60話目 街ブラ
宿に戻って来たが、夕飯を買って来るのを忘れた。
女将さんにテラスで焼肉していいか聞いたら、屋上でならと許可を頂けた。
何を焼こうかな?タンとハラミとレバーはマストとして、フワはあんまり焼肉に向いていないし…マルチョウ、ギアラ、ハツにしとくか。
タンとハラミとハツ、レバーも塩ダレで、残りは辛味噌風で。お米も炊いたのがあった筈。
屋上は広いからエールの酒樽も出せるな。注ぐ時に布で濾してやれば1人ビアガーデン開催だ。
ミーシャが来たら、冷やす魔導具なんか頼めると良いな。
屋上でのんびり焼肉していたが、マルチョウを焼いたのがマズかったのか、煙を心配して女将さんがやって来た。
マーメイドさんが来ても良いように広場が見える所でやってた為、通行人から問い合わせがあったそうな。
七輪を見せて火事にはならない事は納得して貰ったが、女将、焼肉に興味津々。
良いだろう。今日は焼肉奉行として女将さんに振る舞ってやろうじゃないか。
タンは片面にしっかり火を入れる。肉が汗をかいたらひっくり返して刻んだネギに塩、ごま油を混ぜた物を乗せ、レモンを1搾り。
ハラミやレバーは火を入れすぎない様に注意だ。
マルチョウ、ギアラはしっかり火を通し、余分な脂を落とす。落とし過ぎない様に細心の注意が必要だ。
食べた事の無い肉に驚いていたが、かなりお気に召した様子で、何処で買えるのか、値段は幾ら位するのかと質問攻めにあったよ。近々ビルさんの肉屋でタンとハラミが売りに出されるトコを伝えた。他は未定だが、頼めば何とかなるんじゃない?ここにタープ張ってビアガーデンやらない?など、無責任に提案しておいた。
お礼に冷えたビールをごちそうして貰ったよ。もちろん濾してつぶつぶを除いて貰ってね。
女将さんにこの街の獣人の扱いや、エルフの薬屋の場所なんかも聞いて、情報収集も出来たので満足。
アルベール辺境伯からのお返事はまだだって。
翌朝の朝食は色々オマケして貰いました。
さて、まずはエルフの薬屋を見に行こう。
女将さんに聞いていた店は職人街の外れにあり、広い庭には小さな池まであった。釣り人の習性で魚が泳いでいないかチェック!金魚位の小さな魚がいた!
小物釣りは小物釣りで面白いんだよな…いや、今日は薬屋を見に来たんじゃないか!でも、薬屋見るだけならそんなに時間かからないし、ちょっとくらいならいいか。
この広さの池ならリールは要らないな。
落ちている木の枝の先に仕掛けを結び、餌はパンを千切って付ければ良いかな?
針は返しの付いていない物を使う。
お、当たる当たる。小物はこの活性の高さが良いね。よっと!
ピチピチと釣り上げられた魚は淡いブルーの綺麗な魚体をしていた。ちょっと大きなグッピーって感じだな。可愛い。
個体によってヒレが長かったり、色が鮮やかだったり。選別して繁殖すれば、前世のメダカみたいに人気が出るんじゃなかろうか?水槽のガラスが透明じゃ無いから無理かな?
しばらく魚に遊んで貰って満足したので、目的の薬屋に行く。
「こんにちわ〜。」
「いらっしゃい。もう釣りはよろしいの?」
微笑みながら返事をしてくれたのは、金髪に翠の瞳のエルフさん。優しそうな美人さんだ。
見た目は俺と変わらなそうな歳だが、実際はかなりの歳上だろう。
そして釣りしてたのバレてた。
「もしかしてお店で育ててました?」
「いいえ〜何処から入り込んだのか、いつの間にか増えてたのよ。それで、今日はどういったご要件かしら?」
「エルフさんがお店をやっていると聞いて、どのような物を扱っているのか気になりまして。興味本位で覗きに来ただけなんです。ごめんなさい。」
「あらあら、良いのよぉ。でも、こちらこそごめんなさいだわ。この店は一般的なお薬しか置いてないのよね。」
ほ〜ん…一般的?
「一般的では無い薬ってどんな物なんです?」
「エルフの霊薬とかって言わてるわね。錬金術で作るただの魔法薬なんだけどねぇ。ほら、エルフは長生きでしょう?人間より沢山練習が出来るから良い物が作れる様になるのよぉ。出来が良いってだけで同じ物なのよ?」
このお店は[メリルの箱庭]と言う薬局で、店主はエルフのメリルさん。
このお店では錬金術で作った魔法薬は置いておらず、一般向けに販売もしていない。ここで販売しているのは薬草などから作る、熱冷ましや痛み止め、傷薬などの普通のポーションのみ。
霊薬は領主からの依頼があった場合のみ調合、販売を行なっているんだって。
領主お抱えの薬師なのだが、普段は領民向けに薬局を営んでいるそうだ。
「そーでしたか。因みに、山の向こうにあるエルフの里なら魔法薬も買えますかね?」
「あらあら、森湯の里を知っているの?私は昔あそこに住んでいたのよ?ワイバーンが住み着いちゃってから、帰るのが大変になっちゃってねぇ。皆元気にしてるのかしら?」
「マートルさんやアカシアさんには会いましたが、お元気そうでしたよ。」
「マートルくんにアカシアちゃんかぁ…懐かしいわね。どれくらい振りかしら?まだ50年は経ってないと思うけど。久しぶりに帰ってみようかしら。」
「ワイバーンなら退治したので、今なら安全に帰れますよ。」
「あらあら、貴方が退治してくれたの?いっぱいいて大変だったでしょう?どうもありがとうねぇ。久しぶりに帰りましょうねぇ。森湯も久しぶりだわぁ。
そうそう、魔法薬だったわね。森湯の里でも作ってる筈よ。大ババ様なら私より腕も良いし、きっと驚くわよぉ。」
「それは楽しみです。他に果物や野菜も変わった物を作ってましたし、後で行ってみます。」
薬局を後にして、近くの食堂へ。
アルベール領は栄えているだけあって、食堂のメニューも豊富だ。
流石に刺身は置いてないね。
白身魚のバター焼きとスープにサラダにパンを頂いた。この街はご飯が美味しいから良いな。
食堂を後にしてドワーフの鍛冶屋へ。
「おっ、来たな。ちょうど終わった所だ。見た目より硬くてちょっと難儀したが、しっかり手入れしといたぞ。約束通り、銀貨3枚だ。」
支払いを済ませると、試し切りを勧められた。鍛冶場の隅に、動物の骨に皮を巻いて作った、"革巻き"と言う巻藁のような物が立っていて、それで確かめる様だ。
巻藁よりもずっと切れにくそうだが、魔獣の居る世界では、これくらい切れないと武器として頼りないのかも知れないな。
革巻きの前で中段に構え、それを袈裟に斬りつける。
コツっと骨に当たる感触があったが、そのタイミングで刃を少し引く様にすると、革巻きはストンと2つに別れた。
「まずまずだな。お前さんも見た目よりいい腕のようだ。これなら大抵の魔獣なら刃が負ける事もねえだろうよ。」
「ああ、俺も大満足だ。アンタは見た目通り、いい腕してるな。」
「はっ!誰に物言ってんだ?鍛冶師ガストンと言やぁこの国でも腕利きで有名だぞ?」
「そうなのか?じゃぁ、また何かあったらお願いするかもな。そんときはよろしく。」




