27話目 港街ディニク
あぁ…昨日はそのまま砂浜で寝ちゃったか…
同じ様なヤツが沢山いるなぁ。
マリンとハルに抱き枕にされながら目覚める。まぁ白狼、ハーピー、人魚族の皆も仲良くなったみたいだし、眷属の紹介も出来た。バーベキュー大会は今後も不定期開催していこう。
「ハル、マリン、もう朝だよ。」
「あと5分……」
「あと気分……」
「ハル、気が済むまで寝ようとするな。」
寝ぼけてる2人を置いて俺はダンジョンに向かう。精米の方式を考えないとな。
昨日の水車は今日も元気に回っている。回ったままだと作業し辛いから一旦止めて、軸にドラムを取り付けていこう。
長さと角度、それにヤスリの目の粗さ、回転に合わせて落ちる米の量。何度も調整を重ね、最適化していく。
「よしっこれで良い筈。早速炊いて見よう。」
空き家のキッチンを使い米を炊いていく。
はじめちょろちょろ中ぱっぱ、じゅうじゅう吹いたら火をひいて、ひと握りのワラ燃やし、赤子泣いてもふた取るな。
まぁこの家も魔導コンロだから藁なんか使わないけどな。
よし、塩むすび完成!
うん!うん!ちゃんと米だ!旨い、旨いぞぉ!
しかし、米を食べると味噌汁が欲しくなる。あぁ…TKGも良いな。
よしっ!日本酒、味噌、醤油。異世界で和食を再現しよう!
まずは生産地、河の上流にあるって言う村に行ってみるか!
意気揚々と、ダンジョン出口に向かっていると、ウィルが外からこちらに走ってくる。
「リョータ様、此方に船が向かって来ています。一方はヨーグデリア、もう一方は方角からアティラ神国の船だと思われます。」
「アティラ神国?」
「はい、ヨーグデリアの対岸にある国で、大地の神アティラを信仰する宗教国家です。」
「えぇ…大地の神って人間贔屓じゃなかったっけ?」
「ヨーグデリアよりも苛烈な差別があると聞いています。」
「マジかぁ…めんどくさ。沈めちまうか?」
ダンジョンを出て北へ。何時もの様に海面を滑りながら沖に停泊している船へと向かう。
あっちがヨーグデリアだな。まずはあっちから話しを聞いてみるか…って、あれブレナンさんじゃないか?
「やあやあ、ヨーグデリアの者よ!この魔王、リョータに何用かな?」
「こ、これはサワダ殿、魔王などと…悪い冗談はお辞め下され。」
「おお、ブレナン殿ではないか!聞き及んでおるぞ。そちが我の事を魔王だと触れ回っておるとか。」
「そ…それは言葉のアヤと申しますか、サワダ殿の強さの引き合いに…」
「冗談だよ。そー言えばミリーちゃんから話し聞いた?冒険者ギルドの。」
「ミリー?ですか?いえ、帰りにでも伺って見るとします。それと今回お伺いした用件なのですが…」
ヨーグデリアで決まった事を色々と話された。
解放奴隷が保護を求めて集まっている為、海岸一帯を俺の土地とし、そこで獣人達の面倒をみて欲しい事等々…
「この前の街の手前の森から、あっちの山までの森が俺の土地って事?山は頂上まで?向こうの麓まで?」
「サワダ殿、地図を用意してあります。あの山全体からあちらの河までの範囲に有ります全ての森がサワダ殿の領地と成ります。」
「おお…超広いじゃん。川沿いに田んぼでも作ろうかな。」
山までどの位の距離が有るのか…かなりの面積が貰えるみたいだ。
「ただ、森には魔獣も多く生息しております。我が国で開拓されないのもその辺が理由ですな。」
「マジか…獣人達はちゃんと辿り着けるかな?」
「戦奴として鍛えられた者ならあるいは…しかし川沿いを下って来る方が現実的かと。お会いした街ディニクから船を出す準備を進めております。」
「ありがと。んで、国内の反発は?」
「…何とか抑えてはいますが……かなり…」
「そーだよねぇ。この前の街にも居るんじゃないの?ちょっと見せしめになって貰おうか?周辺国にしておいた方がいい?」
「いや…それは……」
ブレナンさんは難しい顔をして口を噤む。
「実際、奴隷という戦力を失った訳だし、それが原因で他国から侵略を受けるならどうにかしないと、とは思ってるから安心して。」
「それは有り難い。ですがまだ他国迄は漏れておりません。まずは国内の貴族や犯罪組織の方が問題でしょう。」
「どさくさに紛れてわるいこと企んじゃってんだ?暫くはヨーグデリアをウロウロさせてもらうよ。」
そんな話しをしていると、【ゴシャっ】とも【グシャっ】とも言えない嫌な音が聞こえる。
音のした方角を見ると、アティラ神国の船が沈み、不自然な海流に騎士らしき人達が海に引き摺り込まれていく。
「魔物の襲撃だ!」
「一撃で沈んだぞ!」
「早くこの海域を離れるぞ!」
「旋回している時間はない!このまま島に近づけ。最悪船を失っても生き残れる道を選ぶんだ!」
そんな感じで船上は軽いパニック状態。
でもなぁ…あれ、絶対マーメイド達の仕業だよな…
この船は俺も乗ってるし大丈夫だと思うんだが、それを言ってしまって良いものか?
このまま魔物のせいにしておく方が良いかな?神国の船沈めたとか言ったら、正式に魔王認定されちゃうかも…
「左に20度旋回、入江付近はこの船の喫水なら入れる。緊急事態だ。上陸を許可する。」
しれッと船員に指示を出し、魔物のせいにしておく事にした。
入江内に錨を下ろし、仕舞っておいた小舟で上陸。
入江内なら魔物が侵入しても解りやすいし、頑張れば迎撃も出来るだろう。
などとそれっぽい事を言いつつ時間を潰す。暫くして安全だと解れば、お帰り頂くって寸法だ。
船員達が水面とにらめっこしている間に、ブレナンさんからヨークデリアやアティラ神国、周辺国の情報を聞き出した。
基本この大陸では大地の神が信仰されているため、各国の関係性は悪い物では無いみたい。
ただ、深い付き合いも無いらしい。
国と国の間には誰も住んで居ない空白地帯が有ったり、大きな街こそ城壁で囲っているが、国境には検問なども置いて居ないらしい。
土地は余ってるし、そこそこ肥沃。遠征をしてまで戦争をするメリットは少ない見たい。
この先人口が増えれば分からないが、ここ50年位は戦争は無いらしい。まぁディニク周辺にも土地は余ってたし、簡単に俺に土地をくれるし、まだまだ平和な時間は続くのだろう。
獣人達に対する差別さえ無ければこの大陸はそこまで悪くない。
パンが堅ったいけどな!




