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3話 ブラフ

いよいよそれらしくなってきましたね。

【ニスト視点】


「うぉぉぉら!!」


 ボスらしき大男が思い切り拳を振り抜いた。

 トーザは余裕を持って距離を取る。

 しかし拳から放たれる風圧で隙を突くことは叶わなかった。

 今度はトーザが素早い蹴りを繰り出した。

 バシンッと結構な音が響き辺りは静まり返ったが、大男にダメージが入った様子はない。

 大男が手を伸ばす前にトーザは距離を開けた。

 すぐに決着するような展開ではなかった。

 正直そこは問題がない。

 問題は空気を読んでこちらにきた子分たちだ。

 兄貴の獲物に横入りはできないってか?

 3人もぞろぞろきやがって、ファンサービスは行ってないっての。

 しかし俺は動かない。

 大男の剣を足で踏みつけ踏ん反り返った姿勢から一切変えていない。

 足が震えてるのはノーカンだ。

 完全に静止できる生き物なんていない。

 目前に子分、ここではAとしよう、が近づいてくる。

 俺はギリギリまで粘る。

 Aが殴るポーズを取る。

 俺は動かない。

 Aが俺を殴る。


「いったぁぁぁぁい!!」


 俺は勢いよく後ろに吹き飛ばされた。

 円のようになっていた人混みが俺の周りだけ空いていた。

 悲しい。

 ほおが尋常じゃないくらいジンジンと痛む、顔がえぐれてたりしてないだろうか。

 はたから見たら俺がただ殴れただけに見えるだろう。

 実際そうなのだが、これが超運の持ち主の俺だとちょっとばかし違う。

 子分の内俺に殴ったAが地面に倒れ、少し遠くにいる子分Bは腹を押さえてうずくまっている。

 その様子に子分Cは戸惑っていた。

 おそらく、殴られた瞬間に宙に振り上げられた足が子分Aの顔面にクリティカルヒット。

 大方踏んでいた剣が子分Bに吹っ飛んで行ったんだろう。

 なぜ分かるかって?

 答えは簡単、まず子分Bの目と鼻の先に剣が落ちているってことと、俺の右足がバカみたいにいてぇってことだ。

 子分Cが困惑した目でこちらを見てくる。

 俺はさも自分がやった感を演出する。

 これで束の間の休息だ。

 その間に動いてくれよ、足。



【トーザ視点】


「右ほほが腫れてる人間に説得力はないでしょうに」


 私は今にも倒れそうな丸い少年が腕を組んで仁王立ちしている姿がどうにも滑稽に見えて仕方がなかったが、それがある種の奇妙さを引き出しているようで、残りの子分の態度がそれを存分に物語っていた。


「よそ見してんじゃねぇぞこら!!」


 大男の振り抜けた後の風がどうにも厄介で中々攻撃に転じることが難しい。

 大振りな攻撃を考えるとそう長くは続かないだろうというのが私の見立てで、長期戦に持ち込めばそれ程手強い相手ではない気がする。

 しかし、ニストの事を考えるとそう悠長にしていられない。

 一発受けただけであれだけフラフラになっている事を考えると、ニストには荷が重い。

 ギリギリの賭けに出ている気がする。


「だからよそ見してんじゃねぇよ!!」


 跳んできた蹴りを難なく避けた、しかしより重い風圧に動きを封じられて次の一手に踏み出せない。

 私は少し後ろに跳び距離を開けると、相手の左側に飛び込むように移動してがら空きの脇腹に蹴りを打ち込んだ。

 ドスンッと重たい袋でも蹴ったような音が響く。

 大男は攻撃を受けたそぶりすらなくこちらを睨みつけた。


「何すんだてめぇ!!」


 大きく拳を振り抜いてくるが、私の蹴りでビクともしなかったため、距離を取ることができず、両手で拳を迎え入れ、いなそうと咄嗟に体制を立て直した。


 ダンッ


 何かが破裂するような音と共に衝撃が身体中に伝わってきた。

 今まで感じていた風圧が体の中に駆け巡り弾けるような感覚に襲われる。

 気がつくと視界が開けていて青空が見えた。

 自分が殴られ飛ばされた事に気がついたのは背中が地面にぶつかった時だった。


「ック」


 息がつまり声を発することが困難だった。

 幸い体は何とか動けそうだったので、追撃が来る前に体制を整えた。

 ニストの心配をしている場合ではない。

 相手はかなりの手練れだ。


「しかし今の攻撃、強かったですね」


 体に先程の攻撃がピリピリと響く中。

 私はついつい口角が上がってしまうのだった。



【ニスト視点】


 うわ、あいつにやけてやがる。

 何がどう転べば同類の匂いがしたんだろうか。

 かく言う俺も人の事は言えない。

 今まさに俺もニヤリと不気味な笑みをこぼしながら仁王立ちで手下Cを見ているところだからだ。

 と言っても、体中が痛いし襲われたらと思うと怖いしで笑みは引きつってるだろうからあいつが落ち着けば落ち着く程こっちが不利になるのは明確だ。

 どうにかして動揺させたままにしておきたい。

 ここは会話で時間を稼ぐほかあるまい。

 ぶっちゃけ相手が騙されてくれればなんでも良いんだ。

 俺は突拍子もないことを口にした。


「随分と怯えているようだなC君」

「う、うるせぇ。そんなわけあるか!!」


 手下Cは間髪入れずに叫んだ。

 威勢は良いもののこちらに近づく気配なし、勝機。


「そんなC君に悪い知らせがある」


 こう言う時は少しゆっくりとした口調で話すと良い。

 相手のペースを乱すのには効果的面だ。


「そ、そんなハッタリ通用するわけねぇだろ!!」


 更に叫び散らす手下Cを他所に、俺はピースした手をゆっくりと前に突き出した。


「2人…いや3人かな?」

「な、な…なんの話だ!!!」


 明らかに動揺している。

 え、マジで当たってるのか?

 流石超運。

 女神様万歳。


「兄弟想いのいいお兄さんじゃないか〜」

「!?」


 その無言、肯定と捉えて差し支えないだろうか?

 きっと俺は今物凄く悪い顔でにやけているに違いない。

 現に上手く行き過ぎてニヤニヤが止まらない。



【手下C視点】


「随分と怯えているようだなシーくん」


 俺はその呼び名を聞いて戦慄した。


~回想シーン~


「ねぇ、私たち付き合って結構立つよね」


 俺の隣でもじもじしながら、彼女はそう恥ずかしそうに囁く。

 今日は冷たい風が強く吹く日だっていうのに、心なしか暖かかった。


「ま、まぁ、そうだな」


 小恥ずかしかったから俺は鼻を指でさすりながら答えた。


「そろそろ親しみを込めた呼び方に変えたいと思うの」

「ま、まぁいいんじゃないか」


 俺は彼女から顔をそらした、多分滅茶苦茶キモい顔してる自覚があるからな。

 俺の名前は、オンズ・デスチャだ。

 ということは、俺はオンズって呼ばれるんだろうな。

 などと、鼻の下を伸ばしながら俺は名前が呼ばれるのを今か今かと待っていた。


「じゃ、じゃあ呼ぶね」

「お、おう」


 心臓の鼓動が早く大きくなっていくのを感じた。

 この音、外に漏れ出てねぇかな。


「ずっと呼んでみたかったの」

「お、おう」


 俺は覚悟を決めて彼女に向き直った。


「シーラカンスみたいな顔だからシーくんって!!」


~終~


 シーくんってなんだよ!!

 そんなにシーラカンスみたいな顔してねぇよ、してねぇよな?

 しかし、惚れた弱みでそう呼ばれることを快諾しちまった。

 だが、この呼び名は親友にだって教えたことねぇのに、何でこいつは知ってるんだよ。

 あわてて叫んじまったじゃねぇか。

 しかし、こいつの次の行動で俺は震え上がることになる。


「2人…いや3人かな?」

「な、な…なんの話だ!!!」


 俺は恐怖を悟られぬように叫んだ。

 しかし、それがこの得体の知れない男に通用しているとは思えなかった。


「兄妹想いのいいお兄さんじゃないか〜」

「!?」


〜回想〜


「お兄ちゃ〜ん」


 無邪気な笑顔で俺に飛びついてくるのは、俺に似ず可愛い妹だ。

 妹が生まれてくる時はそりゃあ俺の中でかなり衝撃的だった。

 思春期真っ盛りだった俺の特有の気まずさと言ったらそう表現できるものじゃない。

 そういう経緯で生まれてくる妹を俺はどう接したらいいのかと悩んでいた時期が懐かしい。

 妹の顔を見た途端、そんな不安は吹っ飛んじまったよ。

 そんな妹もすくすく育ち早7歳。

 おませさんになる年だな。

 そんな妹の周りをうろちょろする同い年くらいのマセガキときたらまぁたまったもんじゃなかったな。

 最初の方はずっと威嚇して脅して追い返していたんだが、いつしかその数も減ってしぶとく残ったのは2人。

 俺の脅しにも耐え、なのに礼儀も欠かすことなく、純粋な好意を寄せるおチビたち。


「モミナちゃんは僕のお嫁さんだ」

「いいや僕のお嫁さんだね」

「2人とも喧嘩は好きじゃないの」

「これは喧嘩じゃない、男同士の決闘さ」

「そうだ、君をどちらがより幸せにできるかを競っているのだよ」


 とまだ赤ちゃんの名残みたいなモチモチのチビたちが言ってるんだぜ。


「モミナちゃんを幸せにできるのは僕だと思いませんか?お兄様」

「いいや、僕の方が幸せにできるとも。ねぇお兄様」

「ダメなの、お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなの〜」


〜終〜


 いやもうお前ら全員俺の家族だ〜!!

 そうさ、あいつらは2人とも俺の弟だ。

 異論は認めねぇ。

 だが、これも知っているのは極少数でよそから来たこいつが知ってるわけがない。

 いや、しかし嘘だというにはあまりにも確信的過ぎる。

 しかもさっきよりも不気味に笑ってる気がする。

 も、もしかしてこいつ。

 そう思うや否や口を開いた。


「後悔したくなければ、家に帰ることだな」


 俺はその言葉を最後まで聞かずに走り出していた。


【ニスト視点】


 おうおう、行ったれ行ったれ。

 別に何もしてないけどな。

 さて、これである程度は片付いたわけだな。

 と言っても、俺が実力で倒した奴は1人もいないんだけどな。

 言っても仕方がない。

 超運に恵まれた俺と戦ったことを恨め。

 って事は女神様に立て付くことになるのか、ご愁傷様。

 正直今の周りの反応はあまり芳しくない。

 トーザが好青年みたいな見た目してなかったら今頃アウトだぞ。

 十中八九俺の発言のせいだがな。

 さて、足の痺れも無くなってきたし、今なら隙を伺ってとんずらすることもできるだろう。

 だけど、まぁ、うん。

 トーザに助けられた義理もあるし、ここはもうひと頑張りするとしますか。

 と、さっきまで腹を押さえていた手下Bがのそのそと立ち上がってきた。

 正直お前もビビって逃げてくれればありがたいんだけどな。

 Cよりも肝が据わってやがる。

 覚悟が決まった目で睨まれちゃどうしようもねぇ。

 俺も腹を括るしかないな。

 腹回り的に結構大変そうとかいうな。

 そんじゃあ、いっちょやったりますか。

 そう俺が腕をぶんぶん回した時に隣で何かが弾け飛ぶかのような音が聞こえた。

 勿論音の出どころはトーザと大男からで、大男は驚きと怒りで目をまん丸にさせながらトーザを見ていた。


「てめぇ!!今何しやがった!!」


 わぁ、マジでブチギレてるよお相手さん。

 やっぱ今の内に逃げておこうかな〜。


戦闘シーン?は初めてなので上手くかけているかは不明です。

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