63話目 この距離で?
精肉市場をビルの店目指して歩いていると、宿の女将さんと合流。
既にハラミとタンを購入し、今日は他の部位の受け取りに向かう所だったとか。
2人で歩いていると、ビル発見!
この前来た時よりお客さんが多いかな?
「よう、リョータ。お陰さんで売り上げ好調だぜ。それにメリンダの女将さんも、頼まれたもんは用意出来てるぜ。」
「ありがとねビルさん。そうそう、あの焼き台が欲しいんだけど、あれは何処で売ってるんだい?」
「あれはリョータの持ちもんだからな。リョータ、オレも幾つか欲しいんだけど、手に入るか?」
「ああ、すぐ出来るよ。幾つでも作ってやるさ。俺も頼みがあってな、ブラッディホーンブルを2頭解体して欲しいんだが、いいかな?」
「じゃあ、あの焼き台を8つ作ってくれ。それが手間賃代わりだ。」
「リョータさん、ウチの分も!ウチの分も作っておくれよ。ビアガーデン?だかをやるのに必要何だろう?」
「わかったわかった。ビルのトコに8つ、女将さんは20個もあれば足りるだろ?ビル、空いてるマジックバックがあれば貸してくれ。ブラッディホーンブルを入れておこう。」
「リョータさん、ありがとう。お代代わりに一泊分はサービスしとくよ。」
「まぁ俺の提案でもあるしな。今日の夜までには作っておくよ。ビルの分はブラッディホーンブルを受け取る時に渡せば良いかい?」
「ああ、それで頼む。明日の昼には用意しておくよ。」
ビルと別れ、温泉へ転移。
明るい内に温泉の改装に取り掛かる。
周辺の森を切り開いて広い休憩所を作り、お風呂も広くしたり、丁度いい深さにしたり。
打たせ湯や寝湯も作った。ジャグジーや電気風呂は無理だな。
魔導具が作れたらそれを使って考えよう。
早速出来栄えを確認だ。
打たせ湯は源泉に近いからちょっと熱いが、それがいい。
キャンプコットみたいのも有ると良いな。土魔法で作っておく。
おっと、頼まれた七輪も作っておこう。ダンジョン街でも使うだろうから、50個ほど。
思いつくものを1通り作ったので、コレで完成としよう。後は使ってみて不具合が有れば都度改善して行けば良いだろう。
休憩所でお昼を済ませてアルベールの街に戻る。女将さんに七輪を渡しておこう。
「女将さん、頼まれた物を持ってきたよ。何処に置いたらいい?」
「あら、仕事が早いね。今屋上に小屋を作ってるからそっちに持ってとくれ。ああ、幾つか試作品の味見もして欲しいね。用意するから屋上で待ってておくれよ。」
女将さんに付き合って屋上でホルモン焼きを楽しむ。
塩ダレや辛味噌風のレシピを教え、逆に香草や他国から流れてくる調味料を使ったレシピを教えてもらった。
他にも焼肉の付け合わせになる野菜やキノコ、魚介などの(イカは食べて貰えなかった)港町ならではの食材も焼き、スタッフさんと一緒にあ〜だこ〜だと意見を交わしつつ肉を食べ続けた。
いい加減胃もたれがしてきた頃、女将さんが胃薬代わりの葉っぱをくれたので、肉を巻いて食べた。
これが年嵩のスタッフさんに好評で、二日酔いに効くという薬草と共に、締めに出す事が決まった。
さて、明日は辺境伯邸にお邪魔する事になっているので早めに就寝。
早めに起きて温泉で身を清めてから伺うとしよう。
翌日温泉から戻ると、宿に1台の立派な馬車が…あれ?辺境伯邸って広場挟んですぐそこだよね?
この距離で馬車をお迎えに出してくれたの?
宿に入ると女将さんが慌ててやってきた。やっぱり表の馬車は俺のお迎えらしい。
白シャツに黒のスラックス、グレーのジレのナイスミドルが恭しく頭を垂れて挨拶してくる。
「アルベール辺境伯家、執事長のダグラスと申します。主人よりサワダ様の迎えを仰せつかりました。馬車を用意してありますので、どうぞこちらへ。」
「これはご丁寧に、どうもありがとう御座います。」
ダグラスさんの後に付いて行くと、馬車に案内される。ステップをスッと出す動きが様になっていてかっこいい。
馬車に揺られる事2分、辺境伯邸の入り口に到着。そこからまた2分程で屋敷の玄関前に到着。
絶対徒歩でいい距離だが、きっと貴族としての体面などがあるのだろう。
馬車を降りると、大きな扉の前にはメイドさんや使用人がずらりと並び、中央にはオークション会場で会った辺境伯本人が自らお出迎えしてくれた。両サイドは奥さんと息子さんかな?
おいおい、流石にこれはただお客さんを迎えるシフトじゃないとわかるぞ。
逆に緊張するじゃないか。
「ようこそいらっしゃいました。この地を治め、辺境伯を賜っております、リヒャルト・アルベールと申します。こちら妻のテレジア、息子のヨアヒム共々、よろしくお願いします。」
「ご丁寧な挨拶痛み入ります。リョータ サワダです。縁あって隣り合う領地を賜りました。こちらこそ、これからよろしくお願いしますね。」
こんな感じで良いのかな?大丈夫そうだな。肩を震わせてるメイドさんもいないし、きっと間違ってないよね?
「ここで立ち話もなんですし、サワダ様の気になっている事もあるでしょう?どうぞこちらへ。」
辺境伯の案内で屋敷へと入って行く。どうやら水道橋の先にある部屋へ行くみたいだ。階段を上がった扉の先には大きなプールが広がっていた。
「マリアベル、こっちに来てご挨拶を。」
「リヒャルト?どうしたの?…こちらの方は?」
「始めまして、マリアベルさん。私はリョータ、沖合の島のマーメイドを保護している者です。アルベール領にマーメイドの奴隷がいると聞いて様子を見に来たのですが、私の心配はどうやら杞憂に過ぎなかったようですね。」
「ああ、貴方が。リヒャルトからお話は伺ってますわ。改めまして、マリアベルと申します。同胞を保護して頂きありがとう御座います。私もここで安全に過ごせておりますのよ。」
「その様ですね。向かいの宿に泊まっておりますが、先日その歌声を拝聴させて頂きました。とても楽しげに歌われていましたので、安心した次第です。」
マリアベルさんとの挨拶が終わり、プールサイドの椅子に座って辺境伯と話す事になった。
元々アルベール王国時代には大地の神と同様に海の神も崇めていた為、亜人排斥は行われていなかったとの事だ。
街中でも普通に獣人さん達見かけたしね。
ただ、ヨークデリア王国に吸収され、1部がヨークデリア貴族の領地になった為、その辺りは亜人を奴隷として使っていたらしい。
今回ナファソ侯爵夫人と共に反王家に回ったのも、その辺りの貴族だって。
お取り潰しとか、降爵になった所だね。
そのおかげでアルベール領も領地が増えそうだって。




