↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/75

だから

「んなひらひらした可愛い服装でオレとヤろうってか!?なめんじゃねーぞッ!!」


巨大な斧ごと少女の体を蹴り飛ばす。


「フェルンにクソ勇者!絶対に手を出すんじゃねーぞ!」


少女を睨みつける。


「このままじゃむかむかしておさまんねー!このチビはオレが一対一(タイマン)でヤる!」


「わかったよシュトラちゃん」


相変わらずだね。と。そう笑ってフェルンは一歩下がった。


「いくら勇者のお仲間と言っても、自信が過剰なのではありませんか?二人まとめて私と対峙することを推奨いたしますが」


「あ?自信がどうのってのは関係ねーよ。要はプライドの問題だ。てめーみたいなチビ相手に二人でってのは恰好が付かねーだろ?」


「わかりませんね。世界を守らんとする人のお考えは」


ですが、と少女は続ける。


「私にとってはすべて些事です。ヴィルラド様の悲願の為、お二人にはここで死んでもらいます。


「・・・一分だ。六十秒でケリをつけてやる」


少女の持つ巨大な斧。あんなもの一発でも喰らえばそれでおしまいだ。


ヤツの動きの細部にまで警戒しながら駆けだす。


手数も、小回りも、スピードもナイフの方が上。あんなバカでかい獲物を持っている相手には、ド近距離まで近寄るに限る。


寄り切ってしまえばこちらの勝ち。・・・そう結論付けたその瞬間。


「浅はか。脳筋。馬鹿。ヴィルラド様が仰っていたとおりね」


少女はもっていた武器を上空に投げ飛ばした。


そして、素手でオレのナイフを迎え撃つ。


「ちっ!」


ナイフ、拳、足。全身を使った攻撃を、相手もまた全身で受ける。ほとんどは躱され、回避が不可能なものはガードされ、ダメージを最小限に抑えられる。


「巨大な武器を使っているのは、接近戦に自信がないからだとでも思いましたか?」


「うる、せぇ!!!」


振りぬいたナイフの一閃を、大きく飛びのいて躱された。


・・・その大仰ともいえる動作は、何もナイフを避けるためだけのものではなかった。先ほど投げた斧が、オレの頭上に降りてくる。


普通なら後ろに飛んで避けるだろう。だがオレは逆に・・・前に詰めよった。


「ムカつくヤツだぜ。攻撃を受けながら、オレをあの位置まで誘導したってのか?」


「勇者のお仲間からのお褒めの言葉、光栄です」


三度、飄々と攻撃を受け流される。


「先ほどよりも単調に、大振りになっていますよ?ナイフの良さが死んでいます」


「うるせぇな。・・・ところでよ、あと10カウントってところか?」


「何を言っているのですか?」


「言ったろ?六十秒でケリをつけるってな」


「ふふっ、世迷言ですね。実力がなくても、威勢だけで勇者パーティに入れるものなのでしょうか」


「あ?世界を救うのに強さなんて関係ねーよ。どいつもそこんとこがわかっちゃいねーよな。強さだけで救えるんなら、オレかお前んとこの大将がとっくに救っちまってる」


「なら何が必要だって言うんです?」


「んなもんしらねーよ。だが、ま。その答えに一番近付いてんのはあのクソ勇者だろうな」


ーーー9。


斧を失った少女は、それでも強かった。ナイフでの連撃を少ない動きで躱し、反撃までしてくる。


ーーー8。


「アンタは強ぇよ。才能もあって努力もしたんだろうさ」


「嬉しいですね、また褒めてくださって。貴方は良い師になれるかもしれません」


ーーー7。


「だがオレにいわせりゃ、視野が狭すぎるんだ。・・・お前、人を殺したことないだろ?」


ーーー6。


「だから・・・なんだって言うんです」


気丈な声は崩さないが、僅かな動揺が見える。


アイツは地面に突き刺さっていた斧を振りぬく。だがオレには当たらない。そもそも本気で当てようという気迫が感じられない。


ーーー5。


「ビクビクビクビクしやがって、みっともないぜ?何がそんなに怖いってんだ?」


ーーー4。


「なにをっ!」


「お前には信念ってヤツがまるで足りねーよ。言われるがまま、流されるままに戦ってんのがバレバレだ。そんなんで、このオレがヤれるかよ」


ーーー3。


「うるさいっ!黙れっ!私の信念はヴィルラド様だ!あの人に寄り添って生きるのが私の生き方だ!!!だって私がそうしないと・・・だれもあの人を見ようともしないじゃないかッ!!!」


激情があふれ出す。少女の動きはますます単調になる。


ーーー2。


「べつにそっちの生き方に文句付けようってわけじゃないぜ?だがやっぱりなーーー()()()()()()()んだよ」


ーーー1。


「だから気付ねぇ。だから見破れねぇ。なんでオレが大げさな攻撃ばかりしてると思う?なんでオレがくだらない無駄話ばかりしてると思う?お前はそこに気付ねぇ」


「何がいいたいのッ!」


少女の斧を躱し、大きく飛びのく。そんな俺の背後には・・・。


「つまりね、シュトラちゃんはこういいたいんだよ。ーーー『だからおめぇは()()()に負けるんだよ』ってね♪」


時間を使ってたっぷりと魔力を練り上げたフェルンがいた。


「つーわけだな。ーーーこいつで0だ、しっかり狙えよ?」


「もちのろんさ!・・・()く駆けろーーー風破(ウィンドバースト)!」


フェルンの声とともに現れた突風が、ヤツを飲み込むのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。