23話目 貨幣価値
「お客さん!もうすぐ昼になるよ。お連れさんはもう行っちまったよ?おーい!」
「あーわかった、起きる、起きるよ。」
昨日はキースと飯を食い、酒を飲んだ。と言うのも金貨の価値は俺が思ってるよりずっと高かったのだ。
銅貨が1枚100円相当、大銅貨で1000円、次は銀貨、大銀貨、金貨と10倍ごとに変わっていき、次に白金貨、赤金貨と続くらしい。
そう、金貨1枚100万円相当!
これからは砂浜の砂から作ったコップが2000万円になるのだ。
昨晩はキースに酒を飲ませて色々聞き出し、俺も久しぶりの酒を大いに楽しんだ。とは言っても飲めたのはワインぐらいだったのだが…。
他の酒は匂いがキツかったり、ビール見たいな物はツブツブが入っていたり…何故濾さない。濾して冷やせばそこそこ飲めただろうに!
そして気の大きくなった俺は、キースを伴いおすすめの娼館に突撃!若い体にベテランの技術、2人のお姉さんをやっつけてから寝たのでもうだいぶ日も高くなっていた。
「しかし、お客さんはあの2人になにをしたんだい?あの後2人共足腰立たないようになっちまって。あたしらが体拭いてやってる時もビクビクなってたんだよ?」
「おっ、興味あるなら試してみるかい?」
「イヤ…辞めとくよ。得る物より失う物のが大きそうだし。」
服装を整え店を出る。既に港や市場は落ち着いてる時間帯らしい。俺は昨日キースに聞いていた店に訪れる。
西部劇さながらのスイングドア、とは行かなかったが、無骨な大きな扉を開けて中に入る。
汗と酒と、何とも独特な匂いが鼻を突く。
左右にカウンターがあり、左側が受付、右側が食堂兼酒場になっており、奥の壁には依頼が貼り出してある。
既に昼近いからか、客は食堂に何人か居るだけで受付カウンターには女性が1人座っているだけだった。
「こんにちは。登録したいんだが、ここで出来るのかな?」
「いらっしゃいませ。初回の登録ですと大銅貨2枚頂きますがよろしいですか?」
「ああ、それで頼む。」
そう言って大銅貨を渡すと1枚の薄い木板を渡される。
「こちらにご記入お願いします。」
「出身地か…小さな集落で特に名前なんかは無かったんだが…」
「でしたら空白のままで大丈夫ですよ。読み書きも出来て、礼儀もしっかりしてるから大きな街の方かと思いました。」
「ああ、厳しい爺さんが居たからな。よしっ、じゃぁこれで。」
「はい……問題ありません。ではこちらのカードを触って頂いて……40分程で出来上がります。出来ましたらお呼びしますので、よろしければ食事しながらお待ち下さい。」
受付カウンターを後にし、反対側の食堂カウンターに座る。
さて、メニューメニュー……パンとスープは共通で、主菜を選ぶ感じだな。魚は川魚だろうか?魚としか書いて無いな…肉は何の肉なのか…も書いて無いかぁ〜。
おっ、奥に見えるのは鶏か?島だとどうしても魚介に偏るし、ここは肉にしよう。
「すいませ~ん、肉セット。それとワイン下さい。」
「はいよ、大銅貨6枚ね。しかし昼から酒とは羨ましいね。」
「今日は登録だけの予定なんだ。どうせこの時間じゃ碌な依頼は残ってないだろう?」
「違いねぇ。ほら、先にワインだ。料理が出来るまでコレをつまんでてくれ。」
赤ワインのボトルと刻んだ干し肉を受け取る。
そっか、ボトル販売か…金銭感覚を養わないとな。
干し肉をつまみながらチビチビやってると、端に居た客が話しかけて来た。
「よう兄さん、見ない顔だが、この時間からギルドで酒とは見せつけてくれるじゃないの。冒険者をバカにしてんのか?」
「ん?これから冒険者になろうってヤツが、バカにしてる訳無いだろ。何言ってんだ?」
「あ?おめぇ見てぇなひょろガリに冒険者が務まる訳ねぇだろうが!その考えが冒険者をバカにしてんだよ!帰ってママのお手伝いでもしてろ!」
そう言ってボトルに手を伸ばす。
俺はその手首を掴み、握り締める。
「イテテテ!てめぇ何しやがる!」
「こっちのセリフだ。このまま握り潰されたく無かったらあっち行ってろ。」
「お待たせ、肉セットな。ビクター、また揉め事か?今度こそギルドから除籍にしてやるぞ。」
「うるせぇ!冒険者同士の揉め事にギルドが口を挟むんじゃねぇ!」
「その兄さんはまだ冒険者じゃねえよ。ほら、あっち行ってろ。」
ビクターと呼ばれた男は舌打ちをしながら端に戻って行った。
「あれでも一応D級なんだがな、兄さんなら問題ないだろ。飯食ったら相手してやってくれ。」
「はぁ~面倒くさ!」
深くため息をついてから口に肉を放り込む。臭いを誤魔化す為のスパイスをかけただけの硬い肉だ。。この辺りは温暖で水も充分にあるらしく、食糧には困らないだろう。ただあまり味が宜しくない。パンも発酵と言う概念が無いのだろう…固い。バターなんかも使ってないから小麦粉を焼き固めたって感じだ。スープに浸けて食べ、ワインで飲み込む様にして何とか美味しく食べられる。
食事を終えワインも無くなったが、まだお呼びが掛からない。1時間は経っているので、受付カウンターに行ってみる。
「あのぉ~さっき登録をお願いしたんですけど、もう出来ました?」
「出来ては居るんですが…あちらのカウンターで絡まれてましたよね。お渡ししますとまた絡まれてしまうんじゃないかと思いまして…」
「お気遣い有難う御座います。でも大丈夫ですよ。」
「あっギルドの規約とか、注意事項とか有りますので、そちらをお話させて頂きます。あちらのお部屋へどうぞ。」
別の職員が来たタイミングでそう提案された。
正直、採取にしても討伐にしても、実物を見た事が無いので厳しいのだ。この提案は非常に助かる。
この街の近くに出る魔物、良く依頼のある薬草、冒険者ギルドのルールなどなど、細かく教えて貰い冒険者証を受け取って部屋を出る。
かなり時間が経っていたのか、カウンターはどちらも混み合っていた。
よっぽどヒマなのかビクターと呼ばれていた男はまだ食堂に居た。
「まだ居たのか?冒険者ってのは相当暇なんだな。」
「てめぇから来るとは良い度胸だ!付いてきな。」
そう言うと依頼表の壁にある扉に入って行く。この先が修練場なのだろう。さっきの説明によるとランクアップ試験なんかにも使われるそうだ。
さて、どうしてくれようか。




