#18 西村望 襲来!! ②
私の名前は西村望。普段は大人しい女の子を演じている。私の趣味は主に2つある。1つは読書をすること。
そしてもう1つが、男をおもちゃにすること。
私は比較的裕福な家庭に生まれた。両親は私に激甘で、欲しい物も言うだけで何でも買ってもらったし、いくら我儘を言っても怒られることなど一度もなかった。
しかし、小学生になると、我儘は我慢しなくてはいけなくなり、勉強も頑張らないといけない。と世間一般では言われている。
だが、私は勉強も生まれつきのIQから何もしなくても好成績が取れた。運動は少し苦手だけど、体育は出席さえすれば成績貰えるので、適当に手加減して誤魔化した。
私は誰かに話しかけることは嫌いだけど、生まれつきの容姿から、何もしなくても男子達が向こう側から声掛けてくれる。
中学生になっても、私の立ち位置が大きく変わることもなかった。変わった事を敢えて言うなら、より一層、男子達のアピールが激しくなった事くらいかな?
ここから徐々に私は、男に対する欲望が強くなっていった。私だって、好みの男はいるし、苦手な男もいる。好みの男はさり気なくアピールし、苦手な男は無関心を突き抜いた。
それを繰り返している内にいつの間にか、私好みの男達に囲まれる逆ハーレム状態になっていた。それに嫉妬し、ハンカチを噛み締めている豚共の姿が愉快で堪らなかった。
人生は困難の連続だというけど、私にとっては全てイージーモード。何もしなくても全てを得ることが出来る。世界は私の為に生まれ、私を中心に回っている。こんな楽な人生がずっと続くと思ったいた。そう、アイツに出会うまでは。
谷口彩香。
高校生になるとアイツと同じクラスになり、初めて絶望を知ってしまった。アイツは、私が頂く筈の男を好き勝手に奪っていったのだ。
アイツは文武両道、2年生で生徒会長になり、更に私には持っていないコミュニケーション力も豊富。完全に私の上位互換なスペックをしていた。そして、私はこう呼ばれる様になった。
『2番目に可愛い女子』。
こんなに屈辱に感じた事は初めてだった。こんなにも、私の思い通りにいかないなんて。
何でも思い通りにいく幸せな人生が、何もかも上手くいかない地獄の人生に変わりつつあった。アイツへのストレスと憎悪が積み重なっていく日々になった。
私はアイツに復讐するため、まずアイツの個人情報を調べることにした。調べていく内にアイツの弱点が明白になっていった。
アイツはお人好しすぎる。
アイツは誰にでも平等に優しく接する。誰かの幸せの為に自分を犠牲にするほどに。そして、どんなに酷い事をされてもアイツは怒らずに我慢する。これは使えると思った。
私は、同じ被害に遭っている女子生徒を探した。主に好きな男子がアイツに取られて嫉妬している豚女を。豚共は私の本来の姿を見て驚愕していたが、利害が一致していたのであっさりと仲間にできた。
そして、集まった女子全員でアイツへのいじめを開始した。暴言、暴力、嫌がらせ、私の予想通り、何してもアイツは私達に報復してこなかった。
何も抵抗もせず、『ごめんなさい』で絶叫している姿を見る度に最高な気分で満たされていった。
更に追い討ちを掛ける様に最高のイベントがやってきた。『宇宙人の襲来』だ。私は特別職の『賢者』が与えられた。
『賢者』が与えられたことを知られると、アイツにぞっこんしていた男共が、一斉に洗脳が解かれたように、私に猛アタックしてくるようになった。しかも、アイツは特別職が与えられなかったという。やはり、この世界は私に全てを与えてくれる。
最終的に私がトップクラスにお気に入りだった、清水健一君と山本雄大君からパーティに誘われた。私は嬉しくて堪らなくなり、即答でOKした。
しかし、完全にまだ思い通りにはなっていなかったようだ。
「やっぱり彩香をウチのパーティに誘うべきだよな。」
「そうだな、僕達にはやはり谷口さんが必要だ。」
健一君と雄大君がそんなことを言い出したのだ。アイツと同じパーティ? ふざけるな! あんな屑と一緒になるなら死んだ方がマシだ。
「でも、谷口さんは特別職持ってないから……っ!」
気に掛からない様に否定しようとして2人を見上げると、見てはいけないものを見てしまった。
2人共、アイツの事に関して、恥じらう表情をしていたのだ。この時、察してしまった。私のお気に入りの2人も、アイツに好意を抱いていると。私は再び、アイツへの憎悪を募らせた。
私は急いで、アイツ本人にパーティの勧誘を断るよう、命令した。アイツは2つ返事でOKしたが、アイツの事だから何が起こるか分からない。
徹底的に痛めつけて、もし破ったら、顔面を傷つけると何度も脅しては念には念を入れた。
命令通り、アイツはパーティの勧誘を断った。だが、事態は最悪な展開と発展する。
清水君がアイツに告白したのだ。しかも、クラス中がいる中で堂々と。こんな事になったのは、絶対アイツが洗脳したからに決まっている。
私はアイツの弱点を既にもう1つ手に入れていた。
アイツの醜い優しさで過去に何度も男子と関係を持っていた事。そして、私達でアイツの身体が傷だらけなっている事。
この2つを新聞部に晒してやるとアイツに復讐する上で脅していた。本人も生徒会長としての信頼が無くなるからそれだけはやめて欲しいと、毎日地を這いずるように土下座してきた。笑えるよね。
だけど、もう許さない。アイツが今何をしても、私はアイツの黒歴史を全て新聞部に晒す。これでアイツは完全に終わりだ。あーあ、アイツが絶望する顔が楽しみで楽しみでしょうがない。
だがたった今、プチイベントが起こった。私がアイツを復讐しているところを同じクラスの松本直人に見られてしまったのだ。
最初は焦燥心で溢れかえったが、よく考えてみると、相手は陰キャボッチの松本。相手が先生や警察に連絡するのが面倒くさがりそうなタイプだったのが、不幸中の幸いだった。
そして驚くことに、入ってきた松本は今までの松本とは違った。根暗なイメージしか持ってた姿とはまるで別人の様な姿で登場した。
そう、松本は『ショタ』だったのだ。
この日本社会において『ロリ』に分類される女子はそこそこいるが、『ショタ』に分類されてる男子はほとんどいない。子供の大体が不細工かクソガキだからだ。
それに大きくなると、殆どの男子は女子にモテようと『イケメン』になろうとしている。しかし、女性にとって『イケメン』だけではなく、『ショタ』もモテる為の重要なパーツだ。それを知らない馬鹿な男子達は、謎のプライドを持って全員、『イケメン』になろうとしている。
更に、高校生以上だと身長、顔つき、声質が大きく変わる為、必然的に『ショタ』では無くなる。つまり、『ショタ』は低身長の小学生、中学生前半までに絞られるため、かなり貴重な存在なのだ。
だが、彼は高校2年生にも関わらずその容姿は完全に『ショタ』そのものだった。
今まで前髪で目が隠れていた為、唯のチビ陰キャに見えたが、彼の大きくて丸い瞳が映し出されてるその姿に、私の中の母性本能が目覚める音がした。
彼は他人と関わるのが苦手なタイプで、ほとんど1人で行動している。私と同様、本もよく読んでいる為、趣味も被っている。誰でも敬語で話し、私の言うことも何でも聞いてくれそうな見た目もしている。
松本直人、悪くない。
私は脳内で舌を舐め回し、早速彼をお気に入り登録する。欲しいものはなるべく早く手に入れたいので、悩む暇もなく直ぐに行動する。彼まで、谷口に洗脳されるわけにはいかないからね。貴重なショタを無駄にするわけにはいかない。
私は立ち上がり、ゆっくりと彼に近づいていく。そして、上目遣いで彼を見つめる。これだけで彼は私の物になる。
そう、これだけでいいのだ。
今までも、お気に入りの男子に上目遣いするだけで、全て私の物にしてきた。成功確率は100%、失敗したことなど一度もない。谷口が邪魔することを除けば、必勝法である。それだけ私の容姿が優れているのだ。
さぁ、そろそろ『もしかして西村さん、僕の事気になってる!?』と思っている頃ね。そこから一晩経って、『よし、西村さんのために勇気出してみるか!』となり、明日何もしなくても勝手に向こうから声を掛けてくる。ふふ、明日の楽しみがまたひとつ増えたね。
「煙草臭いぞ、ブス。」




