49話目 食糧保管庫
翌日、朝から商業ギルドに向かい、リールの登録をした。機構についても細かく登録をしたため、サーシャさんのリールを見て、何処かの工房が作ってくれるだろう。販売が始まったら大ウナギを釣った集落の人達に教えてあげよう。
オークションも終わり、王都での用事もなくなったので島に戻る事にした。へステア館で更にプリンを追加もしている。抜かりは無い。
1度島に戻って、クラウンを放ってから炭窯の様子を見に行った。
流石にもう火は消えている。窯の中には炭が出来上がっていたが、奥の端っこの方は焼きが甘かったみたいで炭化していない所もあったが、上出来だろう。魔法で水分を抜いたのが良かったのかもしれない。ダンジョン街の家は魔導コンロが標準装備なので、ホントにバーベキューでしか使わないので問題無い。
再び島に戻ってコレットさんを探す。が、見つからないのでのんびり釣りをする事にした。そのうち現れるだろう。
釣りをしていると、俺に気付いたハルが降りてきた。
「リョータおかえり。久しぶりだね!」
「ただいま。そ~言えばハルに会うのは久しぶりだな。この前のバーベキューには参加しなかったのか?」
「ハルがお散歩から戻ったらリョータいなかった。でもお肉は食べれたから許してあげるね。」
「そ~だったのか。そりゃ悪かったな。お詫びにお土産をやろう。」
プリンとスプーンをハルに渡す。
「甘い匂い。これは食べ物?」
「ああ、プリンって言うお菓子だな。美味しいから食べてごらん。」
ハルは匂いを嗅いだ時点で顔を綻ばせる。
「お菓子?いただきまぁす!」
1口食べて固まったと思ったら、凄い勢いでプリンをかき込み出した。
「リョータ!なにコレ!すっごく美味しい。すっごく美味しいよ!」
「そこまで喜んで貰えると作った甲斐があるな。また材料が揃ったら作ってやるからな。」
「えぇ~リョータが作ったの!凄い!また作って、約束!」
過去1の尊敬の眼差しだ。島で甘い物って果物くらいしか無いからな。きっと初めての甘味だったのだろう。
「ああ、約束な。コレットの分も有るんだけど見なかったか?」
「見なかった。代わりにハルが食べてあげるね!」
「コラっ!これはコレットの分だ。もう作ってやんないぞ。」
「ぐぬぅ…わかったよ、呼んで来るからまた作ってね!」
ハルは飛び立って行った。
さて、釣りの続きをするか。
暫く釣りをしていると、水面にコレットが顔を出した。
「おかえりなさい、リョータさん。ハルが呼びに来たんですけど、何かありました?すっごい睨まれたんですけど。」
「ははは…先ずはお土産のプリンです。」
苦笑いを浮かべながら、コレットにもプリンとスプーンを渡した。
「とっても良い香りです。頂きますね。」
コレットも1口食べて固まった。ただ、かき込みはせず、ゆっくり味わって食べている。
「リョータさん、ありがとうございます。とても美味しかったです。で、私はなぜ睨まれたのでしょう?」
「ハルがコレットの分も食べようとしたから止めたんだ。まぁ怒ってる訳じゃないと思うぞ。」
「なるほど。分かりました。確かに、それくらい美味しかったです。」
「コレットを呼んだのはそれ以外にも用事があってな。どうやらアルベール辺境伯領にマーメイドの奴隷がいるらしい。俺の認識違いで、今回の奴隷解放は獣人種のみで、マーメイドは解放されないみたいなんだ。すまんな。」
「……いえ、リョータさんが謝る事では無いですから。ですが、他の者には内密にお願いします。アティラ神国の船の時みたいにはならないとは思いますが、万が一のことを考えると教えない方が良いと思います。」
「わかった。そこの領主には俺から挨拶に行くよ。で、コレットには内側がキラキラしてる貝殻を集めて欲しいんだ。量はそんなに要らないから頼めるか?」
「分かりました、よろしくお願いします。」
さて、後は漆と、あれば絹糸が欲しいな。王都を見て回った感じだと漆は無さそうなんだよなぁ。絹っぽい布は有ったから買うとして、後は『道具生成』が反応するかが問題か?多分イケると思うんだよなぁ…
そんな事を考えながら、ダンジョンへと降りていく。釣ったサーブルの卵の半量を塩イクラと塩スジコを作っておく。
お昼を簡単に済ませ、ダンジョン街へと向かう。途中に広がる畑では獣人達が農作業をしていて、子供達もお手伝いをしているな。子供はホープを含め8人、これから結婚や出産が増えれば、もっと賑やかな街になって行くだろう。
長閑な景色を眺めながら歩いていると、ガルがやって来た。隣には銀色の短い髪の女性を連れている。
「よう、リョータさん!これからちょっと時間取れるか?オレと一緒に来た連中を紹介させてくれ。」
「ああ、構わないぞ。んで、隣にいるのは彼女か?」
「いえ、断じて違います。私は闇猫族のマルシアと申します。共に来た者たちの代表の様な事をやらせて頂いておりまして、挨拶と許可を頂きに参りました。」
「それはどうも、改めましてリョータです。ですが畏まわれるのは苦手でして。マルシアさんも楽にして下さい。」
マルシアさんがガルに目を向けると、ガルは頷いた。
「マルシア、大丈夫だ。オレ達の大将はたいそうなお人好しらしい。今回の事だって、裏がある訳じゃない。多分思いつきだ。」
「まぁそうなんだけどさ。言い方よ。」
そんなやり取りを見てマルシアは微笑みながら口を開いた。
「リョータさん、我々は元々対岸の森の東側の近くに暮らしておりました。まだその辺りには逃げた同胞が多数潜伏しています。こちらに連れてくる許可を頂きたいのです。」
「オレ達は西側だな。数は合わせてで300足らずってトコだ。どうだろう、許可してくれるか?」
今居る人達と合わせて500人位になるのかな?まだまだ街の建物は余裕だな。ただ、これからはどうなるか分からないんだよなぁ…
「わかった。まだ街には余裕があるし、受け入れよう。ただ、今後住民が増えて、街に収まらなくなった場合は、対岸に街を作るからそっちに移って貰うかも知れない。
子供や戦えない人を優先してダンジョン内で暮らして貰うつもりだ。それで良ければ受け入れる。」
2人はその話に了承してくれた。
場所が分かれば転移で帰ってこれるからな。
2人と分かれ、精米の状況確認だ。
城の食糧保管庫に入ると中には、精米後のお米に小麦粉、砂糖に塩、野菜やお肉や魚にコンブと大量に保管されていた。
因みにこの保管庫丸ごと魔導具になっていて、区画ごとに冷凍や冷蔵、時間停止まで出来る優れものだ。
俺が確認していると、コンブを抱えた白狼族の女性が入って来た。
「あっリョータさん!私達を救って下さりありがとうございました。頼まれてたコンブの出来はどうでしょう?満足いただけてますか?」
「いつもありがとうございます。ちゃんと満足行くものが出来てますよ。皆さんも遠慮しないで使って下さいね。」
「ありがとうございます。ただ、コンブやお米は使い方が良く分からないんですよね。」
「そう言えば、お米の炊き方も教えてませんでしたね。1度皆さんを集めて料理教室でもやりますか?」
「是非お願いします。これからでもよろしいですか?すぐに人を集めますよ。」
と言うことで料理教室スタート!
お米の炊き方、鰹節の作り方も教えて、出汁の概念、小麦粉を使って柔らかいパンに、メレンゲで作るパンケーキに、香料無しだがプリンも。
簡単なレシピばかりだが、参加していた女性陣には大好評だった。他にも、揚げる、蒸す等、この世界であまり知られて居ない調理法を教えた。女性にも結婚を考えている人が何人もいて、これで相手にアプローチするんだとか。
出来上った料理をみんなで食べ、今日は久しぶりに自室で眠った。
因みに料理教室には味見係として、いつの間にかハルが紛れ込んでいた。
米をディニクに売りに行くつもりだったのだが、みんな楽しそうだったので良しとしよう。




