46話目 まだオークション
ブレナンさんとの話しが終わり、スターさんの方を見ると、既にプリンの無くなった皿を寂しげに見つめていた。
「スターさんも何か話しがあるんですよね?」
「ん、あ、ああ。だが商会を立ち上げ無いとの事でしたので、私からは特に無くなってしまいましたね。後は商業ギルドに口座を作って頂くくらいですね。」
「口座ですか?お金を預ける?」
「ええ、オークションの支払いは額が大きい為、防犯をかねて口座での取引になります。リョータさんは特級職人のギルド証をお持ちなので、口座開設費用は無料になります。魔力承認の登録だけですね。」
「じゃあそれをお願いします。あと、このプリンですが、レシピの登録をお願い出来ますが?」
「公開して頂けるのですか!?是非お願いします。すぐに書類を用意しますので少々お待ち下さい。」
スターさんは食い気味に言って部屋を出て行った。
「そんなに美味いのかこれ?」
ここでブレナンさんとナルミさんが初めてプリンに手を伸ばした。
「なんじゃこれは…口の中に広がる甘み、ソースのほろ苦さもたまらん。何よりこの柔らかな食感。美味い。これは美味い!」
「なんとも言えない香りも凄いです。これが芳醇な香りってヤツなんでしょうね。これ、私が頂いちゃって良かったんでしょうか?」
そうだろうそうだろう。店主さん監修のプリンは絶品だろう。
2人の反応を眺めているとスターさんが戻って来た。
冷静で計算高いイメージの彼女が肩で息している。
「お待たせいたしました!こちらに記入お願いします!」
「ありがとうございます。この名前の所なんですが、へステア館の店主さんにも手伝って貰ったんですが、2人書いちゃっても良いんですかね?」
「もちろん大丈夫です。レシピの内容から分配を決めさせて頂きますので、後ほど説明をお願いします。」
あ…店主さんの名前知らないや…ナルミさん知ってるかな?
「ナルミさん、へステア館の店主さんの名前って知ってます?」
「ああ、ヘルムートさんですよ。知らなかったんですか?」
「いやぁ、ずっと店主さんて呼んでたもので…」
笑って誤魔化して記入を続ける。
レシピを書いているとスターさんが覗き込みながら何やらブツブツ言ってるが気にしない。
「出来ました。*のマークが付いている所がヘルムートさんの発案した部分ですね。」
「なるほど、調理工程はほぼリョータさん、味や香り付けにヘルムートさんですね。おそらくですが7対3程の割合になると思います。あの香りはニーラの実をガム酒に漬け込んだ物なんですね。これはこれだけでも登録出来そうです。後ほどヘルムートさんにお話しを伺って見ます。へステア館に行けばプリンは頂けるのでしょうか?」
「いや、あそこは宿泊客にしか料理を出していないので。ただ、そんなに手の係る料理でも無いので交渉次第じゃないでしょうか?」
「明日にでも人を使わせます。いえ、私が…いや…釣りに行くんでしたね。」
「帰ったら話して起きますよ。明日釣りが終わったら一緒に行きましょう。」
「ありがとうございます。そろそろオークションの時間ですね。会場に案内します。」
スターさんについて行くと、先ほどの大ホールの隣がオークション会場になっていた。作りは大学の教室見たいな感じ。落札する為のプラカード見たいのを渡された。
「え?あの剣が白金貨40枚もするの?」
「総ミスリル製の大剣ですね。作者も王都でも1、2を争う工房の者ですから妥当かと。」
「真珠のピアスが白金貨15枚?」
「真珠は希少価値が高いですから。粒も大きく形も美しいですからね。普段なら18枚から20枚の値が付きますよ。」
「なんであの本が白金貨55枚もするの?」
「過去に召喚された勇者の物みたいですよ。書かれている文字は読めませんが、鑑定の結果判明したそうです。実用性はありませんが、コレクションされてる方も多いので人気の商品です。」
「勇者、召喚さてれたんだ。ワンチャン俺読めるかもね。」
「…確かに可能性はありますね。リョータさんも島ごとこの世界に召喚されたみたいなものですし。この後ご覧になりますか?」
「いいの?落札した人怒らないかな?」
「お渡しする前に再度鑑定を致しますので、その時に立ち会うくらいなら問題ありませんよ。あ、次がリョータさんのグラスですね。」
「おお…幾らになるかな?緊張してきた。」
白熱した。
…160枚になった。どこぞの辺境伯が白金貨160枚で落札していた。
確かギルドの手数料が、白金貨100枚を超える取引だと一律で白金貨5枚、残りが俺に支払われる訳だ。
白金貨155枚。
日本円で15億5千万円。
マジか…グラス2つぞ?この世界の貴族の金銭感覚どーなってんだ!
「こんなグラスにお金掛けるなら、領地の開発に使ったら良いのに…」
「ふふ、まさにその通りですね。しかし、ここで大金を使う事で自分の領地が栄えている。自分の領地は豊かである、と言う喧伝にもなるのです。」
「移住者や商人が集まってくると?あの辺境伯の領地ってどの辺にあるの?」
「リョータさんの領地の山を越えた先ですね。大きな港があり、他国との貿易も盛んです。領地には広大な平原もあり、王国内で最も人口の多い領地になりますね。」
「なるほど、獣人奴隷が居なくなった穴埋めに必死と。」
「ええ、この国の辺境にあり、周囲の空白地帯から多くの獣人を奴隷として集めております。少数ですが、ドワーフ、マーメイドやエルフなどの奴隷もいるみたいですよ?」
「ドワーフやエルフも居るんだ。獣人達と仲良くしてくれると良いけど…」
「…? 奴隷解放は獣人のみと聞いていましたが?」
「え?あっそっか!?じゃぁマーメイドやハーピィも?」
「ハーピィは鳥人族になりますが、広義的に獣人族になります。ですがマーメイドは違いますね。
マーメイド、ドワーフ、エルフ等は亜人種として、マーメイド族、ドワーフ族、エルフ族として扱われ、今回の解放からは外れます。他にもナーガ、ドラゴノイド、ジャイアント、スノーマン等々がおります。まぁ奴隷にしたという話は聞きませんが。」
「えぇ~、マジかぁ…。ブレナンさんに相談だなぁ。」
「…しかし、かなり厳しいと思いますよ。今でさえ反発は大きいですから。最悪、力のある地方の貴族が国を割るかも知れませんね。アルべール辺境伯など最有力です。」
「グラス買ったとこ?」
「はい。彼処は元々アルベール王国として独立しておりました。数代前の当主が争いを嫌いヨークデリアに降り、辺境伯家となりました。その際領土が削られ、そこをヨークデリアの貴族家に奪われています。山間の平地を押さえられ、蓋をされた形になったのです。そのため、港を作り他国との貿易に力を入れた結果が、何処よりも栄える結果になったのは皮肉ですね。」
「マジかぁ…でも、攫われてきた奴隷って事には変わらないんだよね?どうにか自由にしてあげたいね。何人くらい居るんだろう?少ないなら全員買っちゃおう。」
「マーメイド、ドワーフ、エルフの3種は奴隷の中でも高額な種族になります。特にドワーフは鍛冶や建築、エルフは錬金術に魔法薬作成で人種より遥かに優れ、1人居ればその貴族家は繁栄すると言われる程の価値があります。簡単に手放すとは思えませんね。」
「金じゃ買えないって事ね。」
「ええ、そうなります。そろそろ商品の引き渡しが始まりますので移動しましょう。勇者の残した本の事が何か分かるといいですね。」




