21話目 魔王召喚
島を出発して1時間程で河岸の街に辿り着いた。
小さな港町って感じだが、この世界ではそこそこの規模になるらしい。港の空いてる桟橋に船を着ける。
直ぐに街の兵士が駆け寄ってきたので声を掛ける。
「よう!この船は何で俺の島に来たのか解るか?」
「我が軍の船で何をしている。早く降りなさい。」
「あー…この船が沖の島に向かって来ててな、何の用か聞いたんだけど答えて貰えないどころか、斬り掛かって来たから制圧したんだが、何しに来たか知ってるか?」
「何だと!おーい!敵襲、敵襲だ!」
叫びながら街の方に走って行った。
「あらら…やっぱりそうなっちゃいます?」
続々と人が集まって来る。兵士に魔法使いらしき人、獣人の奴隷も集められてる見たいだ。
暫く船から町を眺めていると、鎧姿とローブの2人が近付いて来た。
「我はヨーグデリア王国、第一騎士団団長、カストール·デュランである。」
「同じく王国魔導士長のジルバ·ブレナンじゃ!」
「リョータ·サワダだ、やっとまともに会話が出来る人に会えたよ。」
甲板から2人の前に飛び降りる。
「とりあえずここに至る迄の経緯を説明する。ちょっと長くなるぞ。」
土魔法で机と椅子を作り出し、座るように促す。
元々別の場所であの島に暮らしていた事、島ごと転移したと思われる事、船が近付いて来たから呼び止めたら戦闘になりかけた事、奴隷の解放、乗員を捕虜にしている事等を2人に伝える。
時折眉を顰めたりしていたが、乗員が全員無事?な事を伝えるとその表情もだいぶ穏やかになった。
「んで、あの船は何しに来たの?宣戦布告?」
真っ直ぐ2人を見つめる。
魔導師さんはヒュッと一瞬息が止まったね。威嚇は成功かな?
「いえ、サワダ殿。我々は王命により光の柱の調査を行っていただけでして。」
「いきなり剣を抜いといて調査?俺もこっち来たばかりだし、色んな所を調査して回ろうか?」
「調子に乗るなよ小僧!港は既に囲んでいる。好きに調査してみるがいいわ!」
「待て!カストール!ダメじゃ!サワダ殿、どうか御容赦を!この度の無礼の詫びはサワダ殿の納得出来る形に致しますゆえ。どうか。」
「分かりました、ブレナン殿。ではこの国に置ける獣人の人権の尊重をお願いします。出来ますね?」
「人権?ですか?」
「ええ、人間と同様に扱い、差別の無いようにお願いします。奴隷なんて以ての外ですよ?」
「はい、直ぐ様城に帰り、王に進言致します。」
「よろしくお願いします。」
果たされなかった時はお城にお邪魔しますね。と小声で付け足しておく。
「では、捕虜ですが、白狼族の奴隷と交換でよろしいですか?何でも尊い御方が捕虜に混じって居るようですし。」
この後の交渉はすんなりいった。
何とか侯爵はこの街の領主と血縁関係で、しかもそのうち解放しなければならない奴隷と交換。
街中から68人の白狼族が集められた。
「よしっ!じゃぁ皆さん集まって!行きますよ~。転移!」
「なっ!!」
「ここは?」
「オェー気持ち悪い。」
「はい!皆さん揃ってますか?置いて来ちゃった人が居ないか確認お願いしますねぇ!」
「あの…ここは一体?」
「転移魔法で移動してきました。この先の岩山にウィルさん達も居ますから、まずは全員いるか確認をお願いします!」
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「おいジルバ!どう言うつもりだ!あんな小僧の言いなりになって!貴様国を裏切るつもりか!」
「ばっかもん!!今の魔法見たか?ヤツが何をしたか理解できたか?貴様こそ国を潰すつもりか!!ヤツはこの国位簡単に潰せる。魔王じゃ。異界より魔王が召喚されたのじゃ!速く戻って王にお伝えするのじゃ!」
「落ち着け!ヤツが魔王?笑わせるな!何処にでもいる小僧じゃないか!」
「小僧に転移が使えてたまるか!しかもあれだけの人数を一度にじゃぞ!魔王が可愛く見えるわい!」
「だが、転移などただの移動魔法だろう?」
「ばっかもん!上空に転移でもされて見ろ!風の特級以外は全滅じゃろうが!それにじゃ、どうやって王をお守りする?いくら城壁を高くしても、兵を集めても無意味じゃ!王の隣に転移されては守りようも無いわい!」
街の転移陣を使い、大至急で王都まで戻る。
2日後、王城の一室には4人が集まっていた。王と宰相と…
「ジルバ、カストール、ご苦労であったな。」
「「はっ。」」
「既に鷹便に早馬にと、報告は受けているが…誠なのか?」
「残念ながら。」
「ふむ。魔王か…しかし何故獣人の奴隷解放などと要求したのやら。」
「おそらくですが…船には漕ぎ手として白狼族が使われておりました。船から下ろされた奴等を救い、また同族を救って欲しいと頼まれたのかと思われます。」
「解放しない訳にはいかんよな?」
「その場合は城に乗り込んで来るかと…」
「いっそ他国に売りつけるか?」
「その場合、私は田舎に隠居致します。」
「リカルド……」
「解放するしか有りません。抜けた穴は罪人で比較的まともな者に腕輪をすればある程度賄えます。問題は解放後に獣人達がどう動くかです。」
「長年の恨みもあるよのう。反乱や暗殺、暫くは治安の悪化も止む得んかの?」
「ええ、急に解放されたとて生活出来ないでしょう。今迄、扱いの悪かった領地では特に。小分けにして離れた所に自治区でも作りますか?」
「いっそ解放の経緯を話してサワダ殿の所に集めますか?」
「更に武力を与えてどうする。」
「陛下、あの者は1人で大国に並ぶ力を持っておりますじゃ。獣人など足手まといにしかなりませんぞ。」
「なるほど…… リカルド、サワダ殿に文を。解放するが、その後の生活までは面倒見られん。野盗になられても困るからそちらに頼めるかとな。」
「島で全てを賄えるとは思えません。周辺を開拓すれば自治を認める旨を加えても?」
「構わん。あの辺りは我が国の領土になっておるが、建国以来手付かずのまま、治める領主もおらんしの。」
「周辺貴族とすり合わせ次第提案してみましょう。」
「では明日、我が名を持って獣人奴隷解放の命を下す。解放時に経緯を伝え、南の森の先にサワダ殿の島が有る事、周辺の開拓の自由を認める事、しかと伝えよ。」
「はっ!」




