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第29話 新たな力

Eランクになって最初の依頼は、東平原にいるグラスリザードの皮を3枚納品するものにした。


受付で聞いた話だと、こいつは草むらだけじゃなく木の上にも隠れるらしい。

緑色の鱗が草や葉に紛れるうえ、皮を傷つけすぎると納品できない。

なかなか面倒そうだ。


東の森はまだ立ち入り禁止だと、受付でも念を押された。

今回の目的地はその手前の平原だし、わざわざ森に近づくつもりもない。


初めての魔物なので、バルドから借りた魔物の本もバッグに入れた。

昼飯用に軽食を買い、門で冒険者登録証を見せて町を出た。

東へ進むにつれてぽつぽつと木が増え、振り返ると町がずいぶん小さく見える。


そろそろ次のレベルが上がってもおかしくないと思うんだけどなぁ。

ガルディロを倒してLv6になってからも魔物とは戦ってるし、経験値が見えないから何とも言えないけど、もう少しで上がるんじゃないだろうか。


そういえば、まだ振ってないポイントがあった。

ちょうど腹も減ってきたし、近くの木の根元で休憩することにする。

周りに魔物がいないのを確かめて腰を下ろし、軽食をかじりながらステータスを開いた。


【ステータス】

名前:ガッシュ

Lv:6

STR:11

VIT:17

AGI:12

INT:10

未使用ポイント:15


未使用ポイントは15。レベルが上がるたびに5ポイントもらえるけど、使わずに貯めていた分だ。


剣を使うなら、やっぱりSTRは上げておきたい。ガルディロの甲殻も硬かったしな。

でも攻撃ばかり強くしても、打たれ弱かったら意味がない。

命がかかってるんだし、そこはバランスよくいこう。


少し悩んで、STRに9ポイント、VITに3ポイント。残りの3ポイントはAGIに振ることにした。


【ステータス】

名前:ガッシュ

Lv:6

STR:20

VIT:20

AGI:15

INT:10

未使用ポイント:0


画面を閉じて立ち上がった瞬間、いつもより身体が軽いことに気づいた。

試しに一歩踏み込んでみると、思った以上に勢いがついて、慌てて反対の足で踏ん張る。


おお、ちゃんと変わってる。剣の柄を握ってみても、前より力が入る気がした。

ただ、急に強くなった身体を使いこなせるかは別の話だ。

戦う前に少し慣れておいた方がよさそうだな。


そのとき、閉じたはずの画面に文字が浮かび上がった。


《条件を満たしました》

《スタイル機能が解放されました》

《スキル機能が解放されました》


「……えっ?」


慌ててステータスを開き直す。今までなかった【スタイル】と【スキル】の項目が、本当に増えていた。


スキル! ようやく来たか!


魔法を覚えてからも、ステータスにはスキルらしい項目がなかった。

てっきり自分で技を覚えるしかないのかと思ってたのに、能力値を上げたら解放されるのか!

思わず顔がにやける。


【スタイル】を開くと、斬撃、刺突、格闘術、弓術……いろんな項目が並んでいた。

登録できるのは2つまでらしい。これ、選んだスタイルで覚えられるスキルも変わるのか?

気になる。めちゃくちゃ気になる。


とはいえ、ここは魔物が出る東平原だ。

後から変更できるかも分からないのに、こんな場所で適当に決めるのは怖い。


帰ったらじっくり見よう。そうしよう。

そう決めて画面を閉じたものの、頭の中はもう新機能のことでいっぱいだった。


草むらを探しながら歩いていると、風に揺れる草の中に、妙に動かない緑色の塊があった。

目を凝らすと、細長い尻尾が見える。あれがグラスリザードかな?


剣を抜いて近づいた途端、草むらから大きなトカゲが飛び出してきた。

横に避けたけど、思っていたよりずっと速い。着地して向き直るのを見て、次の突進に合わせて半歩ずれ、首を狙って剣を振る。


刃が首元を捉え、大きなトカゲは地面に倒れた。

しばらく暴れたあと、ようやく動かなくなる。さっきより身体が動かしやすいし、剣も振りやすかった気がする。ポイントを振った効果、ちゃんと出てるな。


近づいて緑色の鱗と細長い尻尾を確かめ、バッグに入れてきたバルドの魔物の本を開く。

グラスリザードの項目を探すと、描かれた姿は目の前のトカゲとそっくりだった。

どうやら間違いなさそうだ。



1体目をバッグに入れて、次を探す。ところが、これがなかなか見つからない。


歩いているうちに、また新機能のことを考えてしまった。

斬撃は外せないとして、もう1つは何にしよう。弓術も面白そうだけど、まず弓を買わなきゃいけないしな。それより、どんなスキルがあるんだろう。


そんなことを考えていたせいで、頭の上の枝が揺れた音に気づくのが遅れた。


顔を上げたときには、もう緑色の影が飛びかかってきていた。

反射的に剣を持ち上げたけど、グラスリザードの身体が腕にぶつかる。

衝撃で指が緩み、剣が草むらへ落ちた。


「くっ!」


剣を拾う暇なんてない。噛みつこうとする相手を、とっさに足で踏みつけて地面に押さえ込む。

かなり暴れたけど、何とか踏ん張れた。さっきVITを上げてなかったら、もっと苦しかったかもしれない。


腰に下げていた採取用ナイフを抜き、グラスリザードの首元へ刃を入れた。

大きく身をよじって抵抗してきたが、足を離さずに押さえ続ける。

しばらくして、ようやく動かなくなった。


息を吐いて、落とした剣を拾う。腕がじんじんする。

身体は強くなったはずなのに、ちょっと気を抜いただけでこれだ。

新機能に浮かれてたのは、さすがに反省しないとな。


剣を落としたときは本当に焦った。

今回は何とかなったけど、あのまま噛みつかれていたらと思うとぞっとする。

それにしても、木の上から飛びかかってくるとは思わなかった。

残りの1体を探すときは、頭上にも気をつけないとな。


3体目は、最初から木の上も気にして探した。

枝に沿って伸びる尻尾を見つけたので、真下には入らず小石を投げてみる。

葉が揺れたと思ったら、グラスリザードが飛び出してきた。


今度は待ち構えていたので、着地する場所を避けてから首元を斬れた。

よし、3体目。皮にも大きな傷はなさそうだ。


これで依頼に必要な数は揃った。それに、今はスタイルとスキルのことが気になって仕方ない。

3体をバッグに収め、早く宿で確認したくて町へ引き返した。


ギルドに戻ったら、裏の解体場でグラスリザードを引き渡す。

3体とも使える皮が取れたらしく、無事に依頼達成だ。

解体費を引いた報酬を受け取って、さっそく鉄拳亭へ向かった。


鉄拳亭で夕食を済ませ、部屋に戻る。さあ、やっと落ち着いて新機能を確認できる。


【スタイル】

斬撃

刺突

打撃

格闘術

弓術

槍術

斧術

盾術

鎌術

双剣術

短剣術

投擲術

棒術

鞭術

杖術

暗器術

罠術

操糸術

……

登録可能数:2


思っていた以上に種類が多い。しかも、登録できるのは2つだけ。

後から変更できるかも分からないし、ここは慎重に選びたい。


弓術や槍術も気になるけど、今から別の武器を買って練習するのは大変そうだ。

まずは使い慣れた剣を伸ばす方がいいかな。

ほかの候補も一通り見てから、斬撃を登録してみた。


《スタイル「斬撃」を登録しました》


登録可能数:残り1


さっそく【スキル】を開くと、さっきまでなかった項目が増えていた。


【STR20・斬撃】

A《断閃》

一撃に力を集中させ、斬撃の威力を高める。


B《流刃》

剣を振り抜く勢いを制御し、次の動作へ滑らかにつなげる。


おお、スキルまで選べるのか!

どっちも便利そうだけど、剣を振った後に次の動きへつなげられる流刃が気になる。

試しにBを押してみると、別の画面が現れた。


【スキル習得確認】

《流刃》を習得しますか?

※《断閃》は習得できなくなります。

【習得する/戻る】


……ん? 片方しか覚えられないのか。

じゃあ、ほかのスタイルはどうなるんだ? 斬撃を登録したからこの2つが出たんだとしたら、別のスタイルを選べばそっちのスキルも出てくるのかな。


まだ確定するのは早い気がする。ひとまず【戻る】を選び、スタイル画面へ戻った。


残りは1枠。盾術なら守りを固められそうだし、刺突なら今の剣でも使えるかもしれない。

でも、今日の奇襲を思い出すと格闘術も捨てがたい。


剣を落としたとき、足で押さえ込めなかったら危なかった。

剣を持ったまま蹴ることもあるだろうし、武器が使えないときの手段も欲しい。

何度か候補を見比べ……。


「とりゃ!」


《スタイル「格闘術」を登録しました》


スキル画面を開き直すと、予想どおり格闘術の選択肢も増えていた。

やっぱりスタイルごとに覚えられるスキルが違うんだな。


【STR20・格闘術】

A《震脚》

地面を強く踏み込み、衝撃を伝えて近くの敵の体勢を崩す。


B《衝拳》

拳に力を集中させ、短い距離から強烈な一撃を放つ。


衝拳も強そうだけど、素手で殴るにはかなり近づかなきゃいけない。

震脚なら剣を持ったままでも使えそうだし、相手の体勢を崩せるのは便利そうだ。


ただ、ここで1つ気になることがある。

スタイルは2つ登録できたけど、スキルもそれぞれ覚えられるんだろうか。

どちらかのスタイルで1つ覚えたら、もう片方は選べなくなるかもしれない。


せっかく格闘術も登録したのに、そうなったら残念だなぁ。でも、画面を眺めているだけじゃ分からない。これからも剣は使うつもりだし、まずは斬撃のスキルを覚えてみよう。


斬撃の画面へ戻ってB《流刃》を選ぶ。


【スキル習得確認】

《流刃》を習得しますか?

※《断閃》は習得できなくなります。

【習得する/戻る】


少し緊張しながら【習得する】を選んだ。


《スキル「流刃」を習得しました》


よし、覚えられた! さて、問題はここからだ。


恐る恐る格闘術のスキル画面を開いてみると、さっき確認した《震脚》と《衝拳》が、まだ選べる状態で表示されていた。


……あれ? まだ選べるぞ?


試しにA《震脚》を選んでみる。


【スキル習得確認】

《震脚》を習得しますか?

※《衝拳》は習得できなくなります。

【習得する/戻る】


おお! こっちも覚えられるのか! よかった、どちらか片方だけってわけじゃないんだな。


だったら迷う必要はない。【習得する】を選んだ。


《スキル「震脚」を習得しました》


まだスキル欄には続きがあった。


【VIT20・共通】

A《不動の構え》

衝撃を受けた際、姿勢の崩れを軽減する。


B《受け身》

転倒や吹き飛ばされた際、受ける衝撃を軽減する。


受け身も欲しいなぁ。でも、倒れたときに備えるより、まずは倒されない方がいいか。

今日みたいに腕をぶつけられたときも、踏ん張れるなら助かる。


A《不動の構え》を選ぶと、また確認画面が出た。《受け身》を覚えられなくなるのは惜しいけど、今はこっちにしよう。


【習得する】

《スキル「不動の構え」を習得しました》


【習得スキル】

流刃

震脚

不動の構え


習得した3つのスキルをもう一度眺めてから、ステータスを閉じた。


明日が楽しみだ!

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