24話目 B級冒険者誕生
扉をくぐるとフットサル場くらいの広場がある。
騒ぎを聞き付けたのか他の冒険者達もぞろぞろと入って来た。
「何だビクター、また弱い者虐めか?だからお前等は何時まで経ってもD級なんだよ。」
「大した腕でも無い癖に偉そうにしてるから仕事が無いんだよ!」
どうやらビクター達は同僚からも良い評価は受けて居ないようだ。なんか…可哀想になって来たな。
観客の中では賭け事も始まって居る。何だかんだ言いながらみんなビクター達に賭けて居るようだ。
「おい、俺の勝ちに金貨10枚だ!」
賭けにならないと言っていたが俺が賭けると大いに盛り上がった。追加でビクターに賭けてる者もいる。
「おい、払えませんじゃ済まねえぞ。負けたら奴隷になってでも金作れよ!」
胴の男が叫ぶがその心配は無い。金は有るし、そもそもここに居る冒険者全員を相手にしたって負ける要素が無いのだ。
「さて、そろそろ始めますか。ビクターって言ったか?ルールはどうすんだ?俺は何でもいいぞ。」
「ルールなんか無ぇ。俺達がお前をボコッて終わりだ!」
「じゃぁ命までは取らない様にするな。」
まずは全員の武器を叩き折る。ビクター達は禄に反応も出来ずに折れた武器を見つめていた。次に防具、金属製の胸当てや小手を引き千切って廻る。ビクター達は一拍遅れて後退り、尻餅をつく。
「まだやる人ぉ〜?」
ビクターは鼻水を垂らしながら首を左右に振る。鼻水が飛び散ってる。やめろ!
「ん、じゃぁそこの人、金貨10枚ちょうだい。」
「ちょっ、ちょっと待て!今みんなから金を集める。」
「中で飲んでるからヨロシクね。払えませんじゃ済まねえぞ♪」
野次馬を置き去りに扉を閉めると、食堂のカウンターに掛ける。
「ワインと適当におつまみ下さい。」
「おう。しかしとんでもねぇな、あんた。」
「あっ見てたんだ。ちゃんと俺に賭けてくれた?」
「イヤ、裏口から覗いてただけだ。ほれ、ワインと干し肉。」
「有難う。勝った金で全員に酒奢る予定だから準備しておいて。」
「良い判断だ。これからは絡まれる事も無くなるだろう。」
20分もすると修練場からぞろぞろと人が戻って来た。
「すまねえ、みんなの負けを徴収したが金貨6枚程にしかならなかった。残りは装備を売ってでも作るから少し待ってくれ。」
「集まっただけでいいよ。その変わりに今日居なかった連中にも俺の事を伝えておいてくれ。」
「それじゃあオレは胴を続けられねぇ。博打打ちにも筋ってもんがあるんだよ。」
「あんた名前は?あんた宛に指名依頼を出そう。内容はさっき伝えた通り。報酬は金貨4枚だ。」
「シドだ。わかったよ、じゃぁこれだけ受け取ってくれ。」
俺は受け取った袋を掲げて立ち上がる。
「俺はリョータだ。今日、この街で冒険者登録をした。みんなから巻き上げた金だが、挨拶代わりにここは奢らせてくれ。気に入らないってヤツはこの金が尽きるまで呑みまくれ!ヨロシク!」
「「「「「「「おおおぉ!」」」」」」」
この後代わる代わる俺に酒を飲ませようと冒険者達が押し寄せる。それは構わないのだが、この世界のビール?エール?は不味い。アルコール度数を高めるコトに全振りしており、ぬるいし、なんかザラザラするし臭いのだ。前の世界では地元にクラフトビールを作る蔵元があり、取材もしている。製造方もぼんやりだが覚えいる。この世界に旨いビールを広めてやると心に誓うのだった。
「リョータさん。リョータさん!」
「んん…あぁ…昨日はあのまま寝ちゃったのか…。」
「おはようございます。昨日はごちそう様でした。」
「ああ…ミリーちゃんおはよう。」
ミリーちゃんは昨日の気遣いの出来る受付嬢だ。 仕事終わりに声を掛け、ギルド職員にも奢らせて頂いた。ギルドは国に属さない国際機関だ。きっと色々な情報が集まるだろう。仲良くしておいて損はない。
「リョータさん、これ昨日のお釣りです。ほとんど使い切っちゃうなんて信じられません。」
「まぁあの後も依頼帰りの冒険者達がさらに増えて行ったしな。元々博打で稼いだ金だし構わないさ。」
「このギルドで登録してる人達のほとんどが来てましたしね。そうだ!冒険者証を貸して下さい。マスターからB級にしておく様に言われてまして。」
「ん〜…はいっ。」
腕輪から冒険者証を出して渡す。
「その腕輪凄い便利ですよねぇ。貴族様に知られたら取られちゃいそうです。気を付け下さいね。」
そう言うとカウンターの中に入っていた。
ふと食堂側のカウンターを見る。死屍累々だ。床やテーブルで冒険者達が眠っている。
カウンターに近付く前に一帯に浄化の魔法を掛ける。
するとカウンターの奥からマスターが出て来て辺りを見回している。ちなみに食堂のマスターでは無く、この人がギルドマスターだった。
「お、やっとお目覚めかい?今のはリョータの仕業だな?なぁ建物全体に出来たりするか?2階の待機部屋やトイレも酷い状態なんだよ。」
「了解!……これで良いだろう。おっ、ギルマスもちょっと男前になったな。」
「はっ、有難うよ!ほれ、水飲め、飲んだらコイツラをどうにかしてくれ。」
「まったく…人遣いが荒いぜ。」
一気に水を飲み干し、屍と化している冒険者達を起こしていく。浄化が効いたのか二日酔いも居らず、みんなシャキッとしているので、片付けまで手伝う羽目になったが…まぁ騒ぎの原因は俺だし、余んじて受けようではないか。
片付けが一段落し、サービスに貰ったパンをスープに浸して食べ、腕輪からフルーツを出して食べているとミリーちゃんが冒険者証を持ってやってきた。
「リョータさんさっき何かしました?あ、食堂が片付いてる。」
「ギルマスに言われて浄化を掛けたんだ。お、冒険者証がカッコよくなってる。」
「浄化魔法…それで…?リョータさん、浄化魔法でお化粧が落ちちゃったんです。でもおかしいんです。浄化でお化粧が消えるなんて…」
「ミリーちゃん、その化粧品って今持ってる?ちょっと見せて貰えるかな?」
「あります。持ってきますね。」
ミリーちゃんは走ってカウンターの中に入ると直ぐに戻って来た。
「これです。」




