#1-38 ゴブリンキング 襲来!!
龍君が旅立ってから翌日が経過した。未だに『鑑定眼鏡』の入手に戸惑っているが、貰ってしまった以上性能を試めさずを得なかった。よって、いつも通り【アパートの空き部屋】に潜ってヴリドラさんの目の前に立ってみたんだけど・・・
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名称: 天地竜ヴリドラ
Rank:H
職業:なし
レベル:3
HP:88
MP:108
ST:130
攻撃力:88
知力:97
守備力:95
敏捷性:105
Next Exp. 128
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よし、今までの努力返せ。
はぁ・・・ため息が止まらない。ごりごり明細にステータスが表示されているよ。2週間の努力もしてきたのに全て台無しになった。いや、分からなかったMPや知力が書いてあるからいいんだけど。こんな小さなモノ1つで私たちの仕事もうお役御免じゃ・・・
いや、全ては表記されていない。書かれているの【ステータス】と【ランク】だけで【保持スキル】【耐性】【属性】【ドロップアイテム】といった大事な情報が書かれていない。プレイヤー側のステータス画面と一緒だ。
そういった概念は引き続き自力で調べ、考えるしかないということか。うん、そう思うとなんか微妙に感じてきた。【ステータス】は攻撃を100回当てたり受けたりする程度で把握することができるが、【ドロップアイテム】はその10倍以上の苦行を行わないといけない。
それにしても、【保持スキル】まで見えないのは予想外だった。知らない【スキル】の解析となると仮名をつけて性能を予測していくしかないから難しいのだ。【スキル】すら把握できる上位互換の『超鑑定メガネ』みたいなのがあったりするのかな? まぁ、そこはクヨクヨしててもしょうがない。
それを差し引いても、コイツは検証に大きく貢献できる。自分達が調べたステータスと実際に鑑定したステータスはほとんど一致していた。これで今まで考えた公式も正しいと証明されたのだ。単純に正しかったか否かは不安要素しかなかったからね。龍君に感謝しないと。
世の中の努力なんて実るよりも実らない事の方が多い、ポジティブに行こう。
あと、魔物にも【経験値】という概念があるんだね。となると理論上、経験値を得ればレベルを上げることが可能か。特別職に【使い魔】みたいなのがあって、それで魔物を仲間に出来る用・・・なのかな?
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「遂にここまで来たね!」
「そうだね。」
宇宙人が襲来して3週間が経過した。長きに渡る『戦い(作業)』を終え、遂に【アパートの空き部屋】の最下層に辿り着いたのだ。目の前には銀色の巨大な扉が立ち塞がっている。
「この先にボスがいるんだね!」
「多分ね。」
集めた情報によると、全てのダンジョンの最奥には必ずボス部屋がある。ボス部屋にはボスが1体〜数体いて、初めて討伐する事で確定で宝箱が1つ貰える。討伐後はダンジョンの入口までワープできる『魔法陣』的な何かが出現する。
確認した全てのHランクのボスのレベルは10〜12。HPは通常の魔物よりも体感3倍〜5倍あるんだとか。
さて、レベル12のボスが出現して自分達は2人で勝つことができるのだろうか。
結論は『ほぼ問題ない』だ。
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プレイヤー名:松本直人
Rank:G
職業:盗賊
レベル:18
HP:197
MP:162
ST:113
攻撃力:145
知力:159
守備力:179
敏捷性:154
Next Exp. 797/799
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プレイヤー名:谷口彩香
Rank:G
職業:魔法使い
レベル:18
HP:231
MP:273
ST:273
攻撃力:99
知力:312
守備力:159
敏捷性:277
Next Exp. 797/799
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どう、このレベル。Hランクダンジョンしか潜ってない割には高いとは思わない?これでも、毎日ヴリドラさんを100体以上倒してたからね。エゴサをした感じ、人類の平均レベルが今1〜3、毎日ダンジョンに通ってるイキリも平均3〜5くらい。世間的に見たらかなり高い方だ。
え、レベル42の人がいる? あの人は人外だからもうほっといて。
世間一般からみると、Hランクダンジョンのボスですら大きな壁となっているが、自分たちにとってはどうってことのないステータスだ。むしろ、そんなことよりも気を付けるべき事は相手側の【スキル】や【耐性】。
何せ、ここの雑魚敵が最強格のドラゴンだったからね。ヴリドラさん自体のステータスは低かったもの、【スキル】や【耐性】は非常に優秀である。ボスはヴリドラさんの上位種であると考えると・・・気が引けない、注意が必要だ。
「じゃあ、開けるけど準備はいい?」
「おっけー!」
とはいえ、あらゆる事態を準備してきたのだ。自分達は倒せるだろうと軽い気持ちで扉を開ける。
ゴゴゴゴゴ・・・!
扉の先には小さな魔物が1体立ち塞がってた。いや、全然小さくないか。ヴリトラさんの体長が5m程あるせいで、小さく見えるだけだ。コイツも見上げる程の大きさで全長2mはある。
竜の姿ではなく人型の魔物。錆びた緑色の用な全身と、あまりにも巨大な腹部。邪教徒が付けてそうな禍々しいネックレスと巨大な斧。頭には安っぽい王冠をかぶっている。
こ、コイツは・・・!?
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ゴブリンキング Lv. 12
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ご、ゴブリンキングだぁーっ!!!
っておおおおおい!? なんでテンプレな奴がここで来るの!? ドラゴンのドの字も無いんだけど!?
普通、ダンジョンには何かしらの特徴があり、生息地や種族が共通しているものが多い。例えば、スライム系しかいないダンジョンだったらボスが『キングスライム』だったり、海に生息している魔物が共通しているダンジョンだったら、ボスは魚系統のヌシだったりね。
てっきり、【アパートの空き部屋】もヴリトラさんしかいなかったからその上位種が出るのかと思ったのに・・・
なんでゴブリンキングなの?
「へっ、俺様の領地に入りやがって。何者だ?」
「「しゃ、しゃべったー!!!」」
ちょっと、喋るなんて聞いてないんだけど。
今まで出会ったことのある全ての魔物は自我を持たなかった。それはダンジョンボスであろうと例外ではない。自我を持つ魔物など生まれて初めて見たし、聞いた事もない。
「ほほぉ、そこの女は美味そうじゃねぇか。」
どうやらゴブリンキングさんは谷口さんにご執心のようだ。舌を舐めくりまわるエゲツない描写に谷口さんの顔から血の気が引いていく。なんかムーショックさんとキャラ被ってるなコイツ。
魔物は人間でも太刀打ちできるようにする宇宙人の配慮なのか、低レベルのAIが大量に生成されている。自我があるなんてまるで聞いた事がない。仮に自我があるとしても魔王や四天王並の【知力】が必要だと安易に予測できる。
しかし、ここはHランクダンジョンの最下層。日本語を会話できるほどの【知力】を持っているとはとても思えない。なら、この日本語の正体は今の所1つしか思い当たらない。
「谷口さん、取り敢えず【フャイアボール】を脳死で連打して」
「え? うん、分かった」
突然の指示に少し動揺したが、彼女は二つ返事で魔法を唱え始める。
「それにしてもこれ程のべっぴんさんは見た事ねぇ……熱っ!? おいそこの陰キャ! てめぇがこの女のなんなのかは知らねぇが、今から……あっつ!? い、今からこの女の服をビリビリに破き、お前の目の前のコイツの処女を……あちゃーっ!? あ、あの、その炎熱くて痛いので出来れば止めてもらえると有難いのですが……ぎゃーっ!? 止めてって言ってるでしょ!? お願いします! 止めてくだしゃい! お願いします! ぐぎゃーっ!!! 」
コントかな?




