31話目 乗馬
ギルドを出て宿を探す事にする。
余り安い所には泊まらない、というかとまれない。現代人を舐めるなよ!
ダニとか絶対いるだろ!ってベットじゃ眠れない。
板の間に10人雑魚寝とか何処の国の監獄だ?
目安としては風呂付きの宿だ。この世界で風呂は贅沢品。それがある宿なら、衛生面は大丈夫だろう。
王都がこの街からすると北側に有るので、北門付近で宿を探す。入口に警備員見たいな人が立ってる宿が有ったのだが、服装からか中に入れて貰えなかった…
騒ぎを聞いて中から人が出てきたのだが、「当店の格に相応しくない。」とかいわれたよ…ぶっ飛ばすぞ!
とは言わず「風呂付きの、私に相応しい格の宿を紹介頂けますか?」
と優しく尋ねる。商業ギルド発行の身分証を見せながらね!
その場に居た全員が顔を青くして謝罪し、「是非当店に!」なんて言って来たが断る。斜向かいに有る宿の店主が一部始終を見ていたらしく、満面の笑みで話し掛けてくる。
「災難でしたな。私はそこの宿を営む者です、良かったらウチは如何ですかな?部屋風呂付きで寝具にも拘らせて頂いております。何より変わった酒を集めるのが趣味でして、是非ご賞味頂きたい。」
「なるほど、面白そうですね。では1泊お願いします。」
「ありがとうございます。ではこちらへ、お部屋に案内させて頂きます。」
部屋は2部屋、リビングと寝室って感じになっていた。風呂は部屋風呂にしてはかなり広く、2人で入っても広々使えるだろう。
ベットにはパリッとした清潔なシーツ、試しに横になると硬過ぎず、柔らか過ぎず、枕も向きによって高さが違っていて自分の好みに合わせられる様になっている。これで銀貨6枚とは…安すぎないか?宿の相場が解らん!
暫く部屋で寛いでいるとドアがノックされる。
店主さんが一緒に飲みましょうと誘いに来てくれた。
まだ日は沈んで無いが、今日はこの後予定は無い。店主さんもオレの話しを聞きたいと早めに仕事を片付けてきたそうだ。
「するとサワダ様はガラス職人という事ですか?ガラス職人の特級など初めて聞きましたな。」
「そーなんですか?ガラス職人って少ないんですかね?今回北門付近に宿泊するのも、取引の有るお店に新作を持ち込んだら、王都のオークションを勧められたからなんですよ。」
「なるほど、それ程の技術をお持ちという事ですね。よろしけば拝見させて頂いても?」
「構いませんよ。折角ですし、今日はこのグラスを使って飲みますか?」
グラスを2脚取り出しながらそう提案する。
店主さんは息を呑んで狼狽する。
「……イヤイヤ、サワダサマ!?このグラスで酒を飲むのは憚られますって!それに絶対酔えないじゃないですか!…しかし美しい!形は真円にしか見えませんし、こんなに鮮やかなグラスは見た事無い!しかもこの細工、これは削って付けているのですか?欠けも無く良くこの様な見事な細工を、一体どの様に…」
店主さんが夢中になってグラスを眺めていたので、オレは緑色のグラスに手酌で先に頂くことにした。
林檎、蜜柑、梅に似た果物から作られている様だ。この世界のお酒としてはかなり飲みやすく、アルコールも控え目。うん!美味しい!
その後もおすすめのお酒、夕食を頂き、ゆっくりお風呂に浸かってから就寝となった。お酒の代金を払おうとしたが、良いものを見せて貰ったから。と受け取って貰えなかった。
翌朝、日の出と供に起き、朝食を頂いて出発。店主さんは朝早いのに見送りに来てくれていた。
「それでは行ってきます!」
「ええ、お気を付けて。」
北門を潜り、のんびり徒歩で王都を目指す。この国はそんなに広くないので、途中には大きな街は2つ有るだけて、後は集落や村の規模しかない。徒歩でも1ヶ月は掛からないだろう。
街道を北へ、次の街まで10日程だろうか?途中山越えが有るが、まぁ体力は問題ないだろう。
時折すれ違ったり、追い抜いて行く馬車が有るが、徒歩の人は見当たらない。御者さんも変なモノを見るような目をしているし、護衛の人達に警戒されたりしている。
徒歩は失敗だったかな?馬車からの視線に耐えられず、街道を少し外れて歩く、食事は腕輪にまだまだ有るし、野営も土魔法で完璧。
港街を出て4日順調に歩いていると、街道から騎馬がこちらに向かって来た。遭難者と間違えられたかな?等と考えていたが、どうもそんな雰囲気じゃないな。
騎馬は8騎、装備はバラバラで騎士団って感じじゃないな。オレを囲む様な形で停まり一際体格の良い男が声をあげた。
「リョータ・サワダで間違い無いな?命が惜しければ有り金置いて行け。自慢のグラスもな!」
おおぅ…盗賊。大方ギルドで噂を聞いてオレを探してたんだろう。その前の決闘騒ぎは聞いてないのかな?港街だから出入りが激しいのかな?
「おい!聞いているのか!」
「ああ、ちょうど良かった。徒歩での旅は一般的じゃ無いみたいでな、馬を1頭置いて行けば見逃してやるぞ。」
「ふざけんな!おい!やるぞ!」
男は騎乗したままこちらに突っ込んで来る。が、既に他の盗賊達は対応済だ。顔を覆うように水魔法を発動させている。
落馬し藻掻く仲間を見て馬首を巡らす。が、遅い。リーダー格の男も落馬し藻掻き始めた。
全員馬から落ちたので、水魔法は解除してあげる。元気一杯に騒いでいるが、すぐに土魔法を発動させ、首まで地面に埋まって貰う。
遠目に見たら、生首が転がってる様に見えるんだろうな…
「次の街に着いたら、ここに盗賊が埋まってるから捕まえに行く様に伝えるね。」
「なっふざけんな!何日掛かると思ってんだ!死んじまうだろうが!」
「雨でも降ることを祈っててよ。神様ってヤツが赦してくれたら助かるかもよ。」
「待ってくれ!死にたくねぇ!助けてくれ!!」
「イヤだよ。懺悔しながら命懸けで神に祈れ。もしかしたら通じるかもよ。」
命乞いの言葉は絶えないが、オレは無視して街道へと馬を走らせる。まぁ明後日位に戻って来て転移で衛兵に突き出せば良いだろ。一応結界も張っておこう。
馬を走らせ街道を行く。結構速いし、目線が高い。
ヤバい、超楽しい。
風を受けて街道を疾走。食事休憩は街道を外れてお馬さんの餌になりそうな草原で食べる。土魔法と水魔法で水飲み場も作るし、横には岩塩も置いておく。
馬のテンションも心做し高い。
休憩の度に再生魔法を掛けていたからか、次の街には2日後の夕方に到着。そろそろ盗賊達を迎えに行ってやるか。




