#1-39 ゴブリンキング 襲来!!②
「あ、あちゃーっ!!!! さっきの言葉は撤回します!!! 調子に乗ってすみmぎゃあああ!!!」
谷口さんが容赦なく【ファイアボール】を連打するので、ゴブリンキングさんのHPバーはみるみる無くなっていく。ボスのHPは体感3~4倍あると聞いてるけど、実際にはどれくらいなのだろうか?
そんな疑問も一瞬で分かる優れものがこの鑑定メガネだ。
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名称:ゴブリンキング
Rank:F
職業:ゴブリンキング
レベル:12
HP:435/1.85K
MP:876/876
ST:?
攻撃力:?
知力:?
守備力:?
敏捷性:?
Next Exp. 0/399
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はりゃ、HPとMP以外隠されてる。てか、HP高っ! これは通常3倍とかの規模じゃなくて10倍はあるね。
でも、HPが2,000弱にしたらHPバーの減りが早すぎるような・・・
谷口さんの魔法の威力が高すぎるのか、それともゴブリンキングさんにとって炎属性が弱点だったりするのか・・・どっちもだなこれ。
「谷口さん、やめてあげて」
「うん」
あと1発で倒せそうなHPバーを残して彼女は打つのを止める。黒焦げになったゴブリンキングさんは荒く息をしながら、絶望と褐求の眼差しでこちらを見上げる。
「お、俺様が悪かった! 頼むからここから見逃してくれよっ!? なっ!? なっ!?」
ダンジョンボスのくせに許しを乞いてきた。谷口さんに攻撃をやめさせたのはゴブリンキングさんに聞きたいことがあったからだ。
「あのー、貴方って自我があるのですか?」
「へ?」
唐突の質問にゴブリンキングさんは変な声で返事をする。
「魔物のAIレベルは基本的に低めに設定されてるんですけど、貴方はなぜ人間と同等に近い会話ができるんですか?」
「何故って・・・それが俺様だからだっ! 」
ゴブリンキングさんは答えになっていない答えでドヤ顔になる。
だが人間とほぼ近い会話が成り立っている。それにこの手足の動き、呼吸、無数に近い数の行動パターン・・・間違いない、ゴブリンキングさんのAIは汎用人工知能に達している。
汎用人工知能は人間に近い性能を持つ『強いAI』というものに分類されている。人類の幻想として描いた『アンドロイド』に近いものだと思ってくれればいい。もし、戦う場面になったら対魔物戦ではなく、対人戦を想定して立ち回った方がいい。
「自分が何者か、それに何の為に生まれてきたか分かりますか?」
「俺様は宇宙人って奴に創られたんだ! 確か奴には『Code284-10』って呼ばれてたっけど、意味は知らねぇや!
そいつからは『ここに現れた目の前のプレイヤーを殺せ!』という命令だけインプットされてるんだ!
プレイヤーを殺す事だけが俺様の使命であり生き甲斐なんだ!
まだ誰も出会ったことがないから殺したことはないけどな!
だからこうして何もせずにプレイヤーを待っていたというわけだ!
ガッハッハッハッ・・・!」
「暇じゃないのそれ?」
「・・・」
しばらくの間、沈黙の空間が続いた後、ゴブリンキングさんがその空間を断切するように叫び出した。
「だからどうしたっ!?」
なんか開き直った!
うーん、ゴブリンキングさんは『宇宙人』に創られた存在という自覚はあるのか。宇宙人について色々情報を聞き出そうと思ったけど、あんまり有意義なのはなさそうだ。目に入ったものといえば、『Code284-10』という番号。魔物のコードネイムだろうか? 番号の意味が分かれば正体が分かりそうだけど・・・駄目だ、思いつかない。こういうエンジェル番号的なのは詳しくないんだ。
「谷口さんはどう思う?」
「なんか焦げ臭いから早くトドメをさしたい」
それはお前がやったんだろ。
「ちょ、ちょっと待ってくれーっ!? 寸止めしたって事はあんたら慈悲を持ってるんだろっ!? ここは見逃してくれるパターンじゃないのかっ!?」
「情報を炙り出したかっただけですよ。それに、ボス部屋は一度入ったらボスを倒すまで出られないと龍君から聞いたし・・・」
背後にある銀色の巨大な扉に目を向けると、いつの間にか完全に閉まっていた。
「そういうことなら俺様が開けてやるよ!」
おい、使命はどうした。
ドスンドスンと大きな床鳴りを響かせながら、巨体は銀の扉に向かう。
「はちょおおおおおおおおおお!!!」
1mは超えているであろう巨大な巨斧を銀の扉に向かって思いっきり叩きつけた。
ガッシャーン!!!
耳に痛覚を与えるほどの金属音が響き渡り、思わず耳を抑えながら視界を狭めてしまう。
「そ、そんなーっ!? 俺様の抱き枕にしていた斧がーっ!!!」
目を開きながら扉の方を見ると、ゴブリンキングさんの巨斧がバラバラに砕けちっていた。それに対して、扉の方は無傷でありピンピンしている。
「これからはどうやって寝ればいいんだー!?」
ゴブリンキングさんはさっきよりも絶望に満ちた表情で四つん這いになり、天井を見上げている。
「大丈夫ですよ。今から永遠に寝かせてあげますので。」
沸点に達しそうな谷口さんが、檜の杖をポンポン左手に乗せながら満面の笑みで1歩1歩ゴブリンキングさんに近付いていく。
「あ、すみません! ちょっと待って下さいね! ふんぬー! ふんぬー! 畜生、なんで開かねぇんだよ! クソ扉がぁぁぁ!」
「御宅はそろそろいいですか?」
「あーあーっあ! ちょ、ちょっとそこのちっちぇい陰キャみたいな・・・」
「はい?」
谷口さんが強めに反応しながら目を細める。
「じゃ、じゃなくてそこの男性の方! この女性の方をどうにかして頂けないでしょうか!?」
ゴブリンキングさんが自分に涙の懇願してきたので、自分は声が届くように両手を口に合わせる。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ! ダンジョンボスは死んでも何度でも勝手に復活しますから!」
「本当かっ!?」
「・・・多分」
「何で断言じゃないのっ!?」
ダンジョンボスは通常の魔物とは違い、死んでも消滅のカウントはつかずに一瞬で消滅する。その後、プレイヤーが部屋を抜けた直後に復活する。そういう仕様だ。
だが、その復活したボスの種族やレベルは同じだが、同じ個体だという保証はない。ここでゴブリンキングさんを倒しても復活する事態が起こるのは確定だが、復活するゴブリンキングさんが別の個体かもしれないのだ。
という訳でトドメをさすか正直迷走してる。いくら魔物でも倒しにくい性格してるし。でも、倒す以外に脱出する方法はないし・・・どうしよう。
「師匠、復活出来ない保証がないから悩んでるの?」
谷口さんがそんな事を尋ねてきた。
「え・・・うん」
「大丈夫だよ。ヴリトラさんもちゃんと復活してたもん」
はい? どういう事?
「何千体も倒したからなんとなく分かるんだけど、ダンジョンにいたヴリトラさんは40種類しかいなかったの」
「え? 行動パターンは全個体同じだったぞ?」
「ううん、そういうのじゃなくて・・・上手く言えないけど叫び声とかで性格がなんとなく分かるの!
ほら、1番最初に戦ったヴリトラさんは臆病者だったり・・・
ヴリトラ『ぎゃおおおおおお!!!』
あの個体は好奇心旺盛だったり・・・
ヴリトラ『ぎゃおおおおおお!!!』
そういえばちょっと泣き虫な個体もいたっけ・・・
ヴリトラ『ぎゃおおおおおお!!!』」
全員同じに聞こえるんだけど。
「おそらくだけど、倒しても一定時間後に何処かの場所で復活してると思うの。少なくとも、最近倒してて新しい性格の子はいなかった」
「つまり、ゴブリンキングさんを倒しても同じ個体として復活できる保証があると。」
「うん!」
はひゃー・・・今まで行動パターンしか見てなかったから無限に別の個体が量産され続けてるのかと思ってた。この体感も谷口さん特有の才能なのかもしれない。自分は半分しか理解できなかったけど。
「という訳で倒しても復活するから問題ないよね!」
「そうだね」
谷口さんは杖からファイアボールを取り出す。
「ちょっと待てっ!? 確かに復活出来るのは分かったんだけど、それ熱くて痛いんだよ!? せめて心の準備くらいさせてもらっても宜しいでしょうか!?」
「私たちは忙しいのです」
「あ、あの! そうだ! 一緒にオセロでもやりませんか!? こう見えて俺、結構強いのです! 私を倒すのは物理じゃなくてオセロでも……ぎゃあああああああ!!!」
『ダンジョンボス ゴブリンキングLv.12 を討伐しました!』




