45話目 オークション
早朝、窯が気になっていたのか、自然と目が覚めた。へステア館の部屋から直接転移。
だいぶ煙は収まって来ていたが、念のためもう一度薪を放り込んでから空気口を塞ぎ部屋へ戻った。
なんと、今日の朝食はピザトースト。
流石だよ、アンタやっぱり半端ないって!
さて、今日がオークション開催日。ブレナンさんが迎えを寄越すと言っていたが時間を聞いていなかったが、勝手な想像で午後の2か3の鐘の頃だとあたりをつけている。なのでそれまでがヒマだ。
多分ブレナンさんとスターさんは会場に来るだろうから、何かお土産でも用意しておこう。
って事で店主さぁ〜ん!
プリンを作りますよぉ!
材料は牛乳と卵と砂糖、後は店主さんがフレンチトーストの時に使ってた香料。
店主さんのサポートを受けつつあっと言う間に大量生産。
冷ましてる間にカラメルソースも完成。
昼食の後に娘のエリスさんと一緒に試食。
うん、完璧!こっちの世界の方が牛乳も卵も濃厚で日本のプリンよりも俺好みだ。
「ふあぁ…美味っしい…」
エリスさんも気に入ってくれた様で顔が蕩けてる。
「リョータさん、このレシピは公開なされないのですか?」
店主さんが目を見開いて言う。
「ん?レシピの公開?」
「はい、商業ギルドにてレシピを登録、公開しますと、その料理はリョータさんの料理として登録され、レシピを使うお店から使用料が受け取れます。砂糖以外は誰でも簡単に手に入る素材なので、登録すればかなりの額が毎年貰えます。」
「そーなの?じゃぁ柔らかいパンも?」
「パンは既に広まってますので、改良されても認められないかと思います。ですがこのプリンは別です。全く新しい調理法で作られてますので、必ず登録されるでしょう。」
「じゃあオークションが終わったらスターさんに相談してみるよ。このお店にも少し入るようにしておくね。」
「…いえいえ、そうゆう訳には…料理人として当たり前のアドバイスしかしておりませんので!」
「でも、そのアドバイスのお陰で俺が作るよりずっと美味しくなったんだから、遠慮しないで受け取って下さい。レシピの登録なんて知らない情報も教えて貰いましたし、ね。」
そこでへステア館の扉が開き、ブレナンさんの使いの方が入って来た。
「失礼、ブレナン様の使いでナルミディアと申します。こちらにリョータ サワダ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「あぁー門番さん。お久しぶりです。すぐ用意しますのでちょっと待ってくださいね。」
冷やしたプリンを腕輪にしまい…エリスさんが残念そうな顔でこちらを見ているので少し残して腕輪にしまい、ナルミディアさんに着いて馬車に乗り込む。
「ナルミディアさん、改めまして、リョータ サワダです。今日はわざわざお迎えありがとうございます。」
「ナルミで良いですよ。そっちのが呼ばれる慣れてるので。軍だと長い名前は略されるんです。あと、そんなに畏まらないで下さい。私はただの1兵士です。緊張してしまいます。」
「わかりました、じゃあ俺の事はリョータで。俺もあんまり得意じゃないんだ。」
「助かります。オークションが始まるのは2の鐘が鳴ってからなんですが、事前に出品される商品を確認する時間が有ります。見に来た方に商品の説明をしても良いですし、他に出品される物を見に行っても大丈夫です。それぞれ警備の者が付きますので。」
ナルミさんから説明を受けていると、オークション会場に到着した。
場所は商業ギルドの大ホール。
今回は俺のグラスが出品されるので、お客さんは多いが出品者は少ないらしい。
高額商品が被ると値が上がりづらいんだって。商人さんは抜け目ないね。
出品するグラスは説明の必要が無いので、他にどんな物が出ているか見て回る事にした。
毛足の長い綺麗な銀色の毛皮や、派手な装丁の本、ミスリルの剣に紫の大きな宝石、大粒の真珠のピアス。
どれも必要ないな…しかし此処に並んでいる物は全てが白金貨以上の価値があるんだよな。真珠なんか再生魔法があれば作り放題だぞ?
「サワダ殿、こちらにいらっしゃいましたか、何か気になる物は御座いましたか?」
「これはブレナン殿、どの商品も素晴らしいですな。この国豊かさを反映しているようではありませんか。」
「サワダ殿にそう仰って頂けるとは…王や宰相にもお伝え致しましょう。さぞお喜びになる事でしょうな。」
「もう、何時までこの茶番を続けるのさ?何か話しがあって来たんじゃないの?」
「ええ、ここでは何ですから、着いて来て頂けますか?部屋を用意しています。」
ブレナンさんに着いて商業ギルドの奥へ進むと2階の1室に案内された。
「やあ、リョータさん。オークションは楽しんでるかな?」
「スターさん!この間はどうも。商会の件は一旦忘れて下さい。獣人達に反対されちゃいました。」
「そうでしたか。よろしいのですか?」
「ええ、獣人の為に作ろうと思い付きましたが、獣人が望んでいないなら強制は出来ません。」
「したくありません。ではなくて?」
「そうかも知れませんね。
そうだ、お土産にプリン作って来たんですよ。話しは食べながらしません?」
「あら、じゃぁお茶を淹れますね。どうぞお掛けになって。」
「何でワシを無視して話しを進めてるの?プリンってなんじゃ?スターは知っとるのか?」
「まあまあブレナンさんも座って。プリン出しますからね。ナルミさんも立ってないで座ったら?一緒に食べましょう。」
壁際で護衛みたいに立っていたナルミさんにも声をかける。
プリンを容器からひっくり返して出し、カラメルソースをかける。スターさんがチラチラみてるな。気付いてるぞ。
「あら、甘い良い香りね。」
ワゴンに紅茶を乗せてスターさんが戻って来た。
「準備も整いましたし、お話しを聞かせて貰えますか?」
「では、まずワシから。
既にスターから聞いていると思うが、ベルナルド侯爵の件だ。
調査の結果、彼は白だ。ナファソ侯爵夫人の工作が認められ、彼女もそれを認めた。
今後ナファソ領からも獣人奴隷の解放が行われる予定だ。
問題はジルベルト侯爵の方だな。奴隷の解放に難色を示しておる。理由は解放後の獣人の生活に不満があるそうでな。獣人の人権については肯定的ではあるが、解放は認めない。と言う訳だ。」
「奴隷から解放されるなら俺は文句無いよ。獣人達がそれで良いなら、俺がとやかく言う事じゃない。元々の扱いも悪く無かったみたいだしね。」
「うむ、あそこは夫人が獣人の子供達を保護したのをきっかけに、その家族ごと奴隷としたらしい。扱いも下手な平民よりよっぽど贅沢な暮らしぶりだ。獣人達もそれを望むだろう。」
「そっか。ナファソ夫人はほっといて良いの?」
「そこが悩ましい所ではあるが…流石に侯爵家を潰す訳にもいかん。夫のナファソ侯爵本人が純朴な善人な事もあり、大した罰は無いだろう。ジルベルト侯爵家への謝罪と夫人の蟄居位になるだろう。元々あの夫人は蟄居してた様なもんだったがの。
夫人の情報に有った下級貴族は見せしめに潰されるかも知れんがな。その件で王より金子を預かってきている。」
「金子?お金ってコト?いらないよ。俺は侯爵邸の前で騒いだだけだもん。」
「しかし、王家としては内乱を事前に治める事が出来た。礼の1つも無し、というのもいささか体面が悪かろう?」
「だったら、南門統括のブルートさんに渡してあげてよ。国を心配して俺に相談してきた人。」
「前に話した時も出てきましたな。うむ…王に話しておきましょう。」
「街門からかなり離れた所に転移したのに、すぐに気付いて騎馬で駆け付けて来たからね。真面目で優秀な忠臣。大切にしなきゃダメだよ?」
「わかりました。それでも王が是非に、とおっしゃった場合はお受け下さい。私が怒られます。」




