#1-22 レベルアップ 襲来!!
ピロローン♪
ん? なんだ、このSEは?
『リアルRPG』になってから様々なSEを聞いてきたが、今回の『ピロローン♪』は初めて聞く。
そして何だろう、身体が少し軽くなったような気がするんだけど。
ーーーーーーーーーーーーーーー
松本直人 盗賊Lv.2
HP:114/114
ーーーーーーーーーーーーーーー
成程、レベルが上がったのか。ヴリドラさんの獲得Expは2だから、累計50体倒した事になる。大分倒したな。『ピロローン♪』はレベルアップのSEなのね。
自分はセレクト画面でステータスを確認する。
ーーーーーーーーーーーーーーー
プレイヤー名:松本直人
Rank:H
職業:盗賊
レベル:2
HP:114 (+4)
MP:93 (+3)
ST:60 (+2)
攻撃力:84 (+3)
知力:99 (+3)
守備力:111 (+3)
敏捷性:82 (+3)
Next Exp.:0/113(+13)
ーーーーーーーーーーーーーーー
全てのパラメータのステータスがほんの少し上昇している、ほんの少しだけど。最大HPが4上昇している。レベル1上昇でHPが4増えるという単純計算なら、レベル100でHPは510、レベル200で1010、レベル300で1510……あれ? 巨大モンスターに勝てなくね?
自由の女神パイセンはレベル273。自分がレベル300になって、レベル1の15倍程度のHPや攻撃力を得ても、勝てる気が全くしない。大量のアメリカ兵さんがパイセンに戦車等で砲撃を浴びせても、HPバーが全く減らず、パイセンの通常攻撃で全てが一瞬で塵になるという報道があった。
レベル300と言っても、ステータスがレベル1の15倍程になるだけ。HPも防御力も攻撃力も人間の15倍以上ある戦車が束になっても一瞬で塵にされたんだ。勝てる要素が微塵も無い。やっぱり、特別職のステータスが異常に伸びたり、専用のスキルで何とかする感じになるのだろう。
「何もしてないのにレベル上がっちゃった……」
平等にExpを振り分けていた為、谷口さんにも同時にレベルが2になっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
プレイヤー名:谷口彩香
Rank:H
職業:魔法使い
レベル:2
HP:144(+4)
MP:146(+6)
ST:157(+5)
攻撃力:62(+2)
知力:166(+6)
守備力:99(+3)
敏捷性:148(+6)
Next Exp.:0/113(+13)
ーーーーーーーーーーーーーーー
自分と比べたら伸びが凄まじい。特にMPと知力と敏捷性の伸びが+6なのが完全に別次元。何でこんなに伸びてるんだろう? 素のステータスが高いからかな? ステータスの伸び方の法則も把握しておきたいな。
「お、全回復している。」
レベルが上がると同時に、HPとSTが全回復していた。これは有難い。このシステムには宇宙人の優しさが感じる。RPGって、レベルアップ時の全回復の有無でゲーム運営の性格が見えてくるからなぁ。
その理論でいくと、宇宙人はギャル語がウザイだけで、もしかしたらそんなに悪い奴では無いのかもしれない。まぁ、勝手に地球を『リアルRPG』に変えて、1日3000万人を犠牲にさせてる時点で充分イカれてる奴なんだけど。
レベルアップ時の全回復……アクションRPGでは『戦略』として使えるかもしれない。しっかり頭に入れておこう。
「谷口さんもレベルが上がったから全回復してるでしょ? 動けるか?」
「うん、もう大丈夫! 何時までも頼ってる訳にはいかないからね!」
そう谷口さんが元気よく返事すると、すかさず戦場に復帰する。
レベルも上がり、谷口さんも一層絶好調!……と思いきや、彼女の動きにぎこちなさを感じる。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
彼女はヴリドラさんの攻撃を【回避】しようとしない。なるべく【防御】しようと心掛けている。
ガンッ!
ほら、また【防御】だ。
幾らステータスが高い谷口さんでも【防御】ではダメージを受けてしまう。小さなダメージの積み重ねにより、HPが削れていき、徐々に彼女の息が荒くなっていく。
ポイッ。
バッシャーン!
谷口さんのHPが半分を切ったタイミングでポーションを彼女に投げ、回復させる。ポーションをかけられた事に気付いてキョトンとした表情で此方を伺う。
「あの……谷口さん?」
「えっと、どうしたの?」
「何で【回避】しないの?」
そう問うのと同時に、彼女の身体がビクッとなる。
「え、えっと……それは……」
「【防御】より【回避】の方が強いのは知ってるよね? さっきから、何で【防御】ばっかりしてるの?」
「……」
「もしかしてだけど、【ジャスガ】したいの?」
「グサッ」
図星だった。
どうやら谷口さんは自分と同様、【ジャスガ】に憧れた可哀想な人になってしまったようだ。こうなってしまった以上、口実よりも現実を分からせた方がいいか。
「じゃあ、やってみます? 手伝いますので。」
「!?」
まさか手伝ってくれるとは思わなかったのか、彼女は目を大きく見開き、無言で首を上下に振る。
自分がコーチングしながら、谷口さんに【ジャスガ】を口受する。
「力を入れちゃ駄目。攻撃が当たるギリギリまで力を抜いて、最後に力を入れる感じで。」
『ギャオオオおおおおおお!!!(谷口さん、お仕置してください!!!)』
ヴリドラさんが【押し潰し】をしようと谷口さんに襲いかかる。
「ひぃ!」
谷口さんはその威圧に耐える事が出来ず、思わず力が入ってしまう。
ガンッ!
「力が入っちゃってますね。もう1回。」
『ギャオオオおおおおおお!!!(お仕置きをおおおお!!!)』
ヴリドラさんは魔法を詠唱する仕草をする。【アースボール】だ。
「【アースボール】は一番【ジャスガ】が入りやすいです。野球みたいに、跳んでくる玉を跳ね返すだけなので。」
「……野球? そうか!」
何か閃いたらしい。ヴリドラさんが【アースボール】を放つのと同時に谷口さんが盾を後ろに構える。
「でりゃあああああ!!!」
【アースボール】がすぐそこまで迫ると、谷口さんは盾を野球のバッドのように思いっきり振り出し、岩石をはね返そうと心掛ける。
ガンッ!
「痛ああああ!!!」
「あんなでっかい岩石を打ち返せる訳がないでしょ……確かに言い方は悪かったけど。」
「ううう……じゃあ、どうすればいいの?」
「今のところ大人しく力を抜いて、タイミング良く防御するしか無いかな? 力を抜く過程が凄い大事。今のように、盾をバットのように振るのはずっと力が入ってる状態だから【ジャスガ】判定にはならない。恐怖心からは逃げられないと言うことだ。」
「師匠は怖くないの?」
「自分?」
「普通、攻撃されたら反射的に力が入っちゃうと思うんだけど、師匠は怖くないの?」
「最初は怖かったけど、慣れてしまえばそんなにだな。」
「慣れだけで怖くならないと思うんだけど……」
「……」
「……」
「……あんまり言いたくないんだけど、谷口さんって西村達や山本に暴力を受けてる時、全然抵抗してなかったよね? 少なくとも谷口さんには他者の攻撃に対しての恐怖心から立ち向かう心は持ってるのだと思う。培われてきたその心を使えば、【ジャスガ】をしようとする姿勢くらいは出来るんじゃないかな?」
「……」
谷口さんは無言で頷くと、再びヴリドラさんの瞳を覗きだした。




