48話目 新しい釣り
オークションの翌日、朝食後すぐに商業ギルドに訪れている。
「リョータさん、おはようございます!晴れて良かったです。風も無いし絶好の釣り日和ですね!」
ギルドの1室に招かれると、そこにはハイテンションのサーシャさんが待っていた。
準備万端って感じだ。リールには教えた通り、かなりの糸が巻いてあるし、ここが釣り場かと思うくらいの準備万端だ。
「おはようございます、サーシャさん。スターさんとローリィさんはまだですかね?」
「そうなんですよ。そろそろ来る頃だと思うんですが…」
「じゃあ、待っている間に皆さんの分も用意しちゃいますね。」
俺を含めて3人分の釣りの準備をする。因みに糸はサーシャさんに用意して貰った物だ。
「おはよう。もう準備してるのか?移動の邪魔になりそうだが…」
「おはようございます、リョータさん。移動は転移魔法を使うつもりですか?」
準備をしている内に全員揃ったようだ。
「おはようございます。1度行った事が有るので、今日は転移で向かおうと思ってます。お昼は特別にへステア館を空けてもらいました。」
その言葉にスターさんの目が輝く。
「ホントですか?ありがとうございます!あっ、じゃあ登録用の書類も持って行きますね。」
「どうしたんだスタールーンは?へステア館に何かあんのか?」
「それはお昼のお楽しみです。」
戻って来たスターさんと全員で釣り場へ転移。サーシャさんが目を回していたが、釣り場に着いた事を告げるとすぐに復活した。
「では早速、使い方を教えて行きます。先ずは糸を人差し指で押さえて、リールのココを起こします。そして…」
実践しながら教えた事で、すぐに全員が使い方をマスター。さてはみんな、やってんなぁ?
並んで釣りをしているとサーシャさんにヒット!
流石釣り好き。落ち着いてリールを巻いていき、メータークラスを釣り上げた。
「やったぁ~!自己記録です!凄いです。こんなにすぐに!」
喜ぶサーシャさんにフィッシュグリップの使い方を教えて、針を外して上げる。
それを見ていた2人が悔しそうにしている。
「この釣り方だと移動も楽です。魚が居ない所に投げ続けるより、居そうな所に移動した方が確率高いですよ。」
そう言うとサーシャさんも含めて移動して行った。俺はこの前釣った分も消費出来て無いし、みんなのフォローに回ろう。魚も腕輪に仕舞っておけるし。
そんなこんなでもうすぐお昼。ゴネるサーシャさんを何とか諌めてへステア館へ。
「ヘルムートさん、ただいまです。皆さんお連れしたので、よろしくお願いします。」
「はい、その様子ですと大漁でしたかな?準備は出来てますのでそちらに掛けてお待ち下さい。」
ヘルムートさんの料理を皆で堪能した。パンの柔らかさに驚き、美味しい料理に感嘆し、プリンにうっとりとした顔を浮かべる。
ローリィさん、キモいぞ!
「いやぁ~タマゲた。ここの飯食っちまったら他の店の料理何か食えねえぞ。」
「残念、ここは宿泊客にしか料理出して無いよ。」
俺が告げるとローリィさんは固まった。
「マジかよ!オレはここんちの子供になりてぇ!」
「プリンだけでもどうにかならないでしょうか?」
スターさんも必死だな。仕方ない、手助けしよう。
「ヘルムートさん、1日限定5組の完全予約制、とかにしてみたらどうですか?プリン1つで銀貨取れますよきっと。」
「しかし、頂いた砂糖はもう残り僅かです。なかなか手に入らない物ですし、やはり難しいですね。」
「砂糖は商業ギルドで何とか致します!お願いします!」
おお…スターさん、ホントに気に入ったんだな。
「……では、お作り致しますが、販売はギルドの方で行って頂く。と言うのはどうでしょう?こちらで全て行うとなると、どうしても宿の方の手が足りなくなってしまいますので…。」
「わかりました。販売はギルドにお任せください。それとは別にこちらの書類の確認をお願いします。」
スターさんはプリンのレシピと香料のレシピの確認の話しを始めた。
俺達は挨拶をして退店。商業ギルドに向かう。
ギルドで皆のサーブルを出し、スターさんの分は冷蔵庫へ。
何と、商業ギルドには大きな冷蔵庫の魔導具があったのだ。
魚を受け取り、ローリィさんも冒険者ギルドへ帰っていった。
「スターさんがあんなだし、リールの話しはまた後で、かな?俺は一旦島に戻るよ。」
「何言ってるんですか!まだ耐久性のテストが済んでません。戻るなら湖ですよ!」
サーシャさんに押し切られ、夕方まで釣りに付き合った。
「いやぁ~楽しかった。見た事無いサイズがバンバン釣れるんですもん。調子に乗って釣りすぎちゃいました。」
「こんなに釣ってどうするんです?どこか売れる所があるとか?」
「売れないですよ。食べたかったら釣りに行けば良いし、知り合いから貰う事も有りますし。」
「ホントにどうするんです?干物にしても限度がありますよね?」
「食べきれない分は知り合いに配ったり、孤児院に配ります!あ〜でも流石に多すぎるかなぁ…」
「これからですか?まぁ、とりあえず一緒に孤児院に行ってみましょうか。」
サーシャさんと孤児院へ向かう。もう暗いから急ぎ足だ。
孤児院はへステア館の割と近くにあった。教会に隣接して建てられているが、教会も孤児院もあまり綺麗じゃ無いな。
「すいませ〜ん」と玄関から声を掛けると、中からちっちゃいお婆さんが出てきた。
「なんだい、サーシャじゃないか。こんな時間に何の用だい?」
「食糧の寄付に来たよぉ。サーブルが30匹位なんだけどいる?」
「バカ言ってんじゃ無いよ!こんな時間に魚30匹だって!アタシに徹夜仕事しろってかい?年寄りは労るもんだって教えたろうが!」
婆さんぶち切れだな。まぁ俺もこれは酷いと思う。前世でやられたら嫌がらせだと思うもんな。
「どうせ時間も考えずに釣りしてたんだろ。まぁいい、2匹だけ引き受けてやる。次はもっと明るい時間に来とくれ。」
腕輪から2匹渡し、これから捌くのならと、手伝いを申し出る。
「あんたサーシャの彼氏かい?この釣りバカをどうにかするのもあんたの仕事だよ。 まぁいい、入りな。」
否定する時間もなく、孤児院のキッチンへと通された。
違う、婆さん!俺も被害者だ!
一緒にサーブルを捌きながら婆さんと世間話、ちゃんと彼氏じゃ無いと否定しておいた。
そして俺は大変な事に気付く。別に急いで渡さなくても腕輪に入れておけば良かったのだ。サーシャさんにも伝えた所、余ったサーブルは全て俺に押し付けられた。
まぁ悪くならないから少しづつ食べていこう。時間を空けて孤児院に持って行っても良いしな。
サーシャさんを送り、へステア館へと帰った。
帰ったらヘルムートさんにプリンのレシピの分配や、香料の登録でとても感謝された。あれは2人の合作だし、ヘルムートさんが研鑽を続けたからこそ、あの味になった訳で、前世の記憶で作り方を知っていただけの俺は少し胸が痛んだ。




