だから
「んなひらひらした可愛い服装でオレとヤろうってか!?なめんじゃねーぞッ!!」
巨大な斧ごと少女の体を蹴り飛ばす。
「フェルンにクソ勇者!絶対に手を出すんじゃねーぞ!」
少女を睨みつける。
「このままじゃむかむかしておさまんねー!このチビはオレが一対一でヤる!」
「わかったよシュトラちゃん」
相変わらずだね。と。そう笑ってフェルンは一歩下がった。
「いくら勇者のお仲間と言っても、自信が過剰なのではありませんか?二人まとめて私と対峙することを推奨いたしますが」
「あ?自信がどうのってのは関係ねーよ。要はプライドの問題だ。てめーみたいなチビ相手に二人でってのは恰好が付かねーだろ?」
「わかりませんね。世界を守らんとする人のお考えは」
ですが、と少女は続ける。
「私にとってはすべて些事です。ヴィルラド様の悲願の為、お二人にはここで死んでもらいます。
「・・・一分だ。六十秒でケリをつけてやる」
少女の持つ巨大な斧。あんなもの一発でも喰らえばそれでおしまいだ。
ヤツの動きの細部にまで警戒しながら駆けだす。
手数も、小回りも、スピードもナイフの方が上。あんなバカでかい獲物を持っている相手には、ド近距離まで近寄るに限る。
寄り切ってしまえばこちらの勝ち。・・・そう結論付けたその瞬間。
「浅はか。脳筋。馬鹿。ヴィルラド様が仰っていたとおりね」
少女はもっていた武器を上空に投げ飛ばした。
そして、素手でオレのナイフを迎え撃つ。
「ちっ!」
ナイフ、拳、足。全身を使った攻撃を、相手もまた全身で受ける。ほとんどは躱され、回避が不可能なものはガードされ、ダメージを最小限に抑えられる。
「巨大な武器を使っているのは、接近戦に自信がないからだとでも思いましたか?」
「うる、せぇ!!!」
振りぬいたナイフの一閃を、大きく飛びのいて躱された。
・・・その大仰ともいえる動作は、何もナイフを避けるためだけのものではなかった。先ほど投げた斧が、オレの頭上に降りてくる。
普通なら後ろに飛んで避けるだろう。だがオレは逆に・・・前に詰めよった。
「ムカつくヤツだぜ。攻撃を受けながら、オレをあの位置まで誘導したってのか?」
「勇者のお仲間からのお褒めの言葉、光栄です」
三度、飄々と攻撃を受け流される。
「先ほどよりも単調に、大振りになっていますよ?ナイフの良さが死んでいます」
「うるせぇな。・・・ところでよ、あと10カウントってところか?」
「何を言っているのですか?」
「言ったろ?六十秒でケリをつけるってな」
「ふふっ、世迷言ですね。実力がなくても、威勢だけで勇者パーティに入れるものなのでしょうか」
「あ?世界を救うのに強さなんて関係ねーよ。どいつもそこんとこがわかっちゃいねーよな。強さだけで救えるんなら、オレかお前んとこの大将がとっくに救っちまってる」
「なら何が必要だって言うんです?」
「んなもんしらねーよ。だが、ま。その答えに一番近付いてんのはあのクソ勇者だろうな」
ーーー9。
斧を失った少女は、それでも強かった。ナイフでの連撃を少ない動きで躱し、反撃までしてくる。
ーーー8。
「アンタは強ぇよ。才能もあって努力もしたんだろうさ」
「嬉しいですね、また褒めてくださって。貴方は良い師になれるかもしれません」
ーーー7。
「だがオレにいわせりゃ、視野が狭すぎるんだ。・・・お前、人を殺したことないだろ?」
ーーー6。
「だから・・・なんだって言うんです」
気丈な声は崩さないが、僅かな動揺が見える。
アイツは地面に突き刺さっていた斧を振りぬく。だがオレには当たらない。そもそも本気で当てようという気迫が感じられない。
ーーー5。
「ビクビクビクビクしやがって、みっともないぜ?何がそんなに怖いってんだ?」
ーーー4。
「なにをっ!」
「お前には信念ってヤツがまるで足りねーよ。言われるがまま、流されるままに戦ってんのがバレバレだ。そんなんで、このオレがヤれるかよ」
ーーー3。
「うるさいっ!黙れっ!私の信念はヴィルラド様だ!あの人に寄り添って生きるのが私の生き方だ!!!だって私がそうしないと・・・だれもあの人を見ようともしないじゃないかッ!!!」
激情があふれ出す。少女の動きはますます単調になる。
ーーー2。
「べつにそっちの生き方に文句付けようってわけじゃないぜ?だがやっぱりなーーー視野が狭すぎるんだよ」
ーーー1。
「だから気付ねぇ。だから見破れねぇ。なんでオレが大げさな攻撃ばかりしてると思う?なんでオレがくだらない無駄話ばかりしてると思う?お前はそこに気付ねぇ」
「何がいいたいのッ!」
少女の斧を躱し、大きく飛びのく。そんな俺の背後には・・・。
「つまりね、シュトラちゃんはこういいたいんだよ。ーーー『だからおめぇはオレ達に負けるんだよ』ってね♪」
時間を使ってたっぷりと魔力を練り上げたフェルンがいた。
「つーわけだな。ーーーこいつで0だ、しっかり狙えよ?」
「もちのろんさ!・・・疾く駆けろーーー風破!」
フェルンの声とともに現れた突風が、ヤツを飲み込むのであった。




