26話目 玄米
ミリーちゃんに案内されて修練場に入って行く。
集められた女性達が一斉にこちらを向く。
何も思いつかなかったオレは眉間にシワを寄せ、顎をしゃくらせながら歩いていく。
「あら、お兄さんじゃない。その顔、キースからもう聞いてるのね。何で来てくれなかったのかしら、寂しいわぁ。」
「イソガシカッタノデス。」
バレバレだしヤブヘビだった。
「ちょっと待っててね。ここで浄化魔法を掛けて貰うのよ。新しいファンデに毒物が入ってたらしいの。終わったら遊びましょうね。」
そう言って指を絡める様に手を握ってくる。
「リョータさん?お知り合いですか?」
2人に絡まれてる俺をミリーちゃんは絶対零度の眼差しで見る。
「ああ、ちょっとね。じゃぁ早速……うん。これで良い筈。確認して見て。」
そう言ってモノクルを渡す。
ミリーちゃんは指先で汚い物でも摘む様に受け取り、モノクルを覗くと直ぐに返してくれた。
ぐっ…5桁の防御力を誇る俺がダメージを受けるとは…ミリーちゃん、恐ろしい子。
「あら、お子様にはお兄さんの魅力が分からないみたいね。もう終わったのよね?さ、行きましょうか。」
「待て待て、報酬まだだし、ギルマスにも話し聞かないと。」
「後で良いじゃない。お兄さんならタダで良いから、ね?」
「ちょっ、ダメだって!後でキース連れて行くから、ね!」
どうにか誘惑を打ち払い、お姉さん達には帰って貰った。その間ずっとギルド中から白い目で見られていた。驚きの白さってヤツを実感したよ…
笑っているギルマスを捕まえて2階へ上がる。
受付で報酬を貰う勇気が湧かなかったのだ。
「1日で好かれたり嫌われたり、リョータは本当に面白いヤツだな。」
「昨日までは好かれてたのか?」
「冒険者にしちゃ理知的で、礼儀正しく、強いし気前も良い。昨日皆に浄化かけてたろ?そうゆう気遣いも出来る。第一印象は最高だったんじゃないか?まぁ冒険者が娼館に行くのは普通だしな。その内収まるだろ。ほれ、今日の分。」
「ありがとう。しばらく居心地が悪いのは我慢するか…。」
そう言って報酬を受け取る。この2日で金貨12枚近く稼いでいるな…所持金が3千万円超えになっている…
ギルドを後にする頃には既に昼を回っていた。
さぁ2日も島を空けてしまった。お土産でも買ってそろそろ帰ろう。
市場で肉や酒、調味料、油などをこれでもかと買っていく。
そう言えばギルドで調べた所、普通の魔物はそのまま残るって書いてあったな…この前のワニザメはダンジョン産だったのだろうか?海の中にも有るのかな?
そんな事を考えながら市場を回っていると、市場の隅、建物の影になっていて客も居ない一角でそれを見付けた。
米だ。少し黄みがかった、精米前のお米、玄米を見付けた。直ぐに店主に声を掛ける。
「なぁ、ちょっと良いかい?これは米だよな?ここにあるだけなのか?まだ在庫は有るのか?何処で作ってるんだ?」
「おい、兄さん落ち着け。これはイネの実の殻を剥いた物だ。ちょっと癖は有るが腹持ちも良くて保存も効くぞ。スープに入れて一緒に煮てやれば、それだけで充分な飯になる。河を遡った山の麓の村が育ててるな。」
「よしっ、有るだけ売ってくれ!これで作った酒とか無いのか?」
「本当か!?いや~冒険者が野営用に買っていく位だから、そんなに在庫は無いが今度また仕入れて置くよ。これの酒は聞いたこと無いなぁ…」
くっ残念!仕方ない、無いなら作ろうじゃないか!
よしっ、お土産も出来たし一旦家に帰ろう!
確かイネに付いてる菌?カビ?かなんかを使うんだったか?それは味噌や醤油だったか?ビール酵母は今あるビールから作れるから麦とホップで出来るな。麦から水飴も出来るじゃないか。
酵母と言えばパン!これはすぐ出来るな。誰かに頼んでおこう。
これから作れそうな物に想いを馳せながら街道を歩く。周りに人が居なくなったタイミングで島まで転移だ。
島に戻ると早速精米に取り掛かる。昔は杵で突く方法でやってたんだよなぁ…水車を改造するか。
軸に出っ張りを付けて、それによって杵を持ち上げる形か、軸自体をドラム式のヤスリみたいにするか…
(ぐぅ~)
そう言えばお昼がまだだった。
そう思いダンジョンを出ると既に太陽は半分沈んでいる。まだお土産も渡して無いのに…
ダンジョンの自室に戻り、食事をして大人しく眠るのであった。
翌朝、朝食を摂るとウィルを探す。
戻った事を伝えるのと、バーベキューのお知らせだ。ハルやコレットは準備してる時にでも会えるだろう。
ダンジョンを出ると南に少し歩く。砂浜と磯場の境い目、ここなら皆で集まっても大丈夫だろう。流石に磯場に直に座るのは無い。
土魔法で竈を作る事30箇所、薪はは近くの木を切り倒して水魔法で中の水分を飛ばして乾燥。網は採掘しておいた鉄で作ろう。
そんな事をしていると、案の定俺に気付いたハルがやって来た。
「リョータ、おかえり。何作ってる?罠?」
「ハル、ただいま。これは竈だ。ここで肉を焼いて皆で食べようと思ってな。」
「お肉!早く焼こう。たくさん焼こう!」
「まだダメ。下味も付けたいしな。どうせなら美味しく食べたいだろ?」
「おお!リョータ賢い!美味しいお肉!」
「今日の夜にやるから、皆にも教えておいてくれ。」
ハルは神妙に頷くと島に向かって飛び去った。
さて、下味を付けていこう。
土魔法でテーブルを作り腕輪から様々な調味料、油を取り出す。以前に収穫しておいた野菜や柑橘類もだ。。
肉ばかりもどうかと思うので、街までテレポート。
市場で焼くと美味いと言う野菜や、生で食べられる葉物野菜も買い付け、昼メシを兼ねた味見。
基本の塩コショウ、ゴマ油っぽい物に刻んだネギと塩、市場で見つけたネッツと言う辛味噌のような物、好みで絞る柑橘類。様々な組み合わせを作り、魔法で作った壺に浸けておく。
つけダレも用意した。
後は皿やお箸なんかも作っておくか。お箸使えるかな…フォークとトングにしとこう。
お米は量がないので今回は無しだ。
「では、第1回バーベキュー大会を開催します。酒も用意してあるが、飲み過ぎるなよ!じゃぁ、カンパイ!!」
「「「「「カンパァ〜イ!!!」」」」」
「はぁ〜…何年振りだ!旨い!」
「早く肉焼こうぜ!」
「慌てるな、たくさん有るぞ!」
「この果物も焼くのか?」
ワイワイしながらそれぞれの竈でバーベキューを楽しんでくれているようだ。
暫く飲み食いしていると、レイ達が海から上がってきた。
「あるじぃ〜あたしらも混ぜてよ。」
「おお、そうだな。丁度良い機会だ、皆も紹介しないとだな。」
「はいっ、みなさんちゅうもぉく!みなさんにはこれから、わたくしの眷属を紹介したいと思います。
まず初めにレイ君、あ〜彼は、レビンスティングレイと言う…魔物?魔物だっけ?種族って事に?うん、うん、レビンスティングレイと言う種族です。
え〜続きましてマリンさん、彼女はグレートオーシャンワームです。小さいですが力持ちですよ~。
最後にカスミさん、あれ?チャカは?ん?お眠なの?okok、最後にカスミさん、彼女はチェインソードトレバリーです。剣の腕前は大海1との呼び声です。あと1人居るんですが、それは別の機会に紹介したいと思います。みなさん仲良くしてあげてくだい。」
「「「よろしく(お願いします)」」」
「では引き続き、バーベキュー大会をお楽しみ下さい。」
「ちょっとリョータさん!飲み過ぎです!秘密にしなくて良いんですか!皆さん固まっちゃってますよ!」
「ん〜?俺とか神の事は秘密にするけど、彼等は良くない?得体の知れない奴と仲良く出来ないだろうしさ。」
「恐れ多くて仲良くなんか出来ませんよ!」
「えぇ〜でもほら…」
視線を向けるとハルがカスミやマリンと竈を囲んで、どんな食べ方が美味しいか語り合っているし、その奥ではホープがキラキラした瞳でレイに筋肉について質問している。
「なっ、大丈夫だって。」
「はぁ〜…まぁ良いです…… あと、我々も眷属にしていただく事は出来ますか?」
「ヤダよぉ、友達で良いじゃん。この島に居たら直ぐに人間なんかより強くなれるし、必要無くない?」
「ですが、同胞がその後どう動くか…眷属にして抑制して欲しいのです。」
「う〜ん…好きにさせたら良いんじゃない?家族攫われて、奴隷にされたあげく腕切り落とされて、仇討ちも止められて…そ〜なったら残りの人生苦しみしか無いじゃん。俺なら…耐えられないかなぁ。」
「リョータ、この塩味のお肉に、この緑の果物を搾って食べる。そして冷やしたエール。最高!」
「なっ!ハル、自らその答えに辿り着くとは!天才か!」
「ん、これぞ至高!コレットも食べる。」
「はぁ、分かりました。いただきます。んッホント、美味しい!」
「ハル、野菜も食わないとダメだぞ?」
「野菜は美味しくない。美味しく無いと言うコトは栄養も無い。食べなくても問題ない!」
「良いか?この野菜に焼いた肉を乗せる、そしてこのタレ、この野菜を乗せて巻く。ほら、食ってみろ!」
「なっ、野菜が美味しい!そしてお酒のおかわりが欲しい!この勝負は引き分けにしておく!」
そう言うと酒を求めて飛び立って行った。
いつの間に勝負していたのかを考えてはいけない。
「復讐を忘れるくらい楽しく生活出来るように頑張るさ。な?」
「そ~ですね。その方が、きっと幸せですね。」




