#1-7 萩原龍 襲来!! ②
「というか龍君、新幹線で来たと言ってたけど、お金は大丈夫なの? 新幹線だから結構掛かると思うんだけど?」
「問題無い、昨日ダンジョンで稼いで来たから。」
龍は頭上を指し、そこにあるステータスを見るように促す。
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萩原龍 格闘家Lv.4
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「もうレベル4か……レベリング結構大変?」
「かなりキツい。レベル12~14の魔物を一日中狩って3つしか上がらなかった。」
「え? レベル2桁狩ってたの? ということはHランクじゃなくて、Gランクダンジョンに?」
「ああ。」
「レベル10以上差があると、ステータスが2倍くらい離れると勝手に思ってるんだけど……大丈夫だったの?」
「行動パターンが決まってるから問題ない。」
「相変わらずとんでもないな……」
「お前にだけは言われたくない。」
RPGには主に2種類の形式がある。
まず、『コマンド形式』。プレイヤーがキャラクターに指示を出して戦う形式。細かい指示が出来ないので、会心率や回避率など運ゲーに左右されることが多い。
もう一つが『アクション形式』。プレイヤーがキャラクターを自由に動かして戦う形式。こちらはステップ回避や敵の特定の位置に攻撃して大ダメージを与えるなど、コマンド式で運ゲーだった要素を実力ゲーに変貌しているシステムが多い。
そう、『リアルRPG』は『アクション形式』なのだ。『アクション形式』はかなり実力やキャラコンが試されるので、やろうと思えばとんでもない格上でも理論上倒すことが出来る。どんなに強力な攻撃でも当たらなければノーダメージだから。
それに対し、『コマンド形式』はどんなに強くても圧倒的レベル差では蹂躙されてしまうケースが多い。攻撃を回避できるかどうかは運次第だから。
龍君は最初はHランクダンジョンに潜って魔物を狩っていたらしいが、貰える経験値が少なすぎたため、動きに慣れてきたら直ぐにGランクダンジョンに移動したのだと言う。
「一回喰らったら即死の環境で……よく潜ろうと思ったね。」
「別にステータスが高いだけでそんな強くなかったぞ? 直人ならEランクダンジョンくらいならレベル1で攻略出来ると思うぞ?」
「いや、自分は現実のステータスが底辺なので無理です。」
「行動パターン自体がゲームと一緒だからいける筈だが?」
「いけたとしても行こうとは思わないわ! 一撃貰ったら昇天なんだぞ!?」
谷口さんはあまりにも常識外の会話に動揺している。普通に考えて龍の言動がおかし過ぎるからだ。ステータスが2倍以上離れているGランクダンジョンの魔物を大量に狩っている事。そして、その規格外の龍が自分を過大評価しているという事を。
彼女は生まれて初めて、自分達との『次元の違い』と言う巨大な壁に阻まれる執念に陥っていた。
「Gランクダンジョンをソロで一日中潜ってたとなると、ランキングも相当高いんじゃないの?」
「今5位。」
「あ、うん、そうか……」
すかさずランキングを開いて龍がいるか確認する。
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5位:【G】萩原龍
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命がけでレベル3つ上げて10位から5位か。これは高いのか低いのか。元からGランクの方が4人いたし、おそらくその人達は基礎ステータスがとんでもない方か、『特別職』で補正が掛かってるのかどちらかなんだろう。
レベルの高さの世界ランキングなら、間違いなく龍が世界1位だろうけど。
「というかGランクになったんだね。」
「レベル4で昇格した。ランクが上がった報酬は無し。レベル4で現在、能力習得なし。恐らくランキングとランクはステータス依存。」
「そうなんだ。情報提供助かる。」
そういえば、荒川の勇者パーティーは全然ランキングに入っていないな。そう考えるとやはりランクはステータス依存なのだろう。特別職はレベルアップのステータスの伸びが凄いんだと思う。レベルが上がればどんどんランキング上位になっていくのだろう。
「ところで、お前誰だ?」
「は、はひぃ!?」
龍君は谷口さんに鋭い目つきで睨みつける。観察されるように見つめられ、彼女は顔を真っ赤にしながらオロオロしている。可愛い。
「この人は谷口彩香。訳ありで一緒にパーティーを組んでいる同級生。」
「お前がっ!? コイツと!?」
何だその反応。どいつもこいつも自分をボッチだと思い込みやがって……まぁ、事実なんだけど。
「そうか、コイツも『創る』側なのか。」
「そういう事。」
再び、龍君は谷口さんを観察する。彼女は龍の威圧に耐えられず、口から言葉を発せない状態だった。何とかして彼女は会釈だけを行動に表す。
「……なぁ、コイツが直人の助手を務まるのか?」
「谷口さんには滅茶苦茶世話になってるよ。」
「俺が聞きたいのは戦闘面の方。コイツのプレイ時間はどれくらいだ?」
「RPG初めて1週間くらいじゃない?」
「……悪いことは言わん。今すぐコイツを追い出せ。」
「ま、まぁ、大丈夫だと思うよ。谷口さん、初見でヴリドラ倒してるし。」
「おい、今何て言った?」
「え? 初見でヴリドラを倒した……」
「下手な冗談は止めろ。」
「冗談じゃないって。」
「お前がコマンド指示したのか?」
「いや、ノーヒント。正真正銘の完全初見。魔法使い3人構成にして、『神々のルーレット』で2割引いてゴリ押した。」
「……」
まぁ、そんな反応するよな。ヴリドラの初見討伐はそれほどまでに偉業だという事だ。谷口さん、もっと誇っていいぞ。
「少しはマシと言うことか。」
相変わらずツンデレなんだから。
だが直後、龍は谷口さんに壁ドンしながら最大限の威圧を放つ。唐突の出来事に彼女は真っ赤になった顔を覆い隠す。
「だからってヴリドラを初見討伐した程度で良い気になるんじゃねえぞ。俺は直人とミミック以外は認めねぇ。そんな簡単に直人の周りをウロウロしていいとは思わないことだ。」
ミミックのせいで、カッコいいセリフが台無しなんだよ。
ミミックは宝箱に化けている魔物だ。RPGではダンジョンのトラップ要素として配置されている。RPGのミミックは下手すればラスボスよりも強い。クリティカル攻撃や即死攻撃を連発してくるからだ。
RPGにおける状態異常は非常に強力である。だが同時に、治療法も豊富に存在しているので、何とかなるケースも多い。しかし、一つだけ絶対に治すことが出来ない状態異常がこの世に存在する。
それは『即死』。『即死』の状態異常の定義は『HPがゼロになる』事。つまり、掛かった瞬間に死んでしまうのだ。
『即死』の治療法は『蘇生』しか存在しなくなる。ソロの龍が掛かれば全滅だ。どんなに強くなっても一定確率で4ぬ。そのくらい恐ろしいのだ、ミミックは。
「というか本当にミミックだけは気をつけてね。」
「問題無い。宝箱自体開けないから。」
「まぁ、そうだよね……普通に死ぬ可能性があるから。」
ゲームなら宝箱は全て問題なく開けられる、死んでもやり直せるからだ。だが、現実は違う。死んだら終わりなのだ。
『リアルRPG』は全人類に『人生縛り』が掛けられている。欲望に負けずに宝箱をスルーする事も生きるためには必要な判断だ。
「『盗賊』のお前がいたら、宝箱開けれたけどな。」
「クエストで『盗賊』雇えばいいのに。」
盗賊はステータスの伸びはあまり良くはないが、探索系にも特化している。今後、罠探知や宝箱の中身が見えるスキルが手に入る可能性がある。
「お前以外に俺に付いてこれる奴なんてこの世に存在しねぇよ。」
「はぁ……世界はもっと広いと思うぞ?」
「……ふっ。」
龍君は自分の発言を否定するように冷笑する。
「じゃあ、もう行くわ。早くレベル上げたいから。」
「そうか、変な事で死ぬなよ。」
「ああ、お前もな。」
「ん。」
龍は背を向け、無言で右手を掲げ左右に揺らしながらそのまま帰っていった。
「相変わらずとんでもない奴だったな……あれ、谷口さん?」
谷口さんは、龍君に壁ドンされてからずっと顔が真っ赤になったまま硬直していた。
これはあれだ。恋愛の『れ』の字も無い自分でも分かる。谷口さん、龍君に堕ちてるわ。
まぁ、別におかしくはない。龍は山本や清水とは比較にならない程のハイスペックイケメン男子なのだから。それも俳優さんも真っ青なレベルで。
しかし、龍君は自分より強い人以外には全く興味を持たない。本人も『自分』と『ミミック』にしか関心を持たないと発言してるし。
毎日数えきれない程のラブレターや告白を貰ってるみたいだが、全て跳ねのけてるとの事。初めて龍君と顔合わせした時に、男の自分ですらホモになりかけた。そのくらい彼は整った容姿をしている。
え? 谷口さんが龍君に取られて嫉妬してないかだって?
ああ、確かに言われてみれば……でもそれ以上に自分は谷口さんが幸せになるならどんな展開に転がってもいいと思っている。自分は既に泣かれて振られてる身だし、諦めはとっくについている。
それに龍君となら全然結ばれてもいいと思う。そのくらい、自分はあの人を信用している。
まぁ、龍君を攻略するのはとんでもなく難易度が高いと思うけど、谷口さんが本気出せば射抜いてくれる気がする。
もし、彼女の幸せの為に彼を射抜きたいと思っていたら、自分はキューピッドになるとしよう。彼女の幸せが自分の最も望んでいる事なのだから。
龍君は主人公の代わりになろう系主人公になるみたいです。
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プレイヤー名:萩原龍
Rank:G
職業:格闘家
レベル:4
HP:188
MP:87
ST:159
攻撃力:153
知力:141
守備力:120
敏捷性:155
Next Exp.144
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