480 装飾品選び
「まったく、坊やの仕事をするのは二回目だから、今回は驚かないと思ってたんだけど、まさかたった数か月で、またこんな素材を持ち込んで来るだなんて」
以前ライワ伯爵領の町でお世話になった武器屋のお姉さんが、呆れた様な声で素材の山を指さしてるな。
カミヤさんが連れてきたっていう装備職人が彼女とその仲間連中だったのは俺としてはありがたいんだけど、この反応はさ。
「まあ、あの後『獣頭草原』『鬼軍荘園』『蠕虫洞穴』と三つの『迷宮』に入ったからな、とはいえそれほどでもないだろ『獣頭草原』での素材は一部を伯爵閣下に売ったし、『鬼軍荘園』の魔物は数ばかりった上に、乱戦だったせいで質の良い魔物の素材は回収できずほとんど手に入らなかった、『蠕虫洞穴』にしても、フロアボスはそれほど強さもスキルも無かったから、まともに使えそうなのは『帝王具足蟲』くらいだろう」
ミムズ達との契約が有ったから、『蠕虫洞穴』ではフロアボスの素材なんかも貰えたけど、大して強いのは居なかったんだよな。『獣頭草原』のボスだった『グレート・ミノタウロス』や『ガネーシャ』『ナースホルン』なんかはカミヤさんが結納の品に使うって言って角や牙を買い取ってくれたからないし、あ、でも余った素材や加工で出た欠片なんかを、こっちに回してくれてるんだっけ。
とは言え、結局は『帝王具足蟲』の素材が殆どなんだよね、デカかったし、肉と体液以外はほぼ総取りだったから、運ぶのに難の有った体液にしてもクリグ・ムラム達がこっちに持ってきてくれてるから大量にあるし。
「あのね坊や、こんな大型ボスモンスターをほぼ丸々一体持って来るんだなんて、普通は有り得ないのよ。それに伯爵様から返されたっていう素材は、小さい欠片だけど、とんでもなさそうなのが混じってるし、ああ、もう日数が惜しい、坊やがこの街に居るのがたった数日だけなんて、もっと期間が有れば色々出来るはずなのに」
「まあ、それは次の機会にするとして、限りある時間でできるだけ戦力を上げたい、ここに有る物で何が出来る」
普通に考えれば、王女様の帰りにも襲撃が有るだろうし、今度こそ『薬師』本人が出てくるかもしれないからさ。
「そうね今有る材料や武器、後はこの日数で出来そうなのというと、『帝王具足蟲』の素材で幾つかの装備の強度を上げたり『水』の効果を付ける感じかしら、後はこれね」
これって、『四弦万矢』がくれた『加剛の弓』の破片か。
「凄いわねこれ、きっと元の武器のレベルが相当高かったのね、こんな小さな破片なのにかなり強力な効果が付いてるわ、これならどんな武器にでも効果を付けれるわね。補強に『帝王具足蟲』の素材を使えば『加剛』の効果で自壊したりしないだろうし」
自壊ってまさか、いや、そう言えば『四弦万矢』弓の威力が強すぎて弦が切れまくったから付いた二つ名だっけ。
そう考えるとあり得るのか。まあ、そこまで強くなりすぎたら引けなくなるか、いやいやアラなら『力の動籠手』があるし『不断の糸』も一部を材料に使えば行けるんじゃないか。
「効果を付けるのは、普通に考えればお嬢ちゃんの使ってる強化弓かな、ちょっと見せて貰えるかな」
「うん、わーった、はいどーぞ」
元気よく返事をしたアラが『アイテムボックス』から普段使っている弓を取り出したら、また凄い顔をしだしたんだけど。
「ねえ、坊や、前回も思ったんだけど、君はこんな小さな子にどれだけの数を殺させてるのかな、ただの強化弓それもレベル1だったはずなのに、とんでもなく成長してるんだけど」
なんか、少年兵に虐殺させてるテロリスト組織みたいな言われ方をされてるんだけど、そりゃ確かにアラの弓には何時も活躍して貰ってるけどさ。
「それは、魔物の群や盗賊の集団を何度も相手にしてたからな、いや、一番の理由は『鬼軍荘園』の活性化鎮圧でゴブリンの軍勢が突撃してくるのを射撃で制圧したりした事か」
ハルの背中に乗って空からの掃射で数百体を一気に何てのも結構あったからな。
「『活性化』した『迷宮』の鎮圧戦の参加って、こんな小さな子に、いやもういいわ、坊やたちのやる事にいちいち反応してたら心が持たなそうだもの。そうね、この弓だったら間違いないわね、これだけレベルが高いのにまだ何の効果も付いてないから、複数の効果をそれも劣化を最小限に抑えて付けれそうね、いえ合わせ方によっては効果を高めることも出来るかも」
「この欠片以外の効果も付けれるって事か」
「そうね、この破片には『加剛』の他にも『威力増加』『命中補正』『連射補正』『射程延長』『スキル強化』なんかの効果も付いてるけど、これを再現して、もう幾つかはつけれるかな。いっその事『魔道具』を一つ組み込んでもいいかも」
そう言えば、『四弦万矢』は色々スキルを付けてるって言ってたっけ。でも追加で『魔道具』を組み込めるのか。
「それなら、アラ『自射の短弓』を出してくれ」
「うん、これだね、はい、おねーさん」
「これも凄いわね。レベルはそれほどじゃないけど『次矢生成』に『MP威力化』『自動射撃』ってこれだけでも相当価値のある『魔道具』よ。でもこれとあの欠片の効果が合わされば、お嬢ちゃんのステータス次第だけどかなり使える弓になるわね。でも『加剛』を使いこなすにはかなりの腕力がいるわよ」
まあ、『加剛』の効果は、弓の力を上げて威力を上げるけど、その分だけ弓を引く力も必要になるからね。見た目や筋肉量だけでステータスは解らないけど、筋肉量が有ったりガタイが良い方が、力関係のスキルやステータスの成長が良いし、数値に出ない補正が多少付くらしいから。
そう考えればまだ小学生高学年か中学校入り立て位の見た目で、やせ気味の女の子みたいなアラにそんな力が有るとは思えないだろうね。
「その点は、力を強化する『魔道具』が有るから問題はない」
「そうなの、それじゃあこの弓を使おうかな、後はもう一つか二つくらいは出来るかな。あ、それと伯爵様から『無食長命』の効果を付けた物も人数分以上用意するからそれ以外でいいわよ。『無食長命』は殻と体液、後は幾つかの内臓なんかを利用すれば、結構小さいのでも行けるから、こんなふうに髪留めみたいにすればいいかも」
見本としてお姉さんがテーブルの上に幾つかの髪飾りを出していくけど、バレッタとか、カチューシャ、ヘアクリップにゴムみたいに飾りのついた紐なんかも有るな。
「小さいのなら兜なんかの防具の下でも大丈夫だし、坊やが付けても変じゃないでしょ。それに毛を挟んで留めるようなのだったら『獣態』や『鳥態』になってもそのまま付けておけるしね。簡単な形のならそんなに時間はかからないからうちの職人達なら数を作れるわよ。薬液に漬けて殻を柔らかくするのに時間がかかるけど、それは一度に大量にやればいいから、後は職人たちが削って体液や内臓を混ぜた塗料で色付けするだけで、他の武器みたいに金属を溶かしたりする必要はないからね」
変身しても使えるのは面白いな。
それにうちの子達は食費がかかる子が多いから、普段ならいくら食べても予算が有るからいいけど『迷宮』とかだと『アイテムボックス』に入れれる食糧の量が限られるからね。
それに見た目が装飾品でデザインの違う予備が有るなら服装や場所なんかのTPOに合わせて代える事も出来るか。いや、『迷宮』や遠征用の装備だからTPOを考える必要はないか。
「これだけの素材なら小さくても複数の効果が付きそうだから、他の魔物の骨や角、牙の欠片なんかを飾りに追加して複数効果にしてもいいかも。ついでに隠蔽もかけておくから、いざって時にも良いかもしれないわね」
イザって時って、街中で武装してない時に襲われた場合とかか、この見た目なら何時でも付けておけるだろうし、食事関係以外の効果が有るならいいかも。
「盗賊とかに掴まって牢屋に入れられると、所持品や装備を取られるだろうけど、こう言ったパッと見だと目立たない装飾品なら、そのままにされる事も多いから、食事を抜かれてても体力を温存して置けるから、逃げる時に備えて置けるわよ」
うわ、イザってそこまで含まれてるのかよ、盗賊なんかに捕えられる可能性か、いや俺も拉致なんてマネをしてるんだから、ヤスエイみたいなのが向こうに居る以上は想定しておいた方が良いか。
「そうだな、出来るだけ目立たないのも作ってくれ」
「いいわよ、それじゃあ坊やを含めて全員分この一番小さくて簡単なのを用意するとして、後は好きな髪留めの形と、付けて欲しい効果を教えて貰えるかな、多分この素材なら効果は弱くなるけど三、四個、物によっては六個くらいまでは確実に狙って付けれると思うから、今有る能力やスキルを補正する効果の限定になるけどね」
その言葉にうちの子達が、テーブルに集まり髪留めを付けてみたり、鏡の前でポーズを取ってみたりして選び出すけど、ああ、こうやってるのを見ると年頃の女の子の集まりだって実感するな。
最近は血みどろの対人戦闘の繰り返しだったり、洞窟で蟲まみれだったり、ミリタリーまがいのゴブリン軍勢との対陣だったりって、大変だったもんな。
「では、私はこれにしますね御主人様」
サミューは、シンプルで実用性重視なのばかりだな、家事とかする際にしっかりと留めれそうなデザインで、変わったのといえば、メイドカチューシャ位か。
効果は『ガネーシャ』の『斬撃耐性』『強再生』『豪硬皮』に『ジェネラル・デザート・フォックス』の『御者』『騎乗』『戦闘指揮』か元から耐性系が有って生身で堅いのに、さらに硬くなりそうだな。
『ジェネラル・デザート・フォックス』のスキルは、サミューが取った『騎士』の職に合わせたのかな。
「わたくしは、これらにいたしますわ、効果は『帝王具足蟲』の水魔法関連かしら、ああ、『ホルニッセ』の『急降下』のスキルは『鳥態』で使えれば便利ですわね」
ハルは、やっぱり結構飾りのしっかりしたオシャレそうなのを選んでるな。
ホルニッセか、確かスズメバチの魔物だったよな、ハルは最近『鳥態』で上空からの魔法空爆みたいな事してるから丁度いいかも。うん、急降下爆撃とか、いつの時代の軍用機だよ。
「それではわたくしは、髪を纏めやすいこれらにしようかと思います。今有る素材などでは毒に関連する物はなさそうですので、『グレート・ミノタウロス』の『格闘』と『スキル連続発動』『双拳法』が付けられれば良いかと、いえ『帝王具足蟲』の『腐肉食』が有れば、腐りかけのお肉も安心して……」
トーウが選んだのはポニーテールを纏めるのに向いたバレッタや紐ばかりだな。
格闘系の効果は確かに向いてそうだけど、『腐肉食』って、トーウなら普通にスキルだけでもいやいや、そもそもそんな物を食べさせたりは、いや止めてもトーウなら食べそうだな。それなら万が一に備えて食中毒対策しておいたほうがいい、のかな……
「アラはね、これと、これにするの」
アラが選んだのはかわいい感じの髪飾りが多いな手彫りで花とか動物の顔とかがワンポイントで付いてて、女の子らしい感じだ。
効果は『グレート・ミノタウロス』の『速度上昇』『腕力上昇』『剛腕』後は複数の魔物の刺突系スキルを纏めるのか、アラの細剣は切るだけじゃなく刺すのにも使えるし、『剣狂老人』から教わった技も一つは突きを飛ばす技だから当然かな。
でも力を上げるような効果を多く取るのはなんでだろ、苦手を補強するのかな。
「え、えっと、こ、こんなにつけて、い、いいのかな」
ミーシアは自分で選べなかったのか、ハルやサミューに言われるがまま選んだんだけど、目立ちはしないけど可愛い感じのヘアクリップが多いな、ミーシアの真っ白な髪につけるとワンポイントみたいで似合うかも。
効果は『帝王具足蟲』の『鋼殻』を基本にして防御力上げて、それに犀の魔物の『ナースホルン』と『グレート・ミノタウロス』の突進系スキルを組み合わせてる。
これなら盾と武器を構えて突っ込むのも、白熊の姿でブチかますのも威力が上がるって話だからな。
ミーシアには追加で『ガネーシャ』の象牙の欠片を使った飾りも作って、小さな髪留め二つにしようかな、そうすれば回復魔法にも補正が付けられそうだし。
「俺はこれにするか」
流石にあんまり目立つ派手なのはちょっと抵抗が有るから、あんまり目立たないヘアピン一つにして、効果はガネーシャの『鑑定』と『看破』にするか。
ラクナがいれば大概の相手は『鑑定』できるけど、サミューの隠しスキルみたいに『隠蔽』されてると見れない事も有るから。
「鑑定を付けるなら、この壊れた『看破の片眼鏡』の欠片も使おうかしら、そうすれば成長しやすくなるはずよ、最初のうちはあまり見えないだろうけど、使い続けてレベルを上げればそれなりの物になるわね。他の子達もレベルを気にするなら一つのモノを使った方が良いけど、効果が多いし坊やの見たいに『魔道具』を混ぜる訳じゃないから、そんなに成長しないと思うから、そこまで気にする事は無いけどね。あくまでもお腹がすきにくくなるついでくらいに思ってちょうだいね」
(儂の『鑑定』と合わせて使えば、この髪留めの成長も早くなるかもしれんのう。そうすれば『看破』もそれなりに使えようて)
お、ラクナがこう言ってくれるなら期待できるかな。効果が高くなって単独でも使える様になったら、誰かに渡して俺無しでも鑑定できるようになれば作戦の幅も広がるかも。
「それで、『無食長命』の髪留めはこれでいいとして残りはどうするの坊や」
「後は、特別な効果は無しでもいいから、革や殻を使って防具類の強化をして貰えるか」
ヤスエイみたいのを相手にすると考えると、まだまだ防御力不足だろうしさ。
「分かったわ、あ、そう言えば、装備職人と懇意にしてる、別な職人達も伯爵様に連れられてきてて、坊やの馬車の修理を指示されたらしいけど、あれどう見てもこの期間じゃ直らないと思うわよ」
ああ、ここに来るまでの間かなり酷使したもんな、ガタガタの道を全力疾走とか、中毒者に取りつかれて切り合いとか、そりゃガタも来るか。
後、22日




