556 コウキな女子会 2
前回の続きになりますが、今回はチョット作者が遊んでいまして、普段とは少し違う感じになってますのでご注意を。
「それで、殿下は何か私にお話があるとか」
「はい、どうか猊下にお願いいたしたき事がございまして、まかり越しました」
「伺いましょう」
視界、お互い話の内容は解っているはずですのに、白々しい事。
「どうか、今の戦を、我が国の貴族達とライフェル神殿との戦を収めて頂きたく」
「平和を望まれる、王女殿下の志は素晴らしい物と思いますし、私どもとしましても流血は最小限に留めたく思ってはいます」
流血を望まないではなくて、最小限にしたいというところが素敵な所よね。
「では……」
「ですが、ライフェルが引いたとて、主戦派の貴族達も退くという保証がない、それどころか神殿軍の後退に合わせて逆侵攻して来る恐れがある以上、神殿は目に見える明確な脅威に対処せざるを得ません。少なくとも前線に集結している、貴族軍が後退しない限りは、現在引いている防衛線を崩す事は出来ません。問題は互いに信用が無い事なのです」
相互不信ですか、これに関しては開戦前から言われていた事でしたわね。ムルズ貴族も神殿も、自分が退けばそこに敵がなだれ込み追撃さえるのではと不安だから、相手が先に引かなければ自分は退かない。相手が何時攻め込んでくるか分からないから、いっその事こちらから攻め込んで相手を潰さなければと、前線は何時でも暴発寸前。
あたしも、せっかくならそっちの方が楽しそうだったのに、南方戦線は良かったですわね。『人狗銀鉱』でたっぷり遊んだ後は、開戦に合わせて、ムルズ王国南方域で前線に向かおうとする小規模部隊や物資を積んだ輸送隊を、襲撃して回っていたあの頃は殺りたい放題、コワしたい放題だったもの。
と、考えがそれてしまいましたわね、確かに現状では、現場でお互いの指揮官が呼吸を合わせて段階的に撤退なんてのは難しいでしょうから、王女様の提案にこのまま乗るのはあり得ませんわよね。
まあ、神官長様の本音としては、これだけ勝っていて、しかも首都にいつでも手の届く位置に船団を進めることまで出ているのに、今更大した利益も無いまま終わらせる訳にはいかないと言ったところかもしれませんけれど。
「それは……」
「ライフェル神殿は既に二度、ムルズに裏切られております。一度目は食糧相場の混乱で民が困窮するのを見かね、これを収めてくれるのを期待して、貴族達からの借り入れの申し入れに対して莫大な金銭を提供しましたが、彼らはその資金を投機につぎ込んでさらに相場を混乱させたばかりか、借金を無かった事にせよと神殿に剣を向けました。違いますか」
「違いませぬ」
「二度目の裏切りに付いては、貴方の安全の為に私共が派遣した『尚武法師』がどのような目に合ったかですが、これは私の口から言うよりも、殿下の方が詳しくご存知かと」
「つっ……」
あらあら、言葉責めですか、これはこれで王女様の顔が歪むのが楽しい見せ物ですわね。
「すでに神殿は、ムルズを信じる事が難しくなってきています。これを覆し、神殿の諸将や神官達が安心して撤退に移るとなれば、ムルズの第一人者、正当な統治者の名のもとに、納得の出来るお約束を、貴族達が絶対に暴走しないという確約を頂けませんと、到底」
あら、いきなり踏み込んで行きましたわね。国王の名の下に停戦命令と講和条件を出せと、確かに今の王女様の立場や権力では貴族達を止める事は出来ませんし、講和条件も履行される保証がないですからね。
その点、ムルズ国王が出てくれば、臣下である貴族達は形だけでも従わざるを得ないでしょうし、これがふいになれば三度目の裏切り、それこそムルズの信用はゼロになり周辺諸国の不信を買うでしょうから。ですけれど、漁夫の利を狙って機を逃し失敗する程度の国王が、こんな状況で動けるもでしょうか。
「それは、どうかわたくしの約束で、ご納得いただきたく」
「王族御二人が国外に遊学に出ているとはいえ、宮廷には王族だけでも国王陛下、第一王子殿下、第三王子殿下がミーラ王女殿下の上にいらっしゃいます。殿下がどのような御約束を私達にされ、どのような指示を出されようとも、貴族達はより上位の方々の意思を確認されそれに従おうとするでしょう。だからこそ私達はムルズにおける正当な統治者、最高権威者の御約束が必要なのです」
そう考えると、この講和は無理よね。国王は自らの権威を維持するためにも貴族達の顔色を窺っていますし、それはモナ侯爵とつながりの深い第一王子も同じです。第三王子は、サカキ様が騎士マインに襲われた一件に関わっている以上、神殿との関係が改善すれば、事件に関しての責任を取らされかねないと考えているでしょうね。
結局王女様以外の王族の姿勢は良くて中立日和見、もしくは主戦派よりと言ったところでしょうから、王女様が停戦に関して何か約束をしたとしてもそれが履行されるのは確かに難しいですわね。
「それは……」
「これは、本格的な交渉を始めるための最低条件です。ムルズ王国における、その時点での最高権威者、正当なる統治者が、交渉の結果を尊重し、それを主戦派貴族達にも順守させる。そのお約束が無いのであれば、神殿は目前の脅威と問題を自力で解決せざるを得ません」
言いたい事は解りますけれど、これはかなり無理筋ではないかしら。とは言え、このままですと神殿は本気でムルズを潰しにかかると、いえブラフかも知れないわね。でも、潰すのでしたらその時には従軍という名目で好き放題出来るわね。
ムルズにおけるその時点の最高権威者の保証、それを王女様が用意するのは難し……
いえ、おかしくないかしら、なぜ神官長様は先ほどから最高権威者とか正当なる統治者と言った遠回しな言い方をするのかしら。
普通なら、ムルズ国王とかその代理人のモナ宰相とはっきり言えばいいですのに、一方で王女様の邪魔をしそうな人物として国王や王子達を上げて居ながら、約束の相手としては……
それに『その時点での最高権威者』という言い方は、まるで……
「その時点での最高権威者の保証、まさか猊下、そんな、そのような事は……」
王女様もその点が引っかかって来たみたいですわね。ですけれど、これはとても嫌な予感がするのですけれど。
「ミーラ王女、貴方はなぜ和平を望まれるのですか」
「それは、国の為、ムルズ王国を護る為です」
この会話、あたくしが聞いていては不味い気がするのですけれど。
「貴女の護りたいというムルズ王国とは、一体何を指しているのですか、王族達の地位を維持する事ですか、王宮の権益を確保する事ですか、王国の領土を保つ事ですか、貴族達の私財と権力を保護する事ですか、それとも国体とかいうあいまいではっきりとしない概念に元ずく騎士や貴族達の自尊心を護る事ですか。でなければ、王国の歴史や伝統等という物もありますけれど」
「それは、民です、ムルズに生きる無辜の民、いつ戦禍に晒されるかと怯え土地を捨て逃げようとしている前線地域の民、自分とは関係の無いはずの戦争に徴兵され命の危機にさらされている貴族諸領の民、戦争に伴う物資徴発で明日生きる糧にすら困窮している後方の民。それらの力なき民こそが、私の護るべきムルズ王国です」
この流れ、この答え、不味い気がしますわ。このまま話があたしの想像通りに進んで行けば、どう考えても当事者以外が聞いては、知っていてはいけない内容になりそうですけれど、口封じで消されてもおかしくないような。
「なるほど、貴方の考え方は、ライフェル神の教えに沿うものだと私は考えます。その上であえて聞きます、民の為ならば、覚悟を決める事は出来ますか」
師父、約束が違うじゃないですか、花の王都でのんびり過ごせて、たまに刺客で遊べる、楽で楽しい任務だって言ってたじゃないですか。
「覚悟、でございますか、一体どのような」
こんな神殿とムルズ王国のヤバい裏交渉というか、万が一にも公になったらマズイ、耳にしただけで命を狙われかねない話を聞かされるなんて、話が違いすぎますわ、しかもこの場にはあんな化け物が居るって言いますのに。
「歴史に決して消える事の無い汚名を残す、あるいは歴史からその名を完全に消し去られる覚悟を」
師父、どうなってますの、師父、師父、まさか、本当に売られました、幾らこの間の戦闘で指示を無視して遊び過ぎたからって、これはあんまりでは……
「それは、まさか……」
あ、あ、あああああ、あの糞尼、いつか生きたまま〇〇〇〇を抉り出してやりますわ。それでもって、抉り取った新古品〇〇〇を目の前でオーガの〇〇〇ー〇にしてから、イカ臭い○○を溜めこんだ一生使い道のないだろう○○に、オークの〇〇と〇〇を刻んで詰めて、自分で食わせてあげますわ。
「ミーラ第二王女殿下、貴方は、ムルズの民の為にその手を血で染め、王族として人の子として本来あるべき倫理を捨て、人道に背く覚悟がありますか」
それでもって、生かさず殺さずのまま引きずり出した○○を直接〇に縫付けてテメエの〇〇をそのまま食わせてやる、糞尼だけにな。
「もちろんございます。それで民が救われるのであれば、いかようにでも」
その後は、無駄に大きな○を○りそこに塩を塗りこんで、切り落とした○○を刻み○○に詰めて油で○げて○ってやりますわ。そうすればアタシの胸ももう少し大きくなるかもしれませんし。
「解りました、貴方の覚悟を尊重いたします。では、貴方にこれからして頂きたい事ですが……」
これだけでは飽き足りませんわね。あの済ました顔を歪めるのなら、切り刻む前に縛ったまま男達に全部の○を同時に○○させて、○れる○が足りないようなら腹や太腿に刺突槍で○を開け○○○を入れさせれば……
「補助には、これまで通りこのミカミを付けましょう、ミカミやってくれますね。ミカミ、ミカミ」
それでもって、それでもって、ん、あら、いま何か声を掛けられたような。
「猊下の御下問であるぞ、疾く答えよ」
殺気っ。
「は、はい、もちろんでございます」
えっと、何を聞かれたのか解らないけれど、多分肯定しておけば大丈夫ですわよね。というか、背後の聖騎士が怖すぎるんですけど、なぜか鎧の飾りや身元を示すような紋章・聖印なんかを全部外してるのだけど、何者なの。
「よい返事です、ここに今後のムルズ対応の行程表を用意してある。これに沿うようあなたのなすべき事を成しなさい」
「御意のままに」
これって、どう考えても今から断れる状況じゃありませんわね。何も考えずに答えてしまいましたけれど、どう考えてもこれは。
「では、この行程表を」
「頂戴いたします。拝見してもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
受け取った計画書に手早く目を通しますけれど、これは予想以上にマズイ内容ですわ、本当にこれアタシは消されないですよね。全部終わった後で死人に口ナシなどという流れにはなりませんよね。
以前聞かされた話では、この王都での仕事が終わりましたら、どこぞの貴族家に嫁入りして乗っ取るという話を頂いていたはずなのですけれど。それは、嘘だったのかしら……
「ミカミ、貴方には期待していますよ。何しろ貴方にはこの先、新生されるラマイ子爵家を管理して頂くのですから、今回の一件はそれに向けた、実地練習とでも思ってちょうだい。今後の事は心配する必要はありませんよ、貴方が神殿と共にある限り、神殿は何時でも貴方を見守っていますし、貴方の為に必要な人員を何時でも手配します。いつまでも神殿は貴方と共にあります」
それって、神殿を裏切って今回の一件に関する暗部を誰かに漏らす事の無いように、常時監視するし、裏切りそうな時はすぐに暗殺者が送られるって意味じゃないですの。
もしかして、こうして釘をさす為だけに、今回の任務に付けられたのかしら。こうして知ってはいけない事を知ってしまい、それに協力させられ、その為に生涯監視される立場となれば、次の役目で貴族家を乗っ取った後も下手な事をできなくなりますもの。
「ご、ご期待に沿えるよう、微力を尽くします」




