28話目 アティラ神国
あの後2時間ほど海を眺めてから、ヨークデリアの船は帰って行った。
さて、ブレナンさんとも約束したし、暫くはヨークデリアをウロウロしよう。
でもその前に、奴隷解放をしなければ…砂糖も作れるか試したいし、河の上流に有ると言う米の産地にも行ってみたい。
沈めた船は、アティラ神国の過去の行いの報いと言う事でしらばっくれておこう。一応犯人探しもやっておいた方が良いのか?
そんな事を考えながら歩いていると、ダンジョンの前に人集りが見える。
どうやら俺が海を眺めてる間に、犯人の捜索から逮捕まで終わっているようだ。
「リョータ様、申し訳御座いません。一部の長老衆の暴走を止められませんでした。」
コレットは近付いて来ると膝?をついて頭を下げる。
「既に魔法を放った者達は捕らえております。どうか慈悲ある裁決を。」
そう言うともう一度頭を下げる。
綺麗な所作の土下座である。同族の非を認め、処罰を受け入れる覚悟が感じられる。
魔物のせいにして、しらばっくれておこうと言う俺とは大違いだな。
「それなりの理由が有ったからやった事だろう?その理由を俺は知らない。だから処罰は無しで!あと、様付けは止めてって言ったよね?」
「は、はい!リョータさん。ありがとうございます。」
「まぁ一応話しだけでも聞いておくかな?」
今回、アティラ神国の船を沈めた人達は、それは酷い扱いを受けていた。腕を落とされ、鱗なら再生すると解ると延々と鱗を落とされ続けたり、血を抜かれたり、中には妊娠中に捕まり、産まれた子は殺され、自身も身体を刻まれた者も居た。
うん。悪いのはアティラ神国の方だな。まぁ何百年と昔の話しなんだけどね。でも本人達は痛みを抱えたまま生きている訳で…復讐するくらいの権利は有って良いだろう。これが人類滅殺ってなったら流石に止めるけど、近付いて来るアティラ神国は身に降る火の粉って扱いでも仕方ないと思う。
ただ、再生魔法は受けて貰った。失った物だけを見続けていたら、いくら復讐しても気は晴れないだろうと思ったからだ。あとどれくらい生きるのかは知らないが、残りの人生?人魚生?が少しでも幸せになったら良いかな?
因みに沈めた人達に生存者は居ない。全員が水流に呑まれてドざえもんになっている。
俺に出来るのはアティラ神国の港近くまで遺体を流してあげるくらいだろう。
海の近くで育ったから、何度かご遺体の無い葬式に参列した事が有るが、あれは…何とも物悲しいから。
「この島に近付く船の判断は任せる。出来ればヨークデリアの船は見逃して欲しいが、それも絶対じゃ無くていい。国とは話しを着けたが、跳ねっ返りが突っ込んで来るかも知れないしね。」
「本当に、本当にありがとうございます!」
コレットも長老衆の話しを詳しく聞いたのは初めてなのだろう。途中で歯を食いしばり、涙を堪えているのが分かった。
長老衆も復讐の連鎖を断つ為に、今まで黙って来たのかも知れない。
「さて、じゃあそーゆーコトで!この話はお終い。コレットに聞きたいんだけど、海の中にこう、ユラユラ漂う海藻とか見た事無いかな?結構長くて、厚みも有る感じのヤツ。見つけたら東側のゴロタ場に並べて置いて欲しいんだよね。」
砂浜に昆布の絵を描きながら尋ねる。
「ああ、それなら少し沖の岩場に生えていますよ。何種類か有りますので、一通り並べて置きますね。」
「ホントに?じゃあお願いします!」
コレットに仕事を頼むと俺はダンジョンに向かう。砂糖が作れるか試したいのだ。
畑で作業している獣人に声をかけ、集まってもらう。これから製糖の実験をしてもらうのだ。
砂糖大根を収穫し、皮を剥いて手頃な大きさにカット、それを煮込み灰汁を取り、濾した物を火に掛け、ある程度煮詰まったら風乾という流れだ。
煮詰め過ぎると飴みたいになっちゃうからね。ホントはずっと混ぜ続けて結晶化?させるんだけど、流石にそれは大変なので、魔法を使って乾かす。
俺が居なくても日の光に当てておけば何とかなるだろ。
カットの大きさや煮込み時間なんかを色々と試してもらい、効率の良い方法を探って貰おう。
大まかな作り方を実演しながら、煮詰めた汁の味見をする。かなり甘い。これに日光や風を当てて乾かして行けば砂糖が出来るはずだ。ただ液体が黄色味を帯びているので、きっと真っ白な砂糖にはならないだろう。圧縮して更に絞れば白くなると思うが、そこまでしなくても良いかな。
出来た砂糖水で酵母作りだ。時空魔法で何とかならないかな?無理なら寝る前に振って起きたら収納でいいか。これは後で試そう。材料を密閉出来るガラス瓶に入れて収納。
集まった獣人達にはそのまま製糖を続けて貰い、野次馬に来ていた数人を連れてダンジョンを出る。
コレットに頼んでいた昆布を確認しなくては。
島の東側、ゴロタ場には4種類の昆布が並べてある。
う〜ん…デカい!
8メートルから10メートルは有る。
幅も1メートル近く有る物もあるな…この辺りは日本に比べると海水温も高いだろうし、違う品種なのかも知れない。
とりあえず天気の良い日にゴロタ場で乾燥、夜は以前作った拠点、もはや小屋だが…そこに仕舞い、また天気の良い日に乾燥を10日程繰り返し、カラカラに乾燥させる。出来上がったら城の食料庫に保管して貰う事にした。
これで砂糖、昆布の生産はきっと大丈夫。
ヨークデリアに暫く出掛けて来る旨を獣人やマーメイド、ハーピィに伝える。
出掛ける前に食料の補充、とダンジョン前の磯で仕掛けた罠を回収していると、もう一つのダンジョンが有る岩から誰か降りてくる。
「あれ?ホープじゃないか?そっちのダンジョン潜ってたのか?」
「あっリョウタ兄ちゃん!こっちは肉がドロップするんだ!浅い階層なら魔物も弱いのしか居ないしね。」
「1人でか?何かあった時の備えは必要だ。トラップも有るかも知れないし、今後は必ず複数、出来れば4人以上で潜る様にな!」
「そっか!トラップにも気を付けなきゃだね。おとーちゃんに相談してみる!」
「おう。因みに中はどんな感じだ?俺はまだこっちのダンジョンに入って無いんだよ。」
「ん~オレも2階までしか入って無いけど、1階は草原と森、2階は渓谷みたいになってるよ。1階でウサギとか小さい馬みたいなヤツを狩ってるんだ!2階はトカゲとかヘビ、あとは狩れないけど大きい鳥も居たよ。」
「トカゲにヘビか…毒持ってるかも知れないな…浄化の魔法が使えるといいんだが…」
「オレ達獣人は魔法は苦手だからね。使える人は居ないなぁ。」
「解った。こっちで考えとくよ。くれぐれも安全第一で狩りをするようにな!」




