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479 結局はソレ……


「たった数日の交渉、それも国や貴族連合の全権代理人でもない王女殿下とのお話では、停戦の条件を纏める事は出来ませんし、例え纏まったとしましても、実現される保証が無いですから。仮に今、停戦になりますと、相互に監視し合いつつ段階的に戦力を引き上げるという事になりますが、それには手順や段階に関しての交渉とある程度の信用保証が無ければとてもとても」


 ああ、それじゃあやっぱり無理なのかな。


「とは言え、今回の王女殿下との交渉が全くの無駄という訳ではありませんが」


「わたくしども神殿としても、無条件で神殿側が撤収という事は貸出金を全て諦めると同意ですし、ムルズの貴族達にしましても神殿主導の停戦となれば破産が待っています。今後停戦するとしましてもお互いに譲れない部分を残しつつ譲歩出来る条件を擦り合わせる必要が有りますが、その為には何度も条件交渉を行い妥協点を見出さなければならないでしょうから、その間に何度も話し合いの場を用意したり、互いの条件を相手に伝える人物としての交渉窓口、地球では交渉チャンネルとかパイプ役というのでしたか、そう言った立場に王女殿下には成って頂こうかと、まあ、生きて王都に戻れればの話ではありますが」


 なんか、凄い事言いだしてるぞ、というか最後に言った言葉が不穏すぎるんだけど。


「まあ、今すぐって話じゃなくてもいつかは停戦、あるいは終戦の交渉は必要だろうさ。でないとどちらかの陣営が完全に滅びるまで戦い続けるなんて事になりかねねえし、例えムルズ王国全土を神殿が征服して主だった貴族達を処刑しても残党が各地でゲリラ化すりゃ、事態は泥沼化して解決に何十年もかかるという事になりかねねえからな」


 なんか、どこぞの中東情勢みたいな話だな。いや、カミヤさんはそれを知ってるからこういう予想をしているのかな。


「ムルズの方々が理性的であれば、そうなる前に交渉の席に付かれるでしょうが、さて宮廷の方々がクニオの残した嫌な病気にかかっていなければいいのですが、あれが広まっていると厄介ですね。とは言え、これは対策を考えておくくらいしか今は出来ませんか」


 ん、何の事だろう。まあこの人の事だから色々と考えているんだろうな。


「そのうち交渉を始めるにしましても、ムルズの宰相閣下であるモナ侯爵は主戦派ですから、今こちら側の使者と会い、交渉する事は派閥内での評価に関わるでしょうし、それは他の主戦派貴族の主だった方々も同じでしょう。かと言って親神殿側の貴族達に交渉を頼もうにも、それらの家の大半が神殿軍に対して兵力を供出しているので一部の主戦派を切り崩す工作などでならともかく、全体的な交渉では向こうの信用を得られないでしょう」


 そっか、主戦派のリーダーが裏で神殿と繋がってたなんて風に取られると、立場や面子に傷が付きかねないし、敵対している相手の仲介じゃ罠かと思っちゃうか。


「そう言った点で考えれば、和平派であっても神殿側ではない王女殿下の一派というのは、ちょうどいい中立勢力であり、また王女殿下となれば貴族達も裏では刺客を送ったとしましても、表立って無下には出来ませんから。もちろん重要な交渉窓口が一つしかないというのは、それが潰れると問題になりますので、他にも幾つか用意していますが」


 多分この人達は、王女様が殺されたとしても、たぶん想定の範囲内で、そうなったときの対応を考えてたりするんだろうな。


「最後通牒を突き付けるにしろ、停戦ラインを決める話をするにしろ、交渉チャンネルは必要だろうな。ムルズの貴族が単独で神殿に降伏しようとしても、何処に話を持ってきゃいいのか分からないと、領都を包囲されて初めて白旗を上げるなんて事になりかねないが、それじゃ効率が悪いだろうさ。あいつ等だって神殿関係者を国内から一掃できるとは考えちゃいないだろう、よっぽどのバカじゃなきゃ戦いながらも細々と交渉を続けて落としどころを探って来るだろうよ」


 一応、お互いにメリットのある話なのか、だけどそうなると。


「王女様のやる気は空回りしているって事ですか、私にカミヤさんへの私的なとりなしを頼んでまで、何とか話を纏めようとしてたんですが」


 風呂場であった事と、その時の覚悟を決めたような態度を思いだしながら話すと、カミヤさんも神官長さんも笑い出しちゃったよ。


「いや、すまんすまん、お前の話があんまりにもでな。まさか俺がたかだか一王女の初夜ごときでこれだけの話をフイにするような安い男に見られたとはな」


「ええ、本当に、王族や貴族の生娘程度でカミヤの胤が手に入るのでしたら、何百人でも手配しますのに」


 うわあ、なんか笑いながら凄い事を言ってるよこの二人。


「前も言ったと思うが、俺は自分の胤を交渉のネタに使ってるからな、見た目、年齢、種族に関わらずどんな相手でも種付けをする自信が有るし、逆にどんな見た目でも利益が無いならその気にならん」


「種付けって、なんか牧畜みたいな言い方ですね」


「似たようなもんだ、『勇者』っていうのは日本で言えば元三冠馬の種馬、いや産まれた仔馬が確実にGⅠを取って何億も稼げる保証が付いた種馬みたいなものだ、そんなのが売りに出てればどうする」


「そりゃまあ、みんな高い金を出してなんとか買おうとするでしょうね」


「そう言う事だ、俺の胤が欲しいなら、それなりの額の金貨か利権を用意するもんだ、だっていうのに抱かれてあげるから力を貸してくれって言われてもな。話が逆だろうとしか思えねんだよ、俺の胤をタダで貰って更に要求するつもりかってよ」


 おいおい、このオッサンどんだけだよ、いや言いたい事は解るけどさ。


「全くですね、今回の件ででもわたくしがライワ家にどれほど譲歩した事か、神殿軍の糧食の買い上げをライワ領とその傘下の貴族領から持ち込まれる商品を優先して購入し、金額もかなり譲歩し、戦後の利権分配でもラッテルやその関係先にも配慮し利益を誘導する具体的な約束も取り付けたと言いますのに。子に受け継がれるステータスやスキルは、親のその時点でのレベルやステータス、熟練度に左右されますから、この数年の戦闘経験でさらに高まったカミヤの力を逃す手は有りませんから」


 ん、あれ、何だろこの話の流れ、もしかして今回の件を利用して神殿はカミヤさんに、あの、その、あてがったって事なのかな。


「不思議に思われるかもしれませんが、カミヤのような『勇者様』は貴重なのですよ。『勇者召喚』での男女比はほぼ半々ですが、やはり男性と女性では残せる御子の数が違いますから、『女性勇者』が一生のうちに産める子供と同じ数を、『男性勇者』は物の数か月で仕込む事が出来ますから」


 仕込むって、仕込むって、もっと他の言い方が有るんじゃないですか。


「かと言って、全ての『男性勇者』がそうなる訳ではないですから、地球へ帰られる方も多いですし、『勇者』として与えられた強さに溺れてしまい、危険な『迷宮』に挑戦されたり、つまらない失敗や油断で亡くなられる方も少なくありません。また御無事のままこの世界に残られても、その性的嗜好の関係で御子を残されない方もいますし、この世界で得た伴侶一筋という方もいますので、そう言った方はどうしても残される御子が少なく」


 うーん、やっぱり『勇者』でも最強って訳じゃないんだな俺も死なないように気を付けなきゃ、ただでさえ弱いんだし。それにしても神殿は『勇者』に子作りを強要したりはしないんだな、いや過去にそれで失敗して『勇者』たちに滅ぼされた国が有るんだっけ。


「中には、伴侶の方の想いが強く、他の女性と行為に及ぶ事はおろか日常会話をする事も出来ない方も居まして」


 ああ、束縛系彼女か、この世界でもあるんだなそう言う事。


「その結果として伴侶から刺されたり毒を盛られて亡くなられる方もおりますし」


 こわ、それもうヤンデレだよね、この世界にも、いや地球だって神話や伝説なんかでそんな話があったりするんだから、この世界でいてもしょうがないのか。


「まあ、中には手練手管で『勇者様』を篭絡して独占し、数人の子を得た後で他の勢力に胤を取られないように始末、なんて事も有ったようですが」


 だからなんでこの世界はそんな風に怖い事ばっかりなんだろう。


「話しがそれ掛けてしまいましたが、ともかくカミヤのように『勇者』としても優秀でありながら利権や金銭でいくらでも胤を提供してくださる、かと言って神殿の敵対勢力などには渡さないようにしてくれる『勇者』というのはとても貴重でありがたい存在なのです。これがヤスエイのような相手になりますと、金や好みで見境なくばら撒きますので対処が大変ですので、犯罪組織などが『勇者の子』を大量に支配下に置きますと、数十年後には一国では収まらない規模の危機となりかねませんから」


 まあ、『勇者』やその子孫なんてのはカミヤさんの話を聞いてれば最新型の兵器、ショボくても戦車や戦闘ヘリ並、下手すりゃそれらの部隊や核兵器みたいな戦力だもんな、単体でちょっとした戦闘集団、下手すりゃ都市や小国を圧倒しちゃうような戦力が犯罪組織、要はテロ集団や麻薬カルテルみたいな連中の参加に有るんじゃ、そりゃ心配になるよな。


 まあ、この人達がそんな戦力を持ってるのもそれはそれで心配な気がするけどさ。


「そう言う訳でして、稀少なスキルや職を持たれた異性愛者の『男性勇者』、それも幼女趣味や殺人嗜好等の子供を成さない特殊性癖では無く、その上で誰かに縛られていない方というのは、神殿にとってもその強力諸勢力にとっても非常に重要で貴重な存在なんです」


 なるほどね、ん、あれ、この流れってさ、今までも……


「リョー様、今まで何度もお聞きしておりますが、そろそろ御心が変わっていたりはしませんか、リョー様が一言、その貴重な血を残されると宣言されましたら、すぐにでもふさわしい相手を連れてきますのに」


 やっぱりこのネタに行くのか。


「今でしたらミーラ・ティア・ムルズ王女殿下辺りでしたら、後日の交渉次第ではお部屋に連れていけるかと思いますが、悪食のカミヤは興味を示しませんでしたが、あの容姿や体型は女のわたくしから見てもなかなかのものですし、何よりあの蒼銀の髪は非常に珍しい物ですから、彼女の子でしたら、神殿にも不利益とはならないでしょうし、『勇者様』の御子を宿したとなれば彼女のムルズ王宮での影響力も強まり、停戦工作もはかどる事でしょうし、今代の『勇者様』の御子がムルズにいるとなれば、神殿側も譲歩するのにやぶさかではありがせんが」


 いや、戦争は気になるけど、流石にそれは……


R2年7月12日 誤字修正しました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 見た目、年齢、種族に関わらずどんな相手でも種付けをする自身が有るし、 自身→自信
[良い点] ランキング三位の神官長 [気になる点] 神官長のステミ [一言] 神官長を待っておりました
[良い点] 前から好きなのですが、自分だけは好きに女性と交際出来ると思っているところが、不快です。 そうでないなら、根拠がほしいです。 今のままでは、自分だけは関係ないと二十歳未満の学生みたいです。 …
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