#1-34 萩原龍 襲来!! ③
「……龍君?」
まばらに響き渡る雨の中、友人であり世界ランカーでもある龍君が自分の家の玄関前でぶっ倒れていた。
「……」
なんで?
いやいやいやっ!? なんで龍君が自宅の前で倒れているの!? 今日もダンジョン調査がんばるぞーと家を出たら急展開過ぎるんだけど。
これはあれだな……いままで15話くらい使って面倒くさい調査をずっと書いてたから創造神がやけになってるなこりゃ。だからっといって急展開にも程がある。っと言ってる場合じゃない……今は状況整理だ。
龍君は世界ランキングで1位をキープし続けている究極のプレイヤー。時々、連絡を取り合ってるが、最後に連絡したのがDランクダンジョンに初潜りする時だったっけか。と言う事はやられたのか、Dランクダンジョンに。
自分は龍君の頭上にあるHPバーをチェックする。
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HP [|| ]
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やば! 瀕死じゃん!? 意識も失っているし今すぐ助けないと!
変に状況整理している場合じゃなかった。救助が最優先だ。とはいえ、118番は現在機能していないため、自身の手のみで治療をするしかない。今ではポーションを投げるだけで大抵の怪我を治せるからな。便利な世の中になったものだよ。
自分は【袋】からポーションを取り出し、龍君に向かって放り投げる。
ぱりーんっ!
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HP [||||||||||||||||||||||||| ]
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うお、全回復しねぇぞ!? それだけ龍君の最大HPが高いのか。ポーションで全回復しない人初めて見たな。人生の中で自分自身と谷口さんにしかポーション投げた事なかったけど。
STの回復量を上げるために、もう一つポーションを投げて全回復させてから、自室の布団まで龍君を運ぶ。レベルが上がってるからなのか、人が物凄く軽く感じる。
「どうしたの?……え!? 萩原君!?」
「谷口さん、緊急事態だから調査活動は中止で!」
「うん、分った!」
直ぐに状況を察した谷口さんは部屋のドアを開け、道を作ってくれる。龍を自分の布団で寝かせ、彼の経過を待つ。
呼吸はあるし、傷もポーションで癒えている。後は目を覚ますのを待つのみ。
「なんで萩原君が倒れていたの?」
「分からない。玄関前で普通に倒れてたんだ。Dランクダンジョンに潜ると言ってたからそれでやられたからだと思うけど。」
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ムーショック 格闘家Lv.41
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「あと、何で萩原君がムーショックさんの名前使ってるの?」
「それは知らない。本人に聞いて。」
龍君がムーショックさんの名前使っているのは知っていた。初見で世界ランキング1位にムーショックさんの名前があった時は流石に『へ?』ってなったけど。
ちなみに龍君がムーショックさんの名前にしてるせいで、本物のムーショックさんが『俺がとっぷぷれいやーだぁ!』と嘘つきまくってる。世間はそれを信じ、ムーショックさんのSNSのフォロワー数が現在とんでもない事態になっている。
しかも、ムーショックさんがその状態で無職PRしているせいで、全人類が無職になれば良かったと後悔しているカオスな描写が出来上がっている。ああ、世界の終わる破裂音が響いてくるよ。
それにしても、龍君のレベルは最近聞いてなかったけどレベル41もあったんだね。まだリリース開始から2週間だけど。まぁ、世界1位だからこれくらいあるのは理にかなっているんだけど……もしかして、こうなってるのって過労?
「もう大丈夫そうだし、書き残しを置いてこのままダンジョン行く?」
「いや、今日は休みにする。」
「え?」
おい、何きょとんとした顔してるしだ。
「元々は明日休みにするつもりだったし、今日は自由行動でいいよ。」
「ぇえええええっ!? 24時間365日刺突猛進汗水垂らして働くんじゃなかったの!?」
そこまでブラック企業は無いわ。
「頑張るのは最初の2週間だけだよ。何回も言ってるけど、一番頑張るのは犠牲者が多く出る序盤だけだって。ある程度世が環境に適応し始めたらちゃんと週2休みは取るよ。」
「ぇえええええっ!?」
「とりあえず、今日はまる一日休みで。自分達の体力は既に限界を超えてるんだから。」
「ぇえええええっ!?」
働かせすぎて谷口さん壊れちゃった。
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「……くッ」
龍君を看病している最中、寝ている彼の身体がぴくりと動いた。
「お、起きた?」
「……直人か?」
「ああ、家の前でぶっ倒れてびっくりしたぞ。ちゃんと記憶は残ってる? 自分の名前は分かる? 身体は動かせる?」
「……問題ない。」
「そう、なら良かった。」
彼の安否を確認でき、自分はほっと胸を撫で下ろす。
「世話を掛けたな。」
「別に良いって。白湯でも入れてこようか?」
「頂く。」
自分はリビングで白湯を入れ、彼に渡す。
「で、何があったんだ? Dランクダンジョンってそんなにヤバかったのか?」
「普通にボスが強くて苦戦しただけだ。」
「そう、Dランクの魔物のレベルはどれくらいだ?」
「入り口直後にいた魔物でレベル97。」
「よし、もう二度と潜るな!」
アホだろコイツ。なんでレベル41なのにソロでレベル90代のダンジョンに潜ってるんだ。
龍君は世界1位でレベル41あるのにも関わらず、ランクは『F』である。つまり、まだ龍君の適正ランクのダンジョンは『F』のままなのだ。それなのに、『E』『D』ランクに単独で乗り込み蹂躙し続けている。一般的に考えて既にこの人の頭はおかしいのだ。
「問題ない。ステータス差が体感10倍程度あるだけで、AIレベルは大体1~2。つまり雑魚と変わらない。」
「問題しかないわ! そのステータス差なら一撃で即死だわ! てかボスで苦戦したって……最下層まで潜ったのかよ。」
「ああ。」
「とんでもねぇな……苦戦したボスは誰だったんだ?」
「『アイアンジャイアント』、鉄の塊の巨人。」
「レベルは?」
「124。」
「うわーっ・・・まぁ、龍君ならレベル96も124もそんなに変わらない気がするんだけど、何に苦戦したんだ?」
「『アイアンゴーレム』は物理攻撃が効かない。」
「ありゃ、そりゃ無理だね。」
龍君は【格闘家】なので、物理攻撃しか出来ない。物理が効かない敵が出てきたならソロでは絶望的だろう。
「そっか、じゃあ諦めて逃げてきたって事か。よく生きて戻って来たね。」
「いや、倒して来た。ボス部屋はボスを倒さない限り、閉じ込められるから。」
いや、倒したんかーい!
「ど、どうやって倒したの?」
おそるおそる討伐方法を聞いてみる。
「ボス部屋に石ころがあったから投げた。石ころは物理攻撃扱いにならなかったからなのか、何故かダメージが通った。ダメージは本気で投げて30くらいだけど。それを700回くらい投げて倒した。」
きしょすぎだろ。
「30ダメージを700回ってことはHPが21000くらい? どのくらい時間が掛かったの?」
「20時間くらい。」
「食事と睡眠はどうした!?」
「一度も取っていない。取り巻きの雑魚敵でレベルアップして眠気も食欲も全て回復するから。」
「寝ろっー!!!!!」
自分は反射的に龍君を押し倒し、リアルタイムアタックの気分で毛布を敷かせる。
コイツは駄目だ。このまま放置しておくと間違いなく死ぬ。むしろ、今何故こうして生きてるのかが不思議なくらいだ。
「師匠、私達【創る側】が世界で一番ブラックだと思ったのに、上には上がいる事を思い晒されたよ。」
裏で話を聞いていたのか谷口さんが会話に混ざって来た。
「コイツが異常なだけだから当てにしちゃ駄目。」
「?」




