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ディニクの港から市場は近い。河を使った交易も有るのだろう。
以前訪れた市場で、気になった物を買い込んで行く。もちろん米の追加も忘れない。
「よう、兄さん。相変わらずのお大尽っぷりだね。」
米を買い占めた商人から声をかけられた。
「おう、イネの実は有るかい?有るだけ買わせてくれ!」
「もちろんさ!兄さんの為に仕入れた様なもんだからな。しかしこんな量、一体何に使うんだい?ちょっとした軍隊が2ヶ月は食いつなげるぜ?」
「保存も効くからな。それに精米して炊いてやると旨いんだよ。」
「せいまい?たく?茹でて食べるのとは違うのか?」
「ああ、周りの黄色っぽい部分を削ってやってから、イネの実より少し多めに水を入れて火にかけるんだ。火加減が難しいが、ふっくらしてほのかに甘くて美味いぞ。」
「一粒ずつ削るか?ずいぶん面倒な事をするんだな。」
「そこは水車を上手い事使ってな。」
「なるほどな…なぁ、その精米ってのをしたヤツの手持ちは有るかい?」
「炊いたイネの実を握り飯にしたヤツなら少しあったな。ほれ。」
「いいのか?じゃあ遠慮なく…
おお、確かにこれは良いな。片手で食えるし、これなら屋台でも売れそうだ!」
「今回は塩をまぶしただけだが、中に色々な具材を入れても美味いぞ。焼き魚の解したのとかな。」
「…なぁ兄さん、幾らか精米したヤツを売ってくれないか?2割増しで!」
「いや、精米するとその分量が減るんだよ。4割増しなら良いぞ。」
ホントは1割位しか減らないけどね。手間賃だ、手間賃。
「わかった!その代わり、炊くってヤツを教えてくれるか?」
「良し売った。精米したら持ってくるよ。炊き方もその時で良いか?」
「ああ、最初は2袋分で頼む。」
さて、必要な物は買えたし、そろそろ良い時間だな。ギルドに向かおう。
途中の広場に荷物を抱えた獣人が集められていた。
ちょっとガラの悪いのもいるな…
あっ、ガラの悪いのは腕輪やら首輪してる。彼奴等連れてって大丈夫か?
「よう、広場に集まってるのがそーなんだよな?」
ギルドに戻った俺はカウンター越しにギルマスに話しかける。
「1部に隷属の腕輪やら首輪してるのが居たけど、あれは何かやらかしたのか?」
「ああ、基本首輪は犯罪奴隷、腕輪は戦奴だ。引き渡しの時には外すみたいだぞ?」
「犯罪奴隷ねぇ…」
獣人の扱いを見れば、言い掛かりで犯罪者にされた者も少なく無いんだろうが…白狼族と揉めないと良いけど…
「大した罪を犯した訳じゃないぞ?獣人じゃなければ罰金で済むレベルだ。ホントにヤバい奴らは処刑されてるって話しだな。おっと、別に獣人だからって訳じゃないぞ。同じ事をすれば人間だって吊るされる。」
「あぁ…なるほど、見た目ほどの悪人では無い、と…なら大丈夫かな?連れて行くから準備してくれ。」
〜〜〜〜〜
「おーし、みんな話し聞いてくれ!これから全員、奴隷から解放される。文句あるって奴はいるか?今までの生活のがいいって奴がいたら手を挙げてくれ……いないな?」
既に今後の流れは聞かされていたのだろう。解放されると聞いても驚いた様子は無く、期待に満ちた目で此方を見つめている。
「では!これから新たな街に転移します。小さいお子様連れの方はしっかり手を握ってあげてて下さいね。行きますよぉ…転移!」
島の西南、宴会の時に作った竈が並ぶ辺りに転移した。
「は〜い、到着で〜す。置いてきてしまった人は居ないですかぁ?周りに居た人が居なくなったよ!って言う人が居たら教えて下さい。獣人じゃ無い人が付いて来ちゃってるよってコトは無いですか?街の人が巻き込まれてたら教えて下さいねぇ。」
急に遊園地のスタッフさん風口調になったオレに戸惑いながら、周りの人達を確認している。
すると後方から人間が混ざっていると報告があり、そちらに向かうと…
「リョータさん!ここがリョータさんの島なんですね。温かいし、海綺麗だし。良い所ですね。リョータさんのお家は何処なんですか?私の部屋は有りますかねぇ?まぁ無くても問題な「転移!」」
ミリーちゃん…
「まったく、前は素っ気なかったのに、リョータさんがお金持ちって分かった途端に態度変えちゃって!さぁリョータさん、私達の新居に案内して下さ「転移!」」
アマンダさん…
「あら、今日は私から相手してくれるの?嬉しいわ、さぁ行きま「転移!」」
ケリーさんまで…
「も、もう巻き込まれた方は居ないですかね?では、皆さんの新居に案内します。白狼族の皆さんが既に暮らしてますので、細かなコトはその方々な聞いて下さい。」
ダンジョンに向かって歩き出すと、ゾロゾロとついて来る。竈が並んでいた為、ここで暮らすのかと思っていたのか、「家があるのか?」「いや、見える範囲には無いぞ?」など困惑しているようだ。
ダンジョン前の岩場にはウィル、ネロ、ジャックの3人が待っていた。
「よう、お疲れさん。ディニクの街で奴隷にされていた獣人達を連れてきた。ダンジョンの街迄の案内と、家の中の魔道具の使い方なんかを教えてやってくれ。あとは…仕事の割り振りかな?まぁ良きに計らえって事でよろしくね。」
「かしこまりました。戦える者もそれなりに居るみたいですね。周辺や隣のダンジョンの探索も進みそうです。」
「うん。安全第一で頼むよ。あと、夜には浜辺でバーベキューしようか?肉は有るから、魚介を採ってくるかな?」
「では早速彼らに頼みますか。イタチやタヌキを祖とする者も居るようです。我等よりも上手く漁が出来ましょう。」
オレにはどの人がどの種族か分からないが、この世界の住人は一目で分かるらしい。ウィルへの丸投げに成功した俺は、早速仕入れた玄米を精米すべくダンジョンの水車へ向かった。




