐から革袋を取り出す。結構な膨らみだ。
「おまっ、これ全部金貨じゃねぇか!この街の酒を買い占めるつもりか?」
「おっと、そっちは移住するのに集めた金だった。こっちだ。」
「びっくりさせるな。ん?移住?何処に行くんだ?辺境伯様が良く許可してくれたな。」
「リョータのトコさ!何でもとんでもねえ品物を辺境伯に渡して、アタシを引き取りたいって言ったらしいぜ。おかげで準備金まで貰ったぞ。」
「イヤ、違うぞ!貴族に会うのに手土産持って行っただけだぞ?そしたらお礼になんかしようか?って言われたから、ミーシャが移住したがってるって伝えたんだ……あれ?違く無い?」
「アッハッハ、そうだな。違く無いな。まぁ許可は降りたんだ。酒買ったらとっとと行こうぜ。辺境伯の気が変わらんウチに。」
今回はミーシャの勧める酒を中心に大量購入。卸売り専門のグラムの酒屋の在庫を半分程買い占めた。
条件として、ウチで出来た酒を卸す事を約束した。




