20話目 人口
「リョータさん!さぁ話して貰いますよ。」
「ハイ……あれは、もう夏も終わりの頃でした。金曜日の仕事が終わり、同僚の家でのパーティーに向かう途中、東の空にぼんやりと妖しく点滅する光の群れを見つけたのです。」
「?…なんの話ですか?」
「ナンデモナイです…ちゃんと話します。」
それから、雷に撃たれて死んだ事、神との邂逅、眷属と共に転生した事を順を追って話して行った。
「え〜と…コレットさん?」
最初は驚きの表情をしていたが、話しを進める事に段々と真顔になって行き、今では表情筋が死に、目も光を失っている。
「お〜い!大丈夫かぁ?」
「は、ハイ!では、リョータ様は使徒様なのですね?」
「使徒?違うよ、ただの被害者だ。だから普通に話して。リョータ様なんて呼び方辞めてくれ。」
「わかり…わかったわ。しかし…眷属の方達は…皆神話の世界の存在じゃない!リョータさんが神様だって言われても信じるわよ?」
「頼むから辞めてくれ。他の人達には内緒な!」
「そうね。話さない方が良いわね…。」
「そうだ。神話について教えてくれるか?」
「そこまで詳しくないけど、大昔には陸、海、空にそれぞれ神様がいたの。でも陸の神様は人間贔屓でね、人間が発展する為に黒い泉から燃える水が出るようにしたのよ。それを燃料に人間は大層発展したらしいけどね、流れ出た燃える水で海が、煙で空が汚れ、神々が争い出したのが始まり。最後には空と海の神様が手を組んで陸の神様を追放したとかって話ね。その話に眷属の方達が出て来るのよ。神兵としてね。」
「へぇ~黒い泉ってまだ有るのかな?」
「そっちなの!もう無い見たいよ。変わりに魔法やスキルを授けたって言われてるわ。」
石油が有れば色々捗ると思ったんだが、無いなら仕方ないか…
「でもそれだと魔法を使っても同じく空は汚れるんじゃないか?」
「そもそも空が汚れる程の煙なんてど〜やったら出るのよ?空よ?」
「え?因みにこの世界に人間ってどれくらい居るんだ?」
「さぁ…?河上の街で2万人位って聞いたわね。かなり前だけど。」
「2万か…小さい街なんだな。まぁ船があんなんじゃ仕方ないのか?」
「え?2万よ?ヨーグデリアでも大きい部類に入る筈よ?」
「え?住民が2万だよな?兵力が2万なのか?前の世界じゃ50万人とか100万人とか住んでる都市も結構あったぞ?」
「住民全部で2万人!100万とかどんな街よ!国の殆どが街じゃない!」
「イヤ、国土の七割は…まぁその話は置いといて、2万の住民って事は、兵力は多くて2千ってトコか?なんか楽勝な気がしてきたな。」
「楽勝な訳っ!…あなたならあるかもね…」
「だろう?ちょっと行って話ししてくるかな。」
「はぁ…ちょっと果物採りに行くみたいに言われても…」
「じゃ、行ってくるね。」
コレットに別れを告げ、俺はヨーグデリアの船に向かう。まだ白旗は揚がってないな。
海面をジャンプ台の様にして、船首辺りに飛び乗る。
甲板に居た兵士が寄ってくるが、剣を抜いて囲むだけで何もしてこない。この隙に鑑定っと!
ステータスは1番高い項目でで50位か…魔法も大した事ないし、武器も防具も青銅製、手加減必須だな。
観察していると前回の無礼者が駆け寄ってきた。
「よう。久しぶりだな、元気してたか?」
「貴様、何しに来た!」
「あんたも学習しないねぇ…要件も前回伝えたはずだが?こんなのが上司とか、あんた達も苦労するねぇ。」
「なッ」
「しかもこの中で一番弱いじゃん。何でこの人が偉そうにしてるの?」
囲んでいる兵士に問いかける。
「なッ!?斬れ!!殺せぇ!!」
命令を受け、兵士達が斬り掛かって来る。
だがステータス爆盛の俺に当たる筈も無く、彼等の視界から消える様に後ろに回り込む。
う〜んどのくらい迄耐えられるだろうか?あんまり強くして、殺しちゃっても後味悪いしなぁ。徐々に力を込める様に、手加減の練習しながら倒して行く。
「よしっ!後はお前だけだな。」
「わ、私はヨーグデリア王国、ベルギルド侯爵が六男アツハナカナと申します。ご尊名を。」
「この状況で自己紹介とかバカなのか?」
「私に手を挙げると王国と敵対する事になるんだぞ!」
「うるさい!」
パチン、位のつもりだったが、イラつきから少し力が入ってしまい、バカは膝から崩れ落ちた。
まぁ良いや。気を失ってる内に奴隷解放と行きましょう。
船の下層には獣人の奴隷が12名、漕ぎ手だけでは無く、料理等の雑用係も居た。
「ウィルに頼まれて助けに来たんだが、獣人はここに居るので全員か?」
「ああ…ウィルは無事なのですね。他にも居たのですがその者たちは?」
「海に放り出されたヤツラなら全員無事だぞ。それで、この船に乗ってる獣人はこれで全部か?」
全員揃って居るとの事なので、海流を操作して島の磯場に船を着ける。移動中に隷属の腕輪は引き千切り、兵士達を縛り上げて貰った。
「あそこに岩山が見えるだろ?右側のてっぺんに入口がある。ウィル達も中に居る筈だから、暫くはあの中に隠れててくれ。俺はちょっと出掛けて来るから。」
「本当にありがとう御座います。我等白狼族、心より忠誠を」
「ああ、そーゆーの良いから。ついで見たいなもんだし。この件が片付いたら、元々暮らしてた辺りに送るから。そこで好きに暮らしなよ。」
それじゃ、と手を振り船に戻る。
さぁてど〜なる事やら。




