正真正銘のラストバトル
「相談は終わったか?」
「すまないなヴィルラド、律儀に待ってもらって」
「構わないさ。私たちは仲間だろう?」
ヴィルラドの笑顔の裏に殺気を感じる。それが分からない程俺は鈍感じゃない。
「そうだな。じゃあなんで仲間であるお前が、シュトラやフェルンを殺そうとした?」
「それを語ったら、もっと怒ってくれるのか?もっと俺を楽しませてくれるのか?」
「・・・それはないな。これ以上はない。だって俺はもうキレてるんだから」
「そうか。ならばこの問答に意味はない。早く始めてしまおうか。・・・カティアっ!」
ヴィルラドが名前を呼ぶと、暗闇から少女が現れる。
「はい、ヴィルラド様」
俺の目を一番引いたのは、彼女が着ているメイド服じゃない。・・・彼女が持っている巨大な斧だ。その大きさは彼女の身長を超えている。
あんなものまともに受けたらひとたまりもない。ただの一撃でこの世とお別れだ。
・・・どうする?ヴィルラド一人にだって、このままじゃ勝てないっていうのに。
「心配しなくてもいい」
内心の焦りを見透かしたようにヴィルラドが口を開く。
「私が望むのは『勇者』との決闘だ。彼女を呼んだのはその邪魔をさせないためでね。・・・神聖な決闘の最中に、野良犬に噛みつかれたのでは目覚めが悪いだろう?」
「あ?誰が野良犬だって?」
フェルンによる治癒を終えたシュトラが鋭い眼光を向ける。
野良犬なんて可愛いものじゃない。・・・その瞳はまるで狂犬だ。
「いいぜ。お望みとあらばあのクソチビの相手は俺がしてやるよ」
「相変わらず異性だけは良いな。・・・相手をしてやれ」
「はい」
少女が俺の隣を抜けてシュトラに詰め寄る。ヴィルラド睨まれている俺に、その進行を止めることはできない。
キン!っと甲高い音が洞窟内に響いた。巨大な斧の一撃をシュトラが受け流したのだ。
「んなひらひらした可愛い服装でオレとヤろうってか!?なめんじゃねーぞッ!!」
巨大な斧ごと少女の体を蹴り飛ばす。ダメージこそ与えられていないがとんでもない膂力だ。
「フェルンにクソ勇者!絶対に手を出すんじゃねーぞ!」
狂犬が獰猛に吠える。
「このままじゃむかむかしておさまんねー!このチビはオレが一対一でヤる!」
「わかったよシュトラちゃん」
相変わらずだね。と。そう笑ってフェルンは一歩下がった。
「いくら勇者のお仲間と言っても、自信が過剰なのではありませんか?二人まとめて私と対峙することを推奨いたしますが」
「あ?自信がどうのってのは関係ねーよ。要はプライドの問題だ。てめーみたいなチビ相手に二人でってのは恰好が付かねーだろ?」
「わかりませんね。世界を守らんとする人のお考えは」
ですが、と少女は続ける。
「私にとってはすべて些事です。ヴィルラド様の悲願の為、お二人にはここで死んでもらいます。
「・・・一分だ。六十秒でケリをつけてやる」
そして、二人の戦闘は始まった。
加勢に行くにはまず。
「そろそろ私たちも始めるとしようか」
立ちはだかるヴィルラドをどうにかしないといけない。その難しさは、俺が誰よりも理解しているつもりだ。
「がっかりさせないでくれよ、勇者殿?」
「期待に応えられるよう、精一杯努力させてもらうよ」
お互いに剣を抜き、肉薄する。
始まるんだ。正真正銘のラストバトルが。
勝て。勝てよ勇者。悲しい物語はここで終わりだ。この世界ではもう。
ーーーアイリスを泣かせたりなんかしない。




