#14 勇者パーティー 襲来!!②
「戦闘のBGM変わったけど、コイツもしかして強い!?」
「ボス戦ですね。頑張ってください。」
「えっ!? 喰らうダメージの桁が違うんだけど!? ちょっと待って!」
RPGあるあるその3、ボスだけ与えるダメージの桁が違う。
谷口さんが今まで戦ってきた雑魚敵の攻撃は0~6ダメージ程だったが、このボスは12~24程のダメージを与えてくる。
勇者彩香のHPは36しかないので、回復薬で回復は追い付くものの、ボスの1撃でHPが半分以上削れてしまうため、自分が攻撃する余裕がない。
最終的に奮闘したものの、回復薬とMPが尽きて敗北してしまった。
「……これって詰んでる?」
「現実だと詰んでますね。」
「これどうしたらいいの? 全く勝てる気がしないけど。」
「レベル上げれば確実に勝てます。今のレベル帯でも一応勝てますけど。どうします? このレベル帯で攻略したいですか?」
「このレベルで勝ちたい。格上相手でも勝てるようになりたい。」
「了解です。じゃあ、今回は初めてのボス戦なので特別に攻略法教えますね。
このボスは行動パターンが決まっているタイプのボスです。『火炎』、『強打撃』、『笑う』、『打撃』、そして『火炎』の順で行動してきます。
特に厄介なのは『火炎』です。
『笑う』はデレ行動、『打撃』は12~14ダメージ、『強打撃』は15~17ダメージ、それに対し、『火炎』は22~24ダメージと『火炎』だけ明らかにダメージが違います。
この『火炎』をどうにかできれば攻略できます。」
「『火炎』をどうにかするって、そんなこと出来るの? まだ大した技も覚えていないのに?」
「簡単です。『防御』します。『防御』コマンドは全てのダメージを半分に出来るコマンドです。火炎が来るターンに『防御』すればダメージを11~12ダメージに抑えられるので回復が間に合います。」
「なるほど! やってみる!」
ボスに再挑戦する谷口さん。
1ターン目は『火炎』を使うので『防御』してダメージを半分に減らす。
2ターン目は『強打撃』の15~17ダメージだが、勇者彩香の残りHPは24。『火炎』のダメージを抑えたおかげで4ぬことはない。回復薬は使わずに谷口さんは攻撃をする。残りHPは8。
3ターン目は『笑う』ので、この間に回復薬で全回復する。
4ターン目は『打撃』なので、谷口さんは攻撃する。
5ターン目は『火炎』が来るので『防御』してダメージを半分に減らす。
コマンドを1手1手慎重に選択する谷口さん。そしてついに……
「やったー! 倒せたっ!!!」
「おーおめでとうございます!」
流石、飲み込みが早いなぁ。最初のボスの推奨レベルは6。6以上でもボコボコにされてゲーム機投げてる人が多い難易度してるのに、谷口さんはレベル4で倒した。初めてゲームに触れた人にとってはかなり上出来だ。
「ねぇねぇ、これでゲームクリア!?」
「そんなわけないじゃないですか。ボスは全部で20体以上いるのでまだまだ再序盤です。」
「えええ……!?」
「それに、今はまだ一人ですけど、後々仲間がどんどん増えて4人でパーティ組めるようになりますよ。」
「おお! 楽しみだね! よし、早速次の街へ……」
ピピピ、ピピピ……!
予め設定していたタイマーが鳴り響いた。
「時間ですね。」
「えっ!? もうこんな時間!?」
「ゲームやってる時間は時の流れが早く感じますからね。」
「えーもっとやっていたい!」
「駄目です。バイトあるのでタイマーが鳴るまでと約束したじゃないですか。」
「ちぇー。でも、生まれて初めてゲームに触れてみたけど、こんなに楽しいものだとは思わなかったなぁ。」
「親にゲーム禁止されてる理由わかりました?」
「うん。中毒になりそう。」
それにしても、高校生にもなってゲームやスマホを全て制限している親の気持ちが分からない。未来のため、将来のためと想っている気持ちは分かるが、全部禁止は流石にやりすぎだと思う。
目の前の今の笑顔を踏みにじる行為をして何がしたいんだとどうしても思ってしまう。改めてある程度自由にさせてもらってる自分の親に感謝しなくては。
「ねぇ、ここに残って一人で続きやってもいい?」
「駄目です。」
「ええ! いいじゃん、またご飯作るから!」
「夜は疲れているので駄目です。また、寝落ちしたらどうするんですか?」
「うう……でも。」
「もし、続きやりたかったら、明日来てください。明日は休みなので一日中できますよ?」
「一日中!? 分かった! 今日は早めに帰ってまた明日来るね!」
そう残して谷口さんは颯爽と帰っていった。段々と彼女の扱い方が分かってきた気がする。
********************
ということで、以降、彼女は毎日|家《うち》に来てはゲームをするようになった。目標は宇宙人が来るまでにラスボスを倒すことらしい。まぁ、頑張れ。
休日が終わり、特に大きな変化なく学校が再開し、5時間目には特別授業で全校生徒が体育館に集まり、谷口さんの授業を聞く。
月曜日、第2回『ステータスについて』。
主に『HP』、『MP』、『攻撃力』などのステータス名を細かく解説した内容だった。リアルRPGではどのステータスが需要が高いかという考察も含まれていた。
火曜日、第3回『職業について』。
主に宇宙人が与えた『基本職』の役割を推定した内容だった。役割だけではなく、『基本職』のそれぞれのステータスの伸び方も推測されてあった。また、『特別職』の存在から転職できる可能性も考察した。
特別講義自体は大した問題はなかったが、それとは別で水曜日のお昼、事態が大きく動くことになる。
特別職持ちの山本さん、清水さん、西村さんの3人が一緒に歩いて行動していたのだ。3人は何かしら縁を持っていたというわけではない。であるのにも関わらず、特別職持ちの3人が集団移動していたのだ。注目しないわけがない。
人間の円に囲まれながら、3人は谷口さんがいる席の前に立ち、3人の内の一人、山本さんがクラス中に届くようはっきりと彼女にこう告げた。
「谷口さん、よかったら僕たちとパーティを組んでいただけませんか?」
「え?」
「谷口さん。私は貴方の特別授業で事態の深刻さを教えてくれました。もし、本当に魔物やダンジョンが出れば、目の前の命すら危ないのだと。
そこで、『特別職』持ちの私達3人でパーティを組むことにしました。『特別職』持ちが一緒になった方が多くの命を救えると思ったからです。
そこで谷口さん、貴方も一緒に来ていただきませんか?貴方は『特別職』持ちではありませんが、誰よりも生きていくのに必要な『行動力』と『知識』を持っている。私達、『特別職』持ちが最大限に力を出せるように、是非協力をお願いしたいのです。」
その言葉にクラス中が騒めく。
『特別職』持ち3人のパーティ、そして彼らは谷口さんを誘っている。これ以上に豪華な展開は、例え地球に酸素が無くなっても、存在することは無いだろう。
もし谷口さんが入ったら、学内最強は無論、日本が誇る勇者パーティになるかもしれない。
全く無縁だった、『特別職』持ちの3人がパーティを組むのも、特別職持ちではない谷口さんがそれに誘われるのも、日々努力をしている彼女の賜物なのだろう。
もし、ここで谷口さんがこの誘いに乗ると、谷口さん・西村さんの両者が他のパーティに入れなくなることを意味する。さぁ、彼女達を誘えなく可能性が出てきた男子達は地平線の彼方まで落ち込んでしまうのかっ!? これは見所です! 盛り上がってまいりましたぁ!
「ごめんね、1日考えさせて。」
ひとりで勝手に盛り上がってたけど、普通に無難な判断をした谷口さん。男子達はほっと胸を撫でる。西方さん推しの男子達は既にう〇ち漏らしているけど。
「そうですね。急なお誘いで申し訳ないです。ゆっくり考えてください。」
「彩香、俺は歓迎するぜ。前向きに考えてくれよな。」
学内のイケメン2人に誘われてる谷口さん。特にモテモテな剣闘士の清水さんは谷口さんを名前呼び。地平線の彼方まで落ち込んでたのは男子ではなくて女子の方だったわ。
「……」
西村さんはいつも通り無口無表情。ただ谷口さんをずっと見つめている。相駆らわず、何を考えてるか分からなかった。不気味な程に。




