41話目 黒犬族のガル
「それでは、新たな住民を歓迎して。
かんぱぁ〜い!」
「「「「「乾杯!」」」」」
さぁバーベキューだ!精米を終えた後、竈を増やしていたら白狼族やハーピィさん、マーメイドさん達が準備を手伝ってくれた。俺が居ない間にも何度か開催されていたようで、みんな手つきが熟れてきていた。新住民も竈に火を入れたり、出来る事を各々が手伝っている。
マーメイドさんは新たに加わったメンバーと共に思い思いの魚介を大量捕獲。白狼族の皆さんは渡した肉を手際よく薄切りに、ハーピィさんは果物を用意してくれた。
果物は不味いかなぁ…とも思ったが、せっかく用意してくれたので、みんなで分ければ大して影響は無いだろうと思い、何も言わなかった。
コレットさんがジト目でこっちを見ているが気にしたら負けだ。
ウィル達3人には新住民に、果物は普段はハーピィさん達に譲って、ダンジョン内の食糧を食べている事。今回は歓迎会の為に特別に用意して貰った旨を話して貰っている。
「新参者がルールを破ると大変な目に遭うよ?」と軽く脅して…ゲフンゲフン、島のルールを教えて貰っている。
まぁダンジョン内にも森の恵みは沢山あるので、態々島の果実に執着する事も無いだろう。魔法に至っては使える事を知らなければ使わない。使い方も知らないだろうし、鑑定しなければ気付く事も無いだろう。
今回は白狼族が生活に慣れてきた事もあり、パンとスープも用意されている。
ちゃんと魚介のアラからしっかり出汁をとった野菜もたっぷりの具沢山スープ。もはや鍋に近い。
あぁソーセージ入れたいな…絶対美味しいポトフになる。ソーセージもいずれ作ろう。忘れそうだな…色々やりたい事が多すぎて…メモでもとっておければ良いんだけど、筆記用具が無いんだよな…
忘れなかったら買っておこう。
「リョータ様、今お話ししても大丈夫でしょうか?」
考え事をしていた俺の前には6人の新住民とウィルが来ていた。
「おう、楽しんでるか?酒でも足りなくなったのか?」
「いえ、この者たちがリョータさんに礼を言いたいとの事で連れてまいりました。」
「我々を受け入れてくれてありがとう。美味い酒に大量の食事、みんなを代表してお礼を言いに来た。」
「気にしなくていいぞ。それよりちゃんと飲んでるか?お前らの歓迎会なんだ。楽しまなきゃ損だぞ?」
軽い口調で、「今は飲もうぜ。」とグラス(木製)に酒を注いで周る。
「……分かった!飲もう!今日は難しく考えるのはヤメだ!お前らも飲め!向こうから肉も貰ってこい!」
そう言うと俺の隣にドカッと座る。
「白狼族の連中から粗方の話しは聞いている。ダンジョンに食糧があふれてる事もな。普通もっと欲をだすだろ?俺達の大将は底抜けのお人好しか、アホかのどっちかだぜ。」
「ははは、別に大将って訳でも無いしな。」
「なんでだよ!?元々アンタが暮らしてた島なんだろ?ソコに住まわして貰うんだ、アンタが大将だろう?」
おお…アンタが大将!ってか?昔を思い出させるじゃないか。
でもどうなんだ?島に住んでたからって俺の島って事にはならないんじゃないか?あぁ…そーいえば島と、海岸線の森は正式?に俺のになったんだっけ。
「まぁそーなのか?でも傅かれたりされても落ち着かないし、たまにお願い聞いてくれたらそれで良いぞ?あっ、もちろん揉め事は起こすなよ?」
「もちろんだ。リョータさんこそ、俺達に遠慮はいらないからな。何でも言ってくれ。」
「ありがとう。だが、今日は難しい話は無しだ。心ゆくまで食べて、飲んでくれ。」
「黒犬族のガルだ、改めてよろしく頼む。」
そう言って右手を差し出してきたので、ガッチリと握手をした。
そうしている内に肉を取りに行った連中も戻って来たので、竈を囲み共に酒を飲む。
これからは自由に暮らせる事に大いに喜び、中には気になる相手にプロポーズをすると鼻息荒く語る者も…
「今までは考えられなかったが、これからは所帯を持って子供を作る事も出来る。みんなが落ち着いたら結婚を考える奴も増えてくるだろう。先を越されないようにしないとな。」
「結婚ラッシュか…こっちでも結婚式とかやるのか?」
ガルにこの世界の結婚について尋ねてみた。
特に決まりは無く、身内だけでパーティーをやる程度。役所に届けも出さないらしい。
そもそも戸籍の概念も無いみたいだ。獣人だからかな?先ずはソコからかなぁ…食に困る事は今後無いだろうから、医療と教育も充実させたい所だ。医療は再生と浄化の魔法で何とかなるか?教育は…町で本屋でも覗いてみるかな?
昼過ぎから始まった歓迎会は終わる気配が全く無いので、俺はクラウンと共に王都へ戻る事にした。
貴族用の門をくぐり、クラウンを預けてへステア館を目指し歩いて行く。
う〜ん…門から結構距離があるなぁ。
前回は王城にまっすぐ向かった為気にしなかったが、通りには多くのお店が出ている。
この世界に来てから、市場位しか見てなかった事に気付き、通りに並んでいるお店を見て周る事にした。
まず目に付いたのが本屋だ。
だが、本は高価らしく、日本の本屋とは作りが全く違っていた。
入るとすぐにカウンターがあり、本はその奥。店員に希望の本を伝えて用意してもらい、望む物があれば購入。
こちらの知識の無い俺にはちょっとハードルが高かった。もちろん立ち読み何か出来るはずも無く、2、3ページめくって購入するか判断するようだが、必要な知識が書かれているかの判断は出来ない。
一応、薬草や魔物の図鑑の様な物を、と頼んでみたが、文字が殆どで図解はほんの一部、あまり役に立たなそうだ。
まあ、鑑定モノクルがあるし、気になる物があったらモノクルを使おう。
他にも獣人達の学習用に絵本見たいな物が無いか聞いてみたが、この世界では子供に本を読ませる事は無いみたいだった。
う〜ん…木から紙が作れたら、子供用に絵本でも作って見るか…
次に気になったのは店先に武器や防具が並んだお店。
冒険者用のワーク◯ンだろうか。
野営用のテントから下着、武器に防具に食器やカラトリー、保存食に固形燃料に狼煙なんてのも置いてあった。
固形燃料は価格も安く、長時間使えるとの事でお試しに幾つか購入。使い勝手によってはバーベキューで活躍してくれるだろう。
武器や防具にも気になる物はあったが、良い物は鍛冶屋に依頼して、オーダーメイドが一般的らしい。
店を出るとすぐ隣が冒険者ギルドだった。オークションまでまだ日にちもあるのでどんな依頼が有るのか覗いて見る事にした。
ここもスイングドアでは無く、普通に両開きの扉だった。中に入ると、少し広いくらいでディニクの冒険者ギルドと同じ様な作りになっていた。正面に依頼の掲示板、左が受付、右手に食堂。
早速正面の掲示板でどんな依頼があるのかを見てみる。
中途半端な時間な事もあり、貼り出されている依頼はかなり少なく、報酬も低い物が多い。中には何時貼り出されたのか、かなり傷んでる依頼書もちらほら。
溝さらいや草むしりなんてのもある。
渋い顔で依頼書を眺めていると、受付から声がかかった。
「この時間だと、殆ど残ってないですよ。午前の1の鐘で貼り出して、割の良い依頼は争奪戦になっちゃいますから。」
「ああ、すぐに依頼を受けようってんじゃないんだ。王都は初めてでね、どんな依頼が有るのか下見見たいなもんさ。」
「そうでしたか。他の街に比べると討伐依頼は少ないですし、薬草採取にしても採取場所まで遠いので、王都は冒険者さんには稼ぎづらい街なんですよね。まぁ私はヒマなので助かってますがね。」
「そっか。そりゃそーだよな。王都周辺に魔物がいたら騎士団が動くだろうし、そもそも魔物が多数いるような土地に王都なんか作らないよな。」
「そーゆーことです。ギルドに依頼出すより、衛兵に報告すればタダで済みますからね。なので依頼は雑用見たいなのが殆どですね。」
「じゃぁ今日は周辺の地図だけ買っていこうかな?」
「薬草採取ですか?」
「いや、馬を走らせるのにいい場所とか、釣りが出来る水辺は無いかなと。」
「でしたら北東方面ですね。」
そう言って地図をカウンターに広げた。




